Hothotレビュー

1kgを切る世界最薄12.5型2in1「YOGA 900S」

~360度回転式のヒンジを採用

YOGA 900S

 レノボ・ジャパンから登場した「YOGA 900S」は、レノボ得意の360度回転式ヒンジを採用した12.5型の2in1であり、昨年(2015年)の12月に登場したYOGA 900の後継製品である。前YOGA 900は、CPUに第6世代Core iシリーズを採用しており、重量が1.29kg、厚さが14.9mmと、携帯性がやや犠牲になっていた。今回登場したYOGA 900Sは、CPUがCore mに変更されており、重量999g、厚さ12.8mmと、より軽く、薄くなっていることが特徴だ。

 YOGA 900Sを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

レノボ独自のウォッチバンドヒンジを採用し、スタイリッシュなデザインを実現

 YOGA 900Sは、通称YOGAスタイルとも呼ばれる、360度回転式ヒンジを採用した2in1であり、キーボードを使った文書作成などに適した「ラップトップモード」、液晶を180度以上開いてキーボード面を下にして置く「スタンドモード」、さらに液晶を開いてヒンジ部分を上にしたくさび形で利用する「テントモード」、液晶を360度回転させて使う「タブレットモード」の4つのモードを使い分けられる。

 液晶部分と本体を繋ぐヒンジには、腕時計のバンドのような「ウォッチバンドヒンジ」と呼ばれる独自の機構を採用しており、スムーズで安定した開閉とスタイリッシュさを両立させている。ウォッチバンドヒンジは、2014年11月に登場した「YOGA 3 Pro」で初めて採用されたものだが、YOGA 900/900Sでは、さらにスムーズな開閉ができるように改良されたものが使われている。

 天板には軽くて丈夫なカーボン素材を採用しており、厚さ12.8mm、重量999gという薄くて軽い筐体を実現している。Lenovoによれば、液晶360度回転式の2in1では世界最薄になるとのことだ。

 カラーバリエーションは、シャンパンゴールドとプラチナシルバーの2色が用意されている。前モデルのYOGA 900は、キーボード周りとキーボードがブラックであり、比較的地味なカラーリングであったが、YOGA 900Sでは、キーボードの色が筐体と同じ色になっており、より華やかな印象になっている。今回の試用機のカラーはプラチナシルバーである。

 本体サイズは、308×208×12.8mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクトだ。実際に持ってみても、やはり1kgを切っているとかなり軽く感じる。筐体ーの剛性も高いので、片手で本体の角を持って持ち上げても不安はない。タブレットモードで立ったまま使う場合も、快適であった。

YOGA 900Sの上面。プラチナシルバーはかなり明るい印象だ
天板の右下には「YOGA」ロゴがある
天板の左上には「Lenovo」ロゴがある
YOGA 900Sの底面
腕時計のバンドのようなウォッチバンドヒンジを採用
ウォッチバンドヒンジは360度自由な角度で開く
液晶を180度開いたところ
液晶を180度開いたところを上から見た様子
液晶を360度回転させると、タブレットモードになる
試用機の重量は実測で985gであり、公称の999gよりも軽かった

CPUとしてCore mを搭載、SSDはPCI Express接続

 次に、PCとしての基本性能を見ていこう。YOGA 900Sは、店頭モデルとWeb直販限定モデルの2モデルが用意されており(店頭モデルもWeb直販で購入できる)、前者が下位モデル、後者が上位モデルとなる。

 店頭モデルのスペックは、CPUがCore m5-6Y54(1.1GHz)、メモリが8GB、ストレージが256GB SSD(PCI Express接続)、液晶ディスプレイがフルHD(1,920×1,080ドット)という構成であり、Web直販限定モデルのスペックは、CPUがCore m7-6Y75(1.20GHz)、メモリが8GB、ストレージが512GB SSD(PCI Express接続)、液晶ディスプレイがWQHD(2,560×1,440ドット)となる。

 Core mは、Core iシリーズに比べるとクロックが低く、性能は多少落ちるが、その分消費電力が低く、ファンレス動作や長時間のバッテリ駆動を実現できることが魅力だ。今回は、店頭モデルを試用したが、SSDがPCI Express接続で高速なため、使用感は非常に快適であり、一般的なCore i搭載モバイルノートPCと比べても、ほとんど遜色はなかった。

YOGA 900Sのデバイスマネージャー。SSDはSamsung製である

視野角の広いIPS液晶を搭載

 YOGA 900Sは、液晶ディスプレイとして12.5型IPS液晶を採用している。解像度は前述の通り、店頭モデルが1,920×1,080ドット(フルHD)で、Web直販限定モデルが2,560×1,440ドット(WQHD)である。IPS液晶は視野角が広く、発色も美しい。もちろん、マルチタッチ対応のタッチパネルを備えており、指先でのタッチ操作も可能だ。液晶の上部には720p対応のWebカメラが用意されており、ビデオチャットなどに利用できる。液晶はGorilla Glassでカバーされており、ひっかき傷などにも強い。

液晶は12.5型IPSパネルであり、試用機の解像度は1,920×1,080ドットである
液晶上部には、720pのWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる

キー配列は標準的だが、ストロークはやや浅め

 キーボードは6列配列のアイソレーションタイプであり、キー配列は標準的だが、本体の薄さを重視したためか、キーストロークは1mmとやや浅めだ。また、主要部のキーピッチは約18mmあり十分なのだが、右側の「け」や「む」、「る」などのキーのピッチはやや狭くなっている。しかし、全体的なキーボードの使い勝手は、同じサイズの液晶を搭載した一般的なクラムシェル型ノートPCと比べても見劣りはしない。

 また、キーボードにはバックライトが搭載されており、暗い場所でも快適にタイピングが可能だ。ポインティングデバイスとしては、マルチタッチ対応のタッチパッドが搭載されている。最近主流のパッドとボタンが一体化したタイプだが、パッドのサイズが大きく、細かな操作もしやすい。

キーボードの色は筐体の色と同じになっている。配列は一般的だが、右側の「け」や「む」、「る」などのキーのピッチがやや狭くなっている
ポインティングデバイスとしては、マルチタッチ対応のタッチパッドを搭載。最近主流のパッドとボタンが一体化したタイプだが、パッドのサイズが大きく、操作性は良好だ

インターフェイスとしてUSB 3.0 Type-Cなどを装備

 インターフェイスとしては、USB 3.0 Type-C、USB 3.0、USB 2.0を1ポートずつ備えており、USB 2.0は電源ポートも兼ねている。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11ac/a/b/g/n対応無線LANとBluetooth 4.0をサポートする。ただし、SDカードスロットは備えていない。左側面には、OneKey Rescue Systemボタンが用意されており、システムのリカバリなどを行なえるので便利だ。

 ACアダプタもコンパクトで、ACプラグ部分を折りたためるようになっているので、携帯しやすい。ケーブル込みの重量も実測で196gと軽い。バッテリは4セルで、公称駆動時間は店頭モデルが約14.1時間、Web直販限定モデルが約12.1時間と長い。

 実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、12時間54分という結果になった。公称にはやや及ばないが、無線LANを常時有効にした状態で12時間以上持てば十分満足できるだろう。

左側面には、USB 2.0兼電源ポートとUSB 3.0 Type-C、OneKey Rescue Systemボタンが用意されている
左側面のポート部分のアップ
右側面には、USB 3.0ポートとマイク/ヘッドフォン端子、電源ボタンが用意されている
右側面のポート部分のアップ
ACアダプタはACコンセントに直結するタイプだ
出力側はUSBポートとなっており、ケーブルを取り外しできる
ACプラグは折りたたみ式になっている
左側のコネクタが本体側に差し込むコネクタであり、USBコネクタの一角が伸びたような形になっている
ACアダプタ(ケーブル込み)の重量は実測で196gと軽い

高速SSD搭載により、通常利用で高い性能を実現

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー XIV 蒼天のイシュガルドベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。比較用として、Lenovo「ThinkPad X1 Carbon」、「ThinkPad X1 Yoga」、Microsoft「Surface Book」の値も掲載した。

【表1】検証機
Lenovo YOGA 900SThinkPad X1 CarbonThinkPad X1 YogaSurface Book(キーボード装着時)
CPUCore m5-6Y54(1.1GHz)Core i7-6600U(2.6GHz)Core i7-6500U(2.5GHz)Core i7-6600U(2.6GHz)
GPUIntel HD Grapics 515Intel HD Graphics 520Intel HD Graphics 520GeForce

 結果は下の表に示した通りで、PCMark 8のスコアは、さすがにCore i7を搭載した他機種に比べるとやや低いが、クロックの差を考えるとかなり健闘していると言える。

 統合GPUの性能もCore i7に比べると低いので、GPU性能が大きく影響するドラゴンクエストXやファイナルファンタジーXIVの結果は、Core i7搭載機の半分程度となっているが、Office系アプリケーションやWebブラウザを使う場合は、ほとんど体感速度に差はない。

 CrystalDiskMarkの結果も、PCI Express対応SSDを採用しているだけあり、シーケンシャルリードはかなり速い。ただし、シーケンシャルライトはあまり速くはなかった。

【表2】YOGA 900Sベンチマーク結果
Lenovo YOGA 900SThinkPad X1 CarbonThinkPad X1 YogaSurface Book(キーボード装着時)
PCMark 8
Home conventional2,1652,6352,5902,481
Home accelerated2,8363,1763,1672,908
Creative conventional2,0812,6912,6942,666
Creative accelerated3,2423,8904,0363,753
Work conventional2,6892,9282,7942,719
Work accelerated3,9524,0633,9953,793
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K
1,280×720ドット 最高品質3,5106,7967,04811,424
1,280×720ドット 標準品質4,4916,8448,33912,913
1,280×720ドット 低品質4,6496,8519,64415,010
1,920×1,080ドット 最高品質1,7573,1093,8226,409
1,920×1,080ドット 標準品質2,6824,2564,9507,777
1,920×1,080ドット 低品質2,8005,8355,9799,053
ファイナルファンタジーXIV 蒼天のイシュガルドベンチマーク
1,280×720ドット 最高品質9671,7131,8123,746
1,280×720ドット 最高品質(DirectX 9相当)1,2602,2842,3264,727
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC)1,1541,9751,9764,229
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)1,2242,2882,4165,407
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)1,7923,2803,4497,785
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)1,8253,2733,4627,779
CrystalDiskMark 3.0.3b
シーケンシャルリード1,262MB/sec1,648MB/sec1,848MB/sec954.8MB/sec
シーケンシャルライト305.4MB/sec1,539MB/sec1,535MB/sec598.8MB/sec
512Kランダムリード622.5MB/sec1,224MB/sec1,350MB/sec535.5MB/sec
512Kランダムライト305.2MB/sec1,452MB/sec1,517MB/sec598.5MB/sec
4Kランダムリード39.89MB/sec51.05MB/sec50.39MB/sec42.93MB/sec
4Kランダムライト110.8MB/sec139.8MB.s133.1MB/sec115.8MB/sec
4K QD32ランダムリード248.4MB/sec555.6MB/sec490.6MB/sec612.7MB/sec
4K QD32ランダムライト286.7MB/sec418.7MB/sec400.6MB/sec511.8MB/sec
CrystalDiskMark 5.1.2
シーケンシャルリードQ32T11,569MB/sec2,592MB/sec2,519MB/sec1,632MB/sec
シーケンシャルライトQ32T1309.2MB/sec1,533MB/sec1,542MB/sec602.7MB/sec
4KランダムリードQ32T1241.6MB/sec545.9MB/sec500.3MB/sec605.2MB/sec
4KランダムライトQ32T1301.1MB/sec251.7MB/sec248.1MB/sec516.7MB/sec
シーケンシャルリード1,280MB/sec1,854MB/sec1,598MB/sec931.7MB/sec
シーケンシャルライト308.5MB/sec1,528MB/sec1,546MB/sec602.3MB/sec
4Kランダムリード42.63MB/sec53.99MB/sec52.80MB/sec44.85MB/sec
4Kランダムライト149.5MB/sec164.5MB/sec144.6MB/sec166.0MB/sec

携帯性とキーボードの使い勝手を重視する人にお勧め

 YOGA 900Sは、Lenovoが得意とする360度回転ヒンジを採用した2in1であり、ウォッチバンドヒンジ採用モデルとして3世代目にあたる製品となるため、製品としての完成度は高い。

 デザインもより洗練されており、薄く軽くなったことも評価できる。消費電力の低いCore mを採用しているため、ファンレス設計を実現していることも魅力であり、バッテリ駆動時間も十分に長い。

 本製品のような、360度回転ヒンジタイプの2in1は、キーボード着脱タイプに比べて、キーボードの使い勝手が優れているため、長文を入力する機会が多い人やクラムシェル型ノートPCとして使うことが多い人にお勧めだ。