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「死のワナの地下迷宮」の“萌え化”に英国の原作者が苦言

 英国で出版されたアドベンチャーゲームブック「Deathtrap Dungeon」の初の邦訳版として1985年に社会思想社から出版された「死のワナの地下迷宮」。ハードコアなゲームブックで、当時中学生だった筆者の周りでは一大ゲームブックブームが起きており、この作品も興奮しながら楽しんだことを覚えている。弊誌読者におかれても、「ああ、懐かしい!」と思う人も多いのではないだろうか?

 特に、異形のモンスターが描かれたその表紙のことは、今でもはっきり記憶に残っている。この表紙のイラストは、最初に英国版で描かれていたもので、それがそのまま日本語版にも採用された。その点について、下記のツイートにあるように、原作者であるイアン・リビングストン氏も満足している。

 さて、この作品は、2008年にホビージャパンから新装版が「デストラップ・ダンジョン」として出版されたのだが、そのあらすじはというと、「凄腕の女の子冒険者フィリア、究極の挑戦。悪名高いデストラップ・ダンジョンを攻略した者はまだこの世に存在しない。共に挑むのは五人のライバルたち。クールなくのいち、筋肉バカのバーバリアン、ロリエルフ…。ダンジョンを舞台にした彼女たちの死闘、そして出会いと別れ。ゲームブック永遠の名作、ここに新生。」(Amazon.co.jpのBOOKデータベースより)と、昨今の日本の世相を反映してか、ずいぶん軟化している。と言うより、これだけ見ると、もはや別作品だ。

 そしてその表紙はと言うと、露出度の高い女の子の剣士が中心に描かれた今時のラノベ的テイストに仕上がっている。

 すでに新版の出版から7年ほど経過しているのだが、リビングストン氏は、2015年6月14日付けで、この表紙の写真とともに「Foreign publishers mostly used the original UK covers....until the infamous Japanese Deathtrap Dungeon cover. Huh???」(海外の出版社も大半は原作の英国版の表紙を使っていた……。この、不名誉な日本版デストラップ・ダンジョンが出るまではね。はいっ???)というツイートを投稿した。その実際の心情は不明だが、その前後のツイートを拝見するに、同氏はショックを受けているようだ。

 人気作品のリメイクには常に反感も肯定もあるものだが、この件については、一読者としてリビングストン氏への同情を禁じ得ない。

(若杉 紀彦)