特集

WDの5mm厚の2.5インチHDDを試す

WD5000MPCK

 WD(ウエスタン デジタル)から、厚みが5mmの2.5インチHDD「WD5000MPCK」が発表となった。組み込み向けの製品で、一般向けには発売されていないが、今回特別にお借りできたので、ベンチマークを中心に簡単にレポートしたいと思う。

 本製品は内蔵プラッタを1枚のみとし、ケースや基板などを工夫することで5mm厚を実現した製品だ。これまで1枚プラッタを内蔵したHDDは7mmが最薄だったが、それよりさらに2mm薄いことになる。近年普及が進んでいるUltrabookや超薄型ノートPCへの搭載を見込んでいる。

 薄型化のため、コネクタには小型フォームファクタ向けSATA規格の「SFF-8784」エッジコネクタを採用。これは表裏合計で20ピンのコネクタで、電力供給から信号転送までを賄うようになっている。これにより、一般的なSATAと比較して、基板におけるコネクタの占有スペースを大幅に減らした。今回のテストは、SSF-8784に対応したシステムがないため、特殊な変換ケーブルを用いてテストしている。

 もちろん、ノートPCを設計する際にもSFF-8784に対応させる必要はあるが、ホスト側のコネクタ占有スペースが大幅に削減されるため、PC本体の小型化にも貢献していくだろう。

 薄型化を実現するために、従来とは異なる基板とシャーシ設計のアプローチもユニーク。基板は一般的な2.5インチHDDと比較すると非常に小型で、コントローラチップもかなり小型化されているのがわかる。シャーシも、従来は上から全面を覆う蓋のような形であったが、本製品は周囲の枠に嵌めるような構造となっている。

 この表面全体を覆うように、シールが貼られているが、これは耐衝撃/耐振動/静音性を上げるための工夫の1つだという。このため製品型番などを示すシールは基板と同じ裏側に貼付されるようになった。

 また、モーターの軸を上下から支えるタイドシャフト(Tied-Shaft)もこれまでにはなかった構造。両側から支えることで回転を安定させる効果があるほか、表面の上から抑えてもモーターの回転に影響が出ないようにしている。

 このほか、アクチュエータを2つ搭載し、1つ目でおおまかな位置決め、2つ目で高精度な微調整を行なう「デュアル・ステージ・アクチュエータ」、アイドル時15dB/シーク時17dBの静音性なども特徴としている。

 そのほかの仕様は、回転数が5,400rpm、キャッシュが16MB、SATAインターフェイスが6Gbps、重量が74g、耐衝撃性は動作時が400G(2ms)、非動作時が1,000G(2ms)、消費電力がリード/ライト時1.5W、アイドル時が0.55W、スタンバイ/スリープ時が0.15W、などとなっている。

一般的な9.5mm厚HDDとの比較
厚みの差は一目瞭然だ
基板がかなり小さいことがわかる
今回は特別なSATA変換ケーブルを用いてテストした
SFF-8784のコネクタ。突起が付けられており、逆刺しや抜け防止となっている
コントローラも小指の爪ほどに小さい
製品シールは底面に貼り付けられるようになった
表面のシールは防振や防音の効果がある

パフォーマンステスト

 さて、これだけ精巧に作られているHDDであるが、実際の性能を見てみよう。テスト環境は下記の通り。SATAインターフェイスはオンボードの3Gbpsポートだが、これがボトルネックになることはないだろう。

自作マシン
CPU Core i7-3770K(3.5GHz)
メモリ DDR3-1600 16GB
マザーボード ASRock Z77 OC Formula
ストレージ Plextor M5P 512GB
ビデオカード GeForce GTX 680
OS Windows 7 Ultimate(64bit)
接続SATA I/F 3Gbps

 まずはCrystalDiskMark 3.0.2 x64(テストデータサイズ1,000MB)での結果。シーケンシャルリードは117.7MB/sec、同ライトは116.8MB/sec、512KBランダムリードは41.19MB/sec、同ライトは60.24MB/sec、4Kランダムリードは0.508MB/sec、同ライトは1.348MB/sec、4KQD32ランダムリードは1.308MB/sec、同ライトは1.399MB/secとなった。

 これは500GBプラッタを採用した5,400rpmの2.5インチHDDとしては比較的優秀な結果で、以前テストした東芝の「MQ01ABDD100BOX」を超え、375GBプラッタながら7,200rpmのSeagateの「Momentus XT」に迫る。薄型ながらなかなかの結果だ。

WD5000MPCKの結果
MQ01ABDD100BOXの結果(参考)
Momentus XT 750の結果(参考)

 一方、HD Tune Pro 5.50の結果を見ると、リードは最大116.6MB/sec、ライトは最大113.4MB/secを記録。終盤はそれぞれ54.8MB/sec、52.8MB/secと53%低下した。1プラッタを内周までフルに使っているので、このあたりは想定内の結果だ。

 アクセスタイムはリードが19.8ms、ライトが16.7ms。グラフを見ればわかるが、リードは外周から内周にかけてアクセスタイムが増加しているが、ライトはほぼ一定を維持している。これはデータを予測できないランダムリードに対し、ランダムライトはキャッシュが効くためだと思われる。

 なお、テスト中、振動と騒音とは無縁で、よほど静かな環境で耳を近づけなければ聞こえないほどであった。温度はSMARTで監視する限り、室温25℃の環境で29℃前後(バラック状態)で、低発熱であることもわかる。

WD5000MPCKのリード速度推移
WD5000MPCKのライト速度推移
MQ01ABDD100BOXのリード結果(参考)
Momentus XT 750のリード結果(参考)

Ultrabookにおける新たな可能性

 思えばHDDの小型化と言えば、従来は1.8インチ以下のフォームファクタという選択肢であったが、性能面でネックになっていた。これが本製品では薄型化の方向に持って行くことで、7mm/9.5mmの2.5インチHDDと同様の性能と容量を維持しながら、PC全体の薄型化、ひいては小型化を図れるようになったわけだ。

 Ultrabookに関しては薄型化における要求が特に厳しく、21mmを切るの筐体において、2mmの差は決して小さくない。これまでUltrabookはレスポンスの面でSSDが主流であったが、容量と価格におけるニーズも確実に存在するわけで、SSDと両方搭載しなければならないような設計では、なおさら2mmの差が生きてくるだろう。

(劉 尭)