山田祥平のRe:config.sys

タブレットの主戦場はどこだ

 このシーズンのタブレットシーンは本当にホットだ。まさに百花繚乱。7~8型、10型超と画面サイズも思いのまま、OSも、iOSとAndroidという定番OSはもちろん、Windowsタブレットのバリエーションも広がった。さらにはGoogleのKitKatことAndroid 4.4が発表されるなど話題も多い。

お供のデバイスはマルチ

 今、出張で中国北京に来ている。3泊4日の取材出張だが、それでも持ち込む機材はそれなりに必要だ。スマートフォン(スマホ)はもちろん、しっかりしたキーボードを持ったWindows PCが要る。加えてタブレットだ。ただ、複数台のデバイスを持ち出しても、最終的には大は小を兼ねるので、結果として使うデバイスは限られてくる。最終的にはポケットの中のスマホと、応用性に優れたPCの利用機会が増えることになる。

 日常的な生活の中では手持ちの各種デバイスの中から、その日の用事に応じてデバイスを選び、最適だと思われるものを持ち出す。それと似たようなことをするために、出張のときには、一通りのバリエーションでデバイスを揃えて持って行くわけだ。

 今回の出張での最大の誤算は、買ったばかりのスマホ、Galaxy Note 3に現地キャリアのChina UnicommのSIMを装着したときにテザリングができないことだった。せっかく手数料を払ってSIMロックを解除したのに、これにはがっかりだ。ドコモのスマホはテザリング時に強制的にAPNを切り替える仕様で、それゆえに、海外現地SIMはもちろん、日本国内のMVNO SIMでさえテザリングができないのだが、数シーズン前の機種からドコモ以外のSIMでは大丈夫という情報が流れていたので期待していたのだ。APNの切り替えユーティリティはいくつか試したが、ことごとくだめだったし、頼みの綱のFoxFiもうまく働かない。以前よりもガードが固くなった印象だ。いつまでこんな仕様を続けるのかと思う。

アドオンとしてのタブレット

 さて、タブレットはスマホとPCに対するアドオンだ。それ以上と、それ以下をクロスオーバーしたデバイスといえる。おそらく、人それぞれで必須デバイスとしてのスマホの画面サイズによって、アドオンとしてのタブレットの画面サイズが決まってくるだろう。愛用しているスマホの画面サイズが大きければ大きいほど、タブレットの画面にも大きいものを求めるようになる。その一方で小さな画面のスマホを携帯している場合は、7~8型程度のミドルサイズがいいと思うだろう。

 難しいのは大きなサイズのタブレットとして10型超のものを選んだ場合、ノートPCの領域とかぶってしまうことにある。特に、今シーズンは、Intelが提唱する2-in-1のトレンドによって、タブレットとしても使えるWindows PCがたくさん出てきているし、いわゆるクラムシェルタイプのノートPCもタッチに対応するようになってきている。ユーザーによっては、これらのニュータイプのPCがあれば、タブレットはいらないという判断もありになってきた。

 もちろん驚異的に軽くなって機動性を高めたiPad AirやBay Trail-TことAtom搭載のWindows PC、Android搭載の10型超タブレット、さらにはSurface 2、Surface Pro 2などのピュアタブレットデバイスに、必要なときだけキーボードを装着して生産的な作業をするという選択肢もある。これはこれで悪くない。

 7~8型の領域は、OS的にもデバイス的にも、今もっとも選択肢が豊富な激戦区となっている。でも、先に書いたように、大きくなる一方のスマホの画面サイズによって、7~8型が中途半端に感じられるようになる傾向もある。そのくらいならスマホで全部事足りるという考え方もあるし、カバンからPCを取り出せばそれでいいという考え方もある。繰り返すが、このことは必須アイテムとしてのポケットの中のスマホの画面サイズに依存する。

 以前、ASUS JAPAN株式会社を取材したときに、Cynthia Teng氏(マーケティング部マネージャ)から、もしかしたら日本では10型タブレットは受け入れられないかもしれないという話を聞いた。というのも、日本人はシャイで、人前で画面サイズの大きなデバイスを取り出すことをためらう傾向にあるというのだ。確かに、何十年も前から、人前で平気でノートPCをひろげて使っているというのは特殊な部類に属するかもしれない。

大は中を兼ねる

 今、どんなプラットフォームを選ぼうが、スマホ+タブレット+PCの総重量は2Kg以下に収めることができるようになっている。ちょっと前のことを考えたら隔世の感がある。さらには、マルチデバイスが当たり前となり、複数台のデバイスをとっかえひっかえ使うことの不便が払拭されている。

 世の中的には7~8型デバイスが激戦区とされているが、個人的には主戦場は10型超デバイスではないかと考えている。スマホ(小)、タブレット(中)、PC(大)の3台を携行するのは大変だし、2台で済ませるのなら、「大」に「中」を兼ねさせたくなるだろうからだ。となると、「大」の本命はタッチに対応したWindows PCだ。それがタブレットなのか、クラムシェルなのか、2-in-1なのかはお好み次第ということになるが、できることのバリエーションという意味では、Windowsに軍配を上げたい。いわば一挙両得だ。そこに足りない部分はスマホで補完できる。

 かといって、iPad Airの驚異的なモビリティは卓越しているので、これなら大を中に兼ねさせなくても、中デバイスとして併用するのも悪くないなと優柔不断になったりもする。そのくらい、このシーズンのデバイス選びはバリエーションが豊富で悩みがつきないことを、すごくうれしく思っている。

新しい当たり前を探して

 今、飛行機や新幹線に乗って周りを見回すと、驚くほど多くの人が、それぞれお気に入りのデバイスで、音楽はもちろん、動画や電子書籍のようなコンテンツを楽しんでいるのを見つけることができる。日常的に都市を移動していても同様だ。ぼくらが何十年もかけておもしろい、便利だ、楽しいと主張してきたことを、普通の人々がみんな当たり前のようにやっているのを見ると、ちょっと気持ちがいい。

 個人的にこうしたことに夢中になっていたのは2005年頃だったと思う。この年は、ソニーのXビデオステーションが発売されたこともあり、コンテンツ消費のお膳立ての方法は飛躍的にラクになった。ScanSnapを手に入れて「自炊」を覚えたのもこの頃だった。

 当時は、コンテンツを消費するデバイスの選択肢が限られていたので、ノートPCを使ったりすることも多かった。PCはいろんな意味でつぶしがきいた。移動中に、ビデオを見るとか、本を読むといったことは、わざわざそこまでするかと、昔はバカにされていたかもしれない。でも、今は違うのはご存じの通りだ。それを当たり前のことにしてしまったiPadはそれだけでえらいと思う。

 こうしたユーセージモデルに匹敵するような提案ができるように、暗中模索を続けている。出張に複数台のポータブルディスプレイを持って行ったり、それどころか、21型ディスプレイをスーツケースに詰め込んだり、海外でのデバイスの通信を考えたり、丸1日、PCの電源をオンにしたまま持ち歩いたりと、人から見れば馬鹿馬鹿しいと思われるようなことにチャレンジし続けている。その馬鹿馬鹿しいことが、新しい当たり前になるのは、やっぱりうれしいのだ。

(山田 祥平)