レビュー
新Xeonが利用できるSupermicro製マザー「X11SAE」を試す。Coreプロセッサも利用可能
2017年5月9日 06:00
今回、Supermicroより、LGA1151対応マザーボードの「X11SAE」と、Kaby LakeベースのXeon E3-1225 v6(ES品)を借用する機会が得られらたので、そのテストレポートをお届けする。
Intel C236 チップセット搭載のサーバー向けマザーボード
Supermicro X11SAEは、Intelのサーバー向けチップセット「Intel C236 チップセット」を搭載するマザーボードだ。フォームファクターはATXで、基板サイズは304.8×243.8mmとなっている。
CPUソケットはLGA1151で、Intel C236 チップセットを搭載したことにより、サーバー向けCPUの「Xeon E3-1200 v6/v5 シリーズ」が利用できる。また、Kaby Lake-SまたはSkylake-SベースのIntel Core、Pentium、Celeronといった、コンシューマ向けCPUも動作可能だ。
ちなみに、Haswell世代のXeon E3-1200 v4までは、コンシューマ向けチップセットと組み合わせて使用することができたが、Skylake以降はそれができなくなっており、最新のXeon E3-1200 v6/v5シリーズとて例外ではない。よって、Xeonを利用したいユーザーは今後、必然的に本機のようなワークステーション/サーバー向けマザーボードを選択することになる。
CPUソケットの横に実装されたメモリスロットは4基。DDR4メモリのデュアルチャネル動作に対応しており、容量は最大64GB(16GB×4)、メモリスピードは最大DDR4-2400までの対応となる。また、Xeon E3-1200 v6/v5 シリーズを搭載した場合、Unbuffered ECCメモリが利用できる。
ストレージ向けのインターフェイスには、SATA 6Gbpsを8ポートと、PCI Express 3.0 x4接続に対応したM.2スロットを備える。8ポートのSATAは全てIntel C236 チップセットが提供するポートで、M.2 スロットのPCI Express 3.0 x4レーンもチップセットにより提供されている。なお、M.2 スロットはSATA接続に対応していないため、SATA接続のM.2 SSDが利用できない点に注意したい。
拡張スロットは、PCI Express x16スロットが2基、PCI Express x1スロットが3基、PCIスロットを2基備える。2基のPCI Express x16 スロットはCPUが提供するPCI Express 3.0 x16レーンを共有しており、x16/x0、またはx8/x8の2モードで動作する。PCI Express x1スロットは、いずれもIntel C236 チップセットと接続されており、PCI Express 3.0に対応。
2基のPCIスロットは、Integrated Device TechnologyのPCI-E/PCIブリッジ「89HMPEB383」による提供で、同ブリッジはチップセットとPCI Express 2.0 x1で接続している。
バックパネルインターフェイスには、画面出力用のHDMI 1.4、DisplayPort 1.2、DVI-Dを各1系統ずつ備える。そのほかのインターフェイスは、Gigabit Ethernet×2、USB 3.1 (10Gbps)×2、USB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力。Gigabit Ethernetは、Intelの「I210-AT」と「I219-LM」がそれぞれ1ポートずつ提供し、USB 3.1(10Gbps)はASMediaの「ASM1142」によって提供されている。
基板上にはUSB 3.0ヘッダーを2個、水冷ユニットの制御や電源ユニットのモニター用として意外と需要のあるUSB 2.0ヘッダーは3個備えており、内部ヘッダーを使うUSB機器にも余裕をもって対応できる。
LGA1151対応マザーボードとして、X11SAEが備えているインターフェイスは実にシンプルなものだ。Intel C236 チップセットならではと言える、ECCメモリに対応するDDR4メモリスロットや、Intel Rapid Storage Technologyが利用可能な8基のSATA 6Gbps、レガシーなPCIスロットは特徴的だが、特別インターフェイスが充実しているというわけではない。
そのかわり、実装されているスロットやコネクタのほぼすべてが同時に利用できるというのが、X11SAEの特徴だ。近年のLGA1151対応マザーボードの多くは、多様なインターフェイスを実装している代わりに、帯域を共有しているインターフェイスが排他利用となっている場合が多い。このため、同時使用できるインターフェイスを購入前の段階で十分に把握しておく必要があるのだが、X11SAEでは、実装されているインターフェイスをほぼ見た目通りに利用できる。
サーバー向けのマザーボードであるX11SAEには、デザイン性を重視したヒートシンクや、見栄えを重視した基板やコネクタのカラーリング、RGB LEDによるライティング機能と言った「飾りっ気」は皆無だ。だが、配線長をできるだけ短く揃えるための独特の配線は健在で、この点に美を感じるユーザーの目を楽しませてくれるだろう。
なおX11SAEには、ドライバCDが付属しない。Windows 10であれば、ドライバCDが無くともインストールに不備はなく、OS標準のドライバでインターネットに接続することもできる。
ほかの付属品も、IOシールドとSATAケーブル6本、それにヘッダーのピンアサインが分かる程度の簡易マニュアル1枚だけというシンプルな内容となっている。SupermicroのWebサイトから、より詳しいマニュアルをダウンロードすることは可能だが、ユーザー側にそれなりの知識やスキルが求められる製品であることは間違いない。
CUIベースのUEFIメニューを採用
Supermicroは、同社のコンシューマ向けマザーボードにおいてGUIベースのUEFIメニューを搭載しているが、サーバー向けであるX11SAEにはCUIベースのUEFIメニューが採用されおり、マウスではなくキーボードで設定を行なう。
Intel C236 チップセットはオーバークロックをサポートしていないが、有効にするCPUコア数や省電力機能の動作設定などに関する項目は比較的豊富に用意されている。ある程度CPUの動作をチューニングすることはできそうだ。
一方、ファンコントロール機能に関しては、「Standard」か「Full Speed」の2種類しか選べず、CPU温度などを基準にPWM信号を任意で設定するようなことはできない。また、基板上に5つのファンコネクタを持つにも関わらず、UEFIでの制御は全コネクタ一括となっており、各コネクタで個別のファン制御を行なうこともできない。
UEFIのアップデートはDOS起動ディスクを利用する方法となっており、近年のコンシューマ向けマザーボードのほとんどが備えているUEFIメニューからのアップデート機能は備えていない。
サーバー向けマザーボードであるX11SAEは、コンシューマ向けマザーボードとは異なる設計思想であって当然であり、CUIベースのメニューを採用しているのは当然だ。ファンコントロール機能やUEFIアップデート方法などについても、設計思想の違いであると言ってしまえばそれまでだが、コンシューマ向けマザーボードと同じ感覚で選択すると、不便を感じる仕様であることもまた確かである。
Kaby LakeベースのXeonを搭載してのパフォーマンスチェック
ここからは、Supermicroより借用したXeon E3-1225 v6のES品を搭載し、その性能をベンチマークテストで測定した結果を紹介する。
なお、テストに用いたES品のXeon E3-1225 v6だが、L3キャッシュ容量が製品版の8MBより少ない6MBとなっている。4コア4スレッドCPUである点や、CPUクロックは製品版と同じ仕様だが、キャッシュ容量で勝る分、CPUの性能は製品版の方が多少高くなると予想できる。あくまでES品での検証結果である点に留意して頂きたい。
【表1】CPUの主なスペック | ||
---|---|---|
モデルナンバー | Xeon E3-1225 v6 (ES品) | Xeon E3-1225 v6 |
アーキテクチャ | Kaby Lake | |
製造プロセス | 14nm | |
CPUコア数 | 4 | |
CPUスレッド数 | 4 | |
CPUクロック | 3.3 GHz | |
Turbo Boost時最大 | 3.7 GHz | |
L3キャッシュ | 6 MB | 8 MB |
内蔵GPU | Intel HD Graphics P630 | |
GPUクロック (最大) | 1.15 GHz | |
対応メモリ | DDR4-2400/DDR3L-1866 | |
メモリチャネル | 2 | |
TDP | 73 W |
【表2】テスト機材一覧 | |
---|---|
CPU | Xeon E3-1225 v6 (ES品) |
マザーボード | Supermicro X11SAE (UEFI: R 2.0a) |
メモリ | DDR4-2400 8GB×2 (2ch、17-17-17-39、1.2V) |
GPU | Intel HD Graphics P630 |
システム用ストレージ | Intel SSD 600p SSDPEKKW256G7X1 (256GB SSD/M.2-PCIe 3.0 x4) |
電源 | 玄人志向 KRPW-TI700W/94+ (700W 80PLUS Titanium) |
グラフィックスドライバ | 15.45.18.4664 |
OS | Windows 10 Pro 64bit (Ver 1703 / build 15063.250) |
ゲーム モード | オフ |
電源設定 | バランス |
実行したベンチマークテストは、「CINEBENCH R15」、「TMPGEnc Video Mastering Works 6」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の3種類で、結果は以下の通り。
CINEBENCH R15のスコアは、全CPUコア使用時で「588 cb」、シングルスレッド時は「160 cb」となっており、全コアを使用した時のスコアはシングルスレッド時の3.675倍となった。コアの稼働数によって効き具合に差が出るTurbo Boostに対応している割に、このCPUでは、全コア稼働時と1コア稼働時でCPUコアの性能が大きく変化していないようだ。
TMPGEnc Video Mastering Works 6では、ソフトウェアエンコーダを使用した際と、内蔵GPUのQuick Sync Video (Intel Media SDK Hardware)を利用した際のエンコード時間を測定した。
結果としては、H.264とH.265のどちらの形式においても、Quick Sync Videoを利用することでエンコード時間を6分の1に短縮できている。画質面ではソフトウェアエンコーダーが多少有利ではあるが、最高画質を追求しないのであれば、この速度差は大きな魅力となるだろう。
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークは、画面解像度1,280×720ドットで、描画品質「標準品質(デスクトップPC)」という、比較的GPU負荷の低い設定であるにも関わらず、スコアは1,703で「設定変更を推奨」という結果に終わった。GPUの3D描画性能については「動かせる」以上を期待しない方が良いだろう。
上のグラフは、CPU系ベンチマークテスト実行時のピーク消費電力と、アイドル時の消費電力測定結果をまとめたものだ。
CPU系ベンチマークテストでの消費電力が49~56Wと低いこともさることながら、アイドル時の17Wという数値の低さが目を引く。検証のために必要最小限な装備しかしていないからこその低消費電力ではあるが、X11SAEが余計なものを搭載しないシンプルなマザーボードであることも、低い消費電力の一因だ。
安定稼働を追求した自作PC中~上級者におすすめ
今回テストしたX11SAEはサーバー向けの製品であり、コンシューマ向けのマザーボードとは明らかに設計思想の異なる製品だ。ドライバCDが付属せず、付属するマニュアルも最低限、UEFIメニューもコンシューマ向け製品のような分かりやすさはない。自作PCに用いるには、ユーザー側の理解が求められることになる。
使い勝手の面でユーザーを選ぶことになるX11SAEだが、サーバー向け製品だけあって品質は約束されている。また、2基のPCIや8基のSATAを備え、それらを排他なしで利用できる点などは、レガシーなデバイスを流用したいユーザーにとって魅力的だ。Xeonを搭載すれば、ECCメモリが利用できる点も、安定稼働を求めるユーザーの期待に応えるものとなる。
はじめて自作PCに挑戦するというユーザーに進められるマザーボードではないが、自作経験のある中~上級者なら、使い勝手の悪さは問題とならないだろう。個人向けではない製品を個人で使うことへの苦労はあるものの、それも含めて楽しめる技量があるなら、使ってみる価値のあるマザーボードである。