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鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発

~建設現場の省人化とロボットを含む新工法開発を目指す

鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発

 学校法人千葉工業大学大成建設株式会社は10月16日、自動で鉄筋を結束する自律型鉄筋結束ロボット「T-iROBO Revar(ティーアイロボ・リバー)」を開発したと発表し、共同で記者会見を行なった。建造物の骨組みにあたる鉄筋の上を自律移動しながら、交差する鉄筋を針金で留める作業を繰り返し行なうロボット。鉄筋工事のうち2割をを占める鉄筋結束作業の自動化で省人化、現場作業員の軽減化をねらう。

 ロボット本体は幅40cm、奥行き50cm、高さ30cm。重量は20kg程度。人1人で運べる。本体にはレーザーセンサーが2つ搭載されており、鉄筋交差部と周辺の障害物検知を自動で行ない、鉄筋結束を自動で繰り返す。移動のためには本体下部のテーパー車輪と誤差吸収機構を用いることで、本体が鉄筋上をブレずに円滑に移動し、結束していくことができる。横移動するときは下部のパラレルリンク機構で本体を持ち上げて移動していく。

鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 幅40cm、奥行き50cm、高さ30cm 重量は20kg程度
幅40cm、奥行き50cm、高さ30cm 重量は20kg程度
鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 テーパー車輪で鉄筋上を移動
テーパー車輪で鉄筋上を移動
鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 鉄筋の結束を行なう
鉄筋の結束を行なう
鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 自動鉄筋結束作業のイメージ
自動鉄筋結束作業のイメージ

 現場の鉄筋の幅はおおよそ10cmから25cmの間におさまり、ほぼ対応できるという。事前マッピングを必要としないため簡単に現場に導入できる。ロボットを使うことで鉄筋結束と、人によるほかの作業を並行で進めることができるようになるため、鉄筋工事全体では、約1~2割程度の作業効率向上が可能になるという。

 電源は市販リチウムイオンバッテリで、連続稼働時間は5時間程度。鉄筋結束には市販のMAXの結束機をそのまま使っている。

 耐候性については、今までの現場で使える程度の防水性はあるとのこと。ただし市販の電動工具を使っているので、そちらの防水性のほうもネックになる。

 一方、ロボットなので夜間でも作業できるため工期短縮や、人がカバーできない環境でも運用できるようになるかもしれないところにメリットがあるという。

鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 さまざまな鉄筋幅に対応
さまざまな鉄筋幅に対応
鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 鉄筋自動結束部に使われたMAXの電動工具
鉄筋自動結束部に使われたMAXの電動工具
鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 ロボットに搭載された電動工具
鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 ロボットに搭載された電動工具
ロボットに搭載された電動工具

 今後、ロボット本体の性能・耐久性の向上など機能向上を図り、2018年度から現場導入していく予定。現場での評価を探りながら順次使用していく。これまでに千葉駅で2回、マンションで1回、現場での導入実験を行なっている。大成建設側としては他社にも広めていきたいとしている。価格は未定だが、400~500万円以下になる予定で、「意外と短い時間でペイできる」価格帯にしたいとのことだった。

ロボットを含む新工法開発を目指す

鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 大成建設株式会社 本社・技術センター 先進技術開発部・部長 上野純氏(左)と同 建設技術開発室の高橋要氏(右)
大成建設株式会社 本社・技術センター 先進技術開発部・部長 上野純氏(左)と同 建設技術開発室の高橋要氏(右)

 大成建設株式会社 本社・技術センター 先進技術開発部・建設技術開発室の高橋要(たかはし・かなめ)氏は開発背景について建設現場の労働力不足をあげた。2025年には労働者が128万人減少し、35万人分の人手不足が予想されている。そのぶん生産性向上が求められている。そこで単純繰り返し作業やはロボット化し、人は複雑な作業に従事してしてもらうことで技術継承を図りたいとしている。

 国土交通省は「i-Construction」として、ICTを全面活用した建築生産システムの生産性向上を目指している。トンネル工事では生産性が高い工法が採用されているが、いっぽう、土工・コンクリート工は生産性が低いと言われている。この2つに技能者の4割が携わっており、ロボット技術による生産性改善が期待されている。

 とくに鉄筋作業は屋外で、中腰作業でやらなければならない。後頭部が太陽に晒されるため熱中症になる危険性も高い。作業範囲も広い。これを改善するのが今回のロボットだ。なお、鉄筋結束の現場は1年間あたり50万平方m程度あるとのこと。

 ロボット本体の概要は、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター・研究員の西村健志(にしむら・たけし)氏が述べた。今回のロボットは鉄筋上を移動し、鉄筋交差部を結束する機械だ。小型であるため、さまざまな現場で使える。特徴はテーパー車輪で、鉄筋をレールに見立てて移動する。横方向の鉄筋をセンサーで検知することでロボットの位置が決定されるので、交差部を結束するという仕組みだ。鉄筋端部や障害物を検知すると横移動して、また結束をはじめる。

鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 鉄筋結束作業は屋外・中腰で行なうため現場作業員の負担が大きい
鉄筋結束作業は屋外・中腰で行なうため現場作業員の負担が大きい
鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター・研究員 西村健志 氏
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター・研究員 西村健志 氏

 センサーは基本的にシンプルなものしかついていない。西村氏は「どんな環境でも動くすごいロボットではなく、最低限の機能で省人化を測れるように、ロボットを含む新しい工法を作っていこうとしている」と語った。

 千葉工業大学 常任理事 未来ロボット技術研究センター・所長の古田貴之(ふるた・たかゆき)氏は「人手不足解消はロボットしかない。このロボットは10人がかりで1日作業している500平方mの現場を1台のロボットで作業することができる。省人化にも繋がるし、人は別の作業に時間と労力を使える。われわれはロボット技術を使って、生々しく作業、現場を改革していく」と補足した。

 大成建設株式会社 本社・技術センター 先進技術開発部・部長の上野純(うえの・じゅん)氏は、「今は人が一気に作業をしているがロボットが使えるようになれば少人数でロボットを動かしつつ作業することになるので、手順そのものが変わる。いま人間がやっていることを置き換え、人間と協調してロボットが動いていくようになる」と語った。

鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 千葉工業大学 常任理事 未来ロボット技術研究センター・所長 古田貴之氏
千葉工業大学 常任理事 未来ロボット技術研究センター・所長 古田貴之氏
鉄筋を自動で結束するロボット。千葉工大と大成建設が開発 大成建設株式会社 本社・技術センター 先進技術開発部・部長 上野純氏
大成建設株式会社 本社・技術センター 先進技術開発部・部長 上野純氏

作業の省人化、効率化を図る大成建設「T-iROBO」シリーズ

 なお大成建設では「T-iROBO」シリーズとして、ほかにも

・コンクリート床仕上げロボット「T-iROBO Slab Finisher
・現場溶接自動化工法「T-iROBO Welding
・自律型清掃ロボット「T-iROBO Cleaner
・臨場型遠隔映像システム「T-iROBO Remote Viewer
・ダムのリニューアル向け水中作業機「T-iROBO UW
・割岩無人化施工システム「T - iROBO Breaker

 などを開発している。いっきに新工法を作って導入するのではなく、現場の声を聞きながら、じょじょに高機能化しているという。