山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

ページめくりが3割高速化、ストレージ容量が8倍になった「Kindle Paperwhite 32GB マンガモデル」

~実際に容量めいっぱいまでマンガをダウンロードしてみた

「Kindle Paperwhite 32GB マンガモデル」。Wi-Fiモデルのみで、キャンペーン情報付きモデルとキャンペーン情報なしモデルがラインナップされる

 Amazon「Kindle Paperwhite 32GB マンガモデル」は、6型のE Ink電子ペーパーを搭載した読書端末だ。通常の「Kindle Paperwhite」の8倍に相当する32GBのストレージを搭載するほか、ページめくりを33%高速化するなど、コミックを快適に読むための多くの改良が施されていることが特徴だ。

 E Ink電子ペーパーは消費電力が低く、長時間駆動が可能な一方で、ページめくりの反応は液晶よりも遅い欠点がある。またE Ink電子ペーパーを採用した読書端末の多くはストレージ容量が2~4GBと控えめで、コミックはせいぜい数十冊しか保存できなかった。そのためこれまでは、巻数の多いコミックになると、シリーズ全巻を保存するのが難しいこともよくあった。

 本製品はこのストレージ容量を32GBと、通常モデルの実に8倍に増やしたことで、コミックに換算して約700冊もの保存を可能にした。これは大型ダンボール十数箱に相当する量であり、人によっては所有するライブラリをまるごとダウンロードし、持ち歩けてしまうほどだ。また従来モデル比で33%高速化したページめくり、および紙に近い感覚でペラペラめくれる「連続ページターン」機能の追加で、扱いやすさもこれまでに比べて格段に向上した。

 今回はこの「マンガモデル」について、コミックを読む端末としての実用性はどれほどのものか、またコミック以外、具体的にはテキストコンテンツを読む場合にどのくらい恩恵があるかについて、従来のKindle Paperwhite(以下通常モデル)と比較しつつチェックしていく。

ハードウェアの相違点はストレージ容量のみ

 まずは通常モデルとスペックを比較してみよう。

【表】通常モデルとマンガモデルの比較
Kindle Paperwhite マンガモデルKindle Paperwhite
サイズ(幅×奥行き×最厚部高さ)169×117×9.1mm169×117×9.1mm
重量約205g約205g
解像度/画面サイズ6型/1,080×1,440ドット(300ppi)6型/1,080×1,440ドット(300ppi)
ディスプレイモノクロ16階調(Carta)モノクロ16階調(Carta)
通信方式IEEE 802.11b/g/nIEEE 802.11b/g/n
内蔵ストレージ(ユーザー使用可能領域)約32GB(約27.5GB)約4GB(約3.1GB)
フロントライト内蔵(手動調整)内蔵(手動調整)
ページめくりタップ、スワイプタップ、スワイプ
バッテリ持続時間(メーカー公称値、無線オフ、1日30分使用時)数週間数週間
価格(2016/10/23時点)16,280円(キャンペーン情報付き)
18,280円(キャンペーン情報なし)
14,280円(キャンペーン情報付き)
16,280円(キャンペーン情報なし)

 この表を見ると分かるように、ハードウェアの相違点はたった1カ所、ストレージの容量のみだ。通常モデルはストレージが4GBのところ、本製品は32GBと、なんと8倍もの容量を搭載している(ユーザー利用可能領域だけだとおよそ9倍差)。メモリカードで容量を拡張できる製品は別にして、これだけの内蔵ストレージを搭載したE Ink電子ペーパー採用の読書端末は、過去に遡っても皆無だ。

 もともと電子書籍は、テキストコンテンツとコミックとで、ファイルサイズはまるで異なる。前者が1冊あたり数MBのところ、コミックはその10倍以上、数十~100MBあることはざらであり、昨今の高画質化に伴って、ファイルサイズはさらに大きくなりつつある。日本の電子書籍市場ではコミックの占める割合が多く、ほぼコミックのみというユーザーも多数いると考えられるので、ストレージ容量は多ければ多いほど有利というわけだ。

 ちなみにコミック利用を前提にストレージ容量を増やす試みは、実は今回が初めてではない。2013年に発売された、日本国内に投入されたKindleとしては2世代目にあたる「Kindle Paperwhite(第5世代)」は、グローバルモデルが容量2GBのところ、国内向けモデルだけは倍の4GBを搭載していた(関連記事)。この時はわずか2GBの増量だったため、特に話題にならなかったが、こうした経緯も踏まえての本製品の投入であることを考えると、なかなか興味深くもある。

 なお本製品はWi-Fiモデルのみとなり、Wi-Fi+3Gモデルはラインナップされないが、これは製品特性を考えると妥当だろう。なぜなら、多くのコンテンツを保存できる容量があれば、入れ替えを必要とする回数も減ると考えられるからだ。そもそもKindleの制約上、コミックは3G回線を使って購入することができないので、その点でもハンデにはならない。もっとも、外出先でKindleストアを閲覧したり、テキストコンテンツを購入してダウンロードしたり、WhisperSyncを使って既読位置などを同期したい場合は、Wi-Fiモデルしかない本製品は不利になるだろう。

外箱は通常モデルと同じ、厚紙製の共通梱包を日本語のスリーブで巻いた仕様で、容量などの部分にのみシールが貼られている。「マンガモデル」という表記はどこにもない
破線部分を切り取って開封。本体は透明な袋に封入されている
同梱品は本体のほか、USBケーブル、取扱説明書など。日本国内向けモデルのはずだが付属のユーザーガイドやセットアップ画面冒頭は多言語版そのままだ
通常モデル(右)との比較。正面から見た外観はまったく同一
本体背面に「32GB」と印刷されているのが外見上の唯一の相違点だ

外観やインターフェイスは標準モデルとほぼ同一

 パッケージや製品外観はもちろん、セットアップ手順、さらにホーム画面を含むインターフェイスについても、ソフトウェアのバージョン更新による細かな差を除けば、通常モデルとの違いはない。本体背面に印字された「32GB」の文字を見るか、端末情報の画面でストレージの容量を確認しない限り、通常モデルと見分けはつかない。

 また本製品は日本向けモデルとの触れ込みだが、付属のユーザーガイドやセットアップ画面冒頭は通常モデル(多言語版)そのままである。「マンガモデル」と銘打つだけに、ストア画面でコミックがより大きく扱われるなどの違いがあるかと思ったが、それもない。さすがにプリインストールされているユーザーガイドには容量の違いや新機能についての記述があるが、これは今後通常モデルにもフィードバックされると思われるので、本製品専用というわけではなさそうだ。

 以下、代表的な画面を中心に、スクリーンショットを中心に紹介する。

セットアップ開始。電源を入れると冒頭のオープニング画面に続き、言語選択の画面が表示される。直近のモデルとの違いは特にない
オープニング画面が再度表示される
まずはWi-Fiの設定を行なう。タップするとSSIDが検索され一覧が表示される
Wi-Fiを検索してSSIDを選択、パスワードを入力する。無印のKindleと同様、以前はなかった「パスワードをAmazonに保存」という選択肢が新たに追加されている
既存のAmazonアカウントを利用するか、新規に作成するかを選択する。今回はすでにアカウントが登録されていたので入力は不要だった。そのまま次に進む
SNSのアカウントの登録画面。今回は特に入力せずそのまま先に進む
ここからはチュートリアルが数ページにわたって表示される
チュートリアルが終わるとホーム画面が表示される
画面まわりでは、設定画面のデザインが整理され、アイコンも追加されて見やすくなった。個人的には文字数も同じで見分けにくい「端末オプション」「読書オプション」という選択肢をもう少し区別しやすくしてほしかった

従来モデルから33%速い、圧倒的に高速なページめくり

 さて、最初にチェックするのは、本製品の特徴の1つとされている、ページめくりの速度向上だ。従来の33%速くなったページめくりを、同社では「快速ページターン」と呼んでいる。ここでは具体的な速度差について、10月19日時点での最新ソフトウェア(バージョン5.8.2.1)をインストールした通常モデルと比較した動画をご覧いただこう。サンプルとなるのは、うめ著「大東京トイボックス 1巻」である。

【動画】左が本製品(バージョン5.8.8)、右が通常モデル(バージョン5.8.2.1)。タップおよびスワイプは同時に行なっているのだが、タイミングをずらして行なっているように見えるほど、新しいソフトウェアバージョンのほうが高速だ

 以上のように、「なんとなく速くなったかも」というレベルではなく、ひと目見てはっきりと分かるほどの差がある。書き替えの速度そのものも高速化しているほか、操作を行なってから画面が反応するまでのタイムも短縮されているようで、動画を見ると、これまでスワイプが終わってから画面の書き換えが始まっていたのが、スワイプが完全に終わる前に次のページへと切り替わり始めているのが分かる。6ページごとのリフレッシュは依然あるので、液晶タブレット並みと言うには語弊があるが、かつてのE Ink端末では考えられなかった反応速度だ。

 またしばらく使ってみた限りでは、例えば「高速化の代償として画質が低下する」など、別の箇所に影響が出ているケースもないようだ。あまりに速くタップやスワイプを繰り返すと、空振りするケースも見られるが、これは従来のソフトウェアバージョンでもあった症状であり、また実際にコミックを読んでいてそこまでのスピードでタップやスワイプを繰り返すことはないため、実用上の問題はない。連続でのページめくりは、後述する「連続ページターン」機能を使うことになるので、なおさらだ。

 唯一気になるのが、これまでページの上下左右がいわゆる断ち切り、つまり余白ゼロで表示できていたのが、全体的にやや縮小され、余白がついて表示されるようになったケースがあることだ。新旧を比較している上の動画を見ると明らかだが、従来は上下左右余白なしで表示されていたページが、今回は余白ありで表示されているケースが散見される。ほかのコミックでも同様の事例があるが、かといって上記動画の冒頭ページなど、断ち切りが完全にNGになったわけでもないようで、少々理解に苦しむところだ。

【動画】本製品と同じく6型300ppiのE Ink端末である、Kobo Glo HD(右)との比較。現行のKoboシリーズの中ではおそらくもっともレスポンスが軽快な製品だが、これまでのKindleとの速度差がさらに開いてしまった格好だ。なお、Koboでは連続タップは画面拡大に割り当てられているので、この操作での比較は省略している
【動画】テキストコンテンツはもともとページめくりが高速なため、単体で使っていて高速化を感じることはあまりないが、こうして動画で比較すると、操作を行なってから画面が反応するまでのタイムが短縮された分、ある程度の高速化の恩恵は被っているようだ

 また、これまでコミックにおいては、画面のダブルタップは画面を拡大しての4分割表示に割り当てられていたのが、今回のモデルでは無効化されている。これはピンチ&ズームの反応がよくなり、タブレットと同じ感覚で拡大縮小できるようになったのも理由の1つだが、本製品の反応速度が向上したことで、従来と同じようにダブルタップをするとシングルタップ×2と解釈され、2ページめくられてしまうというのが最大の原因だ。

 そのため本製品では読書オプションに「バーチャルパネル」なる項目が追加され、優先する操作を選択できるようになっている(デフォルトは無効=ページめくり優先)。これがある意味、高速化の代償による機能の変更ということになるだろう(余談だが、本製品ではスクリーンショットが正常に撮れないケースが多いのだが、これは反応速度が速すぎる影響と考えられる。次回の改善を要望したい)。

 ところでこの機能、実は今回の「マンガモデル」のみに適用されるわけではない。今回のソフトウェア(バージョン5.8.5)は、Kindle Paperwhiteのほか、無印のKindle、Kindle Voyage、Kindle Oasisといった現行の全シリーズに適用される。つまりこれらのモデルを所有しているユーザーは、待っていればこの高速化の恩恵を受けられる(本稿執筆時点ですでに手動ダウンロード可能)。これからKindleを購入するユーザーは、製品選定時にこの点を考慮しなくてもよいわけだ。後述するストレージ容量こそが、通常モデルとの相違点ということになる。

紙の本と似た感覚でページをぱらぱらめくれる新機能を搭載

 前述の「快速ページターン」と関連してもう1つ、コミックユーザーにとって嬉しいのが、ページを長押しすることで高速にページめくりまたはページ戻しができる機能が追加されたことだ。紙の本を弓状にしならせてページをぱらぱらとめくる感覚に近く、同社ではこれを「連続ページターン」と銘打っている。こちらもまずは動画で、具体的な挙動を確認してほしい。

【動画】画面をタップ→長押しすることでページが高速に遷移する。試した限り、ページデータのキャッシュを行なっているようで、コンテンツをダウンロードした直後はスピードが遅い場合がある

 画面をよく見ると、ページを連続表示している間はE Inkのリフレッシュがなく、表示がページが確定した時点でリフレッシュを行なっている。このあたりに高速化の秘訣がありそうだが、いずれにせよタップのあと長押しをするだけという簡単操作で、利便性は非常に高い。従来の、スライダを表示して左右スワイプしながら目的のページを探すPage Filp機能は、ことコミックでは利用頻度が激減しそうだ。

 ちなみにこの「タップのあとで長押し」という操作は、テキストコンテンツでは文字列の選択に割り当てられているが、コミックではこれまで割り当てのない操作だったので、そうした意味でも合理的な操作方法と言える。

 なお、本製品以外のKindleで今回の最新ソフトウェアを適用し、この「連続ページターン」を行なおうとした場合、正常に機能しない場合がある。この場合、コンテンツをいったん削除し、クラウドから再ダウンロードしてやれば、正しく動作するようだ。このことからも、コンテンツの側でも、本機能に合わせて何らかの変更が行なわれていると考えられる(ソフトウェアバージョンアップの情報にも「この新しいマンガの機能にはすでに数千冊の本が対応済みで、さらに続々と新しく追加されています」という記述がある)。

実際に容量いっぱいまでコミックをダウンロードしてみた

 さて、ここまで紹介した機能は本製品以外のKindleの現行モデルすべてに適用されるわけだが、本製品のみの特徴として、冒頭の比較のところでも述べた、ストレージの容量増が挙げられる。通常モデルの8倍ということで、Amazon曰くコミックの保存冊数は「約700冊」とされている。本製品のストレージ容量は32GB、ユーザー使用可能領域は約27.5GBとされているので、1冊あたり約40MBで計算していることになる。

 実際にコミックをどれだけ保存できるか、筆者が所有しているKindleコミックを、容量いっぱいになるまで片っ端からダウンロードしてみたところ、559冊をダウンロードしたところで「容量不足」の表示が出た。700冊には届かないが、今回ダウンロードした中には容量が大きいカラー版のコミックなども含むので、ほぼ公称値通りの冊数が保存できると見ていいだろう。ページ数が少ない、分冊のコミックが含まれていると、700冊を超えるケースもありそうだ。

 また、今回容量いっぱいまでダウンロードする実験をした最大の目的は、容量いっぱいの状態では端末の動作が遅くなるのではないか? という疑問を確かめるためだったのだが、試した限りではとくに影響はないようだ。大量のコミックを保存できるが、その状態ではページめくりもままならない……ということはなさそうなので、そこは安心してよさそうだ。

「ダウンロード済み」が1冊しかないこの状態で実験スタート
560冊目をダウンロード中にメモリ不足との表示が出た。おおむね公称値である700冊に近い数が保存できると見てよさそうだ。余談だがこの冊数をダウンロードし終えるまでにバッテリがいったん完全に空になり、さらに3分の1ほどを消費した。Wi-Fiの消費電力の多さを痛感する
上記の状態でPCに接続し、エクスプローラで情報を表示したところ。使用領域27.5GBに対して空き領域が1.21MBとなっている

 一般的に紙のコミック本は、大きめの段ボール(100サイズ)に50冊程度詰められる。従って本製品は、段ボール10~15箱分のコミックをまるごと保存できる計算になる。これだけの量を持ち歩き、どこでも読めるというのは、なかなか画期的だ。もしかすると、製品を購入してから手放すまでの何年かの間、Kindleストアで買った本の総容量がこの上限を超えることなく、ついにローカルから本を手動削除する経験がないままに終わった……という事例が、今後は出てくるかもしれない。

 ちなみにこれだけの容量があると、クラウド上のデータのバックアップとしても役に立つ。Kindleのサービス自体がなくなる可能性は限りなく低いにしても、何らかの理由でコンテンツが取り下げられたり、あるいは差し替えとなったバージョンの古いほうが読みたいという場合も、事前にダウンロードされていれば(契約に違反しない範囲内でだが)継続して楽しめる。

 もちろん、KindleのコンテンツはPCにダウンロードすることもできるし、またAmazonのタブレットFireシリーズの現行モデルはメモリカードスロットに本を保存できるようになっているので、これらを使えば同じことはできるのだが、ユーザーにとっては本製品の登場で、さらに選択肢が広がったことになる。これだけ容量が増えていながら、通常モデルとの価格差がわずか2,000円というのも、新規ユーザーにとっては嬉しいところだ。パーソナルドキュメントを多用するユーザーの中にも、この容量増を歓迎するユーザーがいるだろう。

これだけの冊数を管理できるライブラリのインターフェイス改善が急務

 以上、動画も踏まえつつ新機能をチェックしたが、ページめくりの高速化はほかのモデルにも適用されるため、実質的な相違点は容量の違いのみということになる。発売直後の現在は、Kindleではもはやおなじみの、クーポン利用による4,000円引きのキャンペーンも行なわれているので、これまでKindleシリーズで容量に不満を感じたことがあるユーザーや、古い世代のモデルを使い続けているユーザー、また新たに興味を持ったユーザーは、購入のチャンスと言えるだろう。

 今後求められるのはなんと言っても、これだけの数のライブラリを管理し、呼び出しやすくするインターフェイスの改良だろう。本製品に保存している中から任意のコミックを探す場合、絞り込み方法はキーワード検索以外になく、またソート条件は最新・タイトル・著者のみ(しかも昇順だけ)であり、700冊をダウンロードできても、そこから目的の本を一発で呼び出すのは至難の業だ。未読本、つまり既読の割合が0%のものだけを表示したり、あるいは読みかけの本=割合が100%でなく途中で止まっているものだけを抽出表示する機能は、ぜひ欲しいところである。

 また、かねてより指摘されている問題だが、コミックの同じシリーズでライブラリが一画面まるごと埋め尽くされるのは、どう考えてもスマートではない。筆者はストアでコミックを探す際、検索ワードに「(1)」を入れてシリーズの1巻だけを表示するワザをよく使うのだが、ライブラリでも同等の機能があれば、シリーズごとに絞り込めてすっきりしそうである。それも無理であれば、今回紹介した「連続ページターン」のように、高速にぱらぱらとめくれる機能を、ライブラリの一覧でも使えるようにしてほしいものだ。このほか、本のタイトルが長すぎるとリスト画面で端が切れて巻数が表示されないコミック特有の問題も、出版社側に任せるのではなく、インターフェイスの側で解決して欲しいところである。

 それから今後の展開として個人的に期待したいのは、VoyageやOasisなど本製品の上位モデル、およびPaperwhiteの後継モデルで、本製品と同じ大容量モデルが投入されることだ。とは言えこれについては、本製品がどれだけ売れるかにすべてがかかっているだろう。個人的には、薄型軽量でコスパに優れたVoyageもしくはその後継となる製品での、大容量モデルの投入を期待したい。

 もう1つは、「Kobo Aura ONE」のような大画面モデルの投入だ。今回のモデルが発表された際、本誌のニュースなどを通じて「マンガモデル」という名称がネット上に拡散した結果、ユーザーの期待が先走る形になり、画面サイズやモノクロ表示に変更がないことを知って落胆する声がSNSなどで多く見られた。筆者が見聞きする限りでは、見開き表示が可能な大画面モデルを待望するユーザーは、容量増を願うユーザーよりもはるかに多いように思える。

 おそらく今回の容量を追加したモデルの投入は、コミック専用に新規設計のハードウェアを投入するほどの市場はないという判断がベースにあるものと考えられる。そもそもKindleにおける大画面モデルは、かつて存在した「Kindle DX」が終息に至った経緯があり、その時点でいったんラインナップ上は必要でないという判断を下されているわけで、それを翻して再び大画面モデルを投入するには、コミック向けと銘打った今回のモデルで一定の販売実績を上げることが不可欠だ。今後の製品展開を左右するという意味で、今回のモデルはとつの大きな分岐点になる可能性もありそうだ。

ちなみに本製品でも、設定を横向きに変更することで、見開き表示に対応する。画面サイズは小さくなるため細かい文字は視認できないことも多いが、コンテンツによっては便利に使える。なおこの状態では、1ページあたりの画面サイズは、4型のiPhone SE/5sなどで単ページ表示した状態とおおむね等しい