山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Amazon「Kindle Fire HDX 7」

~大幅な軽量化と高解像度化を果たした新Kindle Fireの上位モデル

「Kindle Fire HDX 7」。従来の「Kindle Fire HD」の後継モデルに当たる。大画面版の「Kindle Fire HDX 8.9」もラインナップされる
11月28日 発売

直販価格:24,800円(16GB)、29,800円(32GB)、33,800円(64GB)

筐体は新設計。下位モデルの「Fire HD 7」と同一に見えるが、実はまったくの別筐体。カラーはブラックのみ

 Amazonの「Kindle Fire HDX 7」は、KindleストアやAmazon MP3ストアなど、Amazonが運営するストアで購入したコンテンツを楽しめる7型タブレットだ。すでに発売済みの「Kindle Fire HD 7(以下Fire HD 7)」の上位モデルにあたり、従来の「Kindle Fire HD(以下旧Fire HD)」の後継モデルという位置付けの製品だ。

 大画面版の「Kindle Fire HDX 8.9」とともに11月28日に発売が予定されている本製品について、今回は一足先に発売された海外版を用いてレビューする。ハードウェアについては相違はなく、日本語にも対応しているが、国内で発売されるモデルとは若干異なる可能性はあるのでご了承いただきたい。

従来モデルに比べ約100gもの軽量化を実現

 まずは従来モデルとの比較から。

【表1】他機種比較

Kindle Fire HDX 7 (2013年モデル)Kindle Fire HD 7 (2013年モデル)Kindle Fire HD (2012年モデル)Google Nexus 7(2013)

AmazonAmazonAmazonASUS
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)128×186×9.0mm128×191×10.6mm137×193×10.3mm114×200×8.65mm
重量約303g約345g約395g約290g
OSFire OS 3.0Fire OS 3.0独自(Androidベース)Android 4.3
画面サイズ/解像度7型/1,200×1920ドット(323ppi)7型/800×1,280ドット(216ppi)7型/800×1,280ドット(216ppi)7型/1,200×1,920ドット(323ppi)
通信方式IEEE 802.11a/b/g/nIEEE 802.11a/b/g/nIEEE 802.11a/b/g/nIEEE 802.11a/b/g/n
内蔵ストレージ16GB(ユーザー利用可能領域は10.9GB)、
32GB(ユーザー利用可能領域は25.1GB)、
64GB(ユーザー利用可能領域は53.7GB)
8GB(ユーザー利用可能領域は4.8GB)、
16GB(ユーザー利用可能領域は11.9GB)
16GB(ユーザー利用可能領域は12.6GB)、
32GB(ユーザー利用可能領域は26.9GB)
16GB、32GB
バッテリ持続時間(メーカー公称値)11時間(書籍のみの場合17時間)10時間11時間約10時間
カメラ前面なし前面前面+背面
電子書籍ストアKindleストアKindleストアKindleストアGoogle Play ブックスなど
価格(2013年10月18日現在)24,800円(16GB)
29,800円(32GB)
33,800円(64GB)
15,800円(8GB)
17,800円(16GB)
15,800円(16GB)
19,800円(32GB)
27,800円(16GB)
33,800円(32GB)
備考LTEモデルも存在

 前回のFire HD 7のレビューでも触れているように、本製品は旧Fire HDの後継という位置付けの製品である。それゆえ、下位モデルに当たるFire HD 7および旧Fireでは省かれている前面カメラやHDMIを搭載するほか、クアッドコアのCPU、フルHDの液晶画面、さらにWi-FiはMIMOにも対応するなど、全部盛りと言っていい仕様になっている。敢えて足りないものを探すとすれば、本製品の大画面版にあたるKindle Fire HDX 8.9には搭載されている背面カメラがないことくらいだろう。

 そんな中で目玉となるのはやはり軽さだ。旧Fire HDの約395gに対して本製品は約303gと、100g近い軽量化を果たしている。同じ7型タブレットであるNexus 7も2013年モデルで軽量化を果たしている(約340g→約290g)が、本製品は従来モデルが重かったとはいえ、それだけインパクトも大きい。Nexus 7を抜きにしても7型タブレットとしては十分に軽量な部類で、かつての「価格は安いがサイズや重量に難あり」というKindle Fireのイメージを完全に払拭していると言っていいだろう。

 なおバッテリは、上記の表では11時間となっているが、コミック以外の読書においては、不要なシステムを自動的にシャットダウンすることで最長17時間まで楽しめるモードが搭載されている。このモードは本製品および大画面版のFire HDX 8.9にのみ搭載されており、下位モデルのFire HD 7や従来モデル、また汎用のタブレットと比較した際、強みの1つとなるだろう。

パッケージ。今回試用したのは海外版のため、国内版ではこのスリーブは別のデザインに差し替わる可能性がある
スリーブを外して開封。ビニールで覆われた本体が封入されている
同梱物一覧。「Fire HD 7」と同様、従来モデルでは別売だった充電用のUSB-ACアダプタが標準添付されるようになった
中央が本製品で、向かって左がFire HD 7、右が旧Fire HD。ベゼルは旧Fire HDに比べると大幅に狭くなり、また本体も軽量化されている。またFire HD 7は見た目こそ同一ながら、実際にはサイズも異なるなど、全く別の筐体であることが分かる
こちらは背面。中央が本製品で、向かって左がFire HD 7、右が旧Fire HD。ルックスは旧Fire HDとは全く異なる。左のFire HD 7とは、スピーカーの配置などが異なることが分かる

Fire HD 7と似て非なる筐体

 複雑な面構成のボディ、電源ボタンや音量調節ボタン、背面のAmazonロゴなどは、発売済みの下位モデル「Fire HD 7」とよく似ており、遠目に見ると同一筐体のように見えるが、実際には全体のサイズや背面スピーカーなどのレイアウトが異なっており、全くの別設計である。

 フロント周りにしても前面カメラが追加されており、ボタンなどの細部を除けば、共通の部品はほとんどなさそうだ。本稿では取り扱わないが、純正品として用意されているORIGAMIカバーにしても、同じ7型でありながら、外寸サイズが異なることから、HDXとHDで別のものが用意されているといった具合だ。

背面左上には音量調節キーのほか、上部にスピーカーを搭載
背面右上。丸型の電源キー、スピーカーを搭載。ボタンは指先で機能を判別でき分かりやすい
横方向から見たところ。スピーカーのある面はデスク上に置いても塞がれない構造になっている
断面が斜めにカットされているため、充電のためにMicro USBケーブルを挿すとやや上方に突き出るのは、好き嫌いが分かれるところ。充電ステータスを表すLEDは搭載されない
旧Fire HD(下)との幅の比較。挟額縁化により、約9mmほどスリムになっている
こちらは長辺の比較。こちらも若干短くなっているが、短辺ほどではない
厚みの比較。上がFire HD 7、下が旧Fire HDと並べている(いずれも左側が本製品)。実寸ではそれぞれ1.6/1.3mm薄くなっただけだが、Fire HD 7からは約40g、旧Fire HDからは約100g軽量化されていることもあり、実際に持つとそれ以上の差があるように感じる
背面上部のAmazonロゴ。下位モデルのFire HD 7では長時間使っているとロゴ上部が熱を持つという問題があったが、本製品ではそれは感じられなかった
左が本製品、右がFire HD 7。同じ程度使っていても、本製品のほうが手の脂が付きにくい

 また、しばらく使い続けているとその差が顕著に出てくるのだが、本製品の背面は「Fire HD 7」と同じように見えて、明らかに指紋が付きにくい。おそらく滑り止めも含めて特殊な処理が施されているものと考えられる。こうした仕様に現れない隅々にまで手が入っているのも、上位モデルである本製品ならではといったところだ。

セットアップ手順およびインターフェイスはFire HD 7と同等

 セットアップ手順については前回レビューしたFire HD 7と共通で、特に難解な手順はなく、また本製品ならではのプロセスもない。新Kindle Fireファミリーが搭載するAndroidベースの独自OS「Fire OS」の仕様に準ずる以上、これは当然だろう。

 インターフェイス周りも同様で、ホーム画面ではさまざまなアイテムを左右フリックでスクロール表示できる「スライダー」が中央にあり、ゲーム/アプリ/本/ミュージック/ビデオなどの「コンテンツライブラリ」が上部に並ぶレイアウトを採用している。Fire HD 7で新たに採用された、画面を下から上にスワイプすることで表示されるクイックスイッチ機能や、おやすみモードについても同様だ。

 違いといえば、カメラが搭載されていることでFire HD 7になかったカメラアプリがショートカットに追加されていたり、センサーが搭載されたことで明るさの自動調整モードが追加されているといった程度だ。以下、旧Fire HDとの比較という形でスクリーンショットを紹介する。

ホーム画面。左が本製品、右が旧Fire HD(以下同じ)。これまでは右下の星マークをタップすることで表示できたお気に入りが、初期状態では画面下に8つ表示されており、さらに下から上へのスワイプで全画面表示されるようになった。これら仕様はFire HD 7と同様
ホーム画面を横にした状態(この画像のみ、上が本製品、下が旧Fire HD)。縦の状態では表示されていたおすすめ商品が表示されなくなる
「お買い物」。Kindleストアを始めとするAmazon運営のストアへのショートカットのほか、Amazon.co.jpで買い物をするためのリンクがまとめられている。画面下部にスライダーが表示されるようになった
「ゲーム」ライブラリ。クラウドおよび端末上のゲームアプリを切り替えて表示できるほか、ストアに移動することも可能
「アプリ」ライブラリ。こちらもクラウド/端末を切り替えて表示できるほか、アプリストアにも移動可能。なお、この画面のDropboxのように、アプリストアを経由せずにインストールしたアプリについてはクラウドには表示されず、端末にのみ表示される
「本」ライブラリ。本棚を模したデザインが廃止され、フラットなデザインになった。こちらもクラウド/端末の切り替えができ、Kindleストアへも移動可能。リスト表示に切り替えることもできる
「ミュージック」ライブラリ。こちらもクラウド/端末の切り替えができ、Amazon MP3ストアへも移動可能
「ビデオ」ライブラリ。従来モデルと同様、国内ではAmazonの動画サービス(Amazon Instant Video)がまだ開始されていないため、自前のコンテンツを取り込む方法が記載されている
「ウェブ」ライブラリ。Amazon独自のブラウザ「Amazon Silk」が使用できる。使い方は一般的なブラウザと変わらない
「写真」ライブラリ。解像度が向上したためか、サムネイルの数が横4つから5つに増えている。ちなみに本製品のインカメラで撮影できる写真は768×1,024ドットで、動画(720×1,280ドット)の撮影も可能
「ドキュメント」ライブラリ。パーソナルドキュメントにアップロード済みのPDFコンテンツを表示できる。タップするとダウンロードされる
画面上部を下にスワイプすると、基本機能にアクセスするためのクイック設定メニューが表示される。後述する新機能「おやすみモード」が追加されている。またFire HD 7は非対応だった明るさの自動調整機能を備える
多くの画面では、画面左上の「三」マークをタップすればメニューが表示されるように操作性の共通化が図られている。これは本ライブラリでメニューを表示したところで、新しくスタートした「Kindle連載」などへのショートカットが並ぶ
コンテンツの表示中に画面を下から上にスワイプすると、ホーム画面のスライダーと同じ内容が画面下部に表示される「クイックスイッチ」機能を搭載する。機能の詳細は前回のFire HD 7のレビューを参照いただきたい
時間帯指定もしくはコンテンツを指定して通知を非表示にできる「おやすみモード」を搭載。通知バーから手動でオン/オフすることも可能
設定画面の「ディスプレイとサウンド」からは、新たに搭載されたMiracast準拠のディスプレイミラーリング機能のセッティングが行なえる

高解像度化で細部の表現力が向上。細かい文字などで顕著

 本や音楽といった各コンテンツについては、全体的にデザインがシンプルになり、画面のファーストビューになるべく多くの情報を詰め込もうとしているといった変化はあるものの、操作方法ががらりと変わってしまうような極端な違いはない。Fire HD 7との比較で言うと、例えば10文字表示されていたところに11文字表示されているといった細かい違いはあるが、基本的には同一である。

 もっとも本製品は画面解像度が1,920×1,200ドット(323ppi)ということで、1,280×800ドット(216ppi)のFire HD 7および旧Fire HDに比べると、細部の表現力は圧倒的に向上している。iPhone/iPadのRetinaモデルと非Retinaモデルほどの差はないが、本製品にいったん慣れてしまうと、旧Fire HDには戻れなくなるという意味では近いものがある。以下、画面の拡大写真でご確認いただきたい。

「本」のライブラリ。左が本製品、右が旧Fire HD(以下同じ)。フォントサイズの見直しやヘッダ部のコンパクト化などで要素が詰まり、その分1ページに多くの本が表示できるようになっている。これら傾向は基本的にFire HD 7と同一
テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)を表示したところ。1行あたりの文字数が若干増えているといった差はあるが、それ以外には特に大きな違いは見られない
タップしてメニューバーなどを表示したところ。テキストラベルが省かれてアイコンによる表示が主体になり、その結果フォントサイズが具体的な数値で表示されなくなっている。ちなみにフォントサイズは11段階で可変
Fire HD 7やKindle Paperwhiteの新モデルと同様、新しいフォントとして「筑紫明朝」が追加された
移動メニューは、従来モデルでは「移動」をタップして表示していたが、本製品は画面を左→右にスワイプするか、左上の「三」マークをタップして呼び出す方式に改められている
単語選択による内蔵辞書のポップアップ表示。細かい文言が変わっているほか、ポップアップに表示される文字数が若干増えているが、全体的には大きな変化はない
Fire HD 7と同様、辞書のポップアップメニューには、新たに「翻訳」が追加されている
コミックコンテンツ(うめ著「大東京トイボックス 1巻」)を表示したところ。特に大きな違いは見られない。タップするとメニューバーが表示されるのも同様だ
テキストコンテンツの比較。左が本製品、右がFire HD 7。文字サイズはもっとも小さくして比較しているが、解像度の違いがよく分かる。ちなみにFire HD 7と旧Fire HDは同じ解像度ということもありクオリティはほぼ同等
こちらはコミックコンテンツの比較。左が本製品、右がFire HD 7で、見開きで表示したものをズームしている。単ページ表示ではほとんど違いはなく、このように見開き表示で縮小するとようやく細部の表現力の違いが分かる。このあたりは電子書籍の元データの解像度によっても差がありそうだ

ベンチマーク上はNexus 7をも凌駕

 基本的にできることは下位モデルのFire HD 7と同一ということで、パフォーマンスについてチェックしておこう。

 本製品はプロセッサにSnapdragon 800(2.2GHz、クアッドコア)を採用しており、OMAP4470(1.5GHz、デュアルコア)のFire HD 7や、OMAP4460(1.2GHz、デュアルコア)の旧Fire HDに比べると、パフォーマンスの強化が著しい。ベンチマークソフト「Quadrant Professional Ver.2.1.1」による比較は以下の通りで、桁違いとも言える数値を叩き出している。RAMが2GB(前述の2モデルはいずれも1GB)というのも大きく影響しているようだ。

製品名発売年TotalCPUMemoryI/O2D3D
Kindle Fire HDX 72013年モデル20311751891707266943302271
Kindle Fire HD 72013年モデル31867154375323452542424
Kindle Fire HD2012年モデル22225749189917652801419
Kindle Fire2012年モデル2032473219799373912123
Nexus 72013年モデル520913498806621502452088

 単体のベンチマークアプリによる簡易テストであることは差し引いていただく必要はあるが、下位モデルのFire HD 7を上回っているのは当然としても、参考値として並べているNexus 7(2013)すら凌駕しているのは驚きである。余談だが、旧Fireの後継である下位モデルのFire HD 7も、2D性能を除けば旧Fire HD以上のパフォーマンスであることも分かって興味深い。

 もっとも、(当然といえばそうだが)電子書籍ビューアとして使っている限りでは、こうした違いは感じにくい。また動画再生においても、筆者がサンプルで使っているフルHD動画は、下位モデルのFire HD 7でも十分滑らかに動いてしまうので、本製品が突出してスピーディとか滑らかに感じられるかというと、そうしたこともない。

 そうした意味では、本製品のポテンシャルを最大限に発揮しうるのは、動画よりも負荷のかかる一部のゲームということになるだろう。また今回は未検証だが、本製品にはMiracast対応のディスプレイに画面を伝送できる機能が搭載されているので、デュアルアンテナかつデュアルバンドのWi-Fiと併せて、そちらを快適に使う場合にも貢献しうるはずだ。逆に、こうした点に積極的に魅力を感じないのであれば、下位モデルのFire HD 7でも十分、という判断になるかもしれない。

軽量化のメリットは大も、画面端にみられる青帯に注意

 本稿執筆時点で約2週間試用してるが、旧Fire HDより100g近く軽いこともあり、ハンドリングの快適さが全く違う。旧Fire HDでは手に持って読書しているうちに疲れてしまい、読むこと自体をやめざるを得ない場合があったが、本製品ではそこまでの負担は感じない。Kindle Paperwhite並み、と言うとさすがオーバーだが、感覚的には旧Fire HDよりもE Ink端末に近い。

 また、下位モデルのFire HD 7では、スピーカーが本体を手で持った際に指先で隠れてしまう位置にあるのだが、本製品ではスピーカーが画面の上部寄りにレイアウトされており、どのような持ち方をしてもまず指先で塞がれることがなく、それゆえ画面に没頭できる。また下位モデルのFire HD 7では長時間使っているとロゴ上部が熱を持つという問題があったが、本製品ではそうした問題もないようだ。動画やゲームを中心に楽しむユーザーにとっては、大きなメリットだろう。

Kindle Paperwhite(右)との比較。100g程度の差はあるが、感覚的には旧Fire HDよりもこちらに近い
スピーカーが本体上部にあるので、指先で塞がれることがない

 1つ気になるのは、画面の端に青帯がみられることだ。具体的には、白いページなどを表示した際に、画面の端に青色のグラデーションがかかって見える。昨年発売されたKindle Paperwhiteの初代モデルで、E Ink画面の下ににじみが見られるという現象があったが、症状としてはこれに近く、画面の輝度にかかわらず発生する(画面の短辺よりも長辺がこの傾向が顕著)。米Amazon.comのカスタマーレビューを見ても、同様の指摘がいくつか見られるので、個体の問題ではないようだ。

 この件に関しては製品ページに注釈があり「白色LEDではなく青色LEDを採用」したことが原因であり「忠実な色彩を再現するため」の措置であると説明されている。が、技術的にどうかはさておき、背景色が基本的に白である電子書籍では、かなり気になるのは事実だ。特に本製品を縦向きにして電子書籍を読む場合、横書きの英文だと上から下に目を走らせるので画面長辺にみられるこの青帯はあまり気にならないのだが、縦書きの日本語コンテンツでは右から左に向かって視線を走らせるため、どうしても青帯が目に入りやすい。

白紙のページを表示したところ。画面の境目がやや青みがかっているのが分かる。短辺よりも長辺のほうがやや色が濃い
別のアングルから撮ったところ。画面を縦向きにして電子書籍を読む場合、文章を追っていった時に否応なしに目に飛び込んでくるので、気になる人も多そうだ
同じ画像をFire HD 7(右)と比較したところ。撮影時のズームの関係でモアレが出てしまっている点は差し引く必要があるが、それでもFire HD 7では全く出ていないのと比べると違いは明らか
この青帯については製品ページにも説明がある。あくまでも仕様ということのようだ

 なお、下位モデルのFire HD 7ではこの青帯は発生しない。横に並べるとはっきりするのだが、両者はディスプレイの色温度も全く異なっており、解像度も違うことからして、液晶パネルが全く別物のようだ(ちなみにFire HD 7と旧Fire HDは、見比べた限りでは液晶パネルの特性は近いように感じられる)。部材の特性である以上、ファームアップで解消される可能性は低いと推測されるので、気になる人は取扱店店頭のデモ機で購入前にチェックすることをおすすめする。

競合はKindle Fire HDX 8.9?

 ざっと見てきたが、為替レートの関係で従来モデルよりも価格が上がっているとはいえ、同じ16GBモデルで比較すると、本製品が24,800円、Nexus 7が27,800円。32GBモデルだと本製品が29,800円、Nexus 7が33,800円。先に述べたようにハードのスペック面では本製品のほうが優位だが、これはあくまでベンチマーク上の話で、そもそも製品の位置付けが全く違う。むしろこの程度の価格差なら、汎用性を重視してNexus 7を取るか、KindleなどAmazonのコンテンツとの親和性を優先して本製品を取るか、といった話になるだろう。

 ちなみに発売になったばかりのiPad mini Retinaは、16GBが41,900円、32GBが51,800円で、価格だけを見るとかなりの差があるが、こちらも製品の位置付けからして本製品との2択という状況にはなりにくい。先のNexus 7や、本製品の下位モデルであるFire HD 7も含めて、用途や予算を考慮して見極めるべきだろう。16GBで31,800円の非Retinaモデルという選択肢もある。

Nexus 7との比較。やや縦長のNexus 7に対し、本製品は横長でどちらかというと寸胴なフォルム
iPad miniとの比較。本体の薄さや画面の広さではiPad miniに分がある

 一方、旧Fire HDから買い替える価値があるかどうかについては、動画やゲームなどでハードウェアの性能不足を嘆いていた人には間違いなくおすすめできるが、そうでない人にとっては機能ではなく画面の美しさや軽さにどれだけ投資できるかという話なので、人によって判断が大きく変わってくるはずだ。先に述べた画面端の青帯が許容できるかどうかもポイントになるだろう。ちなみに下位モデルのFire HD 7は16GBで17,800円とコストパフォーマンスは悪くないが、ハードの仕様としては旧Fire HDと同等である上、カメラがないといった要因もあり、新規に買う場合はおすすめできるにせよ、旧Fire HDからの買い替えの対象にはなりにくい。

 むしろ、本製品にとって一番強敵となる競合製品は、ほかならぬ本製品の大画面版、「Kindle Fire HDX 8.9」だろう。8.9型の大画面でありながら本製品と約70gしか変わらない374gということで、少しでも大きな画面サイズを求めるのであればこちらも選択肢に入ってくる(価格は1.5万円高くなるのが唯一の悩みどころだろう)。次回はこのKindle Fire HDX 8.9について詳しくお届けしたい。

(山口 真弘)