■平澤寿康の周辺機器レビュー■
初の3TB HDDとして登場した、Western Digitalの3TB HDD「WD30EZRS」。先にドライブ単体での販売が開始されたのに続き、SATAインターフェイスカードが付属するモデル「WD30EZRSDTL」の販売も開始となった。そこで今回は、その付属SATAインターフェイスカードがどういったものなのかチェックするとともに、このSATAインターフェイスカード経由でWD30EZRSを利用した場合のパフォーマンスなどをチェックしてみた。
●HighPoint Rocket 620相当のSATAインターフェイスカードが付属まず、付属するSATAインターフェイスカード(SATA HBA)の仕様を見ていこう。
付属するSATAインターフェイスカードは、カード上に2ポートのSATAポートを持つ、Low Profile対応の小型カードだ。標準でLow Profileのブラケットが取り付けられているが、通常サイズのブラケットも付属しており、交換すれば通常の拡張スロットでも利用可能となっている。接続インターフェイスはPCI Express x1で、PCI Express Gen2対応。また、SATAポートはSATA 3.0(SATA 6Gbps)に対応で、内部接続用ポートが2ポート用意されている。
ちなみに、このSATA HBAは、カード上の印刷などから、SATAコントローラとしてMarvellの「88SE9125」を搭載する、HighPoint Technologies製の「Rocket 620」相当と考えられる。実際に、起動時の画面表示で「HighPoint Rocket 620」と表示されることを確認した。また、Windows 7では、ドライバは自動的に導入される。
ところで、WD30EZRSでこのSATA HBAが付属するモデルを用意している理由は、一部のマザーボードで、WD30EZRSを正常に利用できないことがあるためとWestern Digitalは説明している。一部SATAコントローラやSATAデバイスドライバには、64bit LBA非対応のものが存在しており、そういった環境でWD30EZRSを利用した場合には、WD30EZRSの全容量が利用できない。そこで、64bit LBAに対応しているSATA HBAを付属することで、そういった環境のPCでもWD30EZRSを利用できるよう配慮しているわけだ。
起動時の画面表示からも、このSATA HBAがHighPoint Technologies製Rocket 620相当のSATAインターフェイスカードとわかる | Windows 7で利用する場合、デバイスドライバは自動的に導入される |
●SATA HBAを利用しても制限は変わらず
ただし、このSATA HBAにWD30EZRSを接続して利用したとしても、利用時の制限が大きく緩和されるわけではない。WD30EZRSを2台目以降の増設ドライブとして利用する場合には、OSが「GUIDパーティションテーブル」(GPT)をサポートしている必要がある。また、OS起動ドライブとして利用する場合には、GPTをサポートするOSを利用するとともに、そのOSがGPTからのシステムブートをサポートしている必要がある。その上で、マザーボードもUEFI起動をサポートしていなければならない。
増設ドライブとして利用する場合のサポートOSは、Windows Vista 32bit/64bitやWindows 7 32bit/64bit、Mac OS 10.5以降、Linux カーネル 2.6以降など、起動ドライブとして利用する場合のサポートOSは、Windows Vista 64bit、Windows 7 64bit、Mac OS X 10.5以降、Linux カーネル 2.6以降などとなっており、単体利用時と全く同じ。32bit、64bitを問わず、Windows XPでの利用が非サポートになっている点も同様だ。
●SATA HBA利用時には増設ドライブとしての利用が基本実際に、このSATA HBAを利用してWD30EZRSを利用してみた。まず、増設ドライブとしての利用した場合、Windows 7 Professional 32bitおよびWindows 7 Professional 64bitの双方で、3TBの全容量が認識でき、利用可能であった。基本的に、対応OS上での利用であれば、3TB全領域の認識はまず問題がないと考えていい。
ただ、起動ドライブとして利用しようとした場合、今回のテストでは問題が発生した。UEFIブートに対応するインテル製マザーボード「DP55KG」を利用し、Windows 7 Professional 64bitをインストールしようとしたのだが、UEFIブートを「Enabled」に設定すると、電源を投入しWindows 7 Professional 64bitのインストールDVDからのブートが開始されるまでに5分以上待たされるとともに、インストール中の再起動後にHDDからブートしないというトラブルが発生したのだ。これは、今回検証に利用した環境固有の問題かもしれないが、他の環境でも、付属SATA HBA利用時のUEFIブートで何らかの問題が発生する可能性は否定できない。
とはいえ、UEFIブートに対応するマザーボードであれば、基本的にオンボードのSATAポートが64bit LBAに対応していないことはなく、わざわざSATA HBAを利用する必要がない。また、このSATA HBAを利用しなければ3TB全領域を認識できないマザーボードを利用している場合では、そういったマザーボードがUEFIブートをサポートしていることはなく、SATA HBAを利用したとしても3TB全領域を認識させた状態で起動ドライブとして利用できない。そのため、このSATA HBA経由でWD30EZRSを利用する場合には、増設ドライブとしての利用が基本になると考えてよさそうだ。
ちなみに、オンボードのSATAポートで3TB全容量を問題なく認識できるマザーボードでも、このSATA HBAの利用に全くメリットがないわけではなさそうだ。それは、今回利用したマザーボードであるDP55KGに用意されているオンボードのSATAポートがSATA 3Gbps対応だったこともあってか、SATA HBA接続時のほうがアクセス速度が高速だったからだ。CrystalDiskMark 3.0を利用してアクセス速度をチェックしてみたところ、SATA HBA接続時にはシーケンシャルリードが132MB/sec、シーケンシャルライトが130MB/secほどと、オンボードSATA接続時よりも8~10MB/secほど高速だった。つまり、オンボードSATAポートがSATA 3GB/s対応のマザーボードを利用している場合なら、SATA HBA経由でWD30EZRSを利用することでパフォーマンスを最大限引き出せる可能性があり、SATA HBA付属モデルを購入する価値があるというわけだ。
ただし、SATA HBAをPCI Express Gen1対応のPCI Expressスロットに取り付けた場合には、大きく速度が低下してしまう。そのため、SATA HBAを利用する場合には、PCI Express Gen2対応のPCI Expressスロットに取り付けて利用するよう注意したい。
・テストPCの環境
CPU:Core i5-750
マザーボード:Intel DP55KG
メモリ:PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
グラフィックカード:Radeon HD 5770(MSI R5770 Hawk)
HDD:Western Digital WD3200AAKS(OS導入用)
OS:Windows 7 Ultimate 32bit
・テスト結果
WD30EZRSDTLの実売価格は、販売ショップによって若干異なっているが、22,000円から24,000円前後と、ドライブ単体のWD30EZRSとほぼ同等となっている。SATA HBAが付属していることを考えると、単体よりもお買い得と言っていいだろう。
来年以降は、UEFIブートに対応するマザーボードが数多く登場することになるため、利用時の制限もある程度緩和されるだろう。とはいえ、現時点では利用時の制限があり、2TB HDDに対してかなり高価であることも含め、手を出しづらいのは事実だ。特に、利用時のトラブルに若干でも不安を感じるなら、まだしばらくは様子見でも良いと思う。
(2010年 12月 9日)