~ミニタワースペックを詰め込んだスリム型デスクトップ |
「HP Pavilion Desktop」の秋モデルは、最小構成で29,800円の「p6000」シリーズ、コンパクトでありながらパフォーマンスの高い「e9000」シリーズ、そして今回紹介するスリム型デスクトップの「s5000」シリーズがある。
スリム型と聞くと、パフォーマンスよりも省スペースを意識したPCが多いとイメージする人も多いと思うのだが、s5000シリーズはあらゆる用途に納得のいくパフォーマンスを期待するミドルユーザー向けのコンセプトで設計されている。
今回、試用する機会を得たのは、Intel CPUを搭載した「s5150jp」。下記のスペック表を見てもらうとわかるのだが、スリム型でありつつ、内容構成としてはミニタワーPCといったところ。特筆すべきはCPUとGPUだ。CPUはCore 2 Quad Q9650(3.0GHz)で、コストパフォーマンスに優れるクアッドコアだ。GPUは、ロープロファイルのGeForce GT220(1GB)。スリム型はロープロファイルゆえ、あまりグラフィック性能は期待できない機種が多かったのだが、このクラスなら十分だろう。
OS | Windows Vista Ultimate 32bit SP1 |
CPU | Core 2 Quad Q9650(3.0GHz) |
チップセット | Intel G43 Express |
グラフィックス | NVIDIA GeForce GT220(1GB) |
メモリ | DDR3-1066 2GB×2 |
HDD | Seagate ST31500341AS(1.5TB、7,200rpm) |
光学ドライブ | Blu-ray Disc/DVDスーパーマルチドライブ |
ネットワーク | Gigabit Ethernet |
その他 | 無線LANユニット、地デジチューナ |
●リビングに置いても「浮かない」見た目
家電的な認識が広まりつつあるデスクトップPCだが、いざリビングに置いてみると浮いてしまうものが多い。だが、p5000シリーズは他のシリーズと同様に、ピアノブラックとコズミックシルバーがベースカラーで、高級感のある仕上がりとなっているため、液晶TV横にも合う。
フロントから見ていこう。上から光学ドライブ、6-in-1メディアスロット、USB 2.0×2、マイク・ヘッドフォン端子、Pocket Media Driveと並んでいる。写真を見るとわかる通り、幅が105mmと短い。あちこちに設置してみたのだが、場所を選ばない。
フロント。光学ドライブ、6-in-1メディアスロット、USB×2、マイク・ヘッドフォン端子、Pocket Media Driveが並ぶ | 電源ボタンは天板にある | サイドから見たところ。吸気排気口が3つ用意されている |
背面には、USB 2.0×4、光出力などが並んでいる。妙に気になる存在は、無線LANユニットだ。PCI Express接続かと思っていたのだが、本体から出っ張っている。といっても利用には何の差し支えもない。GeForce GT220はHDMI出力を搭載しており、液晶TVにも簡単に接続できる。
背面パネル。USB 2.0×4、Gigabit Ethernetなどお約束の構成。上部にある無線LANユニットが少し目立つ | 拡張スロットはロープロファイル。GeForce GT220にはHDMI端子が搭載されている | グラフィックボードを選択した場合は、写真のようにオンボードVGA出力にはフタがされる |
s5000シリーズにはHP Media SmartとWindows Media Centerでの操作に最適化されたリモコンが付属しており、背面にあるIR端子に赤外線受光部を接続して操作する。キーボードとマウスもワイヤレスであるため、使わないときは収納できる。少し贅沢をいえば、リモコンにトラックボール機能をつけて欲しかった。そうすれば大型モニタで映像や写真だけでなく、インターネットまでも楽しめる。ここは次のモデルに期待したいところだ。
●新シャーシ「ID09」と中身をチェック
本製品は軽量化された新シャーシ「ID09(アイディー・オー・ナイン)」を採用している。サイドパネルを開けると、まず飛び込んでくるのは、3つのファン。エアフローの作りにくいスリム型で、ミニタワーと比べ遜色のないスペックを両立する以上、仕方ないといったところだが、高速回転するわけではなく、負荷チェック中の隣で昼寝をするといったことも可能だった。
CPUクーラーと下部にある電源用ファンは吸気で、フロント部にあるファンが排気となっている。CPUと光学ドライブの直上には排気口があり、熱を逃がすシステムは優秀。ここで気になるのは、フロント部に排気ファンがあるところだろう。普通は背面よりに設置されるべき存在なので、これで大丈夫なのかと思い、動作中に確認してみたところ、主にグラフィックボードから下の部分の熱を排出していた。e9000シリーズでもケース内のエアフローは上下2分割だったため、この辺りのデザインは統一されているのだろう。
s5150jpのマザーボードは、Pegatron製IPIEL-LA3。チップセットはIntel G43 Expressでありながら、DDR3の4枚差しが可能というもの。拡張スロットは、PCI Express x16×1、PCI Express x1×3となっているが、PCI Express x1の内2つは、電源に干渉して使用不可能となっている。
サイドパネルを開けたところ | マザーボード上にスロットはあるが、電源に隠れて使えない | マザーボードはPegatron製IPIEL-LA3 |
サイドパネル開閉直後は見えないが、排気ファンと光学ドライブを外すことでメモリやHDDにアクセスできる。スリム型の場合、いじるとしてもメモリ増設くらいなのでありがたい。
HDDも光学ドライブが固定されているフレームに固定されているが、ベイは1基分のみ。一応、SSDを忍び込ませられそうなスペースがあったが、放熱も考えると適切ではない。ここは注文時点で最大容量となる1.5TBを選んでおきたいところだ。
フロントよりにあるファンを外す。ネジは特殊ネジだが大きめのマイナスドライバーで取り外し可能 | 光学ドライブの固定は、金属製のツメを外すだけで解除される | 光学ドライブを外すとメモリスロットに楽にアクセス可能。64bit OSを選んでいる場合は、最大8GBまで搭載可能となる |
HDDはSeagateの「ST31500341AS」(1.5TB、7200rpm) | Blu-ray Disc/DVD スーパーマルチドライブは、Hitachi-LG Date Storage製「LGE-DMBH20L」 |
それではベンチマークを見てみよう。使用したソフトは次の通り。「PCMark Vantage 1.0.0.0」、「PCMark05(Build 1.2.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」。GeForce GT220を搭載しているため、ゲーミングとして「モンスターハンターベンチマーク」、「ストリートファイターIVベンチマーク」「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」「The Last Remnant Benchmark」もチェックした。なおゲーミングベンチマークについては、それぞれ初期設定でのベンチマークとなっている。
PCMark Vantage 1.0.0.0F | |
PCMark Score | 4800 |
Memory Score | 3924 |
TV and Movie Score | 4317 |
Gaming Score | 4960 |
Music Score | 4805 |
Communications Score | 4974 |
Productivity Score | 4387 |
HDD Score | 4131 |
PCMark05 Build 1.2.0 | |
PCMarks | 9063 |
CPU Score | 9523 |
Memory Score | 6293 |
Graphics Score | 8386 |
HDD Score | 6839 |
3DMark06 Build 1.1.0 | |
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 6185 |
SM2.0 Score | 2395 |
HDR/SM3.0 Score | 2207 |
CPU Score | 4309 |
モンスターハンターフロンティアオンラインベンチマーク | |
1,280×720ドット | 3932 |
ストリートファイターⅣベンチマーク | |
SCORE、1,280×720ドット、ウィンドウモード | 9916 |
AVERAGE FPS | 59.24 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |
HIGH | 8535 |
LOW | 10980 |
The Last Remnant Benchmark | |
AVERAGE FPS | 41.23 |
最大 | 69.33 |
最小 | 15.96 |
結果は、スリム型の弱点であるパフォーマンス面を見事にアップさせたという印象が強い。とくにゲームの場合、スリム型ではぎりぎり動くというモデルが多いなか、GeForce GT220を用意することで、まともな設定でプレイできる。もちろん、CPUがCore 2 Quad Q9650(3.0GHz)であるところも大きく、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」ではLOWにて10,980というスコアをたたき出しているし、「Fanstasy Earth ZERO」をプレイしてみても、プレーヤー多数の戦線でも極端なフレームレートの落ち込みはなかった。
地デジチューナ搭載タイプを選ぶと、BTOでのデフォルトはGeForce G210となっているし、Blu-ray Discドライブを選択可能ということで、Blu-rayの動画再生も確認した。GPU側の再生支援があるため、フルフレームで再生できた。CPUへの負荷も10%以下で極端にファンが回転してうるさいこともなく、リビングで問題なく利用できる。
延々と負荷をかけ続ける「PCMark Vantage 1.0.0.0」稼働中の騒音は、アイドリング時とさほど違いはなく、少しだけファンの回転数が上がったと感じたくらい。ただ、電源回りはかなり熱をもっていた。省スペースだからといって、あまり窮屈なところに押し込まないほうがよさそうである。なお消費電力は、フルロード時で130~140W、アイドリングは80~85Wだった。
●BTOが悩ましいスペック重視のカスタマイズでのベンチマークからすると、BTOの選択はかなり悩ましくなる。すでにメインPCがあって、リビングで地デジチューナ兼レコーダー、Blu-ray再生、ネットワーク上から動画を引っ張ってきて再生という用途なら、CPUをCore 2 Duo E7400にしておき、その分、グラフィック性能をアップさせるといった選択が良いだろう。さらにゲームも大型液晶TVでプレイしたいというなら、今回試用したスペックにすれば、よほど重いタイトルでなければ、動かないシーンに直面はしないハズ。少なくともオンラインゲームは問題はないと感じている。
ここでs5150jp、s5130jpの最小構成を見てみよう。
s5130 | s5150 | |
OS | Windows Vista Home Premium SP1 | Windows Vista Home Premium SP1 |
CPU | Athlon X2 7550(2.5GHz) | Core 2 Duo E7400(2.8GHz) |
チップセット | NVIDIA nForce430 | Intel G43 Express |
グラフィックス | GeForce 6150SE(オンボード) | GMA X4500HD(オンボード) |
メモリ | DDR2-800 1GB×2 | DDR3-1066 1GB×2 |
HDD | 160GB | 320GB |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
ネットワーク | Ethernet | Gigabit Ethernet |
価格 | 49,980円 | 69,930円 |
ここで注意したいのがメモリだ。s5150jpはDDR3なのだが、s5130jpはDDR2となっている。DDR2の方が価格は安く、浮いた金額の分、CPUをPhenom II X4 810(2.6GHz)にするという選択肢もできるし、ダブル地デジモデルを選ぶのもありだ。パフォーマンスありきで選んでもいいが、用途を考え、賢くスペックをカスタマイズしてほしい。
●あまりスペースを取りたくないならコレ。サブ機にも◎ このように、本製品は横幅105mmとコンパクトながら、中身はミニタワークラス。省スペースとパフォーマンスが両立できているモデルである。各種LEDも自己主張が少なく、机の上にあっても気にならないし、ワイヤレスを活かしてTVの裏に放置しておくこともできてしまう。場所をあまり取らなくて、消費電力が少なく、さらにパフォーマンスもそこそこという、わがままなプランが脳裏に浮かんでいるのなら、s5000シリーズをチェックしてもらいたい。
(2009年 7月 15日)
[Text by 林 佑樹]