やじうまPC Watch

地球外文明を探す過去最大規模のプロジェクトが発足

~スティーブン・ホーキング博士らも参加

 過去、人類は地球が宇宙の中心だと考えていた。しかし、観測技術の発達に伴い、地球は太陽の周りを回る惑星で、太陽もまた、数多ある天の川銀河の中の恒星の1つでしかないことが分かった。今では、銀河すら数千億個あると言われている。

 そうなって来ると疑問となるのは、我々人類は、この宇宙で唯一の知的生命体なのかどうかということだ。現代の科学的知見によれば、生命は奇跡的な偶然の積み重ねによって生まれるものではなく、案外ありふれたものである可能性もあるそうだ。

 しかし、知的生命体となると、障壁は高い。知的探究心の源となる頭脳を持つに至るには、単細胞生物から多細胞生物へと進化する必要がある。だが、40億年の地球生命の歴史の中で、単細胞生物から多細胞生物への進化はたった一度しか起きていないらしいという説もあり、人間のような高等生物が生まれる可能性はかなり低そうに見える。実際、少なくとも太陽系の他の惑星を見ても、火星には生命の痕跡と思しきものが見つかり始め、木星の惑星などにも生命が存在しうる環境があると目されているが、文明を発展させるような知的生物は見つかっていない。

 だが、先にも述べた通り、この宇宙には無数とも言える恒星があり、その恒星の多くはいくつかの惑星を伴っている。生命を持続できるハビタブルゾーンに存在する惑星は限られるが、それでも全宇宙でのそれらの数を積み重ねれば、人類以外の知的生命体の存在、そしてそれらを発見する確率もある程度は期待できるものとなってくるだろう。

 そう言った、地球外文明の探索を目的とする過去最大級プロジェクトの発足が英国時間の20日に発表された。プロジェクトを後援するのは、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏や、著名投資家のユーリ・ミルナー氏が幹事を務めるブレイクスルー賞財団で、車いすの物理学者として有名なスティーブン・ホーキング博士らも参加する。

 プロジェクトの主体となるのは「ブレイクスルー・リスン」と名付けられたもので、地球外文明が発するであろう無線信号を探索する。用いられるのは、米国の100m級グリーンバンク望遠鏡と、オーストラリアの64m級パークス望遠鏡。同様のプロジェクトとして、「SETI」があるが、今回のプロジェクトの検出精度はSETIで用いられたものの50倍になるほか、探査範囲は10倍広く、走査速度は100倍高速。これによって、もし地球に近い1,000個の星の内、どれかに文明が存在しており、それが一般的な航空レーダー程度の出力で電波を発していれば、それを検知できるという。

グリーンバンク望遠鏡(左)と、パークス望遠鏡(右)

 捜索範囲は地球近傍の100万個の星系と、天の川銀河外部の100個の近接銀河。銀河自体が対象に含まれているのは、非常に高度な社会は銀河全体で通信を行なっている可能性もあり、それを見つけるためで、そちらにはレーザーを検出する米国のリック望遠鏡器が使われる。

 このプロジェクトは今後10年間にわたり実施され、財団は1億ドルの資金を提供する。また、このプロジェクトで得られたデータは全て一般に公開され、SETIへの協力も行なわれるほか、利用される全てのソフトはオープンソースで、世界の他の望遠鏡とも互換性のあるものになる。

 このほか「ブレイクスルー・メッセージ」というプロジェクトも実施。このプロジェクトでは、地球外文明に対して、人間性と地球を表現するデジタルメッセージの候補を募るもの。ただし、このプロジェクトは宇宙へのメッセージの送信を確約するものではなく、地球外文明との通信に用いることができる言語の探求が主要な目的となる。このプロジェクトには賞金が用意されており、額は100万ドル。

(若杉 紀彦)