山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

楽天「kobo glo」

〜フロントライト搭載、外部メモリカードが使える6型E Ink端末

楽天「kobo glo」。今回紹介しているシルバースターのほか、ブラックナイト、ブルームーン、ピンクサンセットの4色をラインナップする
発売中

価格:7,980円

 楽天の「kobo glo」は、6型のE Ink電子ペーパーを採用した電子書籍端末だ。同社の電子書籍ストア「koboイーブックストア」と連携し、電子書籍をダウンロード購入して楽しむことができる。フロントライトを搭載しており、暗所でも読書が楽しめることが売りとされている。

 端末の初期トラブルに加え、コンテンツ数の不適切な表示による消費者庁からの行政指導、同社サイトにおけるレビューの削除、一部ユーザーに対する端末の無料送付など、この夏から秋にかけてKindleとは違った意味で話題となった楽天kobo。端末こそファームアップである程度使えるレベルに改善されたものの、ストアの使い勝手は相変わらずで、2ちゃんねるなどではすっかり「自炊したCBZファイルを読むための端末」という評価が定着してしまっているほどだ。

 そこに新たに登場した「kobo glo」は、従来モデルの「kobo Touch」とは併売という形ながらも、わずか4カ月での新モデル登場という、電子書籍端末の製品サイクルとしては異例の早さでの投入でユーザーを驚かせた。発売日がKindle Paperwhite国内販売の前日ということで、マーケティング的な施策によるものと見られるが、購入してわずか4カ月で手持ちのkobo Touchが旧世代機となったユーザーは複雑な心境だろう。

 今回はこの「kobo glo」を、従来のkobo Touch、および端末として競合になるKindle Paperwhiteと比較しながらチェックしていく。

フロントライトが追加され、画面の解像度も向上

 まずはざっと従来モデルであるkobo Touch、および直接の競合になるKindle Paperwhiteと基本スペックを比較してみよう。

【表】スペック比較
機種 kobo glo kobo Touch Kindle Paperwhite PRS-T2 BookLive!Reader Lideo
発売元 楽天 楽天 Amazon ソニー BookLive
サイズ(最厚部) 114×157×10mm 114×165×10mm 117×169×9.1mm 110×173.3×10.0mm 110×165×9.4mm
重量 約185g 約185g 約213g(3Gモデルは約222g) 約164g 約170g
解像度/画面サイズ 758×1,024ドット/6型 600×800ドット/6型 758×1,024ドット/6型 600×800ドット/6型 600×800ドット/6型
ディスプレイ モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー
通信方式 IEEE 802.11 b/g/n IEEE 802.11 b/g/n IEEE 802.11 b/g/n、3G(3Gモデルのみ) IEEE 802.11 b/g/n IEEE 802.11 b/g/n、WiMAX
内蔵ストレージ 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1GB) 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1GB) 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1.25GB) 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1.3GB) 4GB
メモリカードスロット microSD microSD - microSD -
内蔵ライト - - -
バッテリー持続時間(メーカー公称値) 約1カ月、約30,000ページ(Wi-Fiオフ) 約1カ月、約15,000ページ(Wi-Fiオフ) 8週間(Wi-Fiオフ) 約30,000ページ、最長2カ月(Wi-Fiオフ、1日30分読書時)、最長1.5カ月(Wi-Fiオン) 不明
電子書籍対応フォーマット EPUB、PDF(同社ストアで販売しているPDF書籍のみサポート) EPUB、PDF(同社ストアで販売しているPDF書籍のみサポート) Kindle (AZW3、AZW), TXT, PDF, unprotected MOBI, PRC natively; HTML, DOC, DOCX, JPEG, GIF, PNG, BMP through conversion. XMDF(mnh/zbf).book、EPUB、PDF、TXT、JPEG、GIF、PNG、BMP 不明
電子書籍ストア koboイーブックストア koboイーブックストア Kindleストア Reader Store、紀伊國屋書店BookWeb BookLive!
価格(2012年10月14日現在) 7,980円 6,980円 7,980円、12,980円(3Gモデル) 9,980円 8,480円

 こうして比較すると、従来のkobo Touchからは着実に進化していることがよくわかる。Kindleの場合、最新モデルであるKindle Paperwhiteにモデルチェンジした時点で、音声出力機能が省かれるなど、従来モデルではできていたことができなくなったケースが見られる。本モデルについては、この仕様欄を見る限りでは、そうした違いは見られない。上位互換といっていい仕様だ。

 また、今回の製品が、競合であるKindle Paperwhiteとハードウェア上もよく似通っていることがわかる。中でも新たに搭載されたフロントライト、そして解像度が向上した6型E Inkパネルなどはそっくりといっていい。大きく異なるのはmicroSDスロットを搭載することで、大容量データの保存が可能なことから、コミックに適していると同社がアピールする根拠の1つになっている。

 とはいえ、基本的な使い勝手に難があった場合、こうしたスペック比較以前の問題であること、また端末だけでなくストアも含めたトータルの完成度こそが重要であることは、かつてのkobo Touchが証明している。これに加えてkoboにはスマートフォン/タブレットで利用できるアプリが本稿執筆時点(12月12日)でリリースされていないのも、他のストアと比べた場合の弱点だ。こうした点も踏まえながら、製品をチェックしていこう。

従来モデルであるkobo Touch(右)との比較。フロントライトのせいで見た目の印象が大きく異なるが、画面のサイズや配置はほぼ同一
裏面。キルト状の加工から、平坦なパネルにクロスのモールドが入った仕様に改められた
上面。電源ボタンの左にライトのスイッチを備える
左側面下にmicroSDスロットを備える。底面に見えるのはmicroUSBコネクタ
ライトの明るさを調節するためのスライドバーが新規に搭載されている
ライトの光源を上下に備える。ベゼルとの段差はかなりある
Kindle Paperwhite(左)との比較。6型、758×1,024の解像度、フロントライトなど共通仕様が多い
ソニーPRS-T2(中央)、BookLive!Reader Lideo(右)との比較。同じ6型のE Ink端末だが、ライトがあることで印象を異にする。この2機種と比べた場合は、ボタンレスであることも特徴

セットアップの流れは一般的。全コンテンツが同期される点は要注意

 まずはセットアップ。製品の電源を初回投入するとセットアップ画面が表示される。PCを使って設定するか、無線LANを使って本体のみで設定するかの2択だが、今回はPCを使用せずに無線LANで設定している。

 セットアップのフローは以下のスクリーンショットをご覧いただきたいが、言語を選んでから日付と時間を選び、無線LANの設定を行ない、楽天IDとパスワードを入力。使い方を説明する8ページのウィザードが表示されたのち、ホーム画面に遷移するという流れだ。IDとパスワードこそ自分で登録しなくてはいけないが、とくにおかしな遷移はない。至って普通だ。マニュアル類をまったく参照しなくとも作業を完了できるレベルだ。

 今回のセットアップに要した時間は13分。途中でソフトウェアアップデートによる再起動を1回挟んでいるため、それを省けば5分強で済んでいたはずで、きわめてスムーズだ。少なくとも前回、サーバトラブルでフリーズしていた面影はまったくない。最初からこのくらいスムーズであればと悔やまれるところだ。

まずは言語を選択
セットアップは、PCと接続して行なうか、無線LANで行なうかを選択できる。今回は後者を選択
時刻は自動取得される
ネットワークの検索を実行
ネットワークの一覧が表示された
パスワードを入力。WPSなどの自動設定機能は備えない
今回はファームウェアの更新が行なわれた
ファームウェアの更新中。このあといったん再起動する
楽天のIDおよびパスワードを入力してログインする
ライブラリの同期が始まる。後述するように、除外していないすべてのコンテンツがダウンロードされる
8ページにわたって使い方が紹介される。このあたりの作りは丁寧で悪くない
ホーム画面が表示された。使い方紹介の間にライブラリの同期が行なわれ、購入済みのコンテンツが表示されている

 ただし仕様面で疑問符がつくのが、このセットアップの過程で、過去に購入したすべてのコンテンツをクラウドからダウンロードしようとすることだ。Kindle Paperwhiteであれば、ユーザーマニュアルと実質2ページの「ようこそ」以外のコンテンツは任意に選択してダウンロードできるわけだが、本製品はライブラリすべてを強制的にダウンロードしようとする。つまり100冊あれば100冊全部をダウンロードしようとするわけだ。これはちょっといただけない。

 実際には、PCのブラウザからkoboの「マイライブラリ」を開くと購入済みコンテンツの一覧が見られるので、チェックを入れて「収納箱」に移動させることで同期対象からはずれるのだが、デフォルトでは全部ダウンロードされる状態になっており、また端末側からは収納箱に移動する操作が行なえない。そのため、こうした仕様を知らなければセットアップ時点ですべてのコンテンツが否応なしにダウンロードされてしまう。購入済みの本が増えてきた際に不安な仕様だ。少なくとも端末側からの操作はできてしかるべきだろう。

 ちなみに本製品には48ページにも及ぶ「スタートアップマニュアル」なる小冊子が付属している。従来モデルでセットアップ方法および使い方についての問い合わせが相次いだがゆえの措置とみられ、基本的な設定および操作手順は、この小冊子を手元に置いて確認できる。もっとも、サポートの姿勢としては評価すべきなのかもしれないが、マニュアルいらずで使える製品づくりとは逆方向に進んでいるわけで、製品へのすばやいフィードバックができないことを自ら露呈してしまっている格好である。あくまで今回限り、一時的な対応であってほしいと切に願う。

本製品のパッケージ。写真では分かりにくいが、本体と小冊子「スタートアップマニュアル」がシュリンク包装されている。左にあるのは先着特典の32GB microSDHCで、後述の購入実験で使用する
小冊子「スタートアップマニュアル」。48ページ(本文44ページ)にわたり基本的な設定および操作手順が紹介されている

操作性は従来とほぼ同一。コンテンツが増えると動作が重くなる傾向あり

 本製品の画面構成はkobo Touchとほぼ同じ。画面下のホームボタンの廃止にともなって画面左上にホームアイコンが追加されたのと、さらに下部にライトの調節機能が表示されるようになったくらいで、それ以外のメニューや機能については微細なマイナーチェンジにとどまっている。画面だけを見ていると、kobo Touchとほとんど区別がつかない。

ホーム画面。左下「ライブラリ」をタップすると、本やプレビューを表示できる
「本を探す」をタップすると、ストア上の本を検索できる
「Reading Life」では読書データやバッジといった読書関連の機能に移動できる。不要であれば設定画面から機能をオフにすることもできる
本文を表示したところ。既読の割合はパーセンテージで表示される
画面中央をタップすると上下にメニューが表示される。ちなみにホームボタンが廃止されたことにより、左上と右上にそれぞれホームへのリンクが用意されている
進捗バーを表示して任意の位置に移動できる
フォントの種類およびサイズを調整できる。いくつかのコンテンツで確認した限りでは、行間、余白、文字揃えはグレーアウトしたままだった
フォントは従来と同じく、モリサワリュウミンとモリサワゴシックMB101を搭載
ソーシャル連携のほか、設定画面に移動できる
ページのリフレッシュレートは1〜6ページから調節できる。ただしコミックでは強制的に1ページにつき1回リフレッシュされる
右上のメニューボタンをタップすると現在のステータスが表示される。同期もここから行なう
設定画面。ライトの調節画面などが追加されているが、基本的に従来モデルと同じ
基本的にフロントライトが常時点灯状態にあるKindle Paperwhiteと異なり、オフになるまでの時間を5〜60分の範囲(または無効)で設定できる。スリープモード、電源オフまでの時間も同様
本体にマグネットが内蔵されており、カバー連動でスリープモードに入る機能を備える。iPadに似た機能だ
チェスやナンプレといったお試し機能を備える
デバイス情報。現時点でのソフトウェアバージョンは「2.2.1」

 ページめくりなどの挙動は、kobo Touchの初期ファームウェアと比較すると、かなり改善されている。Kindle PaperwhiteやソニーPRS-T2と比較すると空振りの発生頻度は明らかに高く、コミック1冊を読み終えるまでに数回は空振りが発生するのだが、まだイライラの度合いは少ない。

【動画】本製品とkobo Touch(右)で、テキストコンテンツの表示を比較しているところ。基本的に挙動に差は見られない
【動画】本製品とkobo Touch(右)で、コミック(大東京トイボックス 1巻)の表示を比較しているところ。箇所こそ違うものの、連続してページをめくると真っ白になるといった挙動はそっくりだ
【動画】本製品とKindle Paperwhite(右)で、テキストコンテンツの表示を比較しているところ。こちらも挙動にほとんど差は見られない
【動画】本製品とKindle Paperwhite(右)で、コミック(大東京トイボックス 1巻)の表示を比較しているところ。本製品は連続してページをめくると真っ白になるほか、空振りも発生しているが、Kindle Paperwhiteはきちんと付いてきており、空振りもない

 ただ、使い続けていると、これがだんだんと怪しくなってくる。ページめくりにおける空振りの頻度は高くなるほか、購入済みの本が増えてくると、コミックでは1ページをめくるのに最大で7〜8秒ほどかかるケースが出てくる。コンテンツが増えるにつれ起こる症状のようで、最初のうちにダウンロードしたコンテンツはサクサクとめくれているのに、あとからダウンロードしたコンテンツは重い、という症状が見られる。詳しくは後述する。

 また、従来モデルからまったく改善されていない問題点も多い。例えば範囲選択などがそうで、辞書機能と合わせて実用レベルには程遠い。無線LANがオフの状態のまま検索を実行して、結果を0件と返したり、ハングアップしたようになる症状もそのままだ。ソフトウェアの挙動は、基本的にほとんど変わっていないように思える。

 一方、ハードウェアに関連するところでは改善されている点もある。画面のざらつきはかなり減少しており、残像も明らかに少なくなっている。高解像度のパネルになったことと、フロントライトが搭載されたという2つの変更点が、よい方向に作用しているのだろう。

 同じくフロントライトを搭載したKindle Paperwhiteと比較すると、色味がやや違う。Kindle Paperwhiteはやや青みがかっていて、本製品はやや黄色がかっている。比べてようやくわかるレベルだが、好みが分かれそうだ。またKindle Paperwhiteは下部にややムラがあるが、本製品はムラがない代わりにグレーの帯があり、こちらも一長一短だ。個体差もあるかもしれないが、写真を参考にしてほしい。

背景を白にして、Kindle Paperwhite(右)と比較したところ。Kindle Paperwhiteは下部にムラがあるが、本製品はかなりはっきりとしたグレーの帯がある
上方から見たところ。本製品のほうがむしろ光源が目立つことから、ムラがあるように見える
【動画】本製品およびKindle Paperwhite(右)で、フロントライトの調整機能をそれぞれ試したところ。明るさを最大にした場合はKindle Paperwhiteよりも本製品のほうが明るく感じられるが、その分白く飛びがちである

 バッテリについては、従来のkobo Touchは公称1カ月でありながらバッテリの減りが異常に速いことが各所で指摘されていたが、本製品ではそこそこ改善しているように思える。もっとも今回の実験中、バッテリ100%の状態でコミック10冊の同期を実行したところ、完了する時点では93%にまで減っていた。無線LANを使用した場合の値なのでメーカー公称値との比較はできないが(メーカー公称値の約30,000ページ/約1カ月というのは無線LANオフの状態での値である)、他のE Ink端末に比べると消耗スピードは速く、充電をまめにしなければどんどん減っていく印象が強い。

実際にストアでコミック100冊を購入して動作を検証

 さて、本製品は国内発表の時点から、コミックに適するというアピールがなされている。microSDスロットの搭載で大容量データが保存できることがその根拠であり、競合であるKindleを多分に意識した発言であるわけだが、ではある程度の数のコミックを保存した状態での使い勝手はどうなのか、実際に一定量のコンテンツを購入して試してみることにした。

 さすがに十数冊程度では判断しにくいので、合計100冊をストアで「大人買い」してみた。購入したのは、「ジパング」全43巻+「さよなら絶望先生」全30巻+「のだめカンタービレ」全25巻の合計98巻に、別途購入済みの「大東京トイボックス」1、2巻を加えて計100冊である。原則として5冊または10冊買うたびに同期を行ない、計100冊をダウンロードしている。

 購入しようとしてまず気がつくのが、端末上でストアを表示するといまだに巻数表示がない場合もあり、並び順もバラバラ、検索すると無関係なコンテンツも大量にヒットするなど、実質的に使いものにならないことだ。そのため今回は端末からではなくPC版ストアで購入した上で、端末側で同期を行なうという手順でダウンロードしている。

端末からストアにアクセスすると、いまだに巻数が表示されておらず見分けがつかないコンテンツがいくつもある
本個別のページを開いても巻数が表示されていない。表紙のサムネイルでしか見分けられないことになる
PCでアクセスすると、きちんと巻数が表示されている。ただし並び順はバラバラで、どのようなルールで並んでいるのかははっきりしない
「さよなら絶望先生」は、なぜか同じ巻が2回ずつ検索結果に表示され、全30巻にもかかわらず検索結果は60件と表示される。コンテンツ総数をカウントする上でどう扱われているかは不明だが、コミックではこのようなケースが散見される

 一般的にコミックは1冊あたり約25〜50MB程度の容量なので、20〜40冊ほど購入すればユーザー使用領域の1GBがいっぱいになる。今回は25冊目で本体容量がいっぱいになったことを告げるアラートが表示された。ちなみにコンテンツごとの保存先は選択できず、本体メモリがいっぱいになると初めてmicroSDが使われる形になる。

 さて、ダウンロードしたコンテンツを順に読んでいって気づくのは、あとからダウンロードしたコンテンツほど、ページめくりの速度が遅かったり、タップした時の反応が鈍いことだ。詳しくは以下の動画をご覧いただきたいが、1冊目(大東京トイボックス 1巻)がスムーズにページめくりができているのに比べて、100冊目(大東京トイボックス 2巻)は数秒待たないと反応しないこともざらである。

 同じ書籍で比較したわけではないので、実験として不完全ではあるのだが、仮にも同じシリーズのコミックであり、奥付にあるデジタル版の制作元も同じ、容量もほとんど違いがない(1巻が44.2MB、2巻が40.9MB)。データ保存先が本体メモリでなくmicroSDHCであることが影響している可能性はあるが、実際には本体メモリに収まる10冊目あたりですでに挙動が怪しくなる徴候が見られたので、それだけでは説明がつきにくい。

【動画】1冊目に購入した「大東京トイボックス 1巻」。稀にタップが空振りすることはあるものの、基本的にサクサクとページがめくれている
【動画】100冊目に購入した「大東京トイボックス 2巻」。次のページに移動するのに数秒かかることもしばしば。空振りしたかと思うとページがめくられるなど、ワンテンポ遅れる傾向もある

 というわけでこれを見る限り、この先500冊、1,000冊と買っていった場合に、おおいに不安であると言わざるを得ない。「同時にそんなにたくさんの冊数が読めるわけはないんだから、端末から削除して必要な時だけダウンロードすればいいのでは」というのであれば、外部メモリカードが使えるメリットはまったくなく、むしろクラウドとのやりとりの仕組みがしっかりしているKindle Paperwhiteのほうが有利ということになりかねない。さすがに自腹でこれ以上買うのはリスクが高いので遠慮するが、利用者として安心して使えるためのデータはなにかしら欲しいところである。

 あと余談だが、PCで複数のコミックを買って本製品でダウンロードすると、新しく買った順にダウンロードされることが多い。例えばコミックの1〜5巻を買って同期すると、5→4→3→2→1巻の順にダウンロードが実行される。1巻からダウンロードしてくれればバックグラウンドで残りをダウンロードしているうちに読み始められるわけだが、それができない。まとめて何冊か買う場合は、逆の順に買ったほうがよいというのが、今回の実験で得た(あまり役に立たない)ノウハウだ。

コミックをまとめ買いしたり、続けて購入するには不向きな仕様

 続いて、容量以外の仕様で、本製品がコミック向きと言えるのかどうかをチェックしていこう。

 多くのコミックは、1つの作品が複数巻で構成されていることが大きな特色だ。ほとんどが単巻、多くても上中下巻止まりの小説や実用書と大きく異なる、コミックならではの特性といっていい。これらをまとめ買いしても置き場所を取らないこと、もしくは1冊を読み終えて「面白かった! すぐに続きが読みたい!」という時に、すぐさまオンラインで購入して続きを読めることは、紙でなく電子書籍でコミックを読む利点の1つといえるだろう。

 こうした点から、国内で漫画コンテンツに注力している電子書籍ストア、具体的にはBookLive!などでは、「全巻まとめ買い」の機能を実装しており、先日発売されたばかりの専用端末「BookLive!Reader Lideo」でも、この機能が搭載されている。しかも1巻を読み終えたあとに全巻を購入しようとすると、購入済みの1巻を除いた残りの巻すべてが選択されるという、気が利いた仕様になっている。

 ところが本製品にはこうした機能はなく、購入はあくまで1冊ずつとなる。Kindle Paperwhiteも本製品と同じくまとめ買いの機能がないが、コミックの最終ページで関連作品(同じシリーズ、もしくは同じ著者の作品)がリストで表示されるので、タップするだけでKindleストア上のページに移動でき、ワンクリックで続きが購入できる。

「BookLive!Reader Lideo」では、「全巻カートに入れる」機能が用意されており、購入済みの巻を除いたすべての巻をまとめ買いできる
同じく「BookLive!Reader Lideo」では、コミックを読み終わった際、次の巻の販売ページにダイレクトにジャンプできる
こちらはKindle Paperwhite。コミックを読み終わった際に同じ著者の作品にジャンプできるほか、レコメンド機能も備える。ただし現状では全作品にこの画面が用意されているわけではない
本製品では、ホーム画面の「ディスカバリー」で関連作品が表示される場合があるが、確実ではない。今回は2巻までしか買っていないのに5、6、7巻がおすすめされるなど精度はいまいち

 しかし本製品ではこうした仕組みがないため、ストア検索でタイトルを手入力し、リスト表示から該当する巻を目視で探して買うしかない。しかも巻数が表示されない場合もあるので、端末からは何巻なのか見分けがつかず、仕方なくPC上で買わなくてはいけないこともしばしばだ(さきの実験がまさにそうだ)。これでは「すぐに読みたい」という気持ちの盛り上がりが失われてしまって当然だろう。IDやパスワードを入力せずに買える秀逸な仕組みでありながら、有効に機能していない。

 もう1つ、コミックで重要とされる解像度についてはどうだろうか。同じE Ink端末で比較した場合、Kindle Paperwhiteとはまったく同等、ReaderやBookLive!Reader Lideoよりは高解像度ということになる。ただネックなのはリフレッシュレートで、6ページにつき1回に変更できるKindle Paperwhiteと異なり、本製品はコミックは1ページにつき1回に固定されている。どちらが好みかは人にもよるが、少なくとも選択できないという点でマイナスだろう。

 以上、いくつかの観点からコミックに適しているかどうかを見てきたが、まとめると以下のようになる。

・容量面では外部カードが使えるkobo gloに軍配が上がる。しかしコンテンツ数が増えるほど動作が遅くなる傾向があり、挙動に不安が残る
・端末単体でクラウドと連携し、購入済みの本を管理できる機能においてはKindleが優勢
・解像度はReaderやBookLive!Reader Lideoには勝るが、Kindle Paperwhiteとは同等。またリフレッシュレートが選択可能な点においてKindle Paperwhiteが有利
・続きの巻をスムーズに購入するスキーム(Kindle)やまとめ買いの仕組み(Lideo)がなく、1冊ずつ手動で検索して購入するしなくてはならず、便利とは言いがたい

 ということで、コミックをまとめ買いしたり、続けて購入するには不向きな仕様であり、唯一の強みである容量にしても、前述のように冊数が増えた時の挙動に不安があったりと、コミックを快適に読むにはむしろ不向きな端末であるように感じられる。どちらかというとテキスト本向けと言われたほうがしっくり来るほどだ。

自炊したCBZファイルはむしろ快適に利用可能

 続いて、自炊データを大量に入れた場合は挙動にどのような影響を及ぼすのかを実験してみた。具体的には、microSDHCの容量いっぱいに、拡張子をCBZに変更したZIP圧縮JPGを詰め込み、それをkobo gloに挿入したうえで、端末の動作速度に与える影響を調べる実験である。CBZファイルはそもそもノンサポートなので、あくまで自炊端末としての挙動を試す実験ということになる。メーカーが想定している使い方の範疇外であることはご了承いただきたい。

 自炊データは主にPFUの「ScanSnap S1500」でスキャンしたコミック本のデータで、解像度は300dpi、多くのページはグレーモードで、とくに画面解像度に合わせてリサイズなどは行なっていない。ファイルサイズは平均すると80〜100MBほどだ。8GBのmicroSDHCだと約80冊、32GBのmicroSDHCだと約300冊が、実際に保存可能な冊数だ。

 製品にmicroSDHCを装着すると自動的に読み込みが始まる。まず8GBのmicroSDHCで試したところ、3分ほどで読み込みが完了し、表示できるようになった。表示のクオリティも十分で、かなり実用的である。ライブラリ上でサムネイルを表示する際はやや時間がかかるが、本を開いて読む分にはなんら問題ない。左右綴じを切り替えられるのがタップ操作だけで、フリック操作が逆向きになることくらいだ。

microSDHC内のコンテンツを読込中の画面。ちなみにmicroSDHCを抜き差しすると、そのたびに莫大な読み込み時間がかかるので、複数のmicroSDHCを取っ替え引っ替えして利用するのは現実的ではない

 8GBでまったく問題なかったので、microSDHCを32GBに取り替え、こちらも同様に容量いっぱいまで自炊CBZデータを放り込んで読み込ませてみた。32GB分を一度に読み込ませたせいか、2回ほど端末がフリーズしたが、3回目のトライで2時間ほどかかって読み込みが完了した。こちらもサムネイルの表示に時間がかかる以外は実用的である。

 といったわけで、2ちゃんねるなどではすっかり「自炊したCBZファイルを読むための端末」という評価が定着してしまっているkobo Touchだが、今回のkobo gloも負けず劣らず自炊向けである。今回は読み取ったままの生データをそのまま突っ込んでいるが、解像度を最適化すればさらにサクサク読める可能性まである。

ハードよりもソフトとサービスの改善が急務

 というわけで、従来モデルのリリース当時に比べると端末の出来はそこそこ改善されているが、マイナスだったのがようやくスタートラインに立ったレベルであり、サービスもひっくるめると実用性は依然低いまま、外部メモリについてもコンテンツ数が増えてくると挙動に不安があり、いまいち信頼性に欠けるというのが筆者の評価だ。すでにkobo Touchを利用している人なら、本製品に乗り替えることでフロントライトなどの恩恵は受けられるが、そのために数カ月も使っていないkobo Touchから買い替える価値があるかどうかは微妙だろう。

 かろうじて及第点なのは自炊端末としての用途で、それにしてもCBZファイルがノンサポートである以上、自己責任である。ネットで流通している出どころ不明のクーポンを使ってコンテンツを2〜4割引で購入できる点が、直接的なメリット、といったところだろうか。

 一般論だが、単にストアの使い勝手にクセがあるだけであれば、慣れで解決できる可能性もある。Kindleにしても、検索時の絞り込みなど、かなりクセのある操作方法が一部に見られるが、使い慣れると気にならなくなる。慣れがユーザービリティを凌駕するケースだ。ところがkoboの場合、例えば検索結果の表示順序のように、クセがつかめない場合も多く、慣れによる効率化が見込めない。ハードよりも何よりも、ソフトとサービスに手を加えるのが最優先課題であることは異論はないだろう。

 まだ救いがあるのは、今後主流になるであろうEPUB3を軸にコンテンツをリリースしており、独自のAZW3形式への変換が必要なKindleに比べ、将来的に新刊がスピーディにリリースされる可能性を残していることだ。筆者が先日「テルマエ・ロマエ」最新刊のリリース状況をチェックした際、同シリーズの取り扱いがある約10ストアの中で未リリースだったのがkoboともう1社だけだったりと、現状ではむしろ後手に回っている印象があるが、EPUB3を中心とした電子書籍化がさらに普及すれば、このあたりが改善される可能性はある。

 もっとも、これにしてもあくまで期待値込みの予測であり、現状ではkobo Touchリリース時の公約ですら果たされていないものも少なくない。これに加えて同社にはRabooをわずか1年強であっさり終息させた「実績」もある。将来に期待するのではなく、現時点での仕様をもって利用するか否かを判断すべきという、前回とまったく同じ結論をもって本稿の結びとしたい。

(山口 真弘)