大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

内田洋行が2月から稼働した新川第2オフィスを公開
~営業の「働き方」に焦点を当てた新コンセプトオフィス



内田洋行新川第2オフィス

 内田洋行は、3月1日、東京・新川に建設した本社新川第2オフィスを報道関係者に公開した。

 「環境共生の実践と可視化の場」、「新しい働き方の実践と実証の場」、「新しい働き方をサポートするソリューションの提案の場」を、新オフィスのコンセプトとしており、「営業社員参画型の『働き方』と『働く場』変革を、ICT技術と、空間デザインを用いて実践する場にすることを目指す、新たなオフィスと位置づける。

 内田洋行の柏原孝社長は、「第2オフィスは環境とICTを新しい形でデザインした。新たな事業基盤として有効活用していきたい。従来の新川本社と連動するとともに、自ら働き方を変え、働く場所を変え、働いている社員が元気になり、活性化することができる、実践の場にしたい。この成果を、オフィスへの投資価値を高める提案へとつなげたい」と語った。

 ここには、オフィス事業を行なうオフィス事業本部の営業担当者など223人が、1月下旬から順次入居。まさに自らの実践、体験を通じて、オフィスの生産性向上や価値向上を証明していくことになる。

内田洋行新川第2オフィスを訪れた柏原孝社長内田洋行 取締役執行役員 オフィス事業本部長の岩田正晴氏

 「オフィスは、事業を推進するために存在し、コミュニケーションを活性化させるためにあるが、本来の目的は、継続的な業績向上に資するものでなくてはならず、そこにオフィス空間を提供する価値がある。実践を通じて、個々の成果を把握し、価値を磨いていく場にしていきたい」と、内田洋行 取締役執行役員オフィス事業本部長の岩田正晴氏は語る。

●隣接する耐震偽装マンションと同時に建て替え
会見で概要を説明する内田洋行の柏原孝社長

 内田洋行新川第2オフィスは、新川2丁目地区第一種市街地再開発事業において建設した地上20階建ての複合ビル。内田洋行の新川本社ビルの2件隣にあり、2011年11月に完成。地上8階までを内田洋行のオフィスとして使用。9階から20階がマンションとなっている。

 この場所には、内田洋行グループ会社の所有ビルとともに、グランドステージ茅場町というマンションが建っていたが、同マンションが、2005年に構造計算書の偽造マンションであることが判明。マンションと隣接所有者である内田洋行が事業に参加し、共同で建て替えを行なった。総費用は約51億円。内田洋行は12億円を負担した。また中央区からも補助金が出ている。

 「マンションに居住している方々は、耐震性には非常に敏感になっている。その点では十分な対応を図ったビルになっている」(柏原社長)としたほか、「内田洋行では内装に約3億円を投資しており、建設費用の12億円とあわせて、15億円を投資した」という。

 ビル全体の敷地面積は978.13平方m、高さ81.25m。地下に29台の駐車スペースがある。

かつての建物の様子隣接する内田洋行新川本社ビル

●アクティブ・コモンズの考え方を実践
内田洋行の執行役員 知的生産性研究所の平山信彦所長

 対外的には、新川第2オフィスという呼び方をしているが、社内では「THE PLACE for Change Working」と呼び、内田洋行が提唱するアクティブ・コモンズの考え方に則ったオフィスづくりとしているのが特徴だ。

 「アクティブ・コモンズは、自席が決まっていないという点では、フリーアドレスと同じだが、根本的な考え方が異なる」と、内田洋行の執行役員 知的生産性研究所の平山信彦所長は前置きし、「フリーアドレスはオフィススペースの削減、効率利用という点で、昼間に外出している営業担当者の自席を不要にするという考え方が多いが、アクティブ・コモンズでは、営業活動の生産性を高めるということを前提として、自席をなくした点が異なる。実際、1人あたりの面積は従来の7.3平方mから、7.4平方mとほとんど変わらない」とする。

 また、「本社ビルでは、デバイス、インフラ、空間プラットフォームなどの実践、実証という点で『働く場』を追求したが、今回のTHE PLACEでは『働き方』を追求したものになっている」とも定義する。

 オフィスのデザインプロセスにおいては、建物の仕様が決まったのちに、オフィスの構成を決めるのではなく、営業社員によるChange Workingワークショップを編成。5つの分科会で2年間に渡って、課題を議論。344個の課題解決から、営業部門が働きやすいオフィス作りを進めたという。

「THE PLACE for Change Working」のコンセプト5つの分科会で2年間に渡って議論を行なったという

●営業が働きやすいさまざまな工夫

 オフィススペースは、さまざまな工夫が凝らされている。

 「ダイナー」と呼ばれるスペースは、ファミリーレストラン風のチームミーティングスペースで、4~6人が使用できるようにしている。また、偶発的なコミュニケーションを行なう場やショートブレイクの場としても活用できる「カフェスタンド」、天然木による大きなテーブルによって、15人程度までの大人数での会議や、複数のチームの会話がそれぞれに聞こえる範囲でミーティングを行なうことで、偶発的なコラボレーションを生み出す「ロングウッド」、周囲を気にせずに集中した作業を行なうための「エンクレイブ」、ホワイトボードを使いながらコラボレーションを活性化させる「ボード・カフェ」、窓際の眺めのいい席からデスクワークに集中する「ビスタ」などが用意されている。

 また、オフィス事業本部長、およびオフィス事業本部内の3つの事業部長が使用する「キャプテンデスク」も用意。在席時にトップ同士がコミュニケーションを取れること、そこに出向けば案件の相談ができるなどの利便性を高めているという。

 加えて、社員1人あたりの紙の資料は厚さ30cm以内に収めるペーパーレス化にも取り組んでおり、クラウドを活用した資料のデジタル化を促進。紙は全体で7割削減、営業担当者個人ごとでは約9割削減したという。全館で無線LAN対応しており、どこからでも情報を共有できる環境としているのも特徴だ。

●環境に配慮したオフィスビル

 一方、全館LED照明として、独自に開発した制御システムを開発。人の生活にあわせて調整するサーカディアムリズムの考え方を採用した色温度制御も行なっているという。

 また、ビル・エネルギー・マネジメント・システム(BEMS)などにより、設備デバイスとのネットワーク統合制御や、隣接する本社ビルとの統合管理などを実現。iPadを利用して室温や照度コントロールなどが行なえる「マイ・コントローラ」も独自開発した。

 さらに、西側がもっもと景観がいい場所であるものの、午後の時間帯は西日が強く差すため、外付けのアルミルーバー「エコ・シェード」を設置。その角度によって光を跳ね返し、その反射光を室内空間に入れながら、景観を両立するといった仕組みも実現した。

 また、階段は大きなガラスを採用した吹き抜け型として、自然排気流を活用した「エコ・ヴォイド」と呼ぶ仕組みを採用。縦導線のエレベータの使用削減にもつなげる提案になるとしている。

 加えて、屋上部には太陽光発電システムを用意。夜間のライトアップに使用するという。

 では、内田洋行の新川第2オフィスの様子を写真で見てみよう。

社内では「THE PLACE for Change Working」と呼ぶ手前が内田洋行新川第2オフィスの入口。奥がマンションの入口となっている内田洋行新川第2オフィスの受付
7階のロングウッド。相席による偶発的なコミュニケーションも想定したものになっている同じく7階フロアのカフェスタンド。広いカウンターテーブルを使った議論も可能になる数人でゆったりとコミュニケーションを行なうソファスタイルの「ブックシェルフ」と呼ばれるコーナー
天井はむき出しだが、内田洋行のスマートインフィルを採用することにより、あらゆる場所に照明やICT機器を天井から吊すことができるダイナーと呼ばれるファミレスタイプのコーナー。画面共有のためのモニターを装備しているボードカフェ。ホワイトボードを活用してコラボレーションを促進するという
飛び地という意味を持つ「エンクレイブ」。周囲を気にせずに電話や業務ができるようになっているクイック・ゼミナール。社員の簡単な勉強会などが随時行なえるようになっている。今回の記者会見はここで行なわれた6階フロアの様子
ワークトップと呼ばれる席は、すべてフリーとなっており、用途に応じて使い方をフレキシブルに変えることができる6階フロアにあるギャンビット。リスクを意識しながらも積極的に打って出るためのチェスの定石とされる言葉が語原。画面とホワイトボードを活用して立案するスペースプロポーザルベンチ。顧客への提案書を営業、エンジニアなどが共同でまとめるために使用する
窓際に配置された「ビスタ」と呼ばれるスペース。ノートPCやタブレット、目の前のディスプレイを活用してデスクワークに集中できる5階は業務部門。従来のオフィススタイルで自席がある。しかし、今後、改善を進めていくという4階に設置されたスタジオ。パートナー向けに年間200講座をここから発信する
4階のプロジェクト・ポート。可動式のテーブル、椅子、無線プロジェクターによって、レイアウトを自由に変更できるスタッフと連携して複雑な見積もりや発注作業を行なう「キャレル」と呼ばれるスペースも用意されている事業本部長、事業部長のスペースであるキャプテン・デスク。左はオフィス事業本部長の岩田正晴氏
個室型の会議室は、チャート・ルームと呼ばれている。遠隔会議も可能2階はフィッティング・ステージと呼ばれ、実際に商品を見ながら商談をクロージングするスペースとなっている
色の違いなども実際の商品で見比べることができるさまざまな色見本なども用意されている窓際には商談を行なうスペースも用意されている
ドックと呼ばれるパーソナルロッカー。紙の資料とPCを収納する冬場のコートなどは席には持ち込まずに1カ所で管理各種カタログなどの紙の資料も1カ所に置いて共有で利用する
オフィス内には緑も配置されており、やすらぎを与える吹き抜け型の階段としたエコ・ヴォイド。ガラス面を大きく取り、自然換気による排気流を活用している
全館LED照明としており、外光の明るさにあわせて自動に制御できるiPadを利用して室温や照度コントロールなどが行なえる「マイ・コントローラ」スマートインフォメーションシステム。社員が必要とする情報をSNSと、こうしたサイネージで共有できるようにしている
西側に設置された「エコ・シェード」。その角度によって反射光を室内空間に入れながら、景観を両立する