大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

【新春恒例企画】2014年は「1週間」がキーワードに!?

予想外の結果となった2013年のキーワード

 新春恒例企画として、言葉遊びから1年を占うコラムを、2002年から、毎年、年初に掲載してきた。

 2013年年初のコラムでは、「MEBIUS」をキーワードとし、2013年の動向を占ってみた。

 全体的な動きはほぼ予想通りだったが、予想外のことが1つあった。

シャープが発表した「Mebius Pad」

 それは、MEBIUSのブランドを冠した製品が登場したことだった。

 シャープは、CEATEC JAPAN開幕前日となる2013年9月30日に、「Mebius Pad」を開発していることを公表し、12月18日には正式発表してみせた。

 同製品を統括するシャープ ビジネスソリューション事業推進本部 NB事業推進センターの笛田進吾チーフは、会見後に筆者を見つけるなり、「新年のコラム通りに、MEBIUSの1年にしましたよ」と切り出した。

 これには参った。

 Mebius Padの登場は、まさに予想外であった。そして、ブランド名に通じるキーワードは、意外な落とし穴があることを知った1年でもあった。

 シャープは、かつてMebiusブランドのPCを投入しており、その後PC事業からは撤退していた経緯があった。シャープは、タブレット端末にそのブランドを復活させたのだ。

 Mebius Padは、2014年1月31日から出荷が開始される。このコラムの観点からいえば、2013年の業界のキーワードを背負った製品として、その動きに注目しておきたい。

キーワードが「1週間」とは?

 では、2014年のIT産業、デジタル産業におけるキーワードはなにか。

 今年は、「1週間」をキーワードにしてみたい。

 1週間という意味はなにか。

 それは、月曜日から日曜日までの英語の頭文字を指す。つまり、MondayからSundayまでの7日間の頭文字である、「M(Monday)」、「T(Tuesday)」、「W(Wednesday)」、「T(Thursday)」、「F(Friday)」、「S(Saturday)」、「S(Sunday)」ということになる。TとSは2つずつあるので、これらは1つを業界全体の動向とし、もう1つは人物に関することにしたいと思う。

2-in-1 PCは2014年の目玉に?

 月曜日の「M」だが、これはやはり「モバイル」ということになろう。

 矢野経済研究所によると、2014年の携帯電話契約数は、75億4,362万5,000契約に達すると予想しており、世界人口推計の70億5,200万人を突破する。つまり、携帯電話の普及率は、数字上では、100%を突破することになるのだ。

 また、4GやLTE、WiMAX2といった高速モバイル通信環境も、2014年はさらに浸透すると見られており、コンシューマ利用やコマーシャル利用を問わず、モバイル利用がさらに進むことになろう。

 火曜日の「T」は、タブレットの「T」ということになる。

 IDC Japanの予測によると、タブレットは、前年比23%の成長率になると予測しており、まだまだ拡大の余地がある。これに対して、PCは、依然としてマイナス成長が続くと見ており、マイナスの底打ち時期は不透明なまま。PCを盛り上げる施策がメーカーには期待されるところだ。

2-in-1 PCのうちの1つ、VAIO Fit 13

 そのPCの中でも、2014年のポイントとなるのが、2-in-1(Two-in-One)PCであり、これも、「T」で始まる。

 2-in-1 PCは、これまではフラッグシップモデルが中心であったものの、ソニーが2013年秋に発売したVAIO Fit Aシリーズのように、メインストリームの製品群にまで広がりがみられており、こうした動きがさらに顕著になることを期待したい。2-in-1PCならではの使い勝手が浸透すること、普及価格帯へと広がることが鍵になりそうだ。

2014年前半はXPサポート終了が鍵に

 水曜日の「W」は、「Windows」を指すことになる。

 Windowsでの注目点は2つある。

 1つは、2014年4月9日に迎えるWindows XPのサポート終了だ。

 IDC Japanによると、2013年12月末時点では、法人向けPCで723万台(全体の20.2%)、個人向けPCで597万台(全体の14.0%)のWindows XP搭載PCが残っていると推測している。日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、4月9日までには1桁台に構成比を引き下げたいとしており、Windows XPからの買い替えは2014年前半の大きなトピックになるのは間違いない。

Windows XPのサポート終了が4月に控えている
Windows 8.1への乗り換えは進むのか

 2つ目は次期Windowsである。Microsoft自身が、Rapid Releaseというように、短期間でのアップデートを計画しており、2014年もその動きがみられるだろう。Windows 9と目される次のメジャーバージョンアップは2015年と目されていることから、2014年はWindows 8.xが登場する公算が強い。

Appleのティム・クックCEO

 木曜日の「T」は、2回目の「T」ということで、人物の観点から取り上げてみる。

 Tを頭文字にする業界トップは何人かいるが、やはり一番注目されるのは、Appleのティム・クック(Tim Cook)氏だろう。

 2011年に、AppleのCEOに就任して以来、2014年は3年目を迎えるが、クック氏率いるAppleが、どんな製品を投入するのかが最も注目を集める1年になるだろう。

 関係者の間では、TV事業への進出や、iWatchと呼ばれる時計型デバイスの投入などが見込まれているが、いずれにしろ、Appleが、これまでとは異なる未参入分野に対して、どんな製品を投入するのかが、2014年に全世界から注目される出来事であるのは間違いない。

 金曜日の「F」は、数字に置き換えてみたい。

 1つは、「Fourteen」。14である。

 Intelは、2014年に新たに14nmプロセスを採用した「Broadwell(開発コード名)」を投入する予定を明らかにしており、これを搭載したファンレスデバイスの登場などが期待されよう。

TVメーカー各社が推進する4K

 もう1つは「4(Four)K resolution」。4Kである。

 すでに量販店店頭では4K対応TVが発売され、1インチあたり1万円という領域にまで価格が下がっているが、日本では、2014年7月から、4K TV放送が開始されることから、店頭では4K TVの展示が増え、販売に弾みがつくことになるのは明らかだろう。

Windows Phoneの国内投入に向けて動きが出るか?

 土曜日の「S」では、「ソーシャルメディア」と「スマートフォン」の2つをあげてみたい。

 ソーシャルメディアは、数年前から、Facebook、Twitter、LINEといったサービスが浸透し、数多くの情報がユーザーのデバイスから発信されるようになっている。ソーシャルメディアの広がりは、クラウドが下支えし、これがビッグデータへと繋がり、さらにビッグデータを分析するアナリティクスに注目が集まっている。

 業界内では、ソーシャル、モバイル、アナリティクス、クラウドの頭文字をとった「SMAC」という言葉も使われており、これによって、マスマーケティングから、One to Oneマーケティングへと、マーケティング手法が変わっていくことになるというのが、業界内に共通した認識だ。2014年はこうした動きが顕著になるだろう。

 スマートフォンでは、日本ではNTTドコモを含めた3キャリアへと販売体制が広がり、全世界で圧倒的に構成比が高いといわれる日本国内のiPhoneの牙城に対して、Androidがどう対抗するかがポイント。一部製品にすでに搭載されているKitKat(Android 4.4)が、2014年にどんな影響を及ぼすかが注目される。また、いよいよ姿を現すとみられるTizenの動きも気になるところだ。

Windows Phone

 注目されるのは、Windows Phoneの国内投入だ。2月にもMicrosoftによって買収が完了するとみられるノキアが、日本に再上陸することになれば、日本でのWindows Phone投入の道筋ができあがる。日本マイクロソフトの樋口社長は、「Windows Phoneに関しては、2014年にはなんらかの方向性を社内には示したい」とする。具体的な製品発表までには時間がかかるかもしれないが、2014年は将来のWindows Phone発売に向けて、大きな一歩が見られる可能性が高い。

スティーブ・バルマーCEO

 最後となる日曜日の「S」は、Sが2回目ということで、人物の話題にするが、ここでは、Sを頭文字に持つ、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOの退任、そして同社の次期CEOの有力候補の1人としてあがっているスティーブン・エロップ氏をあげておきたい。

 MicrosoftのCEOの交代によって、果たしてMicrosoftはどう変わることができるのか。その節目の1年が、2014年ということになりそうだ。

孫正義氏

 Sを頭文字に持つ人物では、ソフトバンクの孫正義社長も忘れてはならない。2014年は米国進出の正念場。米国のモバイルネットワーク市場に、果たしてどんな影響を及ぼすのかが楽しみだ。

隠れたキーワードは「7」?

 このように2014年を展望してみたが、IT業界はやや明るい兆しが見られ始めているといえそうだ。

 特に、2014年3月までは、Windows XPのサポート終了前の駆け込み需要、そして消費増税前の駆け込み需要が期待されることもあり、PCの販売は右肩上がりだ。

 NECパーソナルコンピュータや富士通では、2013年後半から、2割~3割の増産体制を敷いており、法人向けPCを中心に旺盛な需要が見られている。

 ただ、Windows XPから移行する法人向け需要の中心となっているのが、Windows 7であるのは事実であり、2014年は、思いのほか、Windows 7の販売数量が高くなる可能性がある。

 また、4月以降の需要の反動がどうなるのかといった動きも懸念される。

 IDC Japanの予測によると、2014年には前年比7%減と、マイナス成長が予想されている。タブレット、スマートフォンの拡大に比べると、PC市場は厳しいと言わざるを得ない。

 法人向けPC需要では、Windows 7が主軸になり、PC市場は7%減というように、ここに「7」という数字が2回でてくる。

 1週間は「7」日間。7という数字が、2014年の隠れたキーワードになりそうだ。

(大河原 克行)