ASUSTeK「Eee PC 1005HA」
~長時間のバッテリ駆動が可能なネットブック



ASUSTeK「Eee PC 1005HA」



 ASUSTeKは、同社のネットブック「Eee PC」シリーズの最新モデルとなる「Eee PC 1005HA」を追加した。貝殻をモチーフとしたスタイリッシュなデザインを採用する「Seashell」シリーズに属しており、公称で10時間を超える長時間のバッテリ駆動を実現することが特徴とされている。

●無線LANを常時利用しても6時間を超すバッテリ駆動を確認

 Eee PC 1005HAの最大の特徴となるのが、公称で最大10.2時間という、非常に長いバッテリ駆動時間だ。そこで今回は、まずはじめにバッテリ駆動時間を検証していこう。

 まずはじめに、省電力機能「Super Hybrid Engine」の設定を最大パフォーマンスとなる「Super Performance Mode」に設定するとともに、液晶輝度を最大に設定し、無線LANを動作させた状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)をWindows Media Player 11を利用して連続再生させてみた。

 この条件での結果は、約5時間01分であった。これは、同じ条件でテストを行なった、ほぼ同スペックの兄弟機「Eee PC 1008HA」(結果:2時間37分)に対して2倍近い駆動時間であるとともに、Eee PC 1005HAよりも低消費電力なCPU(Atom Z520)およびチップセット(US15W)を採用する「Eee PC 1101HA」(結果:5時間18分)の結果に匹敵する数字であり、非常に優れたバッテリ駆動時間を実現していることが確認できる。

 続いて、「Super Hybrid Engine」を「Power Saving Mode」にセットするとともに、液晶輝度を約40%の明るさに抑えた状態で、海人氏製作のバッテリベンチマークソフト「BBench V1.01」を利用し、Web巡回とキー入力をONにして測定してみたところ、約6時間28分という結果だった。

 省電力機能を活用するとともに、液晶輝度を下げた状態としては、フルパワー時に対して思ったほど駆動時間が延びていないという印象ではあるが、無線LANも常に動作させた状態であることを考えると、この結果も悪いものではない。もちろん、液晶輝度をさらに下げるとともに、無線LANやBluetoothなどの無線機能もOFFに設定すれば、より長時間の駆動が可能になり、8時間程度は余裕でクリアできるものと思われる。

 常に持ち歩くとともに、電源が確保できない場所で利用することの多い人にとって、このような長時間のバッテリ駆動を実現しているという点は、非常に心強いとともに大きな魅力となるはずだ。

●本体がやや厚くなり、重量も増した

 Eee PC 1005HAの本体デザインは、Eee PC 1008HAより採用されている、貝殻をモチーフとした「Seashell」を採用。本体底面こそ素材のプラスチック感が強いものの、曲面を多用するとともに、本体側面に近付くほど厚さが薄くなる曲面を多用したデザイン、天板の光沢感が強い塗装など、ネットブックの安っぽさを感じさせることはない。

 ただ、Eee PC 1008HAでは、本体の高さが18~25.4mmと、非常に薄型になっている点が好評だったものの、Eee PC 1005HAでは25.9~36.5mmと、8~11mmほど厚くなってしまった。加えて、Eee PC 1008HAでは全てカバーで覆われていた側面ポート類が、Eee PC 1005HAでは、全てむき出しとなっている。そのため、せっかくSeashellデザインを採用しているものの、箱から取り出した時には、以前のEee PCシリーズに近い印象を受けた。さらに、本体重量も、実測値で1,280gと、Eee PC 1008HAより230gも増えている。

 もちろん、本体が厚くなり、重量が増しているのには理由がある。それは、10.2時間という長時間のバッテリ駆動を実現するために、標準で大容量5,800mAhの6セルリチウムイオンバッテリを採用しているからだ。

 Eee PC 1008HAでは、薄さを実現するために、軽量なリチウムポリマーバッテリを内蔵していたが、Eee PC 1005HAでは、本体後方にリチウムイオンバッテリを取り付ける一般的な構造を採用。6セルのリチウムイオンバッテリは大型なので、そのまま取り付けると本体後方などに飛びだし、Seashellデザインが崩れるため、大容量バッテリが本体から飛びださないよう、高さを増したようだ。

 少々残念ではあるが、そのおかげでバッテリが本体から飛び出すこともなく、Seashellデザインのコンセプトが失われていない点は好印象。加えて、冒頭で紹介したように、Eee PC 1008HAの倍近いバッテリ駆動時間を実現しており、本体の重量と厚さが増した点も納得できる。

本体天板。光沢処理が施されており、他のSeashellシリーズ同様、安っぽさは一切感じられないフットプリントは、幅262mm×奥行き178mm。Eee PC 1008HAと全く同じサイズだ本体正面。Seashellシリーズらしく、貝殻を閉じたようなデザインとなっている
左側面。本体の高さは25.9~36.5mmと、かなり厚くなっている本体背面。中央に6セルのリチウムイオンバッテリが搭載される右側面。Eee PC 1008HAではカバーで隠されていたポート類は、全てむき出しになっている
本体底面、この面だけはプラスチック感が強く、ネットブックっぽい雰囲気だ本体重量は、実測値で1,280g。Eee PC 1008HAより230gも重くなった本体の厚さと重量が増したのは、6セルのリチウムイオンバッテリを搭載しているため。容量は5,800mAhだ

●基本スペックは、Eee PC 1008HAとほぼ同じ

 Eee PC 1005HAの基本スペックは、Eee PC 1008HAとほぼ同じとなっている。CPUは、動作クロックが1.66GHzのAtom N280、チップセットはIntel 945GSE Expressを採用。メインメモリは標準で1GB(最大1GB)搭載し、HDD容量は160GB。IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 2.0+EDRなどの無線機能も、もちろん標準搭載となっている。

 液晶パネルは、1,024×600ドット表示対応の、10.1型ワイド液晶と、こちらもEee PC 1008HAと全く同じ。表面が光沢処理となっており、鮮やかな発色を実現する反面、外光の映り込みが激しい点など、表示品質に関してもほぼ同等だ。

 キーボードやタッチパッドも、Eee PC 1008HAに搭載されているものと同等。キーボードのキーピッチは約17.5mmで、キー表面が水平に近い形状を採用。カーソルキーの上下が1段分のスペースに押し込まれている点がやや変則的だが、他には無理な配列もなく、扱いやすさは申し分ない。また、タッチパッドはパッド面がパームレストと一体となっているが、ディンプル加工が施されて場所は把握しやすい。ただ、クリックボタンが左右つながっている点は、少々扱いづらく感じる。

1,024×600ドット表示対応の10.1型ワイド液晶を搭載。表示品質はEee PC 1008HAのものとほぼ同等。表面は光沢処理が施され、やや映り込みが気になる液晶中央上部には、130万画素Webカメラを搭載左側面には、電源コネクタ、アナログRGB出力、USB 2.0×1の各端子を用意
右側面には、メモリカードリーダ、ヘッドフォン・マイク端子、USB 2.0×2、100BASE-TX対応有線LANの各端子を用意メインメモリは、本体底面のSO-DIMMスロットに標準で1GB搭載。未保証ながら、2GBモジュールも問題なく認識したキーボードは、Eee PC 1008HAと同じ、キー表面がフラットなタイプのものを搭載。カーソルキー部分がやや変則的だが、それ以外はほぼ標準的な配列で扱いやすい
キーピッチは約17.5mm。タッチタイプも問題なく可能だタッチパッドは、パッド面がパームレストと一体になっている。ただ、左右のクリックボタンつながっており、やや扱いづらい付属のACアダプタは非常に小型で、本体と同時に持ち歩いても苦にならない
ACアダプタは、ACケーブル込みでも195gと非常に軽量だEee PCシリーズおなじみのケースも付属しているUSB接続の光学式小型スクロールマウスが付属する

●バッテリ駆動時間優先なら1005HAがおすすめ

 では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類を利用した。また、比較用として、Eee PC 1008HAおよびEee PC 1101HAの結果も加えてある。

 結果を見ると、ほぼ同一スペックのEee PC 1008HAと比較して、ほぼ同等の結果が得られていることがわかる。本体の厚さと重量、バッテリ駆動時間を除いた使用感は、Eee PC 1008HAとの違いは全くないと考えていい。また、Eee PC 1101HAとの比較では、搭載CPUやチップセットが異なるため、比較的大きな差が見られる。もちろん、Eee PC 1101HAには1,366×768ドット表示対応の液晶を搭載するという大きな特徴があるものの、パフォーマンスだけで考えると、Eee PC 1005HAのほうが有利と言える。

【ベンチマーク結果】

Eee PC 1005HAEee PC 1008HAEee PC 1101HA
CPUAtom N280(1.66GHz動作)Atom N280(1.66GHz動作)Atom Z520(1.33GHz動作)
ビデオチップIntel 945 GSE ExpressIntel 945 GSE ExpressIntel US15W
メモリ1GB1GB1GB
OSWindows XP Home Edition SP3Windows XP Home Edition SP3Windows XP Home Edition SP3
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score164716611104
CPU Score145415561232
Memory Score252525231972
Graphics Score626633270
HDD Score466747744110
HDBENCH Ver3.40beta6
All387844079731255
CPU:Integer985729864578063
CPU:Float686606870253943
MEMORY:Read510255120440112
MEMORY:Write506115155240466
MEMORY:Read&Write903169018071015
VIDEO:Recitangle18172181585768
VIDEO:Text9792101924132
VIDEO:Ellipse485648805400
VIDEO:BitBlt255208116
VIDEO:DirectDraw302916
DRIVE:Read569525953458480
DRIVE:Write536965415133941
DRIVE:RandomRead170182510414691
DRIVE:RandomWrite217642620220221
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
LOW15371543519

 薄型軽量が特徴のEee PC 1008HA、高解像度液晶を搭載するEee PC 1101HAに続いて登場したEee PC 1005HA。公称10.2時間、実際の検証でも6時間を優に超える長時間のバッテリ駆動時間を実現するという大きな特徴はあるものの、本体の厚さや重量が増えたことで、どちらかというとEee PC 901-Xの頃に逆戻りしたという印象を受ける。とはいえ、目的に応じて選択の幅が広がったとことは間違いない。もちろん、本体の厚さ重さやよりも、パフォーマンスと長時間のバッテリ駆動時間を取るなら、Eee PC 1005HAが最適な選択となる。毎日持ち歩くとともに、電源の確保できない場所でも長時間安心して利用できるネットブックを探している人におすすめしたい製品だ。

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(2009年 9月 16日)

[Text by 平澤 寿康]