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Amazon「Kindle Fire HDX 8.9」

〜2,560×1,600ドット、8.9型でわずか374gの超軽量タブレット

「Kindle Fire HDX 8.9」。従来の「Kindle Fire HD 8.9」の後継モデルにあたる
11月28日 発売

直販価格:
39,800円(16GB)
45,800円(32GB)
51,800円(64GB)

 Amazonの「Kindle Fire HDX 8.9」は、KindleストアやAmazon MP3ストアなど、Amazonが運営するストアで購入したコンテンツを楽しめるカラータブレットだ。従来の「Kindle Fire HD 8.9(以下、旧Fire HD 8.9)」の後継モデルにして、本製品と同時に発売になる「Kindle Fire HDX 7(以下Fire HDX 7)」の大画面版に当たる製品だ。

 11月28日に発売が予定されている本製品について、今回は一足先に発売された海外版を用いてレビューする。ハードウェアについては相違はなく、日本語にも対応しているが、国内で発売されるモデルとは若干異なる可能性はあるのでご了承いただきたい。

筐体のデザインは7型の「Fire HDX 7」と共通だが、本製品の方が薄いこともあり、印象はかなり異なる。カラーはブラックのみ
パッケージ。今回試用したのは海外版のため、国内版ではこのスリーブは別のデザインに差し替わる可能性がある
スリーブを外して開封。ビニールで覆われた本体が封入されている
同梱物一覧。「Fire HD 7」「Fire HDX 7」と同様、従来モデルでは別売だった充電用のUSB-ACアダプタが標準添付される

従来の7型モデルを下回る、約374gという驚異の軽さ

 まずは従来モデル、およびiPadとの比較から。

  Kindle Fire HDX 8.9 Kindle Fire HD 8.9 iPad Air
発売元 Amazon Amazon Apple
発売年月 2013年11月 2012年11月(国内では2013年3月) 2013年11月
サイズ(最厚部) 231×158×7.8mm 240×164×8.8mm 240×169.5×7.5mm
重量 約374g 約567g 約469g
OS Fire OS 3.0 独自(Androidベース、Fire OS相当と推測) iOS 7
画面サイズ/解像度 8.9型/2,560×1,600ドット (339ppi) 8.9型/1,920×1,200ドット (254ppi) 9.7型/2,048×1,536ドット (264ppi)
通信方式 802.11a/b/g/n 802.11a/b/g/n 802.11a/b/g/n
内蔵ストレージ 16GB(ユーザー領域10.9GB)
32GB(ユーザー領域25.1GB)
64GB(ユーザー領域53.7GB)
16GB(ユーザー領域12.7GB)
32GB(ユーザー領域27.1GB)
16/32/64/128GB
バッテリ持続時間(メーカー公称値) 12時間(書籍のみの場合18時間) 10時間(無線LANオン) Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生、オーディオ再生:最大10時間
カメラ 前面/背面 前面 前面/背面
電子書籍ストア Kindleストア Kindleストア iBookStoreなど
価格(2013/11/24時点) 16GB 39,800円
32GB 45,800円
64GB 51,800円
16GB 24,800円
32GB 29,800円
16GB 51,800円
32GB 61,800円
64GB 71,800円
128GB 81,800円

 8.9型ということで、本体サイズはiPad mini(7.9型)とiPad Air(9.7型)の中間、どちらかというとiPad Airに近い。画面はワイド比率だが、インカメラがiPad Airと違って長辺側にレイアウトされているため、結果的には筐体の縦横比はiPad Airとほぼ同じで、一回り小さいサイズにまとまっている。

 本製品で特筆すべきはその軽さだろう。わずか約374g、iPad Airよりも約95gも軽いばかりか、7.9型のiPad mini(約331g)とわずか約43gしか違わない。旧Fire HD 8.9(約567g)からはおよそ200g、スマホ1台分を優に超える重量が削減されている計算だ。画面サイズが7型の旧Fire HD(約395g)よりもなぜか軽いという逆転現象まで発生しており、まさに異次元の軽さといっていい。他のタブレットと比較した場合にどの位置にいるのかは、下記の比較表も参考にしてほしい。

【表】主な8〜10型クラスのタブレットと比較した際の本製品の重量
製品名 サイズ 重量
HP Slate 2 Tablet PC 8.9型 約690g
Optimus Pad L-06C 8.9型 約620g
Kindle Fire HD 8.9 8.9型 約567g
Kindle DX 9.7型 約535.8g
Xperia Tablet Z SGP312JP 10.1型 約495g
iPad Air 9.7型 約469g
Kindle Fire HDX 8.9 8.9型 約374g
【表】主な7型クラスのタブレットと比較した際の本製品の重量
製品名 サイズ 重量
ICONIA TAB A100 7型 約410g
IdeaPad Tablet A1 7型 約400g
Kindle Fire 7型 約400g
Kindle Fire HD 7型 約395g
GALAXY Tab SC-01C 7型 約382g
REGZA Tablet AT3S0/35D 7型 約379g
Kindle Fire HDX 8.9 8.9型 約374g
MeMO Pad ME172V 7型 約358g
Nexus 7(2012) 7型 約340g
iPad mini(Wi-Fiモデル) 7.9型 約308g
Nexus 7(2013) 7型 約290g
LaVie Tab S 7型 約250g

 この軽さを生み出している要因が、本製品の薄さだ。最厚部約7.8mmという厚みは、約7.5mmのiPad miniやAirには数値上は負けるが、全体の厚みが均一なiPad miniやAirと異なり、端が斜めにカットされている分、体積が少なく、また手に持った際はiPad miniやAirよりも薄く感じられる効果も生み出している。手に持つと意外とずっしり来るiPad miniやAirと異なり、持つとむしろ軽く薄く感じるのだ。この違いは大きい。

背面左上には音量調節キーのほか、上部にスピーカーを搭載。これらレイアウトは7型のFire HDX 7を踏襲している
背面右上。丸型の電源キー、スピーカーを搭載。ボタンは指先で機能を判別でき分かりやすい
背面中央にカメラを搭載。上部にはマイクとおぼしき穴が2つある。ちなみに背面ロゴは7型モデルと同様「Amazon」となっている
横方向から見たところ。スピーカーのある面はデスク上に置いても塞がれない構造になっている。Fire HDX 7に比べると明らかに薄い
断面が斜めにカットされているため、充電のためにMicro USBケーブルを挿すとやや上向きに突き出るが、Fire HD 7/Fire HDX 7ほど極端な傾きではない。充電ステータスを表すLEDは非搭載
Kindle Fire HDX 7(左上、7型)、本製品(左下、8.9型)、iPad mini Retina(右上、7.9型)、iPad Air(右下、9.7型)の比較
4台をサイズ順に積んでみた様子。上から、Kindle Fire HDX 7(7型)、iPad mini Retina(7.9型)、本製品(8.9型)、iPad Air(9.7型)
本製品(左、8.9型)とiPad Air(右、9.7型)の比較。画面がワイド比率の本製品の方がボディがスリムになりそうなところだが、インカメラが長辺に配置されているためスリムさが相殺され、結果として幅・奥行きともにiPad Airをほぼ等しく縮小したサイズになっている
幅と厚みの比較。いずれも上が本製品、下がiPad Air。幅・奥行きともにほぼ同じ割合で本製品の方が小さい
画面を伏せて厚みを比較したところ。最厚部で比較すると本製品の方が厚みがあるが、端がナナメにカットされているため、手に持った際の印象は本製品の方が薄く感じるのが面白い

 これだけ薄く軽くなっていながら、バッテリ持続時間が最大10時間から12時間へと逆に延びているのも秀逸だ。Fire HDX 7と同様、テキスト本を読む際に不要なシステムをシャットダウンして電力消費を抑える「読書モード」も搭載しており、こちらを利用すると18時間まで延びる。Fire HDX 7は読書モードでも17時間なので、本製品の方が長寿命だ。

 解像度も、2,560×1,600ドット、画素密度は339ppiと、2,048×1,536ドット/264ppiのiPad Airを遙かに上回っている。ちなみに本製品の先代に当たる旧Fire HD 8.9は、1,920×1,200ドット/254ppiということで、単体で見ると全く問題なく通用するスペックだが、横に並べるとさすがに分が悪く見えてしまう。

 このほかのスペックは、おおむね7型のFire HDX 7を踏襲している。具体的には、プロセッサがSnapdragon 800(2.2GHz、クアッドコア)、RAMが2GB、Wi-Fiがデュアルバンドかつデュアルアンテナといったところだ。違いといえば、このWi-FiがMIMOに加え、40MHzの帯域を使って高速な通信が行なえる「HT40」に新たに対応したこと、背面カメラを搭載していることで、まさに全部盛りといっていいハイスペックである。人によってはメモリカードスロットがないのが気になる程度だろうか。

従来モデルであるFire HD 8.9(右)に比べ一回りコンパクトになった。なおFire HD 8.9は今のところ終息のアナウンスはなく、Amazon.comでも販売は継続中なので、iPad 2のようにラインナップの1つとして存続するのかもしれない
同、裏面。デザインはがらりと変わっている。同じデザインを採用したそれぞれの7型モデルよりも、この8.9型の方が薄いという点も共通だ
厚みの比較。こうして写真で見るとわずかな違いだが、重量差が200g近くあるため、手に持った際の印象は全く異なる
あらためて厚みを比較したところ。左側が本製品、右側が上からKindle Fire HD 8.9、Kindle Fire HDX 7、iPad mini Retina、iPad Air、そして1番下がKindle Paperwhite。E Ink端末よりも本製品が遙かに薄いのが面白い
本製品と同じ2,560×1,600ドットのタブレットとしては、10型のNexus 10(写真下)などがある。もっとも発売が1年前ということで、本製品では問題なく再生できる動画がNexus 10ではハングアップして動かなくなるなど、性能差は顕著だ

セットアップ手順や画面レイアウトは7型モデルと共通

 セットアップ手順については、すでにレビューしたFire HDX 7およびFire HD 7と共通で、特に難解な手順はなく、また本製品ならではのプロセスもない。今回は海外モデルを購入しているが、日本から注文した場合はアカウントがセットされた状態で届き、Wi-Fiのセットアップなどを終えれば使えるようになるはずだ。

 画面周りについても同様だ。ホーム画面の中央には、左右フリックでさまざまなアイテムをスクロール表示する「スライダー」があり、上部にはゲーム/アプリ/本/ミュージック/ビデオなどの「コンテンツライブラリ」が並ぶレイアウトだ。2013年モデルのKindle Fireファミリから採用された、画面を下から上にスワイプすることで表示されるクイックスイッチ機能や、おやすみモードも搭載している。以下、旧Fire HD 8.9との比較を紹介するが、変更点はいずれも7型モデルと同様だ。

ホーム画面。上が本製品、下が旧Fire HD 8.9(以下同じ)。これまでは右下の星マークをタップすることで表示できたお気に入りが、初期状態では画面下に表示されており、さらに下から上へのスワイプで全画面表示されるようになった。これら仕様はFire HD 7と同様
「お買い物」。KindleストアをはじめとするAmazon運営のストアへのショートカットのほか、Amazon.co.jpで買い物をするためのリンクがまとめられている
「ゲーム」ライブラリ。クラウドおよび端末上のゲームアプリを切り替えて表示できるほか、ストアに移動することも可能
「アプリ」ライブラリ。こちらもクラウド/端末を切り替えて表示できるほか、アプリストアにも移動可能
「本」ライブラリ。本棚を模したデザインが廃止され、フラットなデザインになった。こちらもクラウド/端末の切り替えができ、Kindleストアへも移動可能。リスト表示に切り替えることもできる
「ミュージック」ライブラリ。こちらもクラウド/端末の切り替えができ、Amazon MP3ストアへも移動可能
「ビデオ」ライブラリ。新たにスタートしたAmazonの動画サービス「Amazonインスタント・ビデオ」が表示される。なお旧Fire HD 8.9など従来モデルもAmazonインスタント・ビデオが利用可能になっている
「ウェブ」ライブラリ。Amazon独自のブラウザ「Amazon Silk」が使用できる。使い方は一般的なブラウザと変わらない
「写真」ライブラリ。サイズの等しいサムネイルが表示される7型モデルと異なり、こちらはタイル状に表示される。ちなみに本製品の背面カメラで撮影できる写真は3,200×2,400ドットで、動画(1,920×1,080ドット)の撮影も可能
「ドキュメント」ライブラリ。パーソナルドキュメントにアップロード済みのPDFコンテンツを表示できる。タップするとダウンロードされる
画面上部を下にスワイプすると、基本機能にアクセスするためのクイック設定メニューが表示される。時間を指定して通知を非表示にする新機能「おやすみモード」が追加されている。なお英語でセットアップするとここに新機能の「Mayday」へアクセスするメニューが表示される
多くの画面では、画面左上の「三」マークをタップすればメニューが表示されるように操作性の共通化が図られている。これはKindleストアでメニューを表示したところで、新機能であるクラウドコレクションや、新しくスタートした「Kindle連載」などへのショートカットが並ぶ

 読書関連の操作性についても、やはり7型モデルであるFire HDX 7を踏襲している。筑紫明朝フォントが追加されているといった従来モデルからの変更点も同じだ。こちらもスクリーンショットで紹介する。なお「クラウドコレクション」などの新機能については後ほど詳しく紹介するので、ここでは割愛する。

テキストコンテンツの表示。基本的なレイアウトは変わらないが、高精細になったことでフォントが全体的に細く見える
フォントサイズや行間などを調整する画面。フォントは新たに筑紫明朝が搭載されている
コミックコンテンツの表示。ワイドサイズということで見開き表示では画面左右に余白ができるが、後述するAndroidタブレットほど冗長な印象はなく、十分に許容範囲

見開き表示や雑誌や絵本の表示に最適。動画鑑賞にも向く

 さて、7型モデルと違った、8.9型ならではの使い方にはどんなものがあるだろうか。すぐに思いつくところでは「本の見開き表示」「雑誌など大判サイズの書籍の購読」「動画鑑賞やゲーム」などが該当しそうだ。順に見ていこう。

 まず本の見開き表示。7型に比べると、画面サイズを活かしての本の見開き表示は実用的といえる。ワイド画面なのでコミックでは左右に大きめの余白ができるが、Androidタブレットのように下段のメニューバーが常時表示されることにより天地が圧迫されることがないため、ワイド画面の上下ギリギリ一杯までデータが表示でき、結果として画面左右の余白も最小限で済む。

 またテキストコンテンツに関しても、iPadのKindleアプリでは左右に大きめの余白ができるなど最適化が不完全な印象だが、本製品ではそのようなこともない。小説本を最初から最後まで通して2冊読んでみたが、なんら違和感はなく読書に没頭できた。

コミック(うめ氏「大東京トイボックス 1巻」)を見開き表示したところ。ワイド画面ということで画面左右にやや余白ができるが、天地が広く使えるためAndroidタブレットほどの違和感はない
こちらはNexus 10で同じページを見開き表示したところ。下段のメニューバーが天地を圧迫し、全体が縮小表示されることで左右の余白も引きずられて大きくなるという悪い連鎖がみられる
こちらは本製品でテキストコンテンツを表示したところ。やや横に広すぎるきらいはあるが、問題なく読める。余白などのオプションも自由度が高い
同じページをiPad AirのKindleアプリで見開き表示したところ。こちらは縦横比のバランスはよいのだが、画面左右の余白がやや冗長
7型のFire HDXで見開き表示したところ。単行本1ページにも満たないサイズを横向きにしているとあって、同じ書籍の紙版に比べるとさすがに窮屈
8.9型の本製品で見開き表示したところ。原寸大ではないが問題なく読めるレベル

 続いて、雑誌など大判サイズの書籍の購読。8.9型ということで、原寸とまではいかなくとも、かなり大きなサイズで雑誌や写真集、旅行ガイドなどが楽しめる。以下は「DOS/V POWER REPORT」2013年12月号を表示したところだが、解像度が向上したこともあり、欄外の注釈の細かい文字に至るまで、拡大しなくともしっかりと視認できる。

 雑誌については今後はひとえにラインナップの増強と、定期配信システムも欲しいところだ。ちなみにマガストアもKindle Fire向けにアプリをリリースしているが、使い勝手は必ずしもよいとは言えないため、今後の進化が望まれる。

「DOS/V POWER REPORT」2013年12月号を表示したところ。さすがに原寸ではないが、読むために拡大縮小を繰り返す必要もなく、この表示サイズのままで普通に読める
ディスプレイの画素密度が高いため、記事ページで最小サイズのフォントもほぼ潰れずに読める。横の親指からだいたいのサイズを察してほしい

 また、ニーズとしては多くないかもしれないが、絵本の見開き表示にも適している。絵本は一般的に重箱判と呼ばれる、正方形に近い判型(182×206mm)が採用されることが多いが、これを見開き表示した場合の縦横比率はワイド画面のタブレットのそれに近いため、余白が少なく自然に読めるのだ。いくつかのサンプルを試した限りでは見開き表示に対応しない絵本もあったが、ほとんどはディスプレイサイズを有効に使った表示が行なえた。これから見開き対応の絵本が増えてくれば、将来有望なジャンルと言えそうだ。

 最後に動画。本製品の発売に合わせるタイミングでサービスインした動画配信サービス「Amazonインスタント・ビデオ」が利用できる。これまでは同種サービスのTSUTAYA TVおよび定額制動画配信サービスのHuluが利用できたが、日本の映画・ドラマ・アニメといったラインナップはお世辞にも多いとは言えず、またあくまで単体のアプリということで、メニューの動画ライブラリからはアクセスできなかった。

 今回のAmazonインスタント・ビデオは、まだラインナップは多いとはいえないが、北米向けそのままではなく国内向けにタイトルをきちんと揃え直すところから手が付けられており、またメニューの動画ライブラリからアクセスできることで、これまでに比べシームレスに利用できるようになった。Kindle Fireシリーズに抜け落ちていた部分が、ようやく解消された格好だ。

 視聴方法はレンタルと購入が用意され、レンタルの場合は30日以内に視聴を開始し、その時点から24時間または48時間視聴が行なえる。購入の場合はこうした制限はないが、いずれの場合も1本ごとに単価が設定されており、月額の見放題といったプランはない。前述のHuluは月額料金による定額制、またTSUTAYA TVも月額プランが用意されており、いずれも他のデバイスでも視聴できる強みがある。こうしたことから、KindleおよびPCでしか視聴できないAmazonインスタント・ビデオとうまく使い分けることもできそうだ。

 このほか、自前で用意したフルHD動画についても試してみたが、旧Fire HD 8.9では途中でフリーズして動かなくなっていたNAS上の動画も問題なく再生され、画面と音声のズレも発生しなかった。本製品は従来モデルに比べてプロセッサおよびGPUが強化された上、Wi-Fiも強化されており、ハードウェア的なスペックでは格段に進化している。動画やゲームは、本製品のパフォーマンスの高さを実感しやすい、格好のコンテンツだと言えるだろう。

11月26日にサービスインした「Amazonインスタント・ビデオ」。国内向けのタイトルが中心で、かつレンタルもしくは購入となっており、プライム会員向けに提供される米国版の同名サービスとは別物と言っていい内容
作品数は公称26,000本以上。先行配信や第1話無料、100円/HD200円のレンタルセールも行なわれている。なおサービスインに合わせて、従来のKindle Fireシリーズからもアクセスできるようになっている
各コンテンツのページ。レンタルか購入か、画質はHDかSDかといった細かい選択肢がある。ラインナップはまだ多いとはいえないが、他のVODサービスではなかなかお目にかからない作品もみられる
KindleのほかPCでも再生可能。ちなみにPCで再生する際はSliverlightのインストールが必要になる
2013年3月にKindle向けアプリがリリースされた「Hulu」。月額980円で見放題というのは魅力だ

使い勝手を向上させるクラウド連携の新機能を搭載

 ところで、Fire HDX 7のレビューのあと、Fire HDXシリーズに近日導入予定とされていた機能のいくつかがリリースされた。先ほど紹介した「Amazonインスタント・ビデオ」のようなサービスの追加ではなく、純粋に使い勝手を向上させるための機能の追加である。主な機能をここでざっとチェックしておこう。なお、作業の関係でFire HD 7で取得したスクリーンショットを使っているが、画面構成は本製品でも特に変わらない。

 まずは「クラウドコレクション」機能。E Ink端末のKindle Paperwhiteに実装されていたコレクション機能のクラウド版にあたり、コレクション(フォルダに相当する)に本を登録しておけば、そのコレクションがクラウド経由でほかのKindle端末からも参照できる機能だ。一冊の本は複数のコレクションに登録できるので、正確にはフォルダというよりもタグを付けるのに近い。

「本」ライブラリを表示した状態で画面左端のメニューを表示し、「コレクション」をタップする
筆者が作成した3つのコレクションが表示された。いずれもKindle Paperwhiteで作成したコレクションが自動的にクラウドコレクションとして読み込まれたもの
各コレクションをタップして開くと、登録した本が表示される。さまざまな条件ごとにコレクションを作っておけば、蔵書が大量にある場合でもすばやくアクセスできる。ちなみにチェックマークが入っているのはすでにローカルに存在するコンテンツ
個々のコンテンツを選択して削除することもできる
コレクションごとホームに追加したり、コレクションを削除することも可能。コレクション内の本を一括ダウンロードできる機能がないのが少々不思議だ

 Kindleストアで購入した本が何百冊とあり、その中で未読の本があると、ソート機能や検索機能を使ったとしても、別のKindle端末から探すのは一苦労である。こうした場合、「未読」というコレクションを作ってその中に本を登録しておけば、別のKindle端末でそのコレクションを開き、すばやく本を発見できる。「未読」以外にも、繰り返し読みたい本、リファレンス系で常に参照したい本など、さまざまなコレクションを用意しておくと役立つ。

 というわけで便利な機能であることは間違いないのだが、コレクションに対して行なえる操作は「ホームに追加」と「コレクションを削除」の2択で、コレクションに含まれる本を端末に一括ダウンロードするといった機能はない。個人的には一括ダウンロードが真っ先に来るべきではないかと思うのだが、このあたりは筆者の思い描いている機能とは若干コンセプトが異なるのかもしれない。個人的には、未読などのステータスを指定しておけば自動的にコレクションに分類される機能などがあればさらに便利になると思う。

 もう1つは「インスタントクラウド」機能。しばらく使っていないコンテンツを自動的に検出し、1タップでAmazonのクラウド上に移動させられる機能だ。具体的な操作としては、設定画面の「端末」→「ストレージ」で「インスタントクラウド保存」を選択すると、7日以上使っていないコンテンツが表示されるので、ローカルに残しておきたいコンテンツのチェックを外したのち「クラウドへ移動」をタップすれば完了だ。

 どちらかというと容量の制限が厳しいPaperwhiteにこそ求められる機能であり、容量に余裕があるFireシリーズで購入直後に使うことはないだろうが(そもそも7日経たないとリストアップすらされない)、端末の容量が上限に近づいてきた時、必要か不要かを1つずつチェックすることなく、最終使用日をもとに自動的にリストアップしてくれるのはありがたい。

インスタントクラウド機能を使うには、設定画面の「端末」→「ストレージ」を開く
各ライブラリやアプリが占めているストレージ容量が表示される画面。表示されている「インスタントクラウド保存」をタップして開く
しばらく使っていないコンテンツが表示される。必要に応じてチェックを外したのち、下段の「クラウドへ移動」をタップすれば退避完了。空き容量を増やすことができる

 ちなみに海外版のアップデートでは、読書サイトGoodreadsとの連携が強化されたり、あるいはペアレンタルコントロール機能が強化されたりしているが、このあたりは本や動画で登場人物などのデータを表示するX-Ray機能や、ボタン1発でテクニカルサポートの窓口を呼び出せるヘルプ機能「Mayday」と同様、当面は国内向けには追加されない可能性の方が高そうだ。

欠点が見つからない製品。旧Fire HD 7からの買い替えにも最適

 筆者は本製品の発表会をネット中継で見ていた際、旧Fire HD 8.9から200g近くも軽い計算になる本製品の重量は、単位を変換する際の計算ミスか、あるいは誤植に違いないと思い、しばらく言及するのを控えて様子を見ていたほどだ。言うなればそれだけあり得ない軽さだったわけで、実際に製品を手にした今も、その軽さには圧倒されるばかりだ。

 最近はNexus 7にせよiPad Airにせよ、レビューのたびに軽さを称賛することばかり書いているが、やはり「薄さと軽さは正義」というのが筆者の率直な印象で、その中でも本製品のインパクトは頭一つ抜けている。なにせ本製品を使った後ではiPad Airが重く感じられるのだから尋常ではない。

 といったわけで1週間ほど試用してみたわけだが、欠点らしい欠点がみつからない。重箱の隅をつつくならば、充電ステータスを表すLEDはあった方が便利とか、スピーカーの音はできれば後ろではなく前に出てほしいといった要望はなくはないが、トレードオフになるであろうコストや本体サイズを考えると、このままの方がベターなようにも思える。16GBで39,800円という価格も、為替相場の恩恵を受けていた従来モデルに比べると割高だが、現行モデルと比較するとむしろ割安な部類だろう。先行して発売されたAmazon.comでのカスタマーレビューの評価が歴代モデルと比べて高いのも納得である。

 なお、位置付けとしては旧Fire HD8.9の後継にあたる本製品だが、旧Fire HD 7よりも軽量ということで、旧Fire HD 7の買い替え対象にも適している。レビューでも触れているように、本製品の7型であるFire HDX 7には画面端に青帯が見られるのだが、本製品はそのようなこともない。どうしても7型にこだわるユーザーは別として、Fire HDX 7ではなく本製品を選ぶというのは、賢い選択ではないかと思う。

上が7型のFire HDX 7、下が8.9型の本製品。薄さでは本製品に分があり、新規購入にしても買い替えにしても、どちらをチョイスするか悩ましい
今回使用したソフトウェアバージョンは14.3.1.0

 残る課題は、未だ日本向けに提供されていない一部サービスの追加や、アプリストアのラインナップの増強など、ハードウェア以外のサービス面だろう。かつての「価格は安いが重くて分厚い」という印象は完全に払拭されており、Amazonのサービスに合わせて設計されたタブレットとはいえ、画面サイズの近いAndroidタブレットが影響を受けることは必至だ。実物をなかなか手に取れる機会がないのがネックだが、ぜひ取扱店に出向いて、その軽さと薄さを体感してほしい。

(山口 真弘)