鈴木直美の「PC Watch最新記事キーワード」
第207回:5月7日~5月17日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


5月7日

■■ HP、Compaqの合併完了を正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0507/hp.htm

●Compaq Computer Corporation
 コンパック(コンピュータコーポレーション)

 '82年に設立され、'94年から2000年にかけては、世界市場のシェア第1位を続けていたPC互換機メーカー。

 TI(Texas Instruments, Inc.)のエンジニアだったRod Canion、Jim Harris、Bill Murtoが、IBM PC互換機の製造を目的に設立。合法的に作成した100%互換BIOS(※1)を搭載した最初の互換機メーカーで、その社名は「compatibility」と「quality」から付けられたという。

 '82年にリリースした最初のマシン「Compaq Portable」は、本体に9インチのディスプレイを内蔵。IBMには無い可搬型(現在のノートPCと違い13kgもあるが)というユニークな設計で、1年で53,000台という大ヒットとなった。'84年には初のデスクトップPC「Compaq Deskpro」をリリースし、コンピュータ業界のセールスレコードを樹立。翌'85年には286を搭載したPC/AT互換機「Compaq Deskpro 286」もリリースし、売り上げは'83年の1億ドルから3億ドル、さらには5億ドルと急成長。'86年には、累積出荷台数が50万台を越え、史上最短でFortune 500の仲間入りを果たしたのだった。

 本家IBMに先駆けて、世界初の386マシン「Compaq Deskpro 386」をリリースしたのも、そんな'86年のこと。互換機事業が無視できなくなったIBMは、翌'87年のニューモデル「PS/2」シリーズで、これまでの互換性とオープン性を捨てたMCA(Micro Channel Architecture)に路線変更する。このMCAには、他の互換機メーカー8社(※2)とともに、ISA(Industry Standard Architecture)を拡張したEISA(Extended IndustryStandard Architecture)で対抗。'89年にリリースした初のサーバー「Compaq Systempro」に搭載した。結局のところは、どちらも主役になることはできなかったが、IBMが作るPCの時代は過ぎ去り、自社で設計するメーカーの時代すら、もはや終焉を迎えようとしていた。

 '89年には、サーバー製品やノートPC(Compaq LTE)も投入し事業を拡大して行く同社だったが、深刻な不況の真っ只中で、他社との競争は日増しに激化してゆく。'91年にはついに、四半期で赤字を計上するにまで至り、CEOのRod Canionは解任。Compaqの行く末は、かつて彼がTIから迎え入れ、ヨーロッパ進出を託したEckhard Pfeifferに委ねられたのだった。

 互換機といっても、Compaqは安さを売りにしていたわけではない。高性能で信頼性の高い、高級機を作るメーカーである。だが世の中は、既に技術や性能に多額の金を払ってもらえる時代ではなくなっていた。Pfeifferは、設計や製造にかかるコストを抑え、安価なマシンを提供する方向に転換。デスクトップの「ProLinea」、ノートの「Contura」、サーバーの「ProSignia」といった低価格マシンを投入し、日本国内での販売も開始する。いわゆる、'92年の「コンパックショック」である。長年培った技術とブランドの力はさすがに強く、'93年にはすっかり経営も立ち直り、翌'94年には、ついにIBMを抜いて世界シェアナンバーワンの座に就くのだった。

 苦境を乗り越えた同社の次なる目標は、一介のPCメーカーからの脱皮だった。'97年にはノンストップシステムのTandem Computers Inc.を、'98年にはミニコンのDEC(Digital Equipment Corporation)を買収。着々と駒を進める同社だったが、巨大化した同社を再び低価格化の波が襲い、業績が悪化する。'99年にPfeifferは辞任し(事実上の解任といわれている)、CEOは会長のBen Rosenの代行を経て、Michael Capellasへと受け継がれるが、頭角をあらわしたのは、'84年に弱冠19才の若さで創業した新興勢力、Michael Dell率いるDell Computer Corporationだった。

 2000年、Compaqは、世界シェア1位の座を直販業者のDellに譲る。創業当時のCompaqは、直販を禁じ手とすることによって流通の信頼を得て、業績を伸ばして行ったものだが、時代は確実に変わっていったのである。2001年9月3日、シリコンバレーの源流を築いたHP(Hewlett-Packard Company)との合併を発表。TandemやDECの時とは異なり、今度は買われる番である。

 2002年5月7日、新生HP誕生。Compaqの名は、PC史の中で静かな眠りについた。

※1 1つのチームがIBMのBIOSを徹底的にリバースエンジニアリングし、オリジナルのコードを全く知らない別のチームが、同じように動作するコードを作成した。

※2 EISA軍団は、AST Reserch、Epson、Hewlett-Packard、NEC、Olivetti、Tandy、Wyse Technology、Zenith Data SystemsにCompaqを加えた9社で、「Gangs of nine」と呼ばれた。


5月7日

■■ AKIBA PC Hotline! HotHotレビュー by Ubiq Computing
   バイオU発売“勝手に”記念特別レポート(その2)
   ~パフォーマンスとバッテリの持ちをチェック
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0508/hotrev159.htm

●JEITAバッテリ動作時間測定法(JEITA測定法)

 JEITA(電子情報技術産業協会)が2001年に策定した、ノートPCのバッテリ動作時間を比較できるようにするための標準的な測定方法。

 バッテリ動作時間は、モバイル使用に欠かせない重要なファクタである。が、その測定方法は各社で異なるため、カタログなどに記載されたデータを一様に比較することは難しかった。「JEITAバッテリ動作時間測定法」は、異なるメーカー間でも、容易に比較できるようにするための測定基準を示したもので、消費電力の大きな画面の輝度、CPUの負荷、HDDの負荷に一定の条件を規定。2種類の異なる状態で動作時間を測定し、両者の平均をとる。

 測定法の1つは、比較的消耗の激しいタイプで、20cd(カンデラ)以上の輝度(白表示時)に設定した画面をつけたまま、規定のMPEG-1ファイルをハードディスク上から連続再生する。もう1つは、最低輝度(OFFにしてはならない)の状態でデスクトップ画面を表示したまま放置するタイプである。ノートPCの使い方は、ユーザーや環境によって異なるため、これらの平均値を実際に使用可能な時間とすることはできないが、横並びの比較には大いに役立つだろう。

□JEITAバッテリ動作時間測定法
http://it.jeita.or.jp/mobile/
【参考】
□cd/m2
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000921/key136.htm#PVR


5月15日

■■ SanDisk、プレスミーティングでUSBストレージなどを発表
   ~5月28日発表の他社PDAにSanDisk製SDコンボカードを提供
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0515/sandisk.htm

●MLC(MultiLevel Cell)

 電位の違いを使い、1つのメモリセルに複数ビットを格納する技術。

 メモリは、内部のメモリセルにビットの状態に応じて電荷を蓄え、それ検出することによって記録した内容を読み出している。DRAM、SRAM、フラッシュメモリなどを問わず、これまで使われてきたメモリセルは、電荷の有無という単純な2値を用いたいわゆるシングルレベルセル(Single Level Cell[SLC])であり、1セル=1bitというのが一般的だった。

 MLCは、複数の電位を使ってセルを多値化する技術で、'90年代後半に6レベル2bit/セルのフラッシュメモリが登場。チップの小型化や大容量化、低価格化(価格は製造技術や量産化に依存する)が期待でき、3~8bit/セルの製品も試作あるいは商品化が進められている。実際の製品では、実装密度の制約が厳しい小型メモリカードの大容量タイプに、2bit/セルのフラッシュメモリが使われている。

【参考】
□NAND型フラッシュメモリ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001006/key138.htm#NAND


5月17日

■■ AKIBA PC Hotline! Hothotレビュー by Ubiq Computing
   P4ベースの新Celeron初登場!
   WillametteコアのCeleron 1.7GHzを試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0517/hotrev162.htm

●トレースキャッシュ(Execution Trace Cache)

 Pentium 4に採用された、マイクロオペレーション命令を格納するキャッシュメモリ。

 PCのメインメモリには、安価で高密度化に適したDRAMが使われている。このDRAMは、アクセススピードが非常に遅いため、メインメモリから読み出したデータやコードを高速にアクセスできるSRAMに一時的に記憶しておく、キャッシングという手法が用いられている。データを格納するキャッシュを「データキャッシュ」、プログラムコードを格納するキャッシュを「インストラクション(命令)キャッシュ」というが、Pentium 4のインストラクションキャッシュは、これまでのようにコードをそのまま格納するタイプではなく、デコードされたマイクロオペレーション命令(CPUの内部実行コードに翻訳された命令)を格納。これを「実行トレースキャッシュ」と呼んでいる。

 デコードは、実行プロセスの最初のステップである。従来のインストラクションキャッシュは、素早くコードを取り出して実行を開始することに貢献するが、いざ実行を開始すると、時間のかかる複雑な命令のデコードでパイプラインが滞ってしまうこともあれば、繰り返し実行するコードをその都度デコードするといった無駄も出てくる。同じ格納しておくなら、デコードプロセスの後で格納した方が、より効率的なのである。

【参考】
□エクスクルーシブキャッシュアーキテクチャ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001109/key142.htm#ECA
□バックサイドキャッシュ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990114/key60.htm#backside_cache
□2次キャッシュ(L2 Cache)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971209/key10.htm#L2cache

[Text by 鈴木直美]

(2002年5月24日)


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