■大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」■
シャープは、NetWalkerの新製品として、電子辞書機能を搭載した「PC-Z1J」を、12月初旬から発売する。
9月18日から出荷したPC-Z1Jの基本機能はそのままに、新たな電子辞書機能を搭載したモデル。「第1弾の製品は、事前予約が多かったこともあり、出荷開始からの1カ月半で約1万台を販売した。新たなラインアップの追加により、年度内には5万台近い実績を目指したい」と、シャープパーソナルソリューション事業推進本部・パーソナルソリューション事業部商品企画部参事・笛田進吾氏は意気込む。
シャープパーソナルソリューション事業推進本部・パーソナルソリューション事業部商品企画部参事・笛田進吾氏 | NetWalker PC-Z1Jには電子辞書のアイコンが新たに用意される |
JR品川駅で実施したタッチ&トライイベントをはじめとする街頭キャンペーンや、10月26日から11月1日までの1週間に渡り、首都圏のJR各線において4種類のポスターによって訴求した交通広告展開、ガイドブックのプレゼントキャンペーン、Twitterユーザーへの訴求といった積極的なデビュープロモーションを行なった。その結果、「かなりの多くの人に、NetWalkerの存在をアピールできたと判断している。今後は、アーリーアダプター層から一般ユーザーへと広げていく活動に展開していきたい」とする。
イー・モバイルと組み合わせた販売モデルを展開する量販店ルートだけに留まらず、大学生協ルートなどでも高い成果があがっており、さらには公立高校への一括導入商談なども進んでいるところだ。教育分野では、OSにUbunts 9.04を搭載していることもあり、Linuxの学習用途にも活用されているという。
今回のラインアップの強化は、一般ユーザー層へと需要を広げる役割を担うことにもなり、NetWalkerの出荷台数を引き上げるための強力な武器となる。
「NetWalker購入者のうち、約25%が電子辞書機能が欲しいと回答している」ということからも、電子辞書機能の搭載は需要引き上げに貢献することになろう。
既存モデルの実売想定価格は45,000円前後。それに対して、今回発売した電子辞書機能搭載モデルは約5,000円高い、5万円前後の価格設定となるが、言い換えれば5,000円の追加によって電子辞書機能を手に入れることができるわけで、笛田氏は「これにより電子辞書の新たな市場を創出したい」と語る。
●電子辞書市場の新たな創出とはシャープの笛田氏が、今回のPC-Z1Jで「電子辞書市場の新たな市場を創出する」と語るのには理由がある。
1つは新需要の開拓だ。年間250万台規模とされる電子辞書市場において、その中心需要層は学生か、シニア層である。20~40歳代のビジネスマン層の購入が極めて少ないという。
これに対して、NetWalkerの中心購入層は30~40歳代のビジネスマン。NetWalkeの切り口から、電子辞書の利用者を増やすという、新たな需要層を開拓できるツールと見ているのだ。
2つ目には、電子辞書の新たな利用提案が行なえることだ。
電子辞書市場では、シャープとカシオがしのぎを削っており、100種類以上の辞書・コンテンツを網羅する「搭載辞書数競争」が激化している。一方が10種類増やせば、次にはもう一方が10種類増やすという状況だ。
NetWalkerに搭載したのは広辞苑、新英和中辞典、新和英中辞典、新世紀ビジュアル大辞典、新冠婚葬祭事典、ことば選び辞典、現代用語の基礎知識2009年版の7コンテンツに限定しているが、NetWalkerならではの機能ともいえるネット接続によって別の辞書の利用が可能になる。Weblio辞書、辞典横断検索Metapedia、Yahoo!百科事典の3つの辞書サイトから、1,000以上のWeb辞書コンテンツが利用できるのだ。
「搭載コンテンツの競争に、桁違いの辞書数で終止符を打つことができる。同時にクラウド化した電子辞書という、新たな使い方を提案できる」というわけだ。
1つの言葉に対して、さまざまな辞書からの検索結果が表示できるという点でも、Web検索機能は有効だ。
さらに、NetWalkerのCPUパワーを利用して、収録された7種類の辞書の見出し語検索だけでなく、全文検索を可能とした。「電子辞書のCPUパワーでは実現できない、NetWalkerならではの検索方法により、ここでも辞書の使い方をより幅広くできる」とる。
NetWalker PC-Z1Jには7種類の辞書コンテンツの全文検索機能を搭載している | 搭載した辞書コンテンツは静止画や動画、音声などの再生も可能となっている |
Webからは1000種類のコンテンツから辞書検索が可能 | 検索した言葉から関連する検定試験を表示できる |
表示する文字サイズは5段階に切り替えることができ、検索履歴の表示もワンタッチで行なえる。
また、Web辞書検索機能の中に、検定サイト検索機能も搭載し、検索した言葉に関連する検定を一覧表示できるようにした。昨今の検定ブームに即した利用である。
こうした電子辞書の新たな利用提案が、NetWalkerで可能になる。
既存のNetWalkerユーザーに対しても、マイクロSDカードで辞書コンテンツを有償で提供。既存モデルでも、新製品同等の機能が利用できるようになる。
●電子辞書の新たな販売方法に?3つ目は、電子辞書の新たな販売方法を提案できることだ。
シャープでは電子辞書機能搭載モデルを販売することを、第1号製品の発表時からアナウンスしており、これを10月に開催されたCEATEC会場でも参考展示していた。そうした計画を事前に公表するとともに、シャープでは、電子辞書売り場にもNetWalkerを展示する方向で、量販店との交渉を開始していた。
原稿執筆時点では、どの程度の量販店で電子辞書売り場に展示販売できるかは未定だが、いくつかの量販店が前向きに検討しているとの話を聞く。電子辞書を搭載した新製品に限定したカタログも作成しており、これも電子辞書売り場への展開を視野に入れたものとなる。12月上旬の発売時に、どれぐらいの店舗において、電子辞書売り場にNetWalkerが展示されるかが楽しみだ。
さらに、NetWalkerならではの提案として、イー・モバイルとの連動提案が、電子辞書売り場でも行なえるようになる点も見逃せない。これにより、初期費用では1万円を切る価格で、電子辞書が入手できる計算となる。
NetWalkerは、電子辞書の新たな販売方法となる可能性がある。
●電子ブックにも進化を遂げるさらにシャープでは、NetWalkerに電子ブック機能を搭載する。
BookViewerで書籍コンテンツを見ることができる |
NetWalkerユーザーに対して専用サイトからBookViewerを無償でダウンロードできるようにし、同社の電子辞書「Brain」シリーズで提供している電子ブックライブラリーとほぼ同様の23,000冊を越える書籍コンテンツを、NetWalkerで見ることができるようになる。
書籍コンテンツを提供するサイトをNetWalkerライブラリーとして、12月下旬からオープンする。NetWalkerが電子ブックにも進化するというわけだ。
NetWalkerは、今回の新製品を加えたラインアップによって、年末商戦および来年3月以降の進入学需要を戦う。「Bluetooth機能を搭載してほしい、バッテリを着脱方式にして欲しい、GPS機能の搭載や通信モジュールの内蔵に対する要望の声もあがっているが、こうした声を取り入れながら、さらに進化を遂げていきたいと考えている。また、対応する周辺機器も徐々に拡大している。これまでにない提案が行なえるツールとして、用途の拡大や認知度向上に努めていきたい」とする。
第1弾製品から、今回の第2弾製品の発売に至るまでのNetWalkerの第一歩の成果は、まずは合格点のレベルに到達しているといえそうだ。