鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第80回:6月7日~6月11日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


6月9日

■■クリエイティブ、MP3プレーヤー「NOMAD」を国内発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990609/nomad.htm

ニッケル水素電池(Nickel-Metal Hydride[NiMH] battery)

 正電極材にニッケル酸化物、負電極材に水素吸蔵合金を使用したアルカリ蓄電池。
 蓄電池(二次電池、充電池)は、充電によって再生する素材を電極に使用し、繰り返し利用できるように作られた電池で、電化製品などで使われている代表的なものに、ニッケルカドミウム(Nickel-Cadmium[NiCd]~ニッカド)電池がある。ニッカド電池は、ニッケル酸化物の正極とカドミウム化合物の負極を、水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液に浸したもので、その原形は、'17年にパリの地下鉄で使われたといわれている。現在広く使われているタイプの製品は、三洋が「カドニカ」の名で'63年に量産を開始したものだ。

 ニッケル水素電池は、このニッカド電池の負極を水素吸蔵合金に変えたもので、水素吸蔵合金が水素ガスを吸蔵/放出する反応を負極の充電/放電に利用している。製品としては、三洋が'90年に生産を開始。電圧は1.2V(※1)でニッカドと互換性があり(ニッカド同様のメモリー効果[※2]もあるが)、容量は倍増(1.5~2倍)ということから急速に普及。携帯家電の分野では、完全にニッカド電池をリプレイスしてしまっている。最近では、ガソリン+電気のハイブリッドカーに、このニッケル水素電池が採用されたことでも話題となった。

(※1)電池は、電極に使用する素材によって電圧が異なり、マンガン電池やアルカリ電池では、正極0.3V、負極-1.2Vの1.5V仕様なのに対し、ニッカドやニッケル水素電池では、正極0.5V、負極-0.7Vの1.2V仕様となっている。

(※2)放電深度の浅い(少ししか使わず十分放電しきっていない状態で)充電を繰り返すと、内部の化学反応によってバッテリの能力が一時的に低下し、正規の放電容量が得られなくなる現象。

□三洋ソフトエナジーカンパニー
http://www.sanyo.co.jp/energy/index.htm
□松下電池工業
http://www.mbi.panasonic.co.jp/index.html



 
アルカリ乾電池(alkaline [dry] battery)

 電解液に水酸化カリウム水溶液を使い高性能化したマンガン乾電池。
 電池は、イオン化傾向の異なる2種類の金属(※1)を電解液に入れ、化学反応に伴うエネルギーを電気として取り出すデバイスで、1800年にイタリアのボルタ(Alessandro Volta)によって発明された。イオン化傾向の大きな金属は陽イオンとなって液中に溶けだし、残された電子によって-に帯電。他方はほとんど溶けずに+となり、両者を導線でつなぐと電流が流れ出す仕組みである(電流は電子の移動の逆方向)。

 乾電池の代表ともいえるマンガン電池は、1868年にフランスのルクランシェ(Georges Leclanche)が原理を考案したしたもので、正極に二酸化マンガン、負極に亜鉛、電解液に塩化亜鉛や塩化アンモニウムを用いている。アルカリ電池は、この弱酸性の電解液を、導電性の高いアルカリ性の水酸化カリウムに変えたもので、'64年にマクセルが国内で初めて生産を開始している。アルカリ電池の大きな特徴は、電池の内部抵抗が低減されることによって、より大きな電流が取り出せるようになった点である。構造的にも、棒状の正極を亜鉛の負極で囲ったマンガン電池と違い、亜鉛粉末の負極を二酸化マンガンで覆うスタイルになっており、亜鉛の化学反応が起こりやすく、長時間(マンガン電池の4~5倍)にわたってハイパワーを持続できるようになっている。

(※1)電極となる電気化学反応を起す物質を活物質といい、正極には酸化力の強い、負極には還元力の強い活物質が使われる。

□松下電池工業
http://www.mbi.panasonic.co.jp/index.html
□富士電気化学
http://www.fdk.co.jp/index.html
□電池はどうして力持ちなの?(ソニーデジタルドリームランド)
http://www.sony.co.jp/soj/TechnoGarage/DigitalDream/DEN/dentop.html
【参考】
□インフォリチウムバッテリ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990520/key76.htm#InfoLITHIUM



 
ADPCM(Adaptive Differential PCM [Pulse Code Modulation])
エーディーピーシーエム

 アナログのオーディオ信号をデジタル信号に変換する方式の1つ。適応差分パルス符号変調。

 CDなどに使われているオーソドックスなPCMが、波形の振幅レベルをそのままデジタル値に変換(量子化)していくのに対し、隣接するサンプル間の差分を採っていく方式をDPCM(Differential Pulse Code Modulation)という。波形の振幅幅ではなく変化幅を量子化していく方式なので、急激な変化に対しては大きな値を、滑らかな変化に対しては小さな値をとる。高域成分(サンプリング周波数に対する相対的な高域)を多く含む大きな音やランダムノイズなどは、波形に急激な変化をもたらすが、一般に扱うオーディオ信号の多くは相関性のある連続的な変化である。そのため、差分を使った符号化によって効率のよい(同じビット数ならよりクオリティの高い、同程度のクオリティならよりビット数の少ない)量子化が期待できる。

 ADPCMのAdaptive(適応)は、差分情報を直接値に変換していく量子化ではなく、先行する情報から次の情報を予測する技術が採り入れられていることを意味する。具体的には、変化量に応じて量子化のステップサイズ(※1)を変更していくようになっており、少ない量子化ビット数で激しい波形の変化にも追従できる。

 このADPCMには、アルゴリズムの異なる様々なバリエーションがあるが、Windowsで使われているMicrosoft ADPCMや、色々なプラットホームで用いられているIMA(Interactive Multimedia Association)のADPCMでは、1/4のデータ量でPCM相当の音質を実現。ADPCMを用いているPHSでは、32kbpsで64kbpsのPCM(※2)相当の音質を実現している。

(※1)量子化(quantize)は、一定範囲の値を近似する特定の値に丸めていく作業で、1量子化ステップに対応する範囲をステップサイズという。CDなどに用いられている一般的なPCMでは、ステップサイズは常に等間隔(リニア)で、このようなタイプを直線量子化という。

(※2)電話に使われているPCM(国内ではμ-Lawと呼ばれるタイプ)は、信号レベルに対して対数的に大きなステップサイズを割り当てていく非直線量子化を用いており、8bitでありながら、14~16bitの直線量子化に相当するレンジを持つ。

【参考】
□PCM
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980917/key46.htm#PCM
□MP3
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980924/key47.htm#mp3
□EVRC(Enhanced Variable Rate Codec)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990428/key75.htm#evrc



 
■■元麻布春男の「週刊PCホットライン」
  マイナーデバイスの悲しみ?
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990609/hot043.htm

VxD(Virtual [x=anything] device Driver)
ブイエックスディー

 Windows 3.xのエンハンスドモードや、Windows 95/98で利用される仮想デバイスドライバ。

 デバイスドライバは、システムの一部として組み込まれるハードウェアを直接制御するプログラムである。2.xまでのWindowsは、8086相当の機能しか持たないCPUのリアルモードで動いていた。3.0からは、286や386プロセッサ本来の機能を利用した実行モードが追加され、286を想定したものをスタンダードモード、386を想定したものをエンハンスドモードと名付けられた。このエンハンスドモードの登場により、現在ではあたりまえとなってる、ディスクドライブをメモリの延長として利用する仮想メモリや、リアルモードのDOSアプリケーションを複数実行する機能などが、はじめてサポートされるようになったのである。

 VxDは、このエンハンスドモードならではの機能を実現する、マルチタスクに対応したドライバアーキテクチャで、Windows 95にもこのデザインが受け継がれている。が、ドライバ自身をCPUの特権モードで動かすため(もはやトラップできないのでドライバの障害はシステムにとって致命的)、Windows NTではサポートされておらず、現在はNTと98共通の32bitドライバアーキテクチャとして、WDM(Windows Driver Model)が提唱されている。

【参考】
□WDM(Windows Driver Model)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980917/key46.htm#WDM


6月10日

■■鹿山雅志の オンラインソフト“つっこみ”レビュー
  ハードディスククリーンナップユーティリティ「DriveDiet 4 for Win32」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990610/ols05.htm

VBX(Visual Basic eXtension [custom control])
ブイビーエックス

 16bit版Visual Basic用のカスタムコントロール。
 Microsoftが開発したVisual Basic(※1)は、フォーム(アプリケーションのベースとなるウィンドウ)に、テキストボックスやボタンなどのGUIや、まとまった処理を提供する部品を配置しながらアプリケーションを作成していく、比較的手軽なWindows用のプログラミング言語である。このVisual Basic上で使用する部品の中で、機能を拡張するためのコンポーネントモジュールとして提供されるものをカスタムコントロールと呼んでいる。

 VBXは、このカスタムコントロールの16bit版時代の呼び名で(拡張子.vbx)、32bit版からは、新しいアーキテクチャ(OLE 2.0オブジェクト)で設計されたOCX(OLEControl eXtension または OLE Custom Control)を使用(拡張子.ocx)。このOCXは、単なるVisual Basicの部品にとどまらず、例えばHTMLの中で組み込んでInternet Explorer上で利用するなど、様々なアプリケーション上で使用できる汎用モジュールに進化しており、現在はActiveX(アクティブエックス)コントロールと呼ばれている。

(※1)BASIC(Beginner's All-purpose Symbolic Instruction Code)は、'60年代に米国のDartmouth(ダートマス)大学で、大型機のTSS(Time Sharing System~時分割処理により、1台のマシンを複数のユーザーで利用できるようにしたシステム)用に開発されたものである。当時学生だったBill Gates と Paul Allenが、これをホビー向けのマイクロコンピュータ「MITS Altair」上で利用できるようしたとことから、現在のMicrosoftとVisual Basicの歴史がスタートしている。

【参考】
□DLL (Dynamic-Link Library)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980217/key18.htm#DLL

[Text by 鈴木直美]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp