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第2の地球を探し、時速1億6千万kmで飛行する超小型宇宙船が開発へ

~ホーキング博士やFacebookのザッカーバーグ氏らが参画のプロジェクト

 超小型宇宙船が、光速の20%にあたる時速1億6千万kmで飛行し、20年以内に4.37光年離れたケンタウルス座α星系への到達を目指す。そんな壮大な計画が現在実施段階に入っている。

 Breakthrough Initiativeは12日(米国時間)、光推進装置を使った「ナノクラフト」と呼ばれる小型の宇宙船を飛ばし、宇宙探索を行なう「Starshot」計画を実施することを発表した。今後1億ドルをかけて、技術開発を行ない、実現可能性を探る。

 人類の生産活動に伴う二酸化炭素排出による温暖化、火山の噴火による寒冷化などと言った環境変化により、いずれ地球上に生物が住めなくなる時代がくるかもしれない。また、そういった危機を回避できても、あと数十億年すると、太陽が地球を飲み込むほどまでに巨大化したり、太陽の寿命が尽きてしまうため、やはり生物は生存できなくなる。

 そういった事態に備え、科学者たちは人類や地球上の生物が生存できる別の惑星を探す調査を行なっている。その星の気温や大気組成など、大まかなことは地球からも調べられるほどに技術が発達したが、詳細は近付かなければ分からない。

 太陽系の他の惑星には、微生物などが存在する可能性もあるが、どれも人間がそのまま住むことはできない。次に近い惑星は、ケンタウルス座α星系に存在する。しかし、ケンタウルス座α星までの距離は4.37光年で、現在の宇宙船では、そこまで到達するのに3万年かかる。

 だが、ナノクラフトはその1,000倍以上の速さで飛行し、20年以内にケンタウルス座α星に到着できるという。キモとなるのは推進機構で、ロケットエンジンではなく、ナノテクを駆使し、厚さが原子数百個分で、大きさは数m、重量は数gという特殊な帆と、100GWクラスのレーザーを用いた光推進機構を採用する。これにより、発射から数分で光速の20%にまで加速できるという。さらに、推進に使うレーザーは、地球との通信にも利用される。また、ナノクラフトには、カメラ、光子推進機、電源、ナビゲーション/通信装置、探査装置などの機能を統合した「StarChip」というチップを搭載する。

 いずれも今すぐに実現できるものではないが、ムーアの法則に基づいた半導体プロセスの発展を考えると、将来的に十分に実現可能だという。また、Starchipの量産コストは、1基あたり現在のiPhoneと同程度になるとみられており、1台あたりの発射コストも数十万ドルに抑えられるとしている。そのメリットを生かし、ナノクラフトは1台ではなく、多数を飛ばし、冗長性を確保する。

 このプロジェクトの陣頭指揮を執るのはロシア人投資家のユーリ・ミルナー氏で、元NASA AMES研究所所長のピート・ウォーデン氏、著名な物理学者スティーブン・ホーキング氏、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏らも計画に参加する。

 Breakthrough Initiativeでは、宇宙望遠鏡を使って地球外文明を探す計画も進めている。

(若杉 紀彦)