山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
Apple「12.9インチiPad Pro (第2世代)」
~性能が大幅向上、B5相当を原寸表示できる大画面タブレット
2017年7月4日 06:00
「12.9インチiPad Pro(第2世代)」は、Apple製の12.9型タブレットだ。
Apple Pencil対応、およびSmart Connectorを用いた外部キーボードへの対応などの特徴をもつ「iPad Pro」シリーズの最新モデルで、画面サイズや本体のデザインは第1世代モデルを踏襲しつつ、同時に発表された10.5型モデルと同じく最大120Hzのリフレッシュレート、高輝度、広色域、低反射率などディスプレイ回りの機能を大幅に強化していることが特徴だ。
同時発表の「10.5インチiPad Pro」が、従来の9.7インチiPad Proに比べて一回り大きく、ボディも新設計だったのに対して、本製品は第1世代の12.9インチiPad Proと見た目はほぼ同一で、主にスペック面の強化が中心となっている。
リフレッシュレート120Hzへの対応をはじめとする、表示性能の強化は本製品の目玉の1つだが、電子書籍端末として使う場合は、それほど使い勝手に劇的な変化をもたらすことはない。強化されたCPUも含め、電子書籍ユースにはかなりオーバースペックといって良い仕様だ。
とはいえ、雑誌などの大判サイズを原寸大表示することにおいて、現行のタブレットの中では、もっとも理想的な製品であることに変わりはない。
今回は従来モデルとの違いに加えて、12.9型という大画面で電子書籍を楽しむにあたって1つの選択肢となる、ハンズフリーでの読書方法について紹介する。ベンチマークなどを含むレビューは別記事(新iPad Proはディスプレイ120Hz駆動で指に吸いつくような操作が快感!)で紹介されているので、そちらも合わせて参照されたい。
外観はほぼ同一だが性能は大幅向上、価格はダウン
まずは従来の第1世代モデルおよび同時発売の10.5インチiPad Proとの比較から。なお以下の写真のうち、10.5インチiPad ProについてはWi-Fiモデルではなく、Wi-Fi+Cellularモデルを使用しているのでご了承いただきたい(Wi-Fi+Cellularモデルは上部アンテナ部のデザインが若干異なる)。
モデル(※いずれもWi-Fiモデル) | 12.9インチiPad Pro (2017) | 12.9インチiPad Pro | 10.5インチiPad Pro | 9.7インチiPad Pro |
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発売 | 2017年6月 | 2015年11月 | 2017年6月 | 2016年3月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部) | 305.7×220.6×6.9mm | 305.7×220.6×6.9mm | 250.6×174.1×6.1mm | 240×169.5×6.1mm |
重量 | 約677g | 約713g | 約469g | 約437g |
CPU | 64-bitアーキテクチャ搭載A10X Fusionチップ、組み込み型M10コプロセッサ | 64-bitアーキテクチャ搭載A9Xチップ、M9コプロセッサ | 64-bitアーキテクチャ搭載A10X Fusionチップ、組み込み型M10コプロセッサ | 64-bitアーキテクチャ搭載A9Xチップ、M9コプロセッサ |
メモリ | 4GB | 4GB | 4GB | 2GB |
画面サイズ/解像度 | 12.9型/2,732×2,048ドット(264ppi) | 12.9型/2,732×2,048ドット(264ppi) | 10.5型/2,224×1,668ドット(264ppi) | 9.7型/2,048×1,536ドット(264ppi) |
通信方式 | IEEE 802.11a/b/g/n/ac | IEEE 802.11a/b/g/n/ac | IEEE 802.11a/b/g/n/ac | IEEE 802.11a/b/g/n/ac |
バッテリー持続時間(メーカー公称値) | 最大10時間 | 最大10時間 | 最大10時間 | 最大10時間 |
スピーカー | 4基 | 4基 | 4基 | 4基 |
価格(発売時) | 86,800円(64GB) 97,800円(256GB) 119,800円(512GB) | 94,800円(32GB) 112,800円(128GB) 130,800円(256GB) | 69,800円(64GB) 80,800円(256GB) 102,800円(512GB) | 66,800円(32GB) 84,800円(128GB) 102,800円(256GB) |
この表で見ると分かるように、本製品は、従来モデルとサイズのほか、メモリ、画面サイズ、解像度、通信方式など、主要な仕様もまったく同一だ。
見た目で区別できる部分と言えば、カメラの形状やマイクの位置といった細かい箇所のみだが、重量は従来モデルから36g軽量化されているので、両者を持ち比べることで新旧を見分けることは可能だ。
従来モデルを常に持ち歩いて、重量を把握している人であれば、単体で手に取っても軽量化を実感できるかもしれない。
また、CPUはA9XからA10Xへと強化されているほか、10.5インチiPad Proと同様、リフレッシュレートの向上(最大120Hz、可変)、輝度や色域の向上、さらに画面反射率の低減など、ディスプレイまわりの仕様は大幅に強化されている。
一般的に、外観に相違がほとんどない新モデルは、往々にして内部が大幅にパワーアップしていることが多いが、本製品もまさにそのパターンに当てはまると言って良いだろう。ベンチマークの結果については後述する。
ちなみに価格については、従来モデルが登場時点で94,800円(32GB)だったのに対し、本製品では86,800円(64GB)と、大幅に引き下げられている。
従来モデルはどの容量であっても、税込価格で10万円を超えてしまい、法人での経費購入や決済処理が煩雑になる場合もあったが、今回のモデルはそうした意味でも購入のハードルが下がっている。細かいことだが、こうしたきっかけが導入につながるケースは少なくないだろう。
B5相当の雑誌、およびコミックの見開きを、ほぼ原寸で表示可能
本製品は従来モデルと外観は同一であることから、パッケージおよび同梱品、セットアップ手順、および基本的な使い勝手については従来モデルと変わらない。今秋にバージョン11のリリースが予告されているiOSだが、現時点でインストールされているのはiOS 10.3.2であり、機能面についても相違はない。
もっとも、ベンチマークを取ると新旧モデルの差は歴然としている。Sling Shot Extremeによるスコアでは、従来モデルが「2,948」のところ本製品が「3,793」なので、単純計算で28.7%増しということになる。
公称値ではCPUの速度が30%高速、グラフィックの処理速度が40%高速とされているので、実機によるベンチマークの値としてはおおむね妥当だろう。
電子書籍を中心とする表示性能は、従来モデルとの大きな違いは見られない。
かつて従来モデルのレビューにあたり、自炊したアニメージュ・コミックス・ワイド版「風の谷のナウシカ」(B5サイズ)が原寸表示できることを紹介したが、これはもちろん本製品でも可能だ。
A4の天地を若干切り詰めたサイズである「DOS/V POWER REPORT」も、ほぼ同等サイズで表示できる。注釈など小さな文字の表示性能も十分だ。
コミックは、見開き状態では単行本よりもひとまわり大きいサイズで表示できる。両手で長時間保持しての読書は現実的ではないだろうが、電子書籍に紙版と同等以上の表示サイズを求める人にとっては、最適な製品と言えるだろう。
Bluetoothリモコンを使った「ハンズフリー読書」を楽しむには
本製品はそのサイズや重量を考慮すると、両手で持って宙に浮かんだ状態で読書をするのは現実的ではない。
特に677gという重量は、初代iPad(680g)とほぼ等しく、本製品が宙に浮く形で長時間手で保持し、読書を行なうのは困難だろう。現実的には膝の上、もしくはデスクの上に本製品を置き、指先でページをめくるスタイルにならざるを得ない。
そこで、ここでは別の読書スタイルとして、本製品をスタンドもしくはタブレットアームに設置し、ハンズフリーでページをめくって読書を行なう方法を考えてみよう。
例えば、ベッド脇に設置したタブレットアームに本製品をセットし、寝転がった状態のまま、腕を上げることなくページを前後にめくることができれば、カジュアルに電子書籍を楽しみたいユーザーはもちろんのこと、体が不自由な人にとっても福音になると考えられる。冬場を迎えて、布団にくるまったままで読書を楽しみたいユーザーにも最適だ。
ハンズフリーでタブレットを操作する方法については国内外で数多く“自由研究”が行なわれており、ネットで少し検索しただけでも関連エントリが多数ヒットするが、iOSデバイスの場合、アクセシビリティ機能の1つ「スイッチコントロール」を利用するのがもっとも手軽だ。
今回はこの「スイッチコントロール」機能とサードパーティ製の片手用Bluetoothリモコンを組み合わせ、12.9インチiPad Proでハンズフリー読書を実現する方法を紹介する。
設定方法は以下のスクリーンショットを参照されたいが、少々ややこしい。
まず最初に、スイッチコントロール機能の「スイッチ」で、外部デバイス(ここでは前述のBluetoothリモコン=ELECOM VR Controller)のどのキーを用いてページをめくるかを指定するのだが、ここでの設定内容は次に設定する「レシピ」で上書きされるので、ひとまずダミーのアクション(ここでは「項目を選択」)を割り当てる。
電子書籍では次のページに進むだけではなく、前のページに戻る動きも必要になるので、同じ内容でもう1つ「スイッチ」を作成し、名称はそれぞれ「次のページへ」「前のページへ」とでもしておく。
キーの割り当てについては、今回はBluetoothリモコンのジョイスティックを右に倒すと次のページへ、左に倒すと前のページヘと移動するよう設定するが、本体のボタンに割り当ててもかまわない。
続いて「レシピ」を起動し、前項で作成した「次のページへ」というスイッチを選択すると、右綴じの電子書籍のページめくりに最適な「左から右スワイプ」というアクションがリストの中に表示されるので、それを選択する。同様にして「前のページへ」には「右から左スワイプ」というアクションを登録する。
これで1つの「レシピ」に対し、次ページ/前ページに移動するための2つの「スイッチ」を登録できたので、レシピ名を入力して保存する。
その後、スイッチコントロールの起動時にこのレシピが自動起動するよう、「レシピ」にある「レシピを起動」で今回作成したレシピ名を選択しておく。
以上で設定は完了。あとはホームボタンのトリプルタップでスイッチコントロールを起動すれば、Bluetoothリモコンで次ページ/前ページへの移動が可能になっているはずだ。スイッチコントールを終了するには、もういちどホームボタンをトリプルクリックすれば良い。
今回は片手用のBluetoothリモコンを使用したが、一般的なBluetoothキーボードも利用可能だ。
しかし、ベッドに寝転がって本を読む前提であれば、キーボードを使うのはあまりスマートではないので、最終的には今回のようなリモコンデバイスを用いるのがベターだろう。赤外線方式ではないことから、布団にくるまったまま操作できるのも利点だ。
なお今回紹介した手順は、設定方法はやや難解ながらもOS標準の機能を使うことから、左右スワイプでページをめくれる電子書籍ビューア、つまり事実上すべての電子書籍ビューアで利用できる。
同じことをAndroidで行なう場合、とある機能を使うことでもっと簡単に実現が可能で、またBluetoothリモコン以外のデバイスも使用できるのだが、iOSと違って、電子書籍ビューアアプリによっては対応しない場合もある。また別に機会があれば紹介したい。
基本性能も高く、多彩な使い方が可能
もともと本製品は、電子書籍向け端末としてはかなりオーバースペックであり、価格も第1世代に比べると下がったとは言え、まだまだ高価だ。
10.5インチiPad Proにも言えることだが、本製品で電子書籍を楽しむ場合、ほかの目的も込みで購入したうえで、電子書籍端末として「も」使うシチュエーションが多くなると考えられる。
ただし本製品は、10.5インチiPad Proと異なり、そのサイズの大きさゆえ可搬性は低く、また重量もあることから、両手で長時間保持してページをめくるという、一般的な電子書籍端末としての使い方をこなすのは難しい。
今回はそうしたことから、ハンズフリーでの読書のTipsを紹介したわけだが、このように、本来の目的で使用しない時に本製品を遊ばせておくのではなく、ビューアとして使い倒すというのは良い活用方法と言えるだろう。
今回は、分かりやすい例としてベッドに寝転がって読むためのTipsとして紹介したが、ほかにもスタンドを使ってデスク上に設置し、技術書を常時表示した上で、必要な時に参照するなどの用途も考えられる。
画面サイズが大きいことから、極端に近い距離に設置しなくても、多少離れた場所でも十分な視認性が得られるのは本製品ならではの利点だ。
いずれにせよ、少しの工夫で多彩な使い方ができるのは、さすがiPadといったところで、しかも本製品はその高いスペックにより、多少イレギュラーな使い方であっても、表示性能やレスポンスといった、基本的な部分で足を引っ張られることがない。
電子書籍とは異なる別の用途で購入したものの、アイドルしている時間が長くなるようであれば、ぜひ今回紹介したような使い方も試してみてほしい。