■平澤寿康の周辺機器レビュー■
バッファローは、最大4台のHDDを搭載し、RAID 5での運用に対応したコンパクトNASの新シリーズ「LinkStation LS-QVL」を発売した。標準でHDDを4台搭載する「LS-QVL/R5」と、1台のみ搭載し、ユーザーが自由に増設可能な「LS-QVL/1D」の2モデルが用意されているが、今回はその中から、1TBのHDDを1台搭載する「LS-QV1.0TL/1D」を紹介しよう。
●外観は従来モデルとほぼ同じLS-QV1.0TL/1Dの外観は、従来モデルとなるLS-QL/R5やLS-QL/1Dシリーズとほとんど同じだ。実際、本体サイズは、149×233×154mm(幅×奥行き×高さ)と、従来モデルから数mmほどしか違わず、筆者が利用しているLS-Q1.0TL/1Dと並べてみても、違いはほとんど分からない。
本体正面のカバーデザインも、左下に「V」マークが新たに追加されているのを除いては従来モデルとほぼ同じ。中央部に円形のエンブレムとHDDアクセスランプが用意され、右に電源ボタンと動作状況を示すLED、USBメモリやUSB HDDなどから直接ファイルをコピーする場合などに利用するファンクションボタンとLED、USB 2.0コネクタが用意されている。
背面には、バッファロー製NASでおなじみのPC連動機能を設定するスイッチ、USB 2.0、Gigabit Ethernet、電源コネクタを装備。また、9cm角の排気ファンも従来通り搭載している。ファンの動作音は、かなり低速で回転することもあり、従来モデル同様非常に静かで、家庭用のNASとしてトップレベルの静音性が実現されている。
HDDは、前述の通り4台まで搭載可能。2台以上では、RAIDアレイを構築することも可能。対応するRAIDレベルは、RAID 0/1/5/10の4種類で、これも従来モデルと同様だ。
●HDDベイは前面からアクセス可能
正面カバーは、磁石で本体に固定されており、簡単に取り外せる。このカバーを外すと、HDDリムーバブルベイが現れる。
HDDの構造も従来モデルと全く同じ。HDDを固定するトレイ前面のフックを引き出せば、トレイごとHDDを取り出せる。本体手前から簡単に作業が行なえるため、メンテナンス性は優れる。ちなみに、今回利用したLS-QV1.0TL/1DはHDDが最上段のベイに取り付けられていた。
正面カバーおよびHDDリムーバブルベイにはロック機構がなく、常時簡単に取り外せるようになっている。これは、従来モデル同様、LS-QVL/1Dシリーズが家庭用ということで、SOHO用途を想定しているTeraStation Proシリーズよりもセキュリティが簡略化されていると考えていいだろう。むしろ、HDDリムーバブルベイがホットスワップに非対応の点に不安を感じる。電源が入っている状態でHDDを取り出すことのないよう、特に子供のいる家庭では子供の手に届かない場所に設置するなど、運用時には若干の配慮が必要だろう。
磁石で固定されている前面カバーを外すと、HDDリムーバブルベイが現れる | フックを手前に引き出せば、トレイごとHDDを取り出せ、HDDの交換や増設も簡単に行なえる |
●機能面が強化された
外見は共通でも、機能面は強化されている。
まず、従来モデルに用意されていた、Webブラウザを利用してインターネット経由で共有フォルダにアクセスしファイルを参照できる「Webアクセス機能」をはじめ、専用ユーティリティ「NAS Navigator2」がインストールされているPCの起動状況に応じてLS-QVLシリーズ側の電源をコントロールする「PC連動AUTO電源機能」、DLNAサーバー機能、iTunesサーバー機能、Mac OS X 10.5 Leopardよりサポートされているバックアップ機能「Time Machine」への対応、BitTorrentダウンロード機能などは、全て受け継がれている。
その上で、LS-QVLシリーズでは、NTTドコモが提供している、インターネット経由でのファイルアクセス機能「ポケットU」に対応し、NTTドコモの携帯電話を利用して共有ファイルにアクセスできるようになった。また、DTCP-IPもサポートされたことにより、地デジなどの録画番組をLS-QVLシリーズにムーブし、ネットワークに接続されたDTCP-IP対応機器から再生が行なえるようになった。ほかにも、写真共有サイトの「Flickr」にデジカメ写真を自動でアップロードする機能や、無線LAN内蔵のSDカード「Eye-Fi」を利用して撮影されたデジカメ写真をLS-QVL内の共有フォルダに転送する「Eye-Fi連動機能」などが追加されている。
ちなみに、設定メニューの構成も従来モデルから大きく変更されている。基本的な操作方法には大きな変更はないが、かなり見やすくなり、操作性が向上し、表示速度が速くなっている点も嬉しい。
●アクセス速度が大幅に高速化
LS-QVLシリーズの、最大の強化点となるのが、アクセス速度の高速化だ。搭載CPUが強化されたことにより、従来モデル(LS-QL/R5)に対して3.3倍高速化したとされている。そこで、実際に筆者が利用しているLS-Q1.0TL/1Dを利用して、アクセス速度を比較してみた。測定には、LS-QV1.0TL/1DとLS-Q1.0TL/1Dを、Hubを介してデスクトップPCと接続して行なった。ちなみに、Gigabit Ethernetのジャンボフレーム値は、デスクトップPCとLS-QV1.0TL/1D、LS-Q1.0TL/1D双方とも標準設定のままで測定した。
CPU | Core i5-750 |
マザーボード | Intel DP55KG |
メモリ | PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 |
グラフィックカード | Radeon HD 5770(MSI R5770 Hawk) |
HDD | Western Digital WD3200AAKS(OS導入用) |
OS | Windows 7 Ultimate 32bit |
LS-QV1.0TL/1Dの結果 |
LS-Q1.0TL/1Dの結果 |
まず、デスクトップPCでそれぞれの共有フォルダをネットワークドライブとして割り当て、CrystalDiskMark 3.0を利用してアクセス速度を検証してみた。すると、従来モデルのLS-Q1.0TL/1Dでは、シーケンシャルリードが20.46MB/sec、シーケンシャルライトが14.89MB/secだったのに対し、LS-QV1.0TL/1Dではシーケンシャルリードが53.99MB/sec、シーケンシャルライトが50.17MB/secと、リードで約2.5倍、ライトで約3.4倍と、確かに大幅な高速化が確認できた。従来モデルでは、PCからLS-Q1.0TL/1Dにファイルをコピーする場合に、かなり待たされる感覚があったが、LS-QV1.0TL/1Dでは大幅に緩和されていると言っていい。
次に、Windows上でファイルをコピーし、ストップウォッチを利用してコピーにかかる時間を計測してみた。利用したファイルは、容量約2.95GBの動画ファイル1個と、総容量約2.76GBのデジカメ画像ファイル541枚。ストップウォッチで3回計測を行い、平均を出している。
結果を見ると、やはりこちらも大幅に高速化していることがわかる。この違いは絶大で、筆者も今利用しているLS-Q1.0TL/1Dからすぐにでも買い換えたいと思ったほどだ。今回は、HDDを単体で搭載した状態での計測だったため、HDDを複数搭載し、RAIDアレイを構築して利用している状態では、速度が多少上下することになると思う。それでも従来モデルよりも大幅に高速になるのは間違いなく、大きな魅力となるはずだ。
2.95GBの動画ファイル1個 | ||
PC→NAS | NAS→PC | |
LS-QV1.0TL/1D | 約1分12秒 | 約47秒 |
LS-Q1.0TL/1D | 約4分25秒 | 約2分42秒 |
デジカメ写真541枚、約2.76GB | ||
PC→NAS | NAS→PC | |
LS-QV1.0TL/1D | 約1分22秒 | 約1分16秒 |
LS-Q1.0TL/1D | 約4分33秒 | 約2分50秒 |
LS-QV1.0TL/1Dは、コンパクトで静音性に優れ、機能面も充実しているという従来モデルの魅力をそのまま受け継ぎつつ、更なる機能面の強化と、アクセス速度の大幅な高速化が実現されており、家庭用NASとしての魅力が一層高まっている。RAIDにより冗長性を高められる点も、一般的な家庭用NASに対する優位点でもあり、大容量データを安全に保存する用途として、大いにお勧めしたい製品だ。
(2010年 12月 1日)