特集
Haswell対応のゲーミングマザーボード2モデルをフォトレビュー
~ASUSの「MAXIMUS VI HERO」とGIGABYTEの「G1.Sniper B5」
(2013/7/19 00:00)
7月に入り、Haswellこと第4世代Coreプロセッサー・ファミリーに対応するマザーボードのラインナップが充実してきた。今回は、ゲーミング向けとして位置づけられるASUS R.O.G.シリーズのATX最下位モデル「MAXIMUS VI HERO」と、GIGABYTE G1.KillerシリーズのATX最下位モデル「G1.Sniper B5」を紹介する。
2013年に入ってから急速に進行する円安に対し、各メーカーともに、Haswell対応マザーボードの低価格モデルを充実させている。今回紹介する2モデルもご多分に漏れず、MAXIMUS VI HEROはこれまでR.O.G.で下位だった「FORMULA」のさらに下に位置づけられるラインナップ、そしてG1.Sniper B5は異例のビジネス向け低価格チップセット、Intel B85 Expressを採用している。
電源周りの装備が上位と同じMAXIMUS VI HERO
MAXIMUS VI HEROはR.O.G.シリーズに新たに加わった低価格ラインナップ。R.O.Gシリーズの機能をできるだけ維持しながら、搭載部品を簡略化するなど、FORMULAからの低価格化を図っている。実売価格は3万円前後。ただし、上位のFORMULAは国内未発売である。
最上位のMAXIMUS VI EXTREMEなどと比較すると、付属品や機能面でもさることながら、基板の設計がかなりシンプルであることがわかる。とくに拡張スロット周りの実装部品は少なく、全体的にあっさりした印象となっている。チップセットはIntel Z87 Expressだ。
しかしCPU周りのPWM電源は、写真を見る限りEXTREMEと同じ構成の8+2(CPU+メモリ)フェーズ。最大60Aに対応でき、3~5℃温度が低い「BlackWing」チョークコイル、90%の効率を誇る「NexFET」と呼ばれるMOSFET、日本製の「10K Black Metallic capacitor」(コンデンサ)などの実装も同じで、負荷時の安定性やオーバークロック性能についてはほぼ同等であると予測される。なお、PWMコントローラは独自の刻印が施されている。
一時期は、24フェーズや32フェーズといった超多フェーズのマザーボードも流行していたが、Haswell世代では電圧レギュレータがCPUに内蔵されたほか、デジタルPWMコントローラの普及やチョークコイル/MOSFET/コンデンサの進化によって、マザーボードに実装する分に関しては、ある程度簡素化しても要求に応えられるようになったのだろう。
ASMediaの「ASM1061」による6Gbps対応SATAポートが2基増やされている以外、USB 3.0コントローラなどによる過剰なインターフェイス拡張がされていないのも特徴。6基のSATA 6Gbpsや、6基あるUSB 3.0ポート(うち2基はピンヘッダ)はいずれもZ87チップセットの機能によるもの。Gigabit EthernetはHaswell世代マザーボードで採用が進んでいるIntelの「I217V」を採用する。
オーディオは独自の「SupremeFX」である。MAXIMUX V GENE世代から、同社のR.O.G.シリーズはサウンド部の基板が、そのほかの信号と分離した設計を採用しているが、HEROでもその特徴を受け継ぎ、信号干渉によるノイズ低下を図っている。オーディオコーデックがシールドされ、ELNA製のプレミアムオーディオコンデンサを採用するなど、かなりこだわっている。
今回試していないが、UEFI BIOSや付属ソフトの進化もトピックの1つである。UEFI BIOSではショートカット機能、お気に入りの機能を登録する機能が増えたほか、自由にノートを取る機能、そして変更をリスト化して表示する機能、SSD Secure Erase機能などを搭載した。
一方、ソフトは独自の「Dual Intelligent Processors 4」との組み合わせにより、CPUのオーバークロックやアンダークロック、ファンの回転数の調節などをワンタッチで行なえる「4-way Optimization」を搭載。ゲーム時では自動的にオーバークロック、離席時には消費電力を抑えるといったことが容易にできるようになった。
また、ゲーム向けでは「Sonic Rader」機能を新たに搭載し、足音や銃声がする方向を円形のチャートで視覚化することで、FPSにおける敵の位置の把握をより容易にする。ある意味“チート機能”とも言えるが、サラウンドではなくステレオ環境が一般的だと思われる日本のゲーマーにとっては意味のある実装と言えるだろう。
Kシリーズの倍率設定が可能なG1.Sniper B5
G1.Sniper B5は、ゲーミング向けながら実売13,000円というアグレッシブな価格が特徴のゲーミングマザーボードだ。この低価格を実現するために、チップセットはビジネス向けのIntel B85 Expressを採用している。
低価格ということもあり、上位のIntel Z87 Expressを搭載する「G1.Sniper 5」と比較すると、装備が大幅に簡略化されている。CPUの電源が4フェーズとシンプルなこともさることながら、ヒートシンクなどの機構もシンプルで、基板もATXよりわずかに小さいサイズに収まっている。
しかしながら、G1.Sniper 5シリーズで特徴的な独立したサウンド部基板、そしてフロントチャネルのみ交換可能なオペアンプを備えており、ゲーミング向けらしい遊び心は残されている。
PWMコントローラはIntersil製の「ISL95820」。Intel VR12.5に準拠するエントリー向けのもので、4フェーズまでしかサポートしない。最大出力電流が120Aまでということもあり、オーバークロック向けではないことは明らかだ。
SATAはオンボードの6Gbps×4、3Gbps×2のみ。しかしGigabit EthernetコントローラはIntelの「I217V」を採用しており、低価格な割りには頑張っている印象である(そもそもI217Vの価格が安いのかもしれないが)。
ユニークなのは、ベータ版となるBIOS F3b以降(7月18日現在、F3eに置き換えられている)で、Kシリーズの倍率変更が可能になる点。Intel H87/B85 Expressチップセットは登場当初、Kシリーズの倍率変更が不可だったが、ASRockの「Fatal1ty H87 Performance」のベータBIOSを皮切りに、各社もH87/B85でKシリーズの倍率変更ができるようになった。
実売が3万円台半ばのCore i7-4770Kはともかく、2万円台半ばのCore i5-4670Kでオーバークロックしたいユーザーにとって、3~4万円のマザーボードがボトルネックになることは確か。その点、1万円台のH87/B85でも倍率変更が可能になるのは歓迎すべきだろう。
ただしH87/B85では、メモリがDDR3-1600までのサポートとなるほか、FSB(BCLK)の変更などもできない。あくまでも電圧と倍率のみが変更できるため、「Kシリーズでとことんオーバークロックして遊びたい」ユーザーには、やはりZ87チップセットの選択が必須となる。
今回、ドライアイスによる冷却で簡単なオーバークロックを試してみたが、F3bの段階では、5GHzに設定はできたものの、おそらくコールドバグと呼ばれる問題で、動作クロックが800MHzに固定されてしまった。実はF3bが公開されてまもなく公式サイトから消え、F3eに差し替わったが、もしかしたらこの問題だったのかもしれない。
ただ先述の通り、本製品の電源周りはそれほど強力なものではないため、目指せるクロックにも限界があり、極冷環境下でのオーバークロックは考慮されていないのだろう。いずれにしても倍率が変更できる点は、非常にユニークであり、低価格ゲーミングマザーボードとして十分に遊べるように仕上がっている。