~ゲームにCG、AVまでなんでもこざれのハイエンド機 |
HP「Pavilion Desktop PC e9190jp」」 |
HP Pavilion Desktopの秋モデルがリリースされた。優れたユーザビリティ、パーソナル・ビジネス問わず応える性能、東京生産、2千万通りのカスタマイズといった魅力があり、下手に自作するよりも安くPCを入手できるタイプが多く、愛用しているユーザーも多いことだろう。また秋モデルはただのマイナーアップではなく、シャーシ設計から刷新され、外観のデザインも一新された。
今回は、ハイエンド機となるe9000シリーズのなかで、もっともスペックの高い設計であるe9190jpに触れる機会を得たので、そのレポートをお届けする。
試用したe9190jpのスペックは以下の通り。現状、ハイエンドといっていい構成で、当然のことながら値段も高く約27万円である。さらにセキュリティソフトウェアやBD書き込み可能な光学ドライブを選んでいくと、30万円の大台に乗ってしまう。なお今回試用したマシンの構成は、HP Directplusで選択することができない。光学ドライブ×2と地デジチューナの同時選択ができないためだ。CPUやVGAなどは選択可能である。
今回試用したPavilion Desktop PC e9190jpのスペック | |
OS | Windows Vista Ultimate 64bit SP1 |
CPU | Intel Core i7-975Extreme Edition(3.33GHz) |
チップセット | Intel X58 Express |
グラフィックス | NVIDIA GeForce GTS 250(1GB) |
メモリ | DDR3 1,066MHz 2GB×6 |
HDD | Seagate ST31500341AS(1.5TB、7200rpm)×2 |
光学ドライブ | ブルーレイ再生/DVDスーパーマルチドライブ、ブルーレイ再生ドライブ |
ネットワーク | Gigabit Ethernet |
その他 | 無線LANボード、地デジチューナ |
●最小構成でもハイスエンド志向は変わらない
まずはラインナップから見ていこう。e9000シリーズには、Intel Core i7を搭載したe9190、Intel Core 2 Quadのe9180、AMD Phenom 2 X4のe9160が軸として用意されている。いずれもミニタワーPCで、HP Directplusでの最小構成価格は、e9190は89,880円、e9180eは79,800円、e9160は69,930円。ほとんどCPUの価格差で最小構成価格が変動しているといった感じで、最小構成でもNVIDIA GT220を搭載しており、手持ちパーツの流用を考えるなら最小構成のままでもいいのではないかという印象だ。
またBTOでのカスタマイズ構成は、資料によると26,873,856通り以上となっている。HPサイト上で構成を決めることができるが、自由度が高く、用途にあった設定を選んでいけるため、そろそろ自作する必要はないのではと思った。
e9160 | e9180 | e9190 | |
OS | Windows Vista Home Premium SP1 | Windows Vista Home Premium SP1 | Windows Vista Home Premium SP1 |
CPU | AMD PhenomⅡX4 810(2.6GHz) | Intel Core 2 Quad Q8300(2.5GHz) | Intel Core i7-920(2.66GHz) |
チップセット | NVIDIA GeForce 9100 | Intel G43 Express | Intel X58 Express |
グラフィックス | NVIDIA GeForce GT 220(1GB) | NVIDIA GeForce GT 220(1GB) | NVIDIA GeForce GT 220(1GB) |
メモリ | DDR3 1066MHz 2GB | DDR3 1066MHz 2GB | DDR3 1066MHz 3GB |
HDD | 320GB | 320GB | 320GB |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ | DVDスーパーマルチドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
ネットワーク | 10/100MB Ethernet | Gigabit Ethernet | Gigabit Ethernet |
価格 | 69,930円 | 79,800円 | 89,880円 |
●外観をチェック
これまでのモデルと見比べてみると、スリムになったという印象が強い。ピアノブラックにアクセントとしてコズミックシルバーを取り入れ、高級感を演出しつつ、ごつく見えないように適度に丸みを帯びたデザインになっている。
フロント部は随所に設計の見直しが行なわれ、上部に15-in-1カードリーダー、USB×2を備え、さらにHDDアクセス、無線LAN、電源ランプも集約されている。またランプは自己主張が強くなく、電源ランプや本体中央にあるHPロゴは淡いブルーでの点灯するため、気にならない。
フロント上部にはUSB×2、15-in-1カードリーダーとHDD/無線LAN/電源ランプがある | 電源スイッチは天板部分にある |
15-in-1カードリーダーから下を見ると、5インチベイが2つ並び、Pocket Media Driveスロット、Personal Media Driveスロット、HP Easy Backupボタン、そしてConnector Portsパネルを開くと、USB×1、マイク/ヘッドフォン端子がある。利用頻度を前提にした配置なのだろうか、机の上に置いても、床に置いてもアクセスが楽だ。
試用したマシンには、ブルーレイ再生/DVDスーパーマルチドライブ、ブルーレイ再生ドライブが搭載されていた | Pocket Media Driveには化粧パネルあり |
本体左端のパネルを開くと、USB×1、マイク・ヘッドフォン端子が見える | 本体右端にはPersonal Media Drive。接続はUSBだ |
サイドから本体を見ると、背面に向かって傾いていることがわかる。本体の天板になにかしら物を置くユーザーは多いと思う。筆者もそうで、とりあえずペンやら小物を置くのはダメなのかと天板を見てみたところ、ちゃんと水平になるよう傾斜が設けられていた。この形状には理由があり、フロント部の足を見てみると吸気用スリットがあるのだ。ハイエンド機でありながら、e9000シリーズは排気ファン×1、VGA付属ファン、電源内蔵ファンだけとなっていて、静音性をキープするためのエアフロー設計というわけだ。
本体をサイドから見たところ。背面部に進むにつれ傾斜が生じている | フロント側の足は高くして、吸気スペースを設けている | 天板は本体の傾斜とは真逆で平らになっている |
背面パネル。スタンダードなパターン | IR入出力端子は主にリモコン操作用 |
●マザーボードは天地逆さに取り付け
次に気になるのはシャーシだ。新たにデザインされたID09(アイディー・オー・ナイン)シャーシは、自作に慣れているユーザーなら違和感を感じると思う。サイドパネルの開閉は正面から見て右側から行なうのだ。理由は単純で、マザーボードが天地逆さに設置されているからだ。
エアフローを見てみると、フロント上部のスリットから入った空気は、電源とVGAファンから排出。底面スリットから吸気された空気は、HDDとCPUクーラーに辺り、排気ファンへ向かうという2分割設計。
サイドパネルを開けたところ。CPUクーラー周辺以外はぎっしり詰まっている | VGAはNVIDIA GTS 250。マザーボードと結束バンドで固定されていた | CPUクーラーはAVC製。型番が検索ヒットしなかったのだが、ヒートパイプ6本構成でかなり冷えるようだ |
さらに内部を見てみると、ミニタワーということでパーツがギッシリ詰まっている。マザーボードはIntel X58 Expressチップセット搭載Pegatron製IPMTB-TKで、PCI Express x16×2、PCI Express x4×1、PCI Express x1×1となっている。GTS 250を選んだ場合は、当然のことながら2スロットを消費してしまうため、ハイエンドらしいスペックを考えると空きスロットは2つ。試用したケースだと、地デジチューナ、無線LANボードが搭載されているため、増設の余地はなかった。ゲーミングを考えるとサウンドカードが欲しいところなので、この辺りのカスタマイズで頭を悩ますことになりそうだ。
パッとみてHDDが見あたらないのだが、フロント下部の奥に設置されており、2基の3.5インチベイはPersonal Media Driveスロットと一体化された金具に格納されている。
【お詫びと訂正】初出時にHDDのベイがはずれないと記述されていましたが誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。
メモリは、奥のほうが窮屈だがサイドパネルを開けた直後の段階でも取り付け可能 | HDD周辺 |
無線LANユニット | ピクセラ製地上デジタルダブルTVチューナーボードを搭載 |
●当然のことながらベンチスコアは優秀
ベンチスコアは以下に掲載しているように、ハイエンドマシンらしい結果となった。使用したベンチマークソフトは「PCMark Vantage 1.0.0.0」、「PCMark05(Build 1.2.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」。さらにゲーム性能を確認するために「モンスターハンターベンチマーク」「ストリートファイターIVベンチマーク」「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」「The Last Remnant Benchmark」も利用した。なおゲーミングベンチマークについては、それぞれ初期設定でのベンチマークとなっている。
PCMark Vantage 1.0.0.0F | |
PCMark Score | 7,905 |
Memory Score | 6,134 |
TV and Movie Score | 5,651 |
Gaming Score | 9,807 |
Music Score | 5,660 |
Communications Score | 6,333 |
Productivity Score | 6,793 |
HDD Score | 4,874 |
PCMark05 Build 1.2.0 | |
PCMarks | N/A |
CPU Score | 11,297 |
Memory Score | 10,359 |
Graphics Score | 18,628 |
HDD Score | N/A |
3DMark06 Build 1.1.0 | |
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 15,664 |
SM2.0 Score | 6,400 |
HDR/SM3.0 Score | 6,238 |
CPU Score | 5,979 |
モンスターハンターフロンティアオンラインベンチマーク | |
1,280×720ドット | 13,212 |
ストリートファイターⅣベンチマーク | |
SCORE、1,280×720ドット、ウィンドウモード | 9,934 |
AVERAGE FPS | 59.83 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |
HIGH | 10,111 |
LOW | 12,117 |
The Last Remnant Benchmark | |
AVERAGE FPS | 104.84 |
最大 | 121.23 |
最小 | 41.25 |
以上のようにハイスコアであり、PC操作で困ることはないだろう。ゲーミング性能について見ると、本機はFINAL FANTASY XI 認定PC群のなかで、もっともベンチスコアが高いと資料にあったが、その通りでLOWでのスコアは12,000。HIGHでも10,000越えとなっている。なお、「The Last Remnant Benchmark」の最大/最小フレームレートは目測であるため、小数点以下で誤差があるので注意していただきたい。
ベンチスコアだけではわかりにくいのだが、操作中に感じたのはメモリ12GBの偉大さだ。筆者は個人のマシンがWindows Vista 64bit、メモリ8GBなのだが、それよりも快適に感じた。とくにPhotoshop CS4 64bitでの作業は段違いだった。200MBのTIFF画像のレタッチを試してみたが、メモリ8GBの場合だと3~4枚のファイルを開いて、補正をかけて、フィルタで部分補正、さらに複数のレイヤーで作業して、さらにゴミなどをタブレットで塗るといったことをしていると、後半はやはりもたついてしまう。しかし、今回試用したマシンだとその気配もなく、快適だった。ゲーミングは当然として、イラストや漫画を制作する人にもオススメである。
●メインマシン、リビングマシンとしての優秀さどこに設置するにしても、静音性は重要なファクターとなっている。夏の入り口ということで、前述のベンチ中は室内を30度にしてベンチマークを行なっていたのだが、別段、排気ファンが全力運転になるということはなく、GeForce GTS 250のファンが時折うるさい感じだった。
また消費電力も重要である。フルロード・ベンチマーク時は280~320Wの間で、アイドリング時は195~210Wという結果に。ブラウジングする程度ならば、アイドリングとさほど変わらない消費電力だった。
AV用途ではGPUによる動画再生支援機能があるため、BDの再生もなんら問題なかった。少しGPUが働いているくらいで、静音性もよくゆったりと見ることができた。なおチェックにはコマ数の多いアニメ、アクション物の映画などを使用。いずれの場合ももたつきなどは発生しなかった。
またe9000シリーズにはHP media smart、Windows Media Centerで使用可能なリモコンが付属している。マウスとキーボードもワイヤレスなので、本体は遠くに置いておき、映像を楽しむとき、スリープモードにするときはリモコンでという使い方も可能だ。
HP media smartとWindows Media Centerに対応したリモコンが付属。ごろ寝操作に最適 | マウスとキーボードもワイヤレス。マウスは待機からの復帰がやや遅め。キーボードはクセがなく打鍵しやすい |
1.5TB×2という大容量HDD搭載なので、バックアップが面倒だと思ったのが、本体正面中央にあるHP Easy Backupボタンで解決策を提案してくれている。このボタンと押すと同名のアプリケーションが立ち上がり、自動もしくは手動でバックアップが行なえる。指定先はHDD、Pocket Media Drive、Personal Media Drive、光学ドライブ。ネットワーク経由でも行なえるのかと思ったが、筆者宅の環境では認識してくれなかった。
なお、Pocket Media Drive、Personal Media DriveはUSB接続。1.5TBといった大容量HDDを相手にするには速度に不満が残る。便利なシステムであることに間違いはないのだが、デザイン刷新に合わせてeSATAにして欲しかったところだ。
フロント部のHP Easy Backupボタンを押して使う | HP製のバックアップソフトウェアが起動する |
●なんでもできるPCを望むなら
CPUにCore i7-975EE(3.33GHz)、GPUはGeForce GTS 250、メモリ12GB、とベーススペックは現状最高峰。作業におけるストレスは限りなく少ないだけでなく、ゲームやAV用途にも応えてくれる。最小構成であってもヘビーな作業もやれてしまう。筆者としてはデザイナーさんなどにPCの相談をされたら「コレ! e9190jp!」というだけでいいなと感じている。Windows 7への無償アップグレード権利も付属しているので、そろそろメインマシンを買い換えたいという人はチェックしてほしい。
(2009年 7月 10日)
[Text by 林 佑樹]