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【懐パーツ】東海理化販売……が脳裏をよぎるGeForce FX 5200ビデオカード

~GPU製造ファブの謎に迫る

Daytona GeForce FX 5200? と思わしき製品

 今回ご紹介するのは、紫の基板が印象的なGeForce FX 5200ビデオカードである。カードには製品名やブランドが書かれていないため詳細は不明だが、おそらくPalit製の「Daytona GeForce FX 5200」そのもの、もしくはそれをベースとした製品と見られる。

 タイトルに「東海理化販売が脳裏をよぎる」と書いたが、これは2003年4月に東海理化販売がこれをベースとした製品「VFX5200-128ATVD」を販売していたからである。そして同日に玄人志向から、同じ基板を採用した「GFX5200-A128C」なるものも販売されている。つまりこの2製品はともにPalit製のOEMだと見られる。

 しかし大きな違いがある。東海理化販売が販売するVFX5200-128ATVDは、メモリにHynix製の3.6ns品(最大555MHz駆動)「HY5DV281622DT-36」を採用しており、一般的なGeForce FX 5200が採用する4ns品(500MHz駆動)や5ns品(400MHz駆動)より高速である。一方、玄人志向のGFX5200-A128CはPMIブランドの「HP58C2128164SAT-6」を採用しており、明らかに性能が劣る6ns品を採用していた。

 一方で手持ちのこのカードはどうかというと、PMIブランドの「HP58C2128164SAT-5」という、5ns品らしきメモリの搭載を確認できる。まるで東海理化販売と玄人志向の製品を足して2で割ったような結果である(笑)。ちなみに今回、部品こそほぼ共通だが、基板が1cmほど短いモデルも同時に入手できたので、この写真も掲載しておく。

 さて、採用されているGeForce FX 5200というチップだが、これはGeForce FX 5800の後に発表されたローエンド向けチップ。GeForce FXシリーズで唯一、0.13μmではなく、当時こなれた0.15μmプロセスルールで製造されている。GeForce FX 5800は当時最先端の0.13μmで製造されていたが、歩留まりが悪く、バリュー市場には向かないとNVIDIAが判断したのだろう。

 GeForce4世代はハイエンドがDirectX 8、ローエンドがDirectX 7と分断していたものの、GeForce FX世代は全モデルでDirectX 9のシェーダーモデル2.0に対応する。GeForce FX 5200は性能的に旧世代のGeForce4 Ti 4200よりも低いのだが、低価格帯にもDirectX 9を持ち込んだ点は、筆者は高く評価したい。

 さて、撮影していて気になったのは、GPU上の「KOREA」という文字だ。NVIDIAは基本的にGeForceをTSMCで製造しているので、GPU上の刻印は「TAIWAN」が定番なのだが、なぜかこのモデルは韓国製なのである。TSMCが韓国にファブを有しているのかと言われると、にわかに信じがたい。

 ほかの手がかりを探してみた。刻印からほかに分かることは、(おそらく)2003年の35週目に製造された点である。先ほど述べた短い基板の製品もヒートシンクを取り払ったところ、2003年の47週目に製造されたと思われるものがあり、これも韓国製であった。さらに2枚追加で確認してみたところ、2003年の15週目に製造されたものは台湾製、そして2007年の18週目に製造されたものも台湾製だった。

 時系列に並べて整理すると、2003年15週目は2003年4月7日~4月13日で台湾製、35週目は2003年8月25日~31日で韓国製、47週目は11月17日から23日で韓国製、2007年の18週目は4月30日~5月6日で台湾製となる。

2003年35週製造モデル。KOREAの文字列が……
もう1枚は47週製造だった。こちらもKOREAの文字
2003年15週製造モデル。こちらはTAIWANの文字
2007年18週製造モデル。刻印が新しいNVIDIAロゴになっているほか、パッケージのデザインも異なる。TAIWANの文字

 実はNVIDIAは2003年5月に、IBMとファウンダリ契約を結んでおり、2003年後半には製造の一部をIBMに移した。製品としてIBMで製造すると公言したのは、2003年10月に発表された「GeForce FX 5700 Ultra」と、2004年4月に発表された「GeForce 6800」の2つだけだが、実はGeForce FX 5200の製造もIBMに移されたものだと思われる。しかし、IBMのファブが0.15μmのようなハーフノードプロセスを持つのは珍しい。

 とは言え、NVIDIAとIBMのパートナーシップは長く続かず、GeForce 6シリーズのメインストリームであるGeForce 6600ではTSMCのファブを採用しており、GeForce 7世代で完全にTSMCに逆戻りしている。そう言った意味で、筆者はなかなかレアなチップを入手したのかもしれない。

ヒートシンクを取り払ったところ
カード背面
ディスプレイインターフェイスはDVI-I、TV出力、ミニD-Sub15ピンの3系統
メモリはPMIブランドのDDRメモリ。5ns(400MHz駆動)と見られる。1枚あたり16MBで、8枚搭載することで128MBという容量を実現している
ON Semiconductorの低電圧同期バルクコントローラ「NCP1575」を中心とした電源生成回路
IDTの「QS3257Q」は高速のCMOSクアッド2:1マルチプレクサ/デプレクサである
STMicroelectronicsの512Kbitフラッシュメモリ「M25P05-AV」
Texas Instruments製の「SN74ACT08」はクアッド4倍2入力ポジティブANDゲートである
レイアウトの見直しにより基板が1cmほど短くなったモデル。最初からこれで作れよ、と思わなくもない(笑)