イベントレポート
NECの新LaVie Zがさらなる軽量化を実現できた秘密とは
(2015/1/7 12:12)
NECパーソナルコンピュータ(以下NEC PC)は、1月6日~9日(現地時間)の4日間に渡り米国ラスベガスで開催されているInternational CESにおいて、今後発表を予定している次期LaVie Zを参考展示した。
LaVie Zは13.3型液晶ディスプレイを採用したノートPCで、ノンタッチモデルが一般的なクラムシェル型PCで13.3型液晶を搭載した製品としては世界最軽量となる約779gを達成し、タッチモデルはほぼ360度の回転ヒンジを利用した2-in-1型PCで13.3型液晶を採用した製品としては世界最軽量となる約926gを達成している。
本記事では実際に現地で触ってみて分かったこと、さらには現地の説明員から聞いて分かったことなどを中心に、新しいLaVie Zの魅力や、さらなる軽量化が実現できた秘密に迫っていきたい。
2つのモデルがある次期LaVie Z、回転2-in-1型とノンタッチクラムシェル型
今回NEC PCが展示したのは、発売日などは未定ながら、製品の完成度などから見てさほど遠くない時期に投入されそうな次期LaVie Zだ(米国のLenovoからは春に発売予定と明らかにされている)。LaVie Zの歴史は、2012年に発売された初代LaVie Zに遡る。初代LaVie Z(LZ750/550)は、CPUに第3世代Coreプロセッサ、13.3型HD+(1,600×900ドット)の液晶ディスプレイというスペックながら、875gとその当時の13.3型ノートPCとしては世界最軽量を実現したノートPCだった。
1年後となる2013年の10月には、2代目のLaVie Zが発表されている。2代目LaVie ZはLZ750、LZ650、LZ550という3つのラインナップが用意され、LZ750とLZ550がノンタッチで重量が795gに、LZ650がタッチありで重量が964gと、いずれも13.3型液晶を搭載したPCとしては当時の世界最軽量を実現していた。2代目LaVie ZではCPUは第4世代Coreプロセッサの搭載により、バッテリ駆動時間が延びた。
なお、2012年の初代LaVie Zも、2013年の2代目LaVie Zも同じLZ***の型番が付けられており、区別は数字の後に表示されているアルファベットで見ることになるのだが、ややこしいので、以下第3世代Coreプロセッサを搭載した初代LaVie ZをLaVie Z(2012年型)、第4世代Coreプロセッサを搭載した2代目LaVie ZをLaVie Z(2013年型)と呼ぶことにする。
今回のLaVie Zは3代目となり、少なくとも今年(2015年)中には販売されるだろうからLaVie Z(2015年型)と呼ぶことになる。ただおそらくだが、本当ならこれは2014年型になるはずだったのだと筆者は思う。NEC PCの関係者はノーコメントで通しているので、本当のところがどうかは分からないが、展示されている製品の完成度はかなり高く、2014年の秋冬モデルとして出荷されてもおかしくないレベルに仕上がっていた。ではなぜ出荷されなかったのかと言うと、Intelの第5世代Coreプロセッサの発表がこのCESのタイミングになったからだろう(第5世代Coreプロセッサの出荷が遅れた事情に関しては別記事が詳しい)。
LaVie Zの話に戻そう。今回展示されたのは2つの製品のラベルにHZ550、HZ750が書かれていた。NEC PCの説明員によれば、この通りの型番で出るのかは分からないとのことだが、結局はそのまま出荷されることが多いため、このまま話を進めていく。
型番で気付くのは、LaVie Z(2013年型)では、タッチなしがLZ750(下位モデルのCore i5搭載モデルはLZ550)、タッチありがLZ650だった。つまり、ノンタッチの方が上位モデルで、タッチモデルの方が下位モデルとなっていたのだ。これに対して、今回のLaVie Z(2015年型)ではタッチなしがHZ550で、タッチありHZ750となっており、2-in-1型の方が上位モデルという設定になっているのだ。よって、NEC PCの中ではタッチありの方が上位機種、タッチなしの方が下位機種という位置付けの変更が行なわれたということだと予想できる。
従来モデルも含めて特徴を表にすると以下のようになる。
世代 | 2012年型 | 2013年型 | 2015年型 | ||
---|---|---|---|---|---|
製品 | LZ750/550 | LZ750/550 | LZ650 | HZ550 | HZ750 |
発表 | 2012年7月 | 2013年10月 | 2015年?月 | ||
CPU | Ivy Bridge | Haswell-U | Broadwell-U | ||
メモリ | 4GB | 8GB | |||
ストレージ | 256/128GB | 128GB | |||
液晶ディスプレイ | 13.3型HD+ | 13.3型WQHD | 13.3フルFHD | 13.3型WQHD | |
タッチ | - | ○ | - | ○ | |
回転機構 | - | 180度回転 | 360度回転 | ||
OS | Windows 7 Home Premium | Windows 8.1 | Windows 8.1 Update | ||
重量 | 875g | 795g | 964g | 779g | 926g |
幅 | 313mm | 319mm | 319mm | ||
奥行き | 209mm | 217mm | 217mm | ||
高さ | 14.9mm | 14.9mm | 14.9~15.9mm | 16.9mm | 16.9mm |
第5世代Coreプロセッサを採用した2-in-1デバイスとなるHZ750
さて、フラッグシップの位置付けが与えられるHZ750(回転2-in-1型LaVie Z)を詳しく見ていこう。
CPUはCore i7-5500U(2.4GHz、GT2グラフィックス)が採用されている。メモリは8GBとなっており、メモリ容量が増えることは歓迎して良い。ストレージにはSamsung Electronicsの「MZNTE128HMGR」が採用されており、型番からM.2フォームファクタで、SATA接続のSSDモジュールだと分かる。なお、Samsungが公開しているデータシートによれば、シーケンシャルリードが最大530MB/sec、ライトが最大135MB/secというスペックだ。
インストールされていたOSはWindows 8.1 Updateで、無線LANモジュールには「Intel Dual Band Wireless-AC7265」というモジュールが採用されていたので、IEEE 802.11ac対応だと考えられる。このほか、デバイスマネージャーから分かったのは、TPM 1.2が搭載されていたことと、画面回転を検出するセンサーが入っていたことだ。
特徴的なのは、いわゆるYOGA型と業界では呼ばれている、ヒンジがほぼ360度回転するヒンジが採用されており、クラムシェルモードとタブレットモードを切り替えて利用できること。これにより、例えば読書するときにはタブレットモードにして、仕事をするときにはクラムシェルモードにして利用するという使い方が可能だ。ただ、NEC PCの説明員によれば、いわゆるYOGA型ではあるものの、LenovoのYOGAシリーズが訴求しているようなテントモード、スタンドモードには対応していないという。物理的には可能なのだが、メーカーとしてはその2つのモードでの動作検証を行なっていないため、保証ができないということだった。
マグネシムリチウム合金の液晶天板とフィルム-フィルムタッチパネル
このような、2-in-1デバイスとして進化したHZ750だが、LaVie Z(2013年型)のタッチモデル(LZ650)と比較すると軽量化されている(964gから926gに)。常識的に考えればYOGA型ヒンジを採用すると通常のヒンジに比べて重くなるため、そのままでは軽くなるはずがないのになぜなのだろうか。
実はHZ750の厚さは、LZ650に比べて1mm厚くなっている。LS650が15.9mmだったのに対して、HZ750は16.9mmになっているのだ。なぜ厚さが増えているのかというと、液晶の天板側にもマグネシウムリチウム合金を利用しているからだ。
LaVie Zが軽量化できた最大の理由は、底面の素材として他の金属に比べて比重が低いマグネシウムリチウム合金が採用されているからだ。同じ強度であればほかの合金に比べて重量を軽くすることができるためだ。今回は底面に加えて、液晶側の天板に関してもマグネシウムリチウム合金を採用している。それにより液晶側の天板の強度が従来製品に比べて大幅にアップしたため、タッチパネルの種類をより軽量なモノに変更できたという。
従来のタッチモデルではタッチパネルにガラス素材のタッチパネルを利用していたが、今回のモデルではフィルム-フィルムタッチパネルなどと呼ばれる、タッチセンサ部分を上下フィルムではさんだ形状のタッチパネルに変更しているという。ガラス部分の重量を節約することができるため、従来モデルに比べて軽量化できたのだ。つまり厚さに関しては増えたが、重量は減らせたのだ。
また、2-in-1デバイスになったことで工夫も加えている。一般的にはマグネシウムは電波を通しにくいため、アンテナの部分に関しては電波を通しやすいように、付近の素材を強化プラスチックにしておく必要がある。アンテナがある液晶の天板部分をそうしておくのももちろんだが、本製品の場合には、基板が格納されている本体部分の方も一部が強化プラスチックに変更されている。これは、タブレットモードにした時に電波の通りをよくするためだ。これは変形機構を持つ2-in-1デバイスに共通した問題なのだが、他社製品ではそこまでこだわっている設計した例は見たことがない。
2-in-1型に比べるとやや小さなノンタッチモデルとなるHZ550
ノンタッチモデルとなるHZ550は、CPUがCore i5-5200U(2.2GHz、GT2グラフィックス)が採用されており、メモリは4GB、ストレージは同じくSamsungのMZNTE128HMGR(128GB/M.2/SATA接続)が採用されていた。無線はIntel Dual Band Wireless-AC 7265で、IEEE 802.11acに対応していることが分かる。
HZ550と2-in-1のHZ750の大きな見た目の違いは2つ。1つは奥行きの長さが、HZ750に比べて5mm程度短く、HZ750にはあるボリュームボタンがないことだ(HZ750はタブレットになるため、物理的なボリュームボタンが用意されている)。それを除けば2つの製品はポートの位置なども同じで、左側面にはACアダプタ、インジケータ、電源ボタン、右側面にはヘッドフォン出力、SDカードスロット、USB 3.0×2、HDMI 1.4aが用意されている。
なお、従来のLaVie Z(2013)のLZ750/550では液晶を180度開けなかったが、HZ550では可能になっている。最近のクラムシェル型ノートPCではそうした製品が増えているのでこの変更は嬉しいところだ。なお、タッチ/ノンタッチともに一般的なS3スタンバイのみに対応しており、InstantGoには未対応。バッテリはHZ750が44.4WhでJEITA測定法2.0で9時間、HZ550が29.6Whで同じくJEITA2.0で5.9時間となる。
最後に繰り返しになるが、今回展示された2つの製品はいずれも開発途中で、今後仕様などは変更される可能性があると関係者は繰り返したので、ここでもそれはお断りしておきたい。ただ、米国Lenovoは、このLaVie Zと同じ筐体を利用したLenovo版のLaVie Zを既に米国で製品発表しており、上位モデルのHZ750が1,499ドルから、HZ550が1,299ドルから(それぞれ価格は構成により異なる)3月以降に発売される予定と発表されている。日本でも今春に発売予定で、価格などは別途発表されると明らかにされているので、さほど遠くない時期に発表されてもおかしくないと思う。今後のNEC PCからの正式な発表を待ちたいところだ。