レビュー
980 Ti並みの性能で圧倒的コスパを見せるGeForce GTX 1070
2016年5月30日 07:00
GeForce GTX 1080の下位モデルとなるハイエンドGPU
GeForce GTX 1070はGP104をベースにしたハイエンドGPU。GP104は、先立って発売されたGeForce GTX 1080にも採用されたGPUコアであり、最新のPascalアーキテクチャを採用、16nmプロセスで製造されている。GeForce GTX 1070はGeForce GTX 1080の下位モデルであり、GeForce GTX 970の後継モデルにあたる。
GeForce GTX 1070のGP104コアは、1,920基のCUDAコアと120基のテクスチャユニットを備える。ベースクロックは1,506MHz、Boostクロックは1,683MHz。メモリには8GHz相当で動作するGDDR5メモリ8GB搭載。メモリとGPU間のメモリインターフェイスは256bitで、メモリ帯域幅は256GB/sec。TDPは150W。
GeForce GTX 1070 | GeForce GTX 1080 | GeForce GTX 980 | GeForce GTX 970 | |
---|---|---|---|---|
アーキテクチャ | Pascal(GP104) | Maxwell(GM204) | ||
製造プロセス | 16nm | 28nm | ||
GPU ベースクロック | 1,506MHz | 1,607MHz | 1,126MHz | 1,050MHz |
GPU ブーストクロック | 1,683MHz | 1,733MHz | 1,216MHz | 1,178MHz |
CUDAコア数 | 1,920基 | 2,560基 | 2,048基 | 1,664基 |
テクスチャユニット | 120基 | 160基 | 128基 | 104基 |
メモリ容量 | 8GB GDDR5 | 8GB GDDR5X | 4GB GDDR5 | |
メモリクロック | 8.0GHz | 10.0GHz | 7.0GHz | |
メモリインターフェイス | 256bit | |||
ROPユニット | 64基 | 56基 | ||
TDP | 150W | 180W | 165W | 145W |
今回借用したGeForce GTX 1070は、Founders Editionと呼ばれるNVIDIAリファレンスデザインを採用したモデル。見た目はGeForce GTX 1080のリファレンスボードと同じで、金属フレーム採用のGPUクーラー、基板背面を覆うバックプレートを搭載。ディスプレイ出力端子はDVI-D×1、HDMI×1、DisplayPort×3。
テスト環境
GeForce GTX 1070のベンチマークテストは、前回GeForce GTX 1080のベンチマークレビューで用いた環境をそのまま流用して実施した。また、機材調達の関係から、比較用スコアについても同レビューでの結果を流用している。
ベンチマークスコアを比較するのは、上位モデルであるGeForce GTX 1080。Maxwell世代のハイエンドGPUであるGeForce GTX 980。Maxwell世代のウルトラハイエンドGPUであるGeForce GTX 980 Tiを大幅にオーバークロックして搭載したZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme。以上の3製品だ。
GPU | GTX 1070 | GTX 1080 | GTX 980 Ti/GTX 980 |
---|---|---|---|
CPU | Intel Core i7-6700K | ||
マザーボード | ASUS Z170-A | ||
メモリ | DDR4-2133 8GB×2(15-15-15-35、1.20V) | ||
ストレージ | 256GB SSD(CFD CSSD-S6T256NHG6Q) | ||
電源 | Antec HCP-1200(1200W 80PLUS GOLD) | ||
グラフィックスドライバ | GeForce 368.19 Driver | GeForce 368.13 Driver | GeForce 365.19 Driver |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
ベンチマーク結果
それでは、ベンチマークテストの結果を確認する。実行したテストは、3DMark(グラフ1、2、3、4、5)、アサシンクリード シンジケート(グラフ6)、Witcher 3(グラフ7)、ダークソウルIII(グラフ8)、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(グラフ9)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ10)。
3DMarkのFire Strikeにおいて、GeForce GTX 1070は上位モデルのGeForce GTX 1080の82~85%程度のスコアを記録。ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeのスコアに対しては約90%程度で、GeForce GTX 980の約1.3倍という結果だった。
残るSky Diver、Colud Gateでも、GeForce GTX 1080とZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeに次ぐ3番手のスコアとなっている。各テストのGraphics Scoreを見ると、GeForce GTX 1080との間にはおおよそ2割程度のスコア差が存在している。ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeを1割程度下回り、GeForce GTX 980には3割の差を付けて上回る。
アサシンクリード シンジケートのフレームレートでもGeForce GTX 1070は比較製品中3番手の数値を記録しており、各GPUとの差も3DMarkの結果に近いものとなっている。ただ、最高描画設定で2,560×1,440ドット以上の画面解像度ではメモリ容量不足でGeForce GTX 980とZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeがフレームレートを大きく落としており、VRAM使用量が大きな条件ではGeForce GTX 1070が有利になっている。
GeForce GTX 980やZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeがメモリ不足に陥る設定は、GeForce GTX 1070や上位のGeForce GTX 1080でも60fpsを維持するのは困難な設定だが、GPU性能の不足はSLIで改善が図れることを考えると、8GBのVRAMを搭載したGeForce GTX 1080/1070には、より高画質でゲームを楽しめる可能性が存在していると言える。
Witcher 3でも比較製品とのフレームレート差はこれまでのベンチマークテスト結果と同じ傾向だ。60fps以上でのプレイが期待できるのは1,920×1,080ドットまで、垂直同期を30fpsに落として画質を多少調整すれば、4K解像度でのプレイも期待できそうだ。
フレームレートの上限が60fpsとなっているダークソウルIIIでは、2,560×1,440ドットまでは60fpsを維持し、3,840×2,160ドットで39fpsという結果になった。GeForce GTX 980は2,560×1,440ドットで60fpsを割り込んでいるため、最高描画設定の2,560×1,440ドットで60fpsが期待できるGPUとしては、GeForce GTX 1070が下限となる。
ファイナルファンタジーXIVの画面解像度1,920×1,080ドットでは、各GPUともCPUがボトルネック気味でややスコア差が詰まっているが、2,560×1,440ドット以上の画面解像度では、各GPUのスコア差がほかのベンチマークテストと同程度の差となっており、GeForce GTX 1070は比較製品中3番手のスコアを記録している。
MHFベンチマークでもGeForce GTX 1070の比較製品中3番手という順位は変わらず、スコア差も3,840×2,160ドット時にGeForce GTX 980との差がやや拡大しているものの、ほぼほかのベンチマークテストと同じと言える結果だ。
GeForce GTX 1070が備える、8GBというメモリ容量と256GB/secのメモリ帯域幅が、フルHDから4Kまでの解像度で安定した性能を実現している。SLI構成でさらなる性能アップを狙おうとする時、GeForce GTX 1070のVRAMの容量と帯域幅は心強いものとなるだろう。
最後に消費電力の測定結果を紹介する。消費電力の測定はサンワサプライのワットチェッカーで行なった。
アイドル時の消費電力はPascal世代のGeForce GTX 1070/1080が40Wで横並び、続いてGeForce GTX 980の45W、ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeの57Wと続く。
フレームレートに制限のないダークソウルIII以外のテストでは、GeForce GTX 1070が比較製品中最も低い消費電力を記録した。GeForce GTX 1080との電力差は30W程度で、両GPUのTDP差とほぼ一致する結果となっている。多くのテストで2~3割のスコア差を付けて上回ったGeForce GTX 980の消費電力をはっきりと下回っており、改めてPascalアーキテクチャと16nmプロセスを採用したGP104コアの電力対性能比の優秀さを感じさせられる。
フレームレートが60fpsに制限されるダークソウルIIIでは、GeForce GTX 1070搭載システムが1,920×1,080ドット時に消費した電力はわずか123Wで、133WのGeForce GTX 1080をさらに10W下回った。しかし、2,560×1,440ドットになると、GeForce GTX 1070が210Wまで増加したのに対し、GeForce GTX 1080は172Wと逆転している。
210Wという消費電力は、ほかのテストでGeForce GTX 1070に最高負荷が掛かっている際の電力に近い数値であり、ダークソウルIIIを2,560×1,440ドットの最高描画設定で60fpsを維持するという状況では、GeForce GTX 1070がほぼフルロードで動作しており、使わないGPUコアの電力をカットできるほどの余裕がないことが伺える。
省電力で高性能なGeForce GTX 1070。449ドルという価格にも期待。
GeForce GTX 1070は、GeForce GTX 980とGeForce GTX 980 Tiのオーバークロックモデルの中間程度の性能を実現しながら、消費電力を大幅にカットしたGPUだ。Founders Editionの販売価格である449ドルという価格はもちろん、消費電力が低いことで電源ユニットへの要求も少なくて済むため、より安価で高性能なゲーミングPCの構築が可能となる。
Maxwell世代のウルトラハイエンドGPUを凌ぐ性能を持つGeForce GTX 1080は非常にインパクトのある製品であったが、リファレンスモデルであるFounders Editionの価格は699ドルという、GeForce GTX 980 Ti発売時の649ドルより高価であり、GeForce GTX 980の後継としては高めの価格設定だ。性能を考えれば妥当だが、日本での販売価格が10万円近いビデオカードとなると、購入を即決できる層は限られるだろう。
250ドル安い価格が設定されたGeForce GTX 1070は、GeForce GTX 1080より多くのPCゲーマーにとって選び安いGPUとなる。GeForce GTX 1070の優れたGPU性能と、8GBという余裕あるVRAM容量、そして449ドルという価格は、PCでゲームを本格的に楽しみたいユーザーにとって大いに魅力あるものとなりそうだ。
【お詫びと訂正】記事初出時、販売価格を499ドルとしておりましたが、正しくは449ドルとなります。お詫びして訂正させていただきます。