シャープ「GALAPAGOS」試用レポート(後編)
~ストア購入手順やPDFビューアとしての使い勝手をチェック



 シャープから12月10日に発売されたメディアタブレット「GALAPAGOS(ガラパゴス)」のレビュー、前編ではハードウェアおよび端末側のインターフェイス周りを中心に紹介した。後編となる今回は、電子書籍ストア「TSUTAYA GALAPAGOS」からのコンテンツの購入手順やストア側のインターフェイス、およびPCとの連携ソフト「GALAPAGOS Station」を用いたPDFデータの転送などについて見ていきたい。

●電子書籍ストア「TSUTAYA GALAPAGOS」との連携でコンテンツが直接購入可能

 数多くの電子書籍端末が市場を賑わせている中で、日本語の電子書籍タイトルが電子書籍端末側から直接買える製品は多くない。というよりも、現状では事実上iPad一択だ。それだけに、電子書籍ストア「TSUTAYA GALAPAGOS」と連携して電子書籍タイトルが直接購入できるGALAPAGOSは、ユーザーにとって待望の製品だと言える。さっそく試してみよう。

 ホーム画面の下部にある4つのボタンのうち左から2つ目の「ストア」を選択すると、「TSUTAYA GALAPAGOS」が表示される。「TSUTAYA GALAPAGOS」専用のブラウザが起動する、といった表現が正しいだろう。さまざまなカテゴリや特集の中から読みたいコンテンツを選んでカートに投入後、購入画面に遷移。注文が完了するとすぐさまダウンロードが始まり、完了するとホーム画面の本棚に表示されるようになる。

ホーム画面の下段にある「ストア」アイコンをタップする「TSUTAYA GALAPAGOS」が起動する。さまざまな特集が用意されている今回は吉田修一氏「悪人」を購入。ちなみにソニー「Reader」レビューでも同じコンテンツを購入しているので、手順の違いに興味がある方は参照いただきたい
カートに投入して購入画面に進む。すぐ買わない場合は「いつか買う」に入れておくことも可能だパスワードを入力したのち、登録してあるクレジットカード情報を確認し「注文を確定」ボタンを押す
注文完了。同時にメールが届くホーム画面に戻ると、購入したコンテンツが本棚のいちばん左上に表示されている

 初回はクレジットカードの登録などがあり多少わずらわしいが、2回目以降はアカウントのパスワードの入力だけで買えるようになる。ダウンロードが完了したことがポップアップなどで明示されない点は気になるが、画面左上のダウンロードアイコンが消えたのを見計らってホーム画面に戻れば、購入したコンテンツのサムネイルが「未読・おすすめ」の本棚に表示されているので、タップすることで読書が楽しめるというわけだ。購入フローにも違和感はなく、使い勝手は上々だ。

タップして開いたところ「この本は縦書きでレイアウトされています」となぜか横書きで表示される筆者環境ではデフォルトで横書きで表示されたが、直前まで読んでいた他のコンテンツの設定を引き継いでいるのか、そうでないのかは不明。縦書きへの切り替えも可能だ

 ストアを実際に使っていて気になるのは、画像の点数が多いせいか、読み込み時間がそこそこかかること。HTMLページで、画像のピクセルサイズをソース内に記述していなかったが故に、画像が1枚読み込まれるたびにページレイアウトがガクガクと変わっていくことがあるが、あの状態に近い。個人的にはもう少しシンプルなページで構わないので、快適に閲覧できてほしいと思う。

読み込み中を示すマークが画面の右下にある。本製品を右手で持った際などは、親指で隠れてしまって見えないこともしばしばだ

 また、読み込み中であることを示すアイコンが画面の右下にあり、目が行きづらいのは難点だ。ケータイにせよスマートフォンにせよ、読み込み中マークというのは一般的に画面上部のバーに置かれていることが多いが、この「TSUTAYA GALAPAGOS」の専用ビューアではこれが右下にあり、目に入りにくい。慣れの問題だけではなく、右手で本製品をホールドしていると親指で隠れてしまうのだ。ぜひ改善を要望したいところである。

 もう1つ、横に区切られたページデザインが災いして、ページの終わり位置が分かりにくいのも難点だ。iPhoneなどであれば、ページをスクロールしていて最終位置まで来ると、慣性が働くようなアニメーション効果で終端であることが分かるが、本製品ではそうした効果がないため、ページの端まで来たのか、それとも画面が固まっているのか区別が付きにくい。購入フローそのものに問題がないだけに、前述の読み込み中マークの件と合わせて、見せ方の部分ではもう一工夫ほしい気がする。

●リコメンドなど機能は豊富ながら、基本的な導線設計にやや疑問

 「TSUTAYA GALAPAGOS」では、気になった電子書籍タイトルを「いつか買う」に入れていき、いざ購入となった時点でカートに移動させるといった使い方も可能だ。このあたりはAmazonなど既存のECサイトを意識した作りで、利便性は高い。また「この商品を買った人がよく買っている商品」へのリンク、つまりリコメンド機能を搭載するなど、電子書籍ストアならではのメリットも考慮されている。レビューの投稿機能もあるため、今後読書好きのユーザーからの評価が集まってくれば、Amazonなどと同じく商品ページそのものが価値を持ってくることも考えられる。

 が、これらが有機的に結びついて購入を誘発する導線になっているかというと、現状は必ずしもそうでない。というのも、検索した先が行き止まりになっていたり、意図した検索結果が得られない場合が多いのだ。ここでは「TSUTAYA GALAPAGOS」で販売されている電子書籍タイトルの中から、森博嗣氏の「スカイ・クロラ」シリーズを例に見てみよう。

森博嗣氏「スカイ・クロラ」。ちなみにこれは後述の連携ソフト「GALAPAGOS Station」で購入ページを表示したところだが、端末の側で表示できる情報と基本的に相違はない

 2008年に押井守監督の手によってアニメ映画化された「スカイ・クロラ」シリーズ全6巻は、中央公論新社から原作にあたる小説が発刊されている。これまでにハードカバーの単行本、ノベルズ、文庫と3種類が発売されており、電子書籍の底本となっているのは鶴田謙二氏の挿絵が入ったノベルズ版だ。余談だがこのノベルズ版のキャラデザインは、西尾鉄也氏がデザインしたアニメ版のそれとはまったく異なっている。文庫版では挿絵がカットされていることもあり、コレクター的にはノベルズ版が底本になっているのはありがたい。

 さてこの「スカイ・クロラ」シリーズ、一般には第1作である「スカイ・クロラ」がシリーズ名として用いられるが、「ナ・バ・テア」、「フラッタ・リンツ・ライフ」など残りの5冊のタイトルに「スカイ・クロラ」という単語は入っていない。もちろん読めば(時系列はともかく)一連のシリーズであることが分かるのだが、それ以外では装丁などから判断するしかない。

 表紙サムネイルの一覧性が低い電子書籍ストアでは、こうしたシリーズものはストア側が関連づけをしてやる必要がある。同じく「スカイ・クロラ」シリーズを扱っているソニーのReader Storeでは「この作家による書籍」、「同じシリーズの書籍」というリンクが用意されており、そこから情報を見ることができる。また電子書店パピレスではシリーズ名の欄に「スカイ・クロラ」と明示されているので、そこから探すことが可能だ。


ソニーの「Reader Store」で「スカイ・クロラ」を表示したところ。下段に「この作家による最新のタイトル」「同じシリーズの書籍」といった情報がある。また、著者名にはリンクが張られており、著書一覧を表示できる同じく電子書店パピレスの「スカイ・クロラ」のページ。著者名にリンクが張られているほか、シリーズ名、レーベル名、著者プロフィール、目次など情報は多彩だ

 ところが、今回の「TSUTAYA GALAPAGOS」ではそれがない。つまりスカイ・クロラシリーズのどれかを読もうとして「スカイ・クロラ」を検索して表題作を表示できたとしても、そこから先が完全に行き止まりになっているのだ。前述のリコメンドが充実してくれば、そうした情報が自動的に表示されるようになるかもしれないが、現状ではそれも中途半端だ。加えて言うなら、中黒(・)を抜いて「スカイクロラ」で検索した場合、ソニーのReader Storeや電子書店パピレスでは問題なく表題作に到達するが、「TSUTAYA GALAPAGOS」ではシリーズの短編集にあたる「スカイ・イクリプス」しか表示されず、表題作には到達できない。

 それであればせめて著者名をクリックして作品一覧を呼び出したいところだが、「TSUTAYA GALAPAGOS」では著者名にリンクが張られておらず、書籍通販サイトによくある著者から辿っていく方法が使えない。検索機能を使って著者名を手入力しようとすると、本製品のIMEでは森博嗣氏の名前は一発変換できず、読みの「もりひろし」で検索すると該当ゼロ、検索タブをカナ検索に切り替えて「モリヒロシ」でようやく呼び出せるといった有様だ。これにしても著者名の読みを知らなければ使えず、万能とはいえない。

中黒を省略して「スカイクロラ」で検索すると、シリーズの短編集にあたる「スカイ・イクリプス」しか表示されない。商品ページの中にも「スカイ・クロラ」へのリンクはない
詳細検索ページ。ここで中黒を含めて正確に「スカイ・クロラ」と入れれば表題作がヒットするが、シリーズは表示されない。また、「スカイ・クロラ」の商品ページにもシリーズへの言及はない「カナ検索」タブで著者名で検索したところ、ようやくシリーズがヒットした。かなり強い購入意欲がないと、ここまでたどり着くことはないだろう

 ここまで手間がかかるのなら、ブラウザからWikipediaで「スカイクロラ」を検索してシリーズ名を確認するほうが手っ取り早いわけで、ストアと連携して直接本を買えるGALAPAGOSのメリットが生きてこない。これが「購入を誘発する導線になっていない」と感じるゆえんだ。約2万数千点と言われる電子書籍のラインナップ強化はもちろん、こうした点についても改善が急務だと感じる。

●新聞や雑誌の定期購読機能を搭載。インテリジェントな配信が可能

 やや辛辣な評価になったが、一方で「TSUTAYA GALAPAGOS」には秀逸だと感じる機能もある。新聞や雑誌向けに用意された、定期購読の仕組みがそれだ。

 定期購読を行なうにあたっては何か登録をしなければいけないわけではなく、対象のコンテンツを購入すればあとは定期的に配信されてくる。例えば新聞であれば、毎朝6時頃、決まった時間にダウンロードされる。朝起きると「定期購読」のところにフラグが立っており、タップすると当日の朝刊が読めるというわけだ。

今回は「Mainichi iTimes」を購入してみた。朝刊のみで月額525円だ購入にあたってなぜか郵便番号入力を求められる。ひょっとするとこれが配信時刻のキーになっているのかもしれないが、7ケタの郵便番号は町名まで特定できてしまうため、ちょっと気持ち悪さはある。なお、このあとの購入フローは一般の書籍と変わらない定期配信が行なわれると、ホーム画面右上の「定期購読」に赤いフラグアイコンがつくのですぐに分かる
「Mainichi iTimes」トップページ。スワイプでページをめくり、読みたい記事はタップをすることでテキストが全文表示される見出しだけをリスト形式で表示することも可能だ

 この仕組みが秀逸なのは、プッシュ配信されるため、ユーザーが自らダウンロードしに行く必要がないこと。もちろんPCを経由する必要もなく、GALAPAGOS本体に直接ダウンロードされるので、毎朝PCにつないだり、外したりといった手間がかからない。またダウンロード完了後はオフラインで読めるので、地下鉄のように電波が届きにくい環境であっても問題なく読める。通勤通学で地下鉄を利用するユーザーにとっては、きわめて利便性の高い仕組みだ。

 では定期配信される時間帯にネットに繋げず、配信できなかった場合はどうなるか。試しにGALAPAGOSの電源を完全オフにしたまま就寝し、昼過ぎに電源を入れてみた。そのまま夕方まで放置しておいても配信される様子がなかったので、何か手動でダウンロードする方法が用意されているのかと思い「TSUTAYA GALAPAGOS」にアクセスしてあちこちのページを見て回っていたところ、どうもその間に配信されたようで、ホーム画面に戻ると新着フラグが表示されていた。

 このことから見て、定められた時刻に配信できなかった場合は、次回ネットにアクセスしたタイミングでダウンロードが実行されるものと思われる。少なくとも定期配信に失敗したからといって、それっきり入手できなくなることはなさそうだ。また通信設定のメニューの中に「今すぐサーバーを確認」というボタンも用意されているので、こちらを用いるのでもよいだろう。

ちなみに各種設定の「通信」の中にある「サーバー確認時間」では、確認時間を2種類設定できるほか(初期値は空欄)、さらに「今すぐサーバーを確認」というボタンも用意されているので、通勤や通学の時間帯に合わせて時刻をカスタマイズしたり、受信し損なった場合は手動で取りに行ける

 では次に、本体側の時刻設定がずれていた場合はどうなるか。本製品はNTPサーバと自動同期しているらしく、手動での時刻設定は行なえないのだが、手動でタイムゾーンを設定できることから、試しに日本時間ともっとも離れているミッドウェー(GMT-11:00)にタイムゾーンを設定し、日本国内の時刻よりも20時間遅れた状態で、定期配信時刻まで放置してみた。

 結論から言うと、タイムゾーンをずらした状態でも、本来の定期配信時刻である日本時間の朝6時にきちんと配信が実行された。何らかのプッシュ通知のようなシステムを用いているのか、それともコンテンツの配信時刻が標準時をベースに設定されているのかは分からないが、ともあれ本体時刻に依存せずに配信されるというのは、あれこれ考えなくてよいのでありがたい。非常にインテリジェントな、かつユーザーの利便性を重視したシステムであると感じた。

 なおバックナンバーの保存期間は、日本経済新聞が1週間、西日本新聞 超特@Qは30日間とされている。個人的には1週間あれば十分と感じるが、新聞、月刊誌、週刊誌といったジャンルごとに保存期間は一律であったほうが、利用者目線では分かりやすかったかもしれない。


●「GALAPAGOS Station」でPCと同期。PDFビューアとしては今一歩

 続いてPCとの連携ソフトである「GALAPAGOS Station」について見ていこう。

 「GALAPAGOS Station」は、iPhone/iPadで言うところのiTunesに当たるソフトで、GALAPAGOSで購入したタイトルをPCにバックアップできるほか、PDFやテキスト、PowerPointのデータといったファイルをGALAPAGOSに転送する際に利用する。本製品は記憶メディアとしてmicroSDを採用しているが、GALAXY TabやSONY ReaderのようにmicroSDを使ってデータを読み込むことはできず、必ずこの「GALAPAGOS Station」経由で転送する必要がある。

「GALAPAGOS Station」のメイン画面。これは「デスク」タブを表示したところ。GALAPAGOS本体側のホーム画面とは微妙に構成が異なる。最下段はPDFファイルであり、すべて同じアイコンで表示されていることがわかる「ブックシェルフ」タブを表示したところ。ライブラリの中身を表示できる。購入日時、最後に読んだ日といった情報もある
この「GALAPAGOS Station」からも配信ストア「TSUTAYA GALAPAGOS」を利用可能。ただし可能なのは購入のみで、PC上で読むことはできない「デバイス」タブからは、手持ちのPDFなどのファイルをGALAPAGOSに転送できる。本画面にコンテンツをドラッグしたのち「同期する」ボタンを押すことで実行される。複数の本製品を接続できない点は改良を要望したい

 では「GALAPAGOS Station」で転送したPDFファイルはGALAPAGOS上でどのように見えるかということで、例によって実験してみよう。

 まずはpaperboy&co.の電子書籍作成・販売サイト「パブー」で販売されている、うめ氏の「東京トイボックス」第1巻を表示してみる(許可いただいたうめ氏/幻冬舎に感謝)。E Inkのように画像縮小時にジャギーが発生することもなく視認性そのものは悪くないのだが、右綴じに対応していないほか、全体のページ数に対していま何ページを読んでいるのかが分かりにくい。また、ページが切り替わる際のエフェクトがないため、めくったつもりが前のページに戻っていた、といったことがたまに起こる。

ページを表示したところ。「TSUTAYA GALAPAGOS」で購入した電子書籍タイトルとは異なり、PDFについてはページをめくるようなアニメーション効果はないメニューから移動バーを呼び出せば現在読了済みの割合は表示できるのだが、やや面倒。また、全体で何ページあるかは表示されない
微妙に色がついているように見えるが、写真の具合によるものではなく、実際にトーンの濃淡によって紫がかって表示されることがよくある。原因は不明だGALAXY Tab(右)で同じページを表示したところ。いずれも輝度はもっとも高く設定している。GALAXY TabにおけるこれらPDFファイルの挙動は「サムスン「GALAXY Tab」試用レポート(読書ビューワ編)」を参照されたい
【動画】お気に入りに登録したうめ氏「東京トイボックス」第1巻を開き、スワイプおよびトラックボール操作などでページをめくっている様子

 また、画面タップがメニュー表示に割り当てられているのにはやや違和感を感じる。以下は「Jコミ」で無料配布されている、赤松健氏の「ラブひな」第1巻を表示したところだが(許可いただいた赤松氏に感謝)、画面に張られたハイパーリンクも本製品では機能しない。ページめくりはスワイプおよび画面下部のトラックボール、さらにトラックボールのクリックと3つの方法があり、タップによるページめくりが行なえなくとも代替手段はあるのだが、他のビューアで一般的な方法がサポートされていないのは、直感的な操作ができないという点でマイナスだ。

ページを表示したところ。こちらもトーンの濃淡によって不自然な色味で表示される場合がある。モアレもやや気になるGALAXY Tab(右)で同じページを表示したところ。輝度はもっとも高く設定しているが、角度によってもかなり見え方の差が激しい
【動画】お気に入りに登録した赤松健氏「ラブひな」第1巻を開き、スワイプおよびトラックボール操作などでページをめくっている様子。画面のダブルタップで3段階の拡大/縮小が行なえる。PDF内のリンクが機能しないので、広告付き無料漫画というJコミのビジネスモデルには不向きだ

 もっとも最大の問題点は、「お気に入り」本棚への登録時に表紙のアイコンが表示されず、バインダーもしくは白紙のアイコンが表示されることだろう。すべてのPDFファイルが同じアイコンで表示されることから、区別がまったくつかなくなるのだ。

 なお、本レビュー前編をご覧になった読者の方からご指摘いただいたが、画面左下のブックシェルフからであれば、リスト形式の表示が可能だ。ただPDFについては「TSUTAYA GALAPAGOS」で購入した電子書籍タイトルと違ってファイル名しか表示できず、文字数制限もあるため、著者名に加えて長いタイトルを入力すると末尾が切れて区別がつかなくなってしまう。末尾の巻数だけで見分けるシリーズもののタイトルなどは、かなり不便だ。

前編でも触れたが「お気に入り」に登録したPDFは表紙画像ではなく、バインダーもしくは「no image」のアイコンが表示される。ちなみにこれは「ラブひな」全14巻と「東京トイボックス」全2巻を表示したところだが、まったく見分けがつかないホーム画面左下の「ブックシェルフ」から「マイクリップ」を呼び出せばリスト表示が可能だが、文字数に制限があるなど利便性は高くない。そもそも著者名やタイトルをきちんと入力していることが前提になるので、ずぼらな人には不向きだ

 こうした仕様から、PDFで配信されている電子書籍ファイルや自炊PDFデータとの相性は、あまりよくないと言わざるを得ない。5.5型のモバイルモデルについては本体サイズが新書並みで可搬性に優れることもあり、PDFビューアとして活用できないのは非常にもったいないと感じる。せめてアイコンの問題だけは早期に解決してほしいところだ。

●「進化するGALAPAGOS」であることを期待

 本製品はソニーの「Reader」と同じ日に発売になったわけだが、実際に発売になった両製品を比較してみると、両者のスタンスの違いは明確だ。すなわち、現状で実現できる手堅い機能のみを搭載し、ネット接続によるストア連携機能などを見送ったソニーと、電子書籍端末はどうあるべきかを追求してそれをすべて盛り込んだシャープ、という違いである。

 結果的に「Reader」はハードとしての完成度は高いもののあまりエッジが立った機能はなく、逆に「GALAPAGOS」はストア連携や定期配信などエッジが立った機能は多いものの完成度の点ではやや不満の残る結果になってしまった。GALAPAGOSが目指す電子書籍端末の未来像はよく理解できるし、その意欲も買いたいところなのだが、現状ではインターフェイスを中心とした使い勝手やサービスの完成度において、まだまだ改善の余地があるというのが率直な印象だ。

 また本製品はユーザー自身がアプリケーションをインストールできないため、ユーザーが不足を感じないレベルまで個々のアプリを作り込むことが求められるわけだが、本製品にインストールされているブラウザやTwitterクライアント、さらにIMEを見ても、現状ではいま一歩と感じることが多い。例えばIMEはフリック入力に対応しないため、iPhoneなどでフリック入力に慣れているユーザーにとってはストレスだ。これがAndroidであれば真っ先にSimejiを入れるところだが、本製品ではそうしたカスタマイズは行なえない。こうした点も課題と言えるだろう。

電子書籍のほか、ブラウザやmixi、Twitterの専用アプリや、ゲームパックなどがインストールされているブラウザ。Flash Lite 4に対応する。Android端末と比較しても、挙動はややもっさりとしている印象。ちなみにImpress Watchはスマートフォン向けサイトが表示される「mixi for SH」。本製品に特化したインターフェイスという位置づけで、ボイスや日記、コメント履歴などが並ぶが、それぞれを表示するためにはブラウザにジャンプする必要があり、ブラウザのブックマークで十分であるように感じる。このほかTwitterクライアントの「twit SH」はハッシュタグにリンクが張られなかったりと、使い勝手はイマイチだ

 とはいえ、「進化するGALAPAGOS」というキャッチコピーにもあるように、今後のアップデート次第で大きく改善される余地は残されていると言える。通信機能の内蔵による配信ストアとの連携などポテンシャルはもともと高く、こうした仕組みを持たない他の電子書籍端末と比べても今後の進化に期待が持てるのは明らかだ。事実、定期配信サービスではコンテンツの追加も予告されているし、映像・音楽などのコンテンツ配信も予定されている。これらが計画通りに順次搭載され、並行して搭載済み機能のブラッシュアップが行なわれれば、相当「イケてる」端末になると思われるし、そうなってもらわないと困る。

 本稿で指摘したような問題点はおそらくメーカー側も把握しているはずなので、メジャーアップデートが行なわれた暁には、改めてレビューを行なってみたいところだ。1つだけ懸念があるとすれば、ファームウェアやサービスが進化していった時に、現行のハードウェアではスペック不足となりはしないか、その点だけが個人的には心配なところではある。

(2011年 1月 7日)

[Reported by 山口 真弘]