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S3 Savage 4内蔵のVIA Pro Savage PM133を採用した「Soltek SL-65MV」

Soltek SL-65MV

 Soltek Computer(以下Soltek)はかつて台湾に存在していたマザーボードメーカー。Soltekの社名が日本に鳴り響いたのはSlot 1→Socket 370変換アダプタの「SL-02A」をいち早く投入し、デュアルSlot 1のマザーボードでSocket 370のCeleronをデュアルプロセッサ構成で利用できるようになってちょっとしたブームになった1999年だ(詳しくはAKIBA PC Hotline!の「Dual Celeronブームを加速する注目商品が発売に Soltek製変換アダプタとNT 4.0評価キット」を参照)。

 今回取り上げる「SL-65MV」が発売された2000年頃には、さまざまなマザーボードをラインナップしており、日本でもそのマザーボードが代理店経由で販売されていた。2005年頃までは製品が日本で販売されていたのだが、その後会社自体が消滅したようで(というのは、すでにWebサイトなども消えているので、どのような経緯で消えたのかはわからないからだ)製品は見かけなくなっている。

 そのSoltekのSL-65MVは、VIA Technologies(以下VIA)のSocket 370用チップセットである「Pro Savage PM133」を採用していた。Pro Savage PM133は、VIAが買収したS3 Graphicsの最新製品である「Savage4」というGPUを内蔵しており、ビデオカードを用意しなくても低コストでPCを構築することが可能になっていた。

VIAが買収したS3 GraphicsのSavage4を統合したPro Savage PM133を採用

Pro Savage PM133のノースブリッジ(VT8605)

 SoltekのSL-65MVは、IntelのPentium II/IIIやCeleron、そしてVIAがSocket 370互換のCPUとして販売していたVIA Cyrix III(後にC3に改名)を利用することが可能なマザーボード。搭載されているPro Savage PM133チップセットは、VIAが買収したS3 Graphics製グラフィックスチップ「Savage4」がノースブリッジ(VT8605)に統合されている。

 S3 Graphicsのグラフィックスチップは、1990年代前半にはポルシェの型番と同じ、911や928などのグラフィックスチップをリリースし、Diamond Multimediaのビデオカードに搭載されて販売されるなどして人気を集めた。その後、ATI Technologies、NVIDIA、Matroxなどの競合との激しい競争の中でやや埋もれていき、1999年に起死回生を狙って出したのが「Savega4」だ。その前年に投入されたSavage3Dの後継となる製品で、S3TCと呼ばれるテクスチャの圧縮機能が引き続き採用されるなどの特徴を備えていた。

 Savage4は低コストでそれなりの性能が出るグラフィックスチップとして当時人気を集めており、おもに普及価格帯の製品で採用されていた。つまり、チップセットに統合するグラフィックスチップとして最適な選択だったのだ。

AGP 4Xスロット、左に見えるのはAMR(Audio Modem Riser)。

 このSavega4を統合したVT8605のもう1つの特徴は、AGP 4Xをサポートしていることだ。前回の記事(【懐パーツ】VRAM搭載で“謎のメモリ”が利用できたAladdin TNT2搭載マザー「ASUS CUA」)で紹介したALi/NVIDIAの「Aladdin TNT2」、そしてそれらに先だって販売が開始された「Intel 810」は、外付けのグラフィックスチップを搭載したビデオカードを接続するためのAGPには未対応で、チップセット内蔵のグラフィックスチップをオフにして別途ビデオカードを利用できなかった。

 それに対して、Pro Savage PM133ではAGPを備えている点が最大の特徴だ。なお、後にVIAはこのPro Savage PM133のAMD版として「Pro Savage KM133」を投入するが、そのスペックはほぼ同等だった。

サウスブリッジはVT82C686A

PC133メモリが利用できた、SL-65MV-Xでは音声検査機能を搭載

下がPC133のメモリモジュール、上がPC100のメモリモジュール。外形やピンなどは共通

 このPro Savage PM133のもう1つの特徴は、SDRAMの中では最高スペックとなるPC133のメモリモジュールに対応していたことだ。もともとSDRAMは66MHzのクロック周波数からスタートし、それが後に100MHzに引き上げられ(100MHzのSDRAMを搭載したメモリモジュールはPC100と呼ばれる)、後に133MHzになるPC133が登場したというのが歴史的な経緯になる。

 この当時、Intel VC820の記事(【懐パーツ】Intelの“メモリ黒歴史”を象徴するマザーボード「Intel VC820」)でも紹介したとおり、IntelはSDRAMからDirect RDRAMへの移行を目指しており、当時のIntelの計画ではPC100の後は、全面的にDirect RDRAMへ移行する予定になっていた。

 ところが、DRAMベンダーはそのプランに反対して、PC133のメモリモジュールという新しい規格を作り、Intelに採用を呼びかけた。しかし、IntelはすでにDirect RDRAMへの移行を決めており、彼らのロードマップにはPC133を採用したチップセットはなかったのだ。

 そこで、DRAMベンダーがその対抗(悪い言い方をすれば当て馬)に選んだのが、台湾のチップセットベンダーとして急成長を遂げていたVIAだったのだ。VIAは、Intel向けのチップセットとしてApollo Pro 133を発表し、PC133のサポートを開始した。

 その結局、DRAMベンダーからのプレッシャーに抗しきれなくなったIntelは1999年9月のIDFでPC133をサポートすることを明らか(後藤氏の記事:Intel、渋々ながらPC133 SDRAMサポートを発表。対応チップセットはSolanoか?)にし、翌年発売するIntel 815でサポートし、陥落することになる。この動きにVIAが果たした影響は小さくなく、実際Apollo Pro 133とその改良版となるApollo Pro 133Aは、大手のPC本体にも採用されるようになる。

 その後、VIAはPentium 4世代まではIntelとの契約でチップセットをリリースできたが、Core 2 Duo(Conroe)以降はIntel向けのチップセットを出せなくなり、AMDも自社のラインナップを充実させたこともあり、PC向けのチップセット市場からは事実上撤退になった。自社製品であるC3、そして後にリリースするC7、Eden、Nanoなど向けのチップセットを作り、フォーカスする市場は組み込み系に移っていき、いまも組み込み向けのシステムを提供するベンダーとしてビジネスを展開中だ。

SL-65MVのマニュアルに書かれている音声検査機能の日本語、微妙に中華フォント…
SL-65MVのピンヘッダー、左に見えるVD-TECHと書かれている所にSL-65MV-Xでは音声検査機能のICが搭載されていた

 さて、このSL-65MVだが、2バージョンあり、今回紹介しているSL-65MVとSL-65MV-Xがそれだ。SL-65MV-Xには音声検査機能が用意されており、メモリモジュールが刺さっていない「メモリーないじゃん」、メモリが壊れていると「メモリーだめだめ」、BIOSの設定がおかしいと「CMOSだめっす」、ビデオカードが刺さっていないと「VGAどう?」などとやたらフレンドリー(ため口?)でエラーの内容を教えてくれる機能だった(その音声は同じ機能を搭載した別マザーボードのAKIBA PC Hotlineの記事SOLTEKから妙な日本語で喋るマザーボードが発売にで今でも聞くことができる)。正直ため口である必然性はよくわからないが、今となってはなんともユニークな機能で、当時のマザーボードメーカーは色々チャレンジしていたんだなということが忍ばれるエピソードだ。

この時期のSoltekの外箱はすべてこれだった
マザーボード全景
基板裏側
Socket 370
クロックジェネレーター
CPUクロックの設定スイッチ
電源周り
メモリソケット
I/Oパネル
拡張スロット、VIAのサウスブリッジはISAのサポートが残されていた
IDE、FDDコネクタ
黄色のIDEに見えるコネクタはDVC、おそらくDVI端子用のコネクタ
Soltekのシールが貼られているBIOS
Award BIOSが採用されていた
AC97コーデック