■ゲーミングPC Lab.■
デルのハイエンドデスクトップシリーズである「Studio XPS」に、Phenom II搭載モデル「Studio XPS 7100」が追加された。AMDといえばコストパフォーマンスの高さが魅力。しかもBTOメニューでは、最新の6コアPhenomやRadeon HD 5870といったハイエンド構成も選べる。今回は、そのほぼ最強構成の評価機を試用する機会を得たのでさっそく紹介しよう。
●AMDモデルだけのフロントシルバーカラーStudio XPS 7100は、他のStudio XPSシリーズ同様の柔らかなフォルム、フロント部が傾斜した特徴的な筐体を採用している。フロントパネルはシリーズ唯一のシルバー。側面もやや色味の違うチタンシルバーが採用されており、落ち着いた印象を出している。デルの純正ディスプレイも、背面にシルバーを配色しているものがあり、こうしたモデルと合わせると統一感が出せる。また、Studio XPS 7100は、microATXベースとなり、他のStudio XPSシリーズよりも一回り小さいため、設置場所の自由度が高まっている。
フロントパネルは側面から見ればカーブを描いているのだが、正面からはほぼフラット。シンプルさが好印象だ。最上部にはカードリーダーがあり、その下2段はカバー付きの5インチベイ、最下段はスライド式の3.5インチベイとなっており、ベイの横にはUSBポートが2基搭載されている。電源スイッチは上面手前。天板には上面約半分のサイズで一段窪んだトレイが、そしてそのトレイの縁にはUSBポート2基と音声入出力があり、メモリカードや関連するUSB小物などをトレイ上に収納すればスッキリと片付けることができる。
背面を見ると、電源は最上部、バックパネル横にファンを配置した、ごく一般的なmicroATXデザインである。拡張スロットブラケットは4基。バックパネルを見ると、ディスプレイ出力にDVIとHDMI、USB 2.0ポートは4基、LAN、音声入出力に加え、eSATAも用意されている。サイドパネルは、手回しネジを1つ外せばスライド式に開閉できる仕組みだ。コンパクトな筐体だけに内部は密であるが、このサイズにしては平均的だろう。
●パーツの固定にひと工夫 - ハイエンド構成をコンパクト筐体に凝縮
内部をもう少し詳しく見ていこう。内部でまず特徴的なのはビデオカードを固定するための樹脂パーツ、そしてよりスリムな筐体を実現するために3.5インチシャドウベイを横倒しにしたデザインだ。固定用の樹脂パーツはフレームにネジ2つで固定されている。また、拡張カードブラケットの固定にも4基がネジ1つで固定可能な金具を用いている。3.5インチシャドウベイは合計2基(フロント3.5インチベイを含めれば3基)だ。縦にレイアウトされている内部ベイは手前がフレームに固定されており、奥側はネジ3つで着脱できるサブフレームによってマウントされている。また、電源ケーブルにもSATA用コネクタ×1基分の余裕がある。
マザーボードはmicroATXサイズのごく一般的なレイアウト。6コアCPUに対応するため5層と、既製PCとしては比較的多めのフェーズ数を用意している。メモリスロットは4基。評価機に搭載されていたのはDDR3-1333メモリで2GB×2枚だ。SATAは5ポートで、チップセットがサポートする6ポートのうち1ポートがeSATAとしてバックパネルに引き回されている。
ケーブリングは綺麗な取り回しで、内部はかなりスッキリとしており、エアフローが良さそうな印象である。フロントにファンは無いため後部の1基と電源ファンのみで排気する仕組み。Phenom II X6、そしてRadeon HD 5870を搭載したハイエンドな構成だが、動作音はかなり静かな部類である。
拡張スロットレイアウトは、上段からPCI Express x1、x16、x1、PCIといった並びだ。今回の評価機のように2スロットサイズのビデオカードを搭載する場合、残るスロットは最上段のPCI Express x1および最下段のPCIということになる。CPUファンはとくに高性能には見えないが、リテールと比べ若干大型化したファンが搭載されており、これもかなり静かだ。評価機に装着されていたCPUはPhenom II X6 1055T。OPNは「HDT55TWFK6DGR」で消費電力が95Wのモデルとなる。ビデオカードはRadeon HD 5870。シングルGPUカードとしてはAMD最上位の製品だ。
こうしたハイエンドパーツ構成は消費電力も大きく、7100シリーズに採用されている電源ユニットも450Wという既製PCとしては比較的大容量なタイプだ。ただ、これで足りるかというと推奨ギリギリな印象もある。後々、本製品をベースにさらにハイエンドな構成にアップグレードする場合には電源の換装が必要になりそうな印象だ。
少しBTOメニューの話をしておこう。Studio XPS 7100では、CPUがPhenom II X4またはX6が選択できる。リテール向けには未発表のPhenom II X6 1035TなるCPUも搭載可能だ。ビデオカードはRadeonシリーズのみという純AMD構成になる。こちらは仕様表によればRadeon HD 5450/5670/5770/5870が用意されている。ただし執筆時点のBTOで選べたのはRadeon HD 5670以降の製品だった。ベーシックパッケージで89,979円からという価格構成だったが、Radeon HD 5450が選べる状態であれば、さらに低価格な構成も出てくる可能性がある。また、バックパネルで分かるとおり、そもそもチップセットがグラフィックス機能を統合したAMD 785Gであるため、ビデオカードレスも構成上では可能だ。
OSはWindows 7 Home Premium、Professional、Ultimeteの3つのグレードが用意されている。どれも64bitという割り切りは潔いが、互換性などから32bitが必要方は要注意。また、こうしたハードウェア的なBTOメニューのほかに「使い方電話サポート(デルヘルプデスク)」や「保証プラン」なども用意されている。一部有償だが、PC初心者にとっては心強いだろう。
●3Dゲームも快適な6コアPCが10万円台前半から
Phenom II X6 1055TにRadeon HD 5870を組み合わせた今回の評価機は、Studio XPS 7100としてほぼ最強といって良い構成だが、その実際のパフォーマンスを計測してみよう。使用したソフトは、システム系ベンチマークがPCMark 05、PCMark Vantage、グラフィック系ベンチマークが3DMark 06、3DMark Vantageおよび、ゲームベンチとしてWorld in Conflict、The Last Remnant、FINAL FANTASY XI for Windowsオフィシャルベンチマークソフト3だ。
PCMark Vantage v1.0.2.0 | ||
PCMarks | 7064 | |
Memories | 6476 | |
TV and Movies | 4955 | |
Gaming | 6982 | |
Music | 6070 | |
Communications | 7172 | |
Productivity | 6198 | |
HDD | 4058 | |
PCMark05 v1.2.0 | ||
PCMarks | 11119 | |
CPU | 9375 | |
Memory | 6179 | |
Graphics | 24208 | |
HDD | 6372 | |
3DMark Vantage v1.0.2 | ||
3DMarks | Performance | 15522 |
High | 11951 | |
Extreme | 8753 | |
Graphics | Performance | 15917 |
High | 11603 | |
Extreme | 8573 | |
CPU | Performance | 14447 |
High | 14406 | |
Extreme | 14550 | |
3DMark 06 v1.2.0 | ||
3DMarks | 1,024×768 | 18453 |
1,280×1,024 | 18187 | |
1,600×1,200 | 17660 | |
1,920×1,200 | 17448 | |
SM2.0 Score | 1,024×768 | 6430 |
1,280×1,024 | 6541 | |
1,600×1,200 | 6460 | |
1,920×1,200 | 6482 | |
HDR/SM3.0 Score | 1,024×768 | 9571 |
1,280×1,024 | 9097 | |
1,600×1,200 | 8643 | |
1,920×1,200 | 8399 | |
CPU Score | 1,024×768 | 5132 |
1,280×1,024 | 5218 | |
1,600×1,200 | 5171 | |
1,920×1,200 | 5166 | |
World In Conflict(Very Hight) | ||
1,280×1,024 | 47 | |
1,600×1,200 | 45 | |
1,920×1,200 | 44 | |
The Last Remnant | ||
1,280×1,024 | 108.54 | |
1,600×1,200 | 104.58 | |
1,920×1,200 | 99.63 | |
FINAL FANTASY XI for Windowsオフィシャルベンチマークソフト3 | ||
Low | 9877 | |
High | 7686 | |
Windows エクスペリエンスインデックス | ||
プロセッサ | 7.4 | |
メモリ | 7.4 | |
グラフィックス | 7.8 | |
ゲーム用グラフィックス | 7.8 | |
プライマリハードディスク | 7.5 |
CPUパフォーマンスは同じ価格帯のIntel CPUと同等かやや上という程度。むしろ超高価なIntelの6コアCPUに対し、10万円程度の実用的な価格で導入できるというのがAMDの6コアCPUだ。このあたりは多和田氏の解説が詳しいので参考にして欲しい。
一方で3Dグラフィックスはこの構成のなか、頭1つ抜きん出ている。3DMarkのスコアは申し分なく、The Last Remnantでは、かなり快適にプレイできるフレームレートが出ている。今回の評価機と同等の構成にBTOしてみたところ、およそ13万円という金額となった。Radeon HD 5870がハイエンドGPUであるため10万円を超えしまうが、それでもこの金額でこの構成ならばコストパフォーマンスは十分だろう。
惜しい点はチップセットが1世代古い点と、電源容量にもう少し余裕が欲しいといったところだが、総合コストパフォーマンスはなかなかのもの。今回はハイパフォーマンスな構成を試したが、さらにパフォーマンスを求めるならば同社にはAlienwareがある。Studio XPS 7100の場合、実用的マルチコアなPhenom II X4を選択したり、ライトなゲームで十分ならばメインストリームGPUで10万円以下で構成することもできる。
Studio XPSというデルラインアップのなかでは上位に属するグレードだけに、低パフォーマンス&低価格なBTOオプションというのは用意されていないため、言い換えれば、失敗の少ない構成が本製品の魅力だろう。
(2010年 7月 22日)
[Text by 石川 ひさよし]