イー・アクセスから、Android 3.2を搭載した7型タブレット「GALAPAGOS A01SH」がイー・モバイルブランドで登場した。名前から分かるように、シャープのメディアタブレット「GALAPAGOS」の新製品となる。
本製品の特徴はなんといっても、Android 3.2搭載にして7型液晶(1,024×600ドット)を採用することにある。OSにAndroid 3.2を搭載したタブレット端末が国内初登場であることに加えて、スマートフォンとフルサイズタブレットの中間に当たる7型というサイズには、確固としたコンセプトの存在を感じさせる。
シャープからではなく、イー・アクセスのイー・モバイルブランドからの発売であることも注目点だ。これまでメディアタブレット「GALAPAGOS」は、量販店店頭に展示コーナーを設ける一方、持ち帰り用の在庫を持たず、申込書によるメーカー直送を基本とした独特の販売方法を採用していた。それに対して今回は、キャリアであるイー・アクセスからの発売ということで、携帯電話に準じた「A01SH」という型番が付与されている。
今回は8月30日に発売されたばかりの製品版を用い、おもに電子書籍端末としての用途を中心としたレビューをお届けする。
●Android 3.2搭載の7型タブレット。横向きが基本のデザインまずはざっと外観と仕様周りをチェックしておこう。外観周りについての詳細はすでにフォトレビューをお届けしているので、そちらもあわせてご覧いただきたい。
CPUはデュアルコアのNVIDIA Tegra 2(1GHz)、メモリは1GB+ストレージ8GBという構成。昨今のAndroid 3.xタブレットではストレージ16~32GBが一般的なのでやや少なめということになるが、それ以外は一般的な構成だ。またmicroSDスロットを搭載しており、32GBまでのmicroSDが利用可能なので、ストレージに不足を感じるようならこちらで補える。
このほかmicroHDMI、フロント/リアのカメラを搭載したり、GPSや各種センサー、Bluetoothを搭載するなど、メディアタブレットという名を冠しながらマルチメディア系の機能が乏しかった従来のGALAPAGOSとは、かなり性格を異にする。3G回線には対応せず、無線LAN(IEEE 802.11b/g/n)の対応となる。
筐体背面はアルミ製で、樹脂製だった従来製品に比べると、高級感ははるかに上。横向きに持った際に指がかかる部分にはくぼみが設けられており、持ちやすく工夫されている。ただ、筐体のデザインやスピーカーの配置など、基本的に横向きを前提としたデザインながら、電子書籍として使う場合の本棚アプリ(GALAPAGOS App for Tablet、以下GALAPAGOS Appと記述)は縦向きのみの表示なのは、やや違和感を感じる。
●ホーム画面はAndroid 3.x系標準のレイアウト。シンプルさに好印象
初めて使う場合の設定方法から見ていこう。パッケージを開けて電源を投入すると、イー・モバイルロゴ、GALAPAGOSロゴの順に表示されたのち、Googleアカウントの初期設定画面が表示される。登録が完了すると起動し、Googleアカウント経由でマイアプリが同期される。至って標準的な流れだ。
これら初期設定の過程の中で、ホームボタンを押した際に表示される画面を「GALAPAGOS App for Tablet」、「ランチャー」のどちらにするか尋ねられる。前者であれば読書端末仕様、後者であれば標準的なAndroidの挙動となる。GALAPAGOSの従来モデルをAndroidアップデートした際にもこの画面が表示されるのだが、これまで利用経験がないと選択肢の意味が分かりづらいかもしれない。
起動後のホーム画面はAndroid 3.x系の標準とも言えるレイアウトで、上段にクイック検索や音声検索アイコン、アプリ一覧といったボタンが、下段には戻る/ホーム/履歴といったボタンに加えて右端には時計などのステータスエリアが表示される。Android 2.x系とは異なり、戻る/ホームといったボタンは物理ボタンではなく、すべて画面内に用意されている。
画面中央上部には、TSUTAYA GALAPAGOSのウィジェットが表示されている。一体型のウィジェットに見えるが、左側のGALAPAGOSロゴをタップすると本棚アプリ(GALAPAGOS App)が、右側の領域をタップするとTSUTAYA GALAPAGOSへと接続される仕様になっている。
また下部には12個のアプリが配置されている。アプリの呼び出しは基本的に画面右上のアプリボタンから行なうが、ここは利用頻度の高いブラウザやメールのほか、McAfeeの「VirusScan Mobile」の期間限定版や「Documents To Go」、ゲームマーケット「NVIDIA TEGRA ZONE」などのショートカットが並べられている。画面は全部で5つ用意され、左右にスワイプすることで別の画面へと切り替わり、それぞれにショートカットやウィジェットを自由に配置できる。
●パフォーマンスの向上で、電子書籍端末としての使い勝手は大幅に向上
続いて本を購入して実際に読むまでのプロセスを見ていこう。ホーム画面に置かれたTSUTAYA GALAPAGOSのウィジェットの右側をタップすると、ユーザーIDとパスワードの入力を求められるので、すでにIDを持っていれば入力、持っていなければ新規登録を行なう。登録が完了すると電子書籍ストア「TSUTAYA GALAPAGOS」が表示されるという流れだ。
TSUTAYA GALAPAGOSウィジェットの左側をタップすると、本棚アプリこと「GALAPAGOS App」が起動する。画面レイアウトは従来のGALAPAGOSと同様で、「未読・おすすめ」、「最近読んだ本」、「お気に入り」、「定期購読」の4つの本棚をフリックさせて回転表示させる仕様。ただしAndroid 3.xならではのメニューバーが下段に常時表示されているため、表示領域は従来に比べて若干天地が狭いことになる。
購入のプロセスは、一般的なショッピングカートの使い方と同じ。TSUTAYA GALAPAGOSの特集やジャンル別分類からお好みの本を選んでカートに入れ、クレジットカード決済が完了すると自動的にダウンロードが行なわれて「未読・おすすめ」に表示されるという流れで、とくに分かりづらいことはないだろう。
詳しくは後述するが、ハードウェアの性能が高いせいか、TSUTAYA GALAPAGOSでのブラウジングは非常に快適で、本を探すのが苦にならない。画面遷移こそ従来のGALAPAGOSと同じであるにもかかわらず、ここまで使い勝手が変わるものかと驚かされるほどだ。また、ページめくりのフリックについても、これまでよくみられた「空振り」がなく、快適に操作できる。基本的な部分とはいえ重要なポイントだろう。
ところで使っていて若干気になるのは、スマートフォンや10型クラスのタブレットに比べて、画面の縦横が強制的に切り替えられるケースが多いこと。購入直後から振り返ってみると、まず横向きで起動したのち、Googleアカウント登録画面では縦向きに切り替わる。起動後は縦横どちらでも利用できるが、Androidマーケットは横向きのみの対応。またGALAPAGOS AppおよびTSUTAYA GALAPAGOSの画面は縦向きのみで、かなりめまぐるしく切り替わる。
アプリの特性からして、どうしても縦表示でなくてはダメ、横表示でないとダメというのはもちろんあるだろうが(本製品が7型という中間サイズだから、というのも影響しているだろう)、縦横を強制的に切り替える場合は、なるべく操作上の区切りと同じタイミングにしてほしいところだ。
とくに本製品では、GALAPAGOS AppとTSUTAYA GALAPAGOSを表示する際に強制的に縦向きに切り替えられるため、本製品を横向きで利用していて、なおかつ本を見開きで読みたい場合、本を読み始めるまでに縦と横が交互に切り替わる格好になってしまう。AndroidマーケットなどGoogle側のアプリは仕方ないにしても、表紙のサムネイルをマス状に並べているGALAPAGOS Appなどは、横向きの画面を用意することは容易に思える。持ち替えを強制されたという感覚をユーザーが抱かずに済むためにも、検討してほしいところだ。
●ウェブブラウジング時のスクロールのなめらかさが秀逸さて、肝心の操作性および使い勝手についてだが、Android 3.2というOSのインターフェイスによるものか、はたまたNVIDIA Tegra 2というデュアルコアプロセッサの威力か、挙動は至ってスムーズで、スクロールなどにおいてもひっかかりはまったく感じない。詳細は動画に譲るが、指先の動きに画面がついてくるだけで精一杯という感のあった従来のGALAPAGOSとの差は歴然で、同じ7型タブレットであるGALAXY Tabと比べてもなめらかさは圧倒的だ。Optimus Pad、XOOM Wi-FiなどAndroid 3.x系のタブレットとは極端な差こそないにせよ、やはり高速であることが感じられる。
なかでも「TSUTAYA GALAPAGOS」の読み込みが速く、これまでブラウズ時に感じていたもっさり感がほとんど感じられないのは、やはり従来のGALAPAGOSのハードウェア性能に依存するところが大きかったのだと痛感する。読書そのものの操作時にはパフォーマンスの差はそれほど感じないが、オンラインへのアクセス時などに感じる差は顕著で、本を探すだけで息切れしていた従来製品に比べると、読書端末としての魅力は大幅にアップしている。
【動画1】本製品(左)とAndroid 2.3アップデート済のGALAPAGOS モバイルモデル(右)で、ホーム画面から本棚アプリ表示、さらにはTSUTAYA GALAPAGOSで特定のコンテンツを表示するまでの挙動を比較。指先の動きにきちんと追従していないGALAPAGOS モバイルモデルに比べて、本製品はスクロールもなめらかで、読み込みも高速 |
【動画2】本製品(左)とAndroid 2.3アップデート済のGALAPAGOS モバイルモデル(右)で、PC Watchのトップページを開き、スクロールしたあとに任意の記事を表示する様子。こちらもスクロールのなめらかさの差がはっきりと分かる。なおGALAPAGOS モバイルモデルでPC Watchにアクセスすると通常はスマートフォン向けサイトが表示されるが、今回は条件を統一するためPC向けサイトに揃えてテストしている |
やや余談だが、ブラウザに関して興味深いのは、本製品で表示されるのがスマートフォン向けサイトではなく、PC向けサイトである場合が多いことだ。GALAXY Tabやパナソニックの「UT-PB1」などほかの7型クラスの端末では、Watchの各ページにアクセスするとスマートフォン画面が表示されるが、本製品ではPC向けサイトが表示される(ただしスマートフォンWatchだけはなぜか例外で、スマートフォン向け画面が表示される)。
またWatch以外にGoogleニュースなどでも、スマートフォン向け画面ではなくPC向けのフルサイズの画面が縮小表示されることが多かった。スマートフォンとフルサイズタブレットの中間である7型端末でどちら向けの画面を表示するかは、今後も多少混乱することがありそうだ。
ブラウザでPC Watchのトップページを表示したところ。GALAPAGOSモバイルモデル(左)やGALAXY Tab(右)ではスマートフォン画面が表示されるが、本製品(中央)ではPC向けサイトが表示される | 横向きに表示したところ。ワイド比率であることに加えて、タブやメニューバーが上下に表示されることから、やや天地が窮屈。1,024×600ドットということで致し方ないだろう |
ベンチマークテストの結果も紹介しておこう。使用したアプリ(Quadrant Professional)自体がAndroid 3.2に最適化されていない可能性は割り引かなくてはいけないにせよ、総じてスコアが高いのは以下の数値からも一目瞭然だ。同じ7型端末であるGALAXY Tabに対しては5項目中4項目で圧倒的な差をつけているほか、従来のGALAPAGOSに至っては比較にならない。唯一、2Dのグラフィック性能が相対的に弱めなのが目立つくらいだ。
型番 | OS | Total | CPU | Mem | I/O | 2D | 3D |
GALAPAGOS A01SH | Android 3.2 | 1992 | 3479 | 2326 | 2819 | 125 | 1213 |
GALAXY Tab | Android 2.3 | 1292 | 2926 | 1711 | 883 | 203 | 738 |
GALAPAGOS モバイルモデル | Android 2.3 | 820 | 842 | 698 | 2216 | 137 | 206 |
UT-PB1 | Android 2.2ベース | 2059 | 5758 | 2586 | 1040 | 194 | 718 |
もっとも、参考までに測定したパナソニックの7型読書端末「UT-PB1」が、5項目中3項目で本製品を上回る高スコアを叩き出しており、トータルスコアでも本製品を凌駕しているのはやや皮肉だ。むしろこれはUT-PB1のポテンシャルを示すデータとして解釈しておいた方がよいだろう。もっとも、ブラウザのスクロールのなめらかさだけ比較すると、本製品の方がUT-PB1と比較しても圧倒的にスムーズなので、必ずしもベンチマークのスコアだけで決まることでないのが分かる。
●バッテリは、用途によっては日中に途中充電が必要仕様によると、本製品の駆動時間は静止画表示時で約7.5時間、動画再生時で約6時間、サスペンド時で約10日となっている。今回は主に読書端末としての用途を検証する目的であることから、実際にTSUTAYA GALAPAGOSで購入した電子書籍を読んでみて、バッテリの減り具合をチェックしてみた。執筆期間の関係もあり、やや駆け足でのチェックとなっている点はご容赦いただきたい。
今回購入した電子書籍コンテンツは、伊坂幸太郎著「あるキング」。7型端末だとほぼ単行本の原寸サイズでの表示になる。TSUTAYA GALAPAGOSからの購入後、無線LANをオフにした状態で満充電の状態から読み始め、およそ380ページの読了まで約1時間半で、バッテリは75%にまで減った。同じペースで減り続けるものでないのは承知の上だが、約1時間半で1/4減ったことから、完全にバッテリがなくなるまでは単純計算で約6時間読める計算になる。
公称値では静止画表示時で駆動時間は約7.5時間となっているので若干短い計算になるが、これはページめくり効果や明るさ自動調整がオンのままテストしたせいもありそうだ。従来のGALAPAGOSのモバイルモデルが公称4時間で、片道2時間の通勤中に使うとそれだけでバッテリが枯渇する計算だったのに比べると、そこそこの余裕があると言える。通勤電車の中で使うことを中心とした用途なら、朝出かけて当日帰宅するまではまず大丈夫だろう。
もっとも、通勤中に読書を楽しみ、さらにビジネスタイムでは「Document To Go」を用いてオフィス文書の表示や編集作業を行ない、加えて外回り時にGoogleマップで地図を表示させるといった具合にガンガン使うと、丸1日持たせるのは難しい計算になる。本製品はUSB給電に対応せず、充電はACアダプタのみ対応となるので(これはOptimus Pad、XOOM Wi-Fiなどもそうだ)、必要に応じてACアダプタを携行するのが賢明だろう。
本体の発熱についても記しておきたい。本製品では縦向きに持った際、右背面に比べて左背面が熱を帯びにくいという特徴がある。たまたま基板配置上そうなったのか、それとも意図してそうしているのかは不明だが、読書時は左手で縦向きに持つ場合が多いことを考えると、持ち手が熱を感じにくい合理的な設計だ。右側背面の発熱も、筆者の手元にある従来のGALAPAGOSに比べるとずっとおとなしく、長時間常用するのに支障はない。
●非の打ち所がほとんどない、きわめて優秀な端末筆者は7型という画面サイズのハンドリングのよさに惹かれ、昨年末からかれこれ9カ月ほどGALAXY Tabを愛用しているが、今回のGALAPAGOS A01SHは、そのGALAXY Tabからの乗り替えを即決断させるほどのパフォーマンスだ。本製品を数時間使ったあとにGALAXY Tabを操作してみたところ、これまで特に問題に感じなかったスクロールがぎくしゃくとした動きに感じられたほどだ。
世界的に14型以上のノートが多数を占める中で日本市場ではモバイルノートが受け入れられているように、タブレットも日本で好まれるサイズがあるように感じる。10型でほぼ横並びのAndroidタブレット市場において、本製品は7型という取り回しのよいサイズを実現しており、製品を小型化した際にありがちなスペック面での妥協もみられない。非の打ち所がほとんどない、きわめて優秀な端末というのが、使ってみた上での率直な感想だ。こうなってくると3G内蔵モデルも欲しくなってくるのは、贅沢な悩みというほかはない。
対象ユーザーとしては、iPad 2や各種Android 3.x系タブレットのような10型前後のサイズは大きすぎるという人、スマートフォンサイズでは小さすぎるという人、そして筆者のようにすでにこのサイズのGALAXY Tabなどを使っていて、さらなるパフォーマンスを求めるユーザー、それぞれにとって有力な候補となることだろう。ターゲットユーザーの年齢層は30~40代だそうだが、高性能端末としてさらに幅広い層にすすめられる。唯一あるとすれば、Android 3.2のインターフェイスを7型サイズで表示している関係で文字サイズがやや小さく、視力が低いとつらいかもしれないという点だろうか。
単体で44,800円という価格体系は、実売3万円台に突入しつつあるAndroid 3.x系の10型クラスタブレットに比べるとサイズ対比での割高感はあるが、それだけの価値は十分にあると感じる。またイー・アクセスではPocket Wi-Fiとのセット販売を行なうなど、割安感のあるプランも提供されている。7型端末ならではのハンドリングの良さがいまいちピンと来ないユーザーは、ぜひ店頭で実機に触れてみてほしい。
(2011年 9月 2日)
[Reported by 山口 真弘]