平澤寿康の周辺機器レビュー

Western Digital「WD30EZRS」
~世界初、容量3TBに到達した3.5インチHDD



Western Digital「WD30EZRS」

発売中
実売価格:25,000円前後



 Western Digitalは、容量3TBの3.5インチHDD「WD30EZRS」を発売した。単体の3.5インチHDDとして初めて容量が3TBに到達したことで注目を集めているが、MBR(マスターブートレコード)の容量の壁を越える容量を持つため、利用時にはいくつかの制限がある。今回、いち早くサンプル品を試用する機会を得たので、利用時の注意点などを中心に見ていこう。

●750GBプラッタを4枚搭載

 まず、製品の仕様を確認しておこう。

 「WD30EZRS」は、Western Digitalの3.5インチHDDの中で、省電力性や静音性に優れる「Caviar Green」シリーズに属するものだ。3TBの容量は、750GBのプラッタを4枚搭載することで実現している。ディスク回転速度は、従来のCaviar Greenシリーズ同様公表されてはいないものの、5,400rpm前後となる。キャッシュ容量は64MB。接続インターフェイスは、従来モデル同様、SATA II(3Gbps)となる。

 Caviar Greenシリーズの2TBモデルとなる「WD20EARS」と並べてみると、ケース表面の形状に若干の違いが見られる。とはいえ、ハーフハイトの3.5インチHDDであることに変わりはなく、基本的な形状は全く同じだ。

 ちなみに、今回はWD30EZRSのドライブのみを単体で試用したが、製品では3Gbps SATA対応の拡張カードが添付される製品も用意されるとプレスリリースで案内されている(今回は、そのSATA拡張カードは試用できなかった)。Western Digitalでは、一部既存のSATAコントローラで、ドライバの影響で3TB認識できない場合があるために、SATA拡張カードが添付する製品を用意したとしている。

750GBプラッタを4枚搭載することで、容量3TBを実現。ディスク回転数は未発表だが5,400rpmだ同じCaviar Greenシリーズの2TBモデル「WD20EARS」との比較。わずかな差はあるが、当然見た目はほとんど同じだ接続インターフェイスは従来モデル同様SATA IIだ

●Advanced Format Technologyを採用、Windows XPはサポート対象外に

 WD30EZRSでは、WD20EARSなどと同じように、物理セクタサイズを従来の512Bから4KBに拡大した「Advanced Format Technology」が採用されている。Advanced Format Technologyを採用することによって、セクタごとに用意する必要のあるSync/DAMとECCの数が減ることで、単位面積あたりの記憶容量が増えるとともに、エラー訂正レートも向上する。

 そして、Advanced Format Technologyを採用するもう1つの理由が、2.19TB(2TiB)の“容量の壁”をクリアするためだ。

 現在広く利用されている「MBRパーティションテーブル」では、セクタを2の32乗個まで管理できる。となると、セクタサイズが512Bの場合には、512B×2^32=2,199,023,255,552Bまでしか管理できないことになる。これが、2.19TBの壁だ。しかし、セクタサイズを4KBにすると、2.19TB×8=17.5TB(16TiB)まで管理できることになる。つまり、2.19TBの壁が突破できるというわけだ。

 ところで、512Bよりも大きいセクタサイズは、Windows系OSではWindows Vista以降でのサポートだ。そのため、現時点でWindows XP環境での利用はサポート対象外となっている(ただし、将来何らかの方法でサポートされる可能性が残されていることは示唆している)。この点は要注意だ。

表:WD30EZRSがサポートするOS
 Windows XP 32bitWindows XP 64bitWindows Vista 32bitWindows Vista 64bitWindows 7 32bitWindows 7 64bitMac OS X 10.5以降Linux
ブートドライブ非サポート非サポート非サポートサポート非サポートサポートサポートサポート
データドライブ非サポート非サポートサポートサポートサポートサポートサポートサポート

●OS起動ドライブとして利用するには多くの制限がある

 WD30EZRSは、Windows XPでの利用がサポート対象外になっただけでなく、他にもさまざまな制限がある。

 WD30EZRSを2台目以降のデータドライブとして利用するだけであれば、制限は少ない。その場合の制限は、OSが「GUIDパーティションテーブル」(GPT)をサポートしていればいいというだけだ。GPTをサポートするOSは、Windows Vista 32bit/64bitやWindows 7 32bit/64bit、Mac OS 10.5以降、Linux カーネル 2.6以降などだ。これらのOSでは、WD30EZRS上にGPTパーティションを確保すれば、全容量が利用可能となる。

 それに対し、WD30EZRSをOS起動ドライブとして利用する場合には、さらに制限がある。

 まず、GPTをサポートするOSの利用は当然必須だが、OSがGPTからのシステムブートをサポートしている必要がある。32bit版のWindows VistaやWindows 7は、GPTへのアクセスはサポートしているが、GPTからのシステムブートはサポートしていない。GPTからのブートをサポートするOSは、Windows Vista 64bit、Windows 7 64bit、Mac OS X 10.5以降、Linux カーネル 2.6以降などで、WD30EZRSを起動ドライブとして利用できるのは、これらOSのみとなる。

 次に、ハードウェアにも制限がある。GPTからのOSブートを行なうには、マザーボードがUEFI起動をサポートしている必要がある(Linuxなど一部例外あり)。一般的なBIOS起動では、GTPからのOSブートは行なえないため、いくらOS側がGPTブートをサポートしていても利用できない。さらに、今回は時間がなく実際に確認はできなかったが、SATAコントローラの一部では、WD30EZRSの全容量を正常に認識しないことがるようだ。その場合には、WD30EZRSに対応するSATA拡張カードを搭載して利用しなければならない。詳しくは表にまとめたので、そちらを参照してもらいたい。

表:ブートドライブ利用時の制限
OS側の要件ハードウェア側の要件
・GPTをサポートしている
・GPTからのシステムブートをサポートしている
・UEFI起動をサポートするマザーボード
・UEFI起動をサポートするSATAコントローラ
対応OS
Windows Vista 64bit
Windows 7 64bit
Mac OS X 10.5以降
Linux カーネル2.6以降

●OSブートに利用するには、現時点ではIntel製マザーボードが必須

 先ほども紹介したように、WD30EZRSを利用するにはさまざまな制限がある。そこで今回は、実際にいくつかのマザーボードとOSを用意し、どういった組み合わせであればOSのブートドライブとして利用できるのか、またデータドライブとして利用できるのか、チェックしてみた。

 まず、OSとしてWindows 7 Professional 64bitを用意し、ブートドライブとして利用できるかどうかを検証してみた。

 はじめに、UEFIブートに対応しているIntel製マザーボード「DP55KG」だ。チップセットはIntel P55 Expressで、WD30EZRSをチップセットのSATAコントローラ経由で接続して試してみた。BIOSメニューを起動し、「BOOT」オプション内にある「UEFI Boot」を「Enable」に設定することで、UEFIブートが可能となる。

 この状態で、Windows 7 Professional 64bitのセットアップDVDからマシンを起動すると、Windows EFIブートローダーが起動し、セットアッププログラムが立ち上がる。それ以降は、基本的に通常のインストールと同じ要領で作業を進めれば、WD30EZRSに自動的にGPTパーティションが確保され、3TBの全容量を確保した上でOSのインストールとブートが可能であることが確認できた。ちなみに、SATAの動作モードは、IDEモードとAHCIモードの双方で、3TB全容量を確保した状態でOSのインストールとブートが可能であった。ただし、AHCIモードでは、OSインストール後に「Intel・ラピッド・ストレージ・テクノロジー 9.6.0.1014」を導入すると、OSが起動できなくなってしまうという問題を確認した。これは、ドライバ側の問題だと思うが、現時点ではIntel・ラピッド・ストレージ・テクノロジーは導入すべきではないだろう。

 また、SATAの動作モードをRAIDにすると、容量が746.5GBしか見えなくなってしまうという問題も確認した。これは、Intel P55 ExpressのRAID BIOSに問題があるようで、現時点ではどうしようもない感じだ。そのため、WD30EZRSを起動ドライブとして利用する場合には、SATAの動作モードはIDEモードまたはAHCIモードを利用すべきだろう。

 次に、DP55KGにSATA拡張カードを取り付け、SATA拡張カード経由でWD30EZRSを接続した場合の挙動を検証してみた。利用したSATA拡張カードは、ASUSTeK Computerの「U3S6」で、搭載されているSATAコントローラはMarvell製の「88SE9123」だ。すると、チップセット内蔵SATA経由と同じように、UEFI BootがEnableになっていれば、3TBの全容量を確保した上で、OSのインストールとブートが可能であった。

 ただし、マザーボードがUEFIブートに対応しているとしても、当然SATA拡張カードがUEFIブートをサポートしている必要があるはずで、全てのSATA拡張カードでWD30EZRSをブートドライブとして利用できるわけではないだろう。そう考えると、SATA拡張カードが付属するモデルを購入するのが安全と言えそうだ。

 ちなみに、現時点でUEFIブートをサポートするマザーボードは、Intel製マザーボードと、MSI製マザーボードの一部など、かなり少数だ。そして、現在購入できるものとなると、ほぼIntel製マザーボードに限られる。そのため、WD30EZRSをすぐにブートドライブとして利用したいなら、Intel製マザーボードの利用が必須と考えていい。

テスト環境
マザーボードIntel DP55KG
CPUCore i5-750
メモリPC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
グラフィックカードRadeon HD 5770(MSI R5770 Hawk)

DP55KGでは、BIOSメニューの「BOOT」メニューにある「UEFI Boot」を「Enable」にするだけでいいEFIブートでWindows 7 Professional 64bitのセットアッププログラムが起動し、通常通りインストール可能。ドライブもきちんと全容量が認識されている
DP55KGでは、このようにWD30EZRSの全容量を認識した状態でブートドライブとして利用できたDP55KGで、SATAの動作モードをRAIDに設定すると、746.5GBしか認識しなかった。IDEモードやAHCIモードではこういった問題は発生しないASUSTeKのSATA 6Gbps/USB 3.0コンボカード「U3S6」をDP55KGに取り付け、U3S6にWD30EZRSを取り付けた場合でも、正常にブートドライブとして利用できた

●Windows 7 Professional 32bitでは、2TBのブートドライブとして動作する

 次に、OSのブートドライブとしての利用がサポートされていない、Windows 7 Professional 32bitでブートドライブとして利用した場合の動作も検証してみた。

 Windows 7 Professional 32bitは、UEFIブートをサポートしていないため、マザーボードがUEFIブートをサポートしていても、通常のブートとなってしまう。そのため、WD30EZRS上にブート用のGPTパーティションは確保されず、ブート用パーティションはMBRパーティションが確保されるため、ブートパーティションの容量は約2TBとなる。ちなみに、このままOSをインストールしても、OSの起動自体は問題なく行なえた。

 OSインストール後に確認したところ、2.19TB以降の746.5GBがOS上から空き領域として見えていた。しかし、この領域にパーティションは確保できなかった。つまり、WD30EZRSに32bit版Windows 7やWindows Vistaをインストールしてブートドライブとして利用しようとした場合、OSのブートが全くできないというわけではなく、3TBのドライブではあるが、2TBのドライブとして動作するというわけだ。この結果から、32bit版のWindows 7やWindows Vistaでは、WD30EZRSをブートドライブとして利用する価値はないと言っていいだろう。

Windows 7 Professional 32bitのブートドライブとして利用すると、2TBのMBRパーティションが確保され、2TBドライブとして動作する2TB以降の746.5GBが空き領域となっているが、パーティションの確保は行えず、一切活用できない空き領域を利用しようとしても、このようなエラーメッセージが表示されるだけだ

●UEFI非対応マザーボードでは、2TBのブートドライブとして利用可能
UEFI非対応マザーボードでブートドライブとして利用した場合も、32bit版Windows 7の場合と同様、実質2TBのドライブとしてしか利用できない

 では、UEFIブートに対応しないマザーボードでの挙動はどうだろう。そこで、ASUSTeK ComputerのAM3マザーボード「M4A89GTD PRO/USB3」でも試してみた。チップセットにAMD 890GXを採用するマザーボードで、UEFIブートはサポートされていない。サウスブリッジは「SB850」で、WD30EZRSをSB850のSATAポートに接続して検証した。

 このマザーボードでは、UEFIブートが行なえないため、WD30EZRSをWindows 7 Professional 64bitのブートドライブとして利用するシステム要件を満たしていない。とはいえ、OSのインストールとブートが全くできないというわけではなく、通常と同じようにセットアップおよびOSのブートが可能。ただし、ブートパーティションとしてMBRパーティションが確保され、利用できる容量は約2TBとなる。そして、それ以降の領域は空き領域となって見えてはいるが、そこに別のパーティションは確保できず、一切利用できない。これは、先ほどの32bit版のWindows 7で検証した場合と同様の結果だ。つまり、UEFI非対応のマザーボードでも、OSのブートドライブとしての利用は一応可能だが、実質2TBまでしか利用できないため、ブートドライブとしての利用価値はないと言っていいだろう。

テスト環境
マザーボードASUSTeK M4A89GTD PRO/USB3
CPUPhenom II X4 965 Black Edition
メモリPC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
グラフィックカードAMD 890GX内蔵 Radeon HD 4290

●2台目以降のデータドライブとしては利用しやすい

 次に、2台目以降のデータドライブとして利用する場合の挙動をチェックした。こちらは、OSブートドライブとして利用する場合の検証で利用したマザーボード、DP55KGとM4A89GTD PRO/USB3に、別のHDDにOSをインストールし、WD30EZRSを2台目として取り付けた場合に、全容量が利用できるかどうか検証した。チェックに利用したOSは、WD30EZRSをデータドライブとして利用することがサポートされているWindows 7 Professionalの32bit版と64bit版に加え、データドライブとしての利用はサポート外だが、OSレベルでGPTパーティションへのアクセスがサポートされているWindows XP Professional x64 Editionの3種類を用意した。また、双方のマザーボードで、チップセットのSATAポートだけでなく、U3S6のSATAポートに接続した場合や、SATA-USB変換アダプタ(タイムリー「UD-3000SA」)を利用してUSB経由で接続した場合のチェックも行なった。

 結果は、全ての組み合わせで、3TB全領域を確保しデータドライブとして利用できることを確認した。ただし、Windows XP Professional x64 Editionでは、Advanced Format Technologyによってパフォーマンスに影響が出る可能性が考えられる。今回は確認する時間がなかったが、今後製品版をテストする機会があれば、この点も検証したいと思う。

 また、筆者が運用しているWindows Home Server(PP3)マシン(マザーボード:GA-MA78GM-S2H、CPU:Athlon X2 BE-2350、メモリ:DDR2-800 4GB)にも接続してみたところ、こちらでも3TBを正常に認識した。ただし今回は、全容量を認識し、パーティションにデータコピーが行えることを確認しただけで、WHSで正常に運用できることを確認したわけではない。WHSでは、Advanced Format Technologyの影響で速度が低下する可能性が高く、運用は難しいものと思われる。

 さらに、DP55KGのチップセット側のSATAに接続した状態で、Windows XP Professional SP3のデータドライブとして利用できるかどうかチェックしてみたところ、容量を746.5GBしか認識しなかった。異なるSATAコントローラでは、状況が変わる可能性もある。とはいえ、もともと32bit版のWindows XPはGPTパーティションへのアクセスは非対応なので、利用できても2TBまで。しかも、環境によっては2TBすら確保できないことを考えると、32bit版Windows XPでの利用はほぼ不可能と考えた方が良さそうだ。

データドライブとしての利用では、GPTパーティションへのアクセスがサポートされているOSであれば、Windows XP Professional x64 Editionも含め全てで3TB全領域が利用できたWindows XP Professional SP3(32bit)では、データドライブとして利用した場合でも全領域が認識できなかった

●プラッタ容量増で速度が向上し、静音性も高まっている

 最後に、アクセス速度と消費電力もチェックしてみた。アクセス速度のチェックは、Windows 7 Ultimate 32bitに2台目のデータドライブとして接続し、全容量をGPTパーティションとして確保した状態で、CrystalDiskMark 3.0を利用してチェックした。比較として、WD20EARSでも同じテストを行なった。また、消費電力は、ACアダプタを利用してWD30EZRSのみに電力を供給し、そのACアダプタをワットチェッカーに取り付けることで計測した。

 結果を見ると、ディスクの回転速度は同じだが、プラッタ容量がWD20EARSの666GBからWD30EZRSでは750GBに増加していることもあり、データ転送速度が向上していることがわかる。もちろん、回転数が7,200rpmのドライブに比べると遅いが、これだけの速度が発揮されていれば遅いと感じることはほぼなく、十分に満足できる数値と言える。

 消費電力は、ブートアップ時には最大15Wほどまで行くが、それ以後はアイドル時5W、ディスクアクセス時9Wであった。この数値は、WD20EARSとほぼ同じで、容量が増えているにも関わらず、省電力性が従来とほぼ同レベルに抑えられている点は評価できる。

 ちなみに、ディスクアクセス時の音は、WD20EARSに比べてもかなり静かだ。WD20EARSでは、ディスクアクセス時にゴリゴリといった独特のアクセス音が聞こえていたが、WD30EZRSではそれがほとんどなくなり、ディスクアクセス時に小さくジーという音が聞こえる程度だった。おそらく、ケース内に取り付ければ、外からは動作音がほとんど聞こえなくなるはずだ。とにかく、静音性に関してはかなり優れていると言っていい。また、発熱も、WD20EARSからさらに少なくなっているという印象だった。デスクの上にむき出しで置いて利用し、CrystalDiskMark 3.0を長時間動作させた場合でも、30℃弱ほどにまでしか上昇しなかった。発熱については、利用環境によって大きく変化するとはいえ、これなら複数台を搭載する場合でも、熱への対処はかなり楽になるはずだ。

テストPCの環境
CPUCore i5-750
マザーボードIntel DP55KG
メモリPC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
グラフィックカードRadeon HD 5770(MSI R5770 Hawk)
HDDWestern Digital WD3200AAKS(OS導入用)
OSWindows 7 Ultimate 32bit

3TB 1,000MBベンチマーク結果3TB 4,000MBベンチマーク結果
2TB 1,000MBベンチマーク結果2TB 4,000MBベンチマーク結果
ACアダプタとワットチェッカーを利用して計測したところ、ディスクアクセス時の消費電力が9W、アイドル時が9W、スピンアップ時の最大値が15Wと、WD20EARSとほぼ同等であったCrystalDiskMark 3.0を連続で30分以上動作させた場合でも、表面の温度は30℃ほどにしか上昇しなかった(室温約20℃、デスク上に置いて動作させた場合)

●現時点ではデータドライブとしての利用がベスト

 今回、初の3TB HDDであるWD30EZRSを試用したが、OSのブートドライブとして利用するには、現時点ではかなりハードルが高いと感じた。それは、UEFIブートに対応するマザーボードが、Intel製のマザーボードを中心とした、ごく一部のものに限られるからだ。

 また、2台目以降のデータドライブとして利用する場合にもいくつかの制限があり、環境によっては全容量を利用できないことがある。ただ、Windows 7などのGPTパーティションへのアクセスがサポートされているOSで利用するのであれば、比較的問題は少なそうだ。SATAドライバの影響で、全容量を認識できない場合もあるようだが、その場合でもSATA拡張カード付属の製品を購入するか、動作が確認されているSATA拡張カードを用意すれば問題が解消できる。そのため、現時点でWD30EZRSは、Windows 7などのGPTパーティションへのアクセスがサポートされているOSで、2台目以降のデータドライブとして利用するというのが、ベストな利用方法と言える。

 実売価格は2万円半ばほどと、8,000円を切る価格で購入できる2TB HDDに比べてかなり割高感があるのは事実。ただ、ドライブベイの関係で、単体でとにかく大容量のHDDが欲しいという需要も根強くある。現在では、PCで地デジ録画を行なう人も増えていると思うが、そういった大容量データを保存する用途として、WD30EZRSは非常に魅力のある製品であることは間違いない。とはいえ、利用時にはさまざまな制限があり、全てのPCで手軽に利用できる製品でもない。そのため、手放しでおすすめするのは難しい。

 今回の3TB HDDと同様の問題は、過去にもあった。本誌読者のみなさんなら覚えている人も多いと思うが、直近の同様の問題は、いわゆる“128GBの壁”だ。その時も、128GBを超える容量のHDDを利用するのに、かなり苦労することがあった。しかし、それも時間の経過と共に解消された。今回もそれと同様に、数年後には何事もなかったかのように、手軽に利用できる環境が整うことになるだろう。もし、トラブルへの対処に不安があるなら、今すぐの購入は控え、しばらく様子見をおすすめしておく。

バックナンバー

(2010年 11月 15日)

[Text by 平澤 寿康]