山田祥平のRe:config.sys

なんちゃってXi、再び




 4月頭にXi対応端末を入手し、ようやく本格的に高速大容量のLTE通信を楽しめるようになっていた。なっていた、つもりだった。だが、虫食い状のXiエリアが、その快適さをダメにしているのも現実だ。今回は、都市部におけるXiの現状について考えてみたい。

●つながれば快適なXi

 「GALAXY Note」と「GALAXY S III」。今、手元には2台のXi端末がある。ドコモが喧伝する次世代通信の規格(LTE)に準拠し、Xiでの通信ができる端末だ。それまでは、契約だけXiにして、それをFOMA端末で3G運用することで、テザリング時の料金を浮かせる「なんちゃってXi」を実践してきたわけだが、新端末の入手以降は正真正銘のXiユーザーとしてドコモのLTEネットワークを使ってきた。

 ただ、少なくとも今日の時点で、この原稿を書いている仕事場室内ではLTE接続ができていない。北側を向く仕事場とは異なり、南側に視界が開けるリビングルームでも同様だ。ドコモのエリアマップを見ると、東京23区内は、2012年6月末時点でほぼ網羅されているし、そうでないところも、2012年9月末まで、2012年12月末までの拡大予定エリアとしてマークされている。だが、その予定に入っていないところが、ピンポイントに近い状況で存在することがわかる。ぼくの住んでいるところは、悲しいことに、その予定未定エリアに属しているようだ。

 どうせ、自宅ではWi-Fiにつないでいるのだから、LTEで通信ができなくても、なんら困ることはない。それに、外出時などで、LTEで接続できていることは確かに多いし、その場合は、FOMAよりも、明らかに遅延が少ない状態でネットワークを利用できている。たかだか、スマートフォンでの通信なので、技術規格上の最大値である何十Mbpsもの速度を求めるわけではないし、それはテザリング時でも同様なのだが、気持ちのよさという点ではFOMAよりも上だという体感はある。

●虫食いXiの弊害

 虫食い状のエリア状況は、少なからずいろいろな弊害を生んでいる。LTE通信がバッテリ喰らいなのは、もともと覚悟しているし、それで快適が得られるのだから仕方が無いとも思っている。かつて、FOMAがサービスをスタートしたときのバッテリの保ちを思えば立派なものだとも思う。

 ただ、エリアが虫食い状であることから、FOMAからLTE、LTEからFOMAへの切り替えが頻繁に発生する。特に、都心部は虫食い状態でもなく、ほぼサービスエリア内に入っているのだが、地下鉄駅構内やビル屋内では、まだLTE通信ができないところも多い。

 LTE通信ができない場合、端末はFOMAに切り替わって通信をするし、LTEが使えないからといって、そのエリアで困ることはまずない。でも、切り替えに時間がかかりすぎること、そして、何らかの原因で切り替えが不能になってしまうケースが多々あるのには閉口する。アンテナピクトはしっかりと立っているのに、データ通信ができない場合があるのだ。そういうときには、いったん端末を機内モードに設定し、ネットワーク接続が切れたことを確認してから機内モードを解除すると、しっかりとまともに通信ができるようになる。それでもダメなときは、いったん端末を再起動する。そうすると何事もなかったかのように、LTEで接続できたりもするのだ。

 これを放置したままにしていると、いつまでたってもデータ通信ができない状態が続くようなので注意が必要だ。だから、地下鉄との相互乗り入れをしている私鉄電車が地上に出たときには、必ず電波の状態をチェックして、接続ができていることを確認する。

 手元の端末は、たまたま2台ともSamsung製だが、どちらの端末でも同じような現象を体験している。端末や機種固有の問題とは思えないのだがどうだろう。

 いずれにしても、明らかにサービスエリア圏内であるにも関わらず、通信ができないというのは勘弁してほしい。幸い、GALAXYシリーズは情報も多く、ネットで調べてみると、LTEを強制的にオフにする方法も簡単に見つかった。ダイヤルパッドで特番をダイヤルするとサービスモードに入り設定ができるのだ。通信バンドをAutoにするとLTEがオンになり、WCDMAのみを選ぶと結果としてLTEがオフになる。自己責任でやるしかないので、ここでは設定方法の詳細には触れないが、LTEをオフにすることで、FOMA網だけを使って通信が行なわれるようになり、移動によって通信不能状態に陥る不具合はなくなった。また、バッテリの保ちが多少延びるという副次的効果もあった。つまり、これでまた「なんちゃってXi」に逆戻りというわけだ。

 ただし、これはユーザーにとっても機材の特性を活かせないことにもなるし、キャリアであるドコモにとってもうれしいことではないはずだ。

●通信を1台に集約するのは時代の流れか

 今、PCを含むスマートなデバイスは、1人が複数台を所有して使い分けるのが当たり前になろうとしている。2台は普通、3台も珍しくないという状況だ。

 携帯電話としてのスマートフォンは、常時携帯するものとして単独でWAN通信機能は必須だが、その一方で、2台目、3台目のデバイスは通信を何に依存すればいいのか。PCやタブレットなどには、WANの通信機能を持たず、Wi-Fiしか選択肢を持たないものも多い。たとえ、WANをサポートしていたとしても、別途、WiMAXや3G通信を使うのでは、コストの問題にも跳ね返ってくる。最近ではドコモのMVNOであるIIJや日本通信が、1つの契約で複数枚のSIMを提供するサービスを始めているので多少は選択肢も増えているし、デバイス単体でWANに接続することができるのが、どんなに便利なことであるのかは、WiMAX内蔵PCなどを使ってみれば、すぐに実感することができる。でも、やはりコストの問題があるのだ。

 昔は、人間がコンピュータの設置してある場所に、わざわざでかけていってコンピュータを使っていた。PCそのものを持ち運びできなかったのだから、それも仕方がない。だが、コンピュータがだんだん個人所有できるものになっていくことで、少なくともプライベートな場所でコンピュータを使えるようになった。さらに、ノートPCのようなプラットフォームが普及し、コンピュータそのものを持ち歩けるようになって、人間がコンピュータを使うためにコンピュータのある場所に行くということはあまりなくなった。まあ、いつでもどこでも好きなときにコンピュータが使える時代であり、それが今だ。

 でも、今の通信環境は、なんとなく人間がコンピュータを抱えて通信のできる場所に移動せざるを得ないという状況が覆い被さってきているように思う。これでは、コンピュータのある場所に移動して使っていた古の時代と同じだ。通信のできないコンピュータがどんなに非力なのかは誰もが知っていることだと思う。

 Wi-Fiの使えるコーヒーショップを見つけてそこでノートPCを開いたり、圏外、圏内を確認し、電波が弱ければ、少し移動してまたチャレンジするといったことを、人間が意識しなければならないのではダメだ。

 少なくとも、今の都市部における3G通信は、普通に生活している限り、ありとあらゆるところで使えるので圏内圏外の心配をすることはほとんどない。だから、普段必ず携帯しているスマートフォンをルーターとして使うことは、マルチデバイス環境において、今、もっとも現実的な解となる。

 それでもスマートフォンのバッテリ喰らいは誰もが知る事実で、テザリングをオンにして持ち歩こうものなら、ただでさえ短いバッテリ駆動時間がさらに短くなってしまう。でも、2台目、3台目のデバイスを手にとって使い始めようとしたときに、すでにネットワークにつながっているかいないかは、その使い勝手に大きな影響を与える。使いたいときにポケットの中のスマートフォンを取り出してテザリングをオンにし、改めて別のデバイスを手にとって使うという2ステップではやっぱり不便だ。

 だからこそ、スマートフォンのテザリングは常時オンにしておいて携帯したい。そうすることで、2台目、3台目のデバイスを携帯しても、それらがWi-Fiネットワークにさえ接続できれば、追加のコストをかけないでも、1台目のスマートフォンと同様に、使いたいときにすぐに使える状態で持ち運べる。

 手元のGALAXY S IIIに、タブレットやGALAXY Noteを組み合わせて、基本的にほとんどの作業はタブレット等で行ない、GALAXY S IIIはほとんどポケットの中に入れっぱなしで、通話、おサイフケータイ、ルーターとして機能させるようにして使うと、ぼくの使い方ではルーターとして機能しているGALAXY S IIIは、1時間あたり10%程度のバッテリを消費していく。単純計算すると、フル充電状態から8時間くらいは平気だということになる。もちろん、メールなどはどんどんプッシュされてくるし、併用している他デバイスでの作業結果もクラウド経由で同期されている。ポケットの中にあっても常に最新状態が保たれているのだ。もし、GALAXY S IIIしか持ち出せないことがあっても困らない。ちなみに、Wi-FiでアクセスするタブレットやGALAXY Noteは、ほとんど気にならないレベルでしかバッテリが減らない。

 テザリングをオンのままでは確かにバッテリの減りは速い。でも2倍の消費になるわけではない。どうせ丸1日は持たないのなら便利な方をとりたい。本当ならLTEもオンにしたいが、もう少しだけエリアが充実するまでは「なんちゃってXi」を続けようと思う。

 将来的には、通話とメール、Twitter程度の機能を持ったコンパクトな端末をルーターとして常時携帯し、比較的大きなスクリーンを持った端末を併用するようになるのではないか。ただ、逆に、今のスマートフォンは大型化によって、容量の大きなバッテリを搭載できているからこそ、こんな酷使にも耐えている面もある。いずれにしても、PCと同様で、すべてを1台に集約するのは、いろいろな点で無理があるのかもしれない。と、ここまで書いたところで、その機能限定のコンパクトなケータイはガラケーそのものじゃないかということに気がついた。