先日レポートした通り、現在パブリックベータが提供されているAdobeのFlash Player 10.1では、H.264動画の再生時にGPUによるハードウェア支援機能が追加された。この対応GPUリストには、IntelのAtom Z向けシステム・コントローラー・ハブUS15Wに内蔵されるGMA500は含まれていない。だが、ユーザーの間ではFlash Player 10.1によって、GMA500でもハードウェア支援が効くようになったの報告がいくつか上がっている。そこで、実際にどうなのか試してみた。
検証に使ったPCは、日本エイサーの「Aspire one 751」。基本仕様として、Atom Z520、Intel US15W Expressチップセット(ビデオ機能内蔵)、1GBメモリ、160GB HDD、1,366×768ドット表示対応11.6型液晶、Windows XP Home Editionを搭載する。検証機ではメモリを2GBにしてある。
まず、この状態でFlash Player 10を用い、前回も検証に利用したYouTube上にあるNVIDIAの1080p動画を再生してみた。結果としては、約7,700フレーム中、2,752フレームのコマ落ちが発生した。当然の結果である。
このGPUドライバは「バージョン6.14.11.1007」で、やや古いので、最新の「6.14.11.1012」にアップデートしてみたが、結果は2,841フレームの脱落と変わらない。
ここで、Flash Playerを10.1に変更してみた。結果はと言うと3,450フレームが脱落。つまり、むしろ性能が落ちたことになる。
しかし、GMA500のGPUドライバはWindows XPではDXVAがうまく動作しないことが知られているので、この結果は驚くほどではない。
Windows XPでFlash Player 10.1にしたところ、効果は無かった |
そこで、OSをWindows 7 Ultimateに入れ替えてみた。GPUドライバはWindows Update経由で入手できる「8.14.10.2011」を使った。結果としては、2,880フレームの脱落でWindows XPと変わりない。
続いて、Flash Playerを10.1にアップデートした。すると、動画の部分全体が灰色になり、奇妙なノイズが走るだけで、フレームレート以前の問題として動画が閲覧できなくなってしまった。Adobeのユーザーフォーラムの投稿を見てみると、同様の報告が上がっているので、製品固有の問題ではないようだ。同時になぜか、右クリックメニューも呼び出せなくなってしまった。
しかし、興味深い事実として、これまで常時ほぼ100%になっていたCPU負荷がおおむね70%前後になっていた。これは推測だが、デコード処理については、正常に行なわれ、かつ実はGPU支援が効いているのだが、最終的な画面の描画に問題が発生していると考えても不自然ではない。もちろん、ほぼ灰色一色になったことで、描画負荷が下がっただけの可能性もある。
なお、この状態に陥っても、Flash Player 10.1をアンインストールして10を再インストールすることで、元の状態には戻せる。また、今回の症状は1つの環境の例であり、全てのGMA500搭載機で発生するとは限らない。
いずれにせよ、Adobeの資料にある通り、現状ではFlash Player 10.1はGMA500には対応してないと言っていい。ただし、GPUドライバかプレーヤーのアップデートにより、Windows 7であれば、今後GMA500でもH.264再生のGPU支援が効くようになる可能性はあり、そうなるよう期待したい。
Windows 7でFlash Player 10.1にしたところ、描画が完全におかしくなった。ただし、CPU負荷は下がっている |
(2009年 11月 19日)
[Reported by 若杉 紀彦]