イベントレポート

AMD、Steppe Eagleこと組み込み向けSoC「G」シリーズを発表

AMD 上席副社長兼グローバルビジネス事業本部 事業本部長のリサ・スー氏
会期:6月3日~7日(台湾時間)

会場:

Taipei World Trade Center NANGANG Exhibition Hall

Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1

Taipei World Trade Center Exhibition Hall 3

Taipei International Convention Center

 米AMDは6月4日(台湾時間)、COMPUTEX TAIPEIが開催されている会場近くで記者会見を開催し、同社が開発してきた製品を発表した。1つは別記事で既にお伝えしたKaveriのノートPC版で、従来の「A」シリーズのブランド名だけでなく、PCゲーマーやマニア向けのブランド名である「FX」、さらには提供期間を2年とした企業向けの「PRO」などを導入した

 もう1つ、“Steppe Eagle”の開発コードネームで知られる「GシリーズSoC」、さらにはそのGPUレス版となる“Crowned Eagle”こと「GシリーズCPU」も発表した。いずれもARMのTrustZoneアーキテクチャに基づくセキュリティプロセッサを内蔵し、改良版となるJaguarコアCPUを2コアないしは4コア持ち、28nmプロセスルールで製造される。

 さらに、AMDは同社がプロフェッショナル向けGPUとして提供している「FireGL」シリーズの最新製品として「S9150」を近日中にリリースする計画であることも併せて明らかにした。

PCビジネスから脱却しつつあるAMD

 AMD 上席副社長兼グローバルビジネス事業本部 事業本部長のリサ・スー氏は「AMDはその構造を急速に変えている。2012年にはPC向けの売り上げが90%、そのほかが10%だったが、昨年(2013年)はPC向けが70%でそのほかが30%だった。2015年にはこれが半分ずつになると予想している」と述べ、AMDのビジネスモデルが従来のPC依存のモデルから大きく脱却しつつあると強調した。

 「PCは依然として重要なセグメントだが、これからはプロ向けのグラフィックス、サーバー、超低消費電力のクライアント機器などが大きなビジネスチャンスをもたらしてくれる。これらに対応した製品を出していくことが重要だ」と述べ、今後はAMDがそうした製品に力を入れていくとした。

 次いで登場したAMD クライアント事業部 モビリティソリューションズ 上級課長 ケビン・ランシング氏は、同社が同日に発表したノートPC用Kaveriに関しての説明を行なった。ノートブックPC版のKaveriについては、別記事が詳しいのでここでは繰り返さないが、新たにゲーマー/マニア向けのSKUに「FX」が、企業向けの製品には「PRO」のブランドが導入され、PROに関しては2年間という長期間の提供が保証されるとした。

 AMD PROを搭載したノートブックPCとして、同日にHPが発表した「Elitebook 700」シリーズ(725/745/755 G2)という、12.5型液晶を搭載したビジネス向けのノートPCを公開。加えて、今後ノートPC版Kaveri搭載ノートPCをリリースする予定のOEMメーカーとして、Acer、ASUS、Dell、Lenovo、Samsung Electronics、東芝が計画していると明らかにした。

AMDの売り上げは2012年はPCに依存していたが、2013年にはそれが70%に、2015年には半分程度まで下がる見通し、それだけ売り上げが多様化しているということ
HPのKaveri搭載ノートPCを手にもって紹介するAMD クライアント事業部 モビリティソリューションズ 上級課長 ケビン・ランシング氏
ゲーミングPC/マニア向けブランドであるFXがノートPC向けのKaveriでも採用される
ビジネス向けのKaveriはPROのブランド名が与えられる

TrustZoneのセキュリティプロセッサを内蔵した組み込み向けSoC

 AMD 副社長 兼 組込ビジネス事業本部 事業本部長 スコット・オイラー氏は同社の組み込み向け製品の説明を行なった。AMDは昨年の9月に組み込み向け製品のロードマップを更新したが、今回のCOMPUTEXではその時に明らかにされた製品のうち、ローパワー向けの2製品が発表された。

 1つはSteppe Eagleというコードネームで呼ばれてきた製品で、GシリーズSoCの製品名が与えられている。もう1つはCrowned Eagleで呼ばれてきた製品で、GシリーズCPUの製品名が与えられている。いずれの製品も、2コアないしは4コアの改良版JaguarコアがCPUコアに加え、ARM TrustZoneアーキテクチャに基づいたAMDのセキュリティプロセッサが内蔵されている。

 GシリーズSoCはGPUも含んでおり、GシリーズCPUはGPUレスとなっている。いずれの製品も28nmプロセスルールで製造される。オイラー氏は「従来製品とピン互換で、cTDPの機能を利用することができるだけでなく、純粋に性能が53%向上している」と述べた。

 その性能に関しては「Intel製品と比較すると34%ほどコストパフォーマンスがよく、従来製品に比べると96%ほど電力効率がよくなっている」と述べ、競合他社に比べても従来製品に比べても高性能だとアピールした。

 また、AMD プロフェッショナルグラフィックス事業部 事業部長 デビッド・カミングス氏は同社のプロ向けグラフィックスの新製品について説明した。カミングス氏は同社の最新のプロ向けGPUとして、「FirePro S9150」を紹介した。FirePro S9150はHawaiiコアを採用しており、ここ数週間の間に正式に発表される予定であることと、カードの外観が公開された。また、ドーターカード型の「FirePro S4000X」も紹介され、HPのProLiant WS460cというサーバーブレードに搭載され、GPGPUの用途に採用することが可能だと紹介した。

 その後、スー氏が再び壇上に戻り、AMDのロードマップについて説明した。AMDはすでに5月に2015年にx86プロセッサとARMをそれぞれピン互換の同じパッケージで使える構想(Project SkyBridge)を、さらに2016年には開発コードネーム“K12”で呼ばれる自社設計のARM 64bitプロセッサコアを投入する計画であることを明らかにしている。スー氏は「ここ近年AMDは市場を大きく伸ばしているが、x86も依然として大きな市場だ。両方を足すと8,000億ドルの市場規模があるが、この両方の市場をカバーすることができるのはAMDだけだ」とアピールした。

 2015年にSkyBridge構想で、x86 SoC(Puma+コアの次世代CPUコア)とARM SoC(Cortex-A57、GCNアーキテクチャのGPU、HSA対応)をピン互換で顧客に提供する。なお、AMDはこのSkyBridgeのARM SoCにおいて初めてAndroidをサポートし、かつHSAにも対応する。

 AMDはx86でAndroidに対応する計画が無く、ARM版のみ対応になるとAMDの幹部は語っており、当面はx86でWindowsを、ARMでAndroidをというのがコンシューマ向け製品の計画になりそうだ。

AMD 副社長 兼 組込ビジネス事業本部 事業本部長 スコット・オイラー氏
昨年の秋にAMDが公開した組み込み向けロードマップ。Steppe Eagleとして紹介されてきた製品がGシリーズSoCとして、Crowned Eagleで呼ばれてきた製品がGシリーズCPUとしてリリースされる
新世代Gシリーズの特徴。従来製品とピン互換だが、53%の性能向上が見込める
Intelの競合製品と比較して34%のコスト性能差があると主張
cTDPなどの採用により従来世代と比べて電力性能比が96%向上している
AMD プロフェッショナルグラフィックス事業部 事業部長 デビッド・カミングス氏。右手に持っているのがFirePro S9150、左手に持っているのがFirePro S4000X
HPのProLiant WS460cというブレードサーバーに搭載され、GPGPU用途に利用される
今後の予想も含む、ISA(命令セットアーキテクチャ)別の市場規模。ARMがここ数年延びており、他のアーキテククチャを侵食していくと予想されている。x86とARMを足すと8,000億ドルの市場規模があり、両方をカバーすることができるのはAMDだけ
Project SkyBridgeではx86のSoCとARMがピン互換で提供される。2015年に登場するSkyBridgeのARM製品で、AMDは初めてAndroidをサポートすることになる
2015年に登場するSkyBridge向けのARM SoCではARMが設計したCortex-A57が採用されるが、2016年にはAMDが自社設計するK12が64bit ARMプロセッサデザインとして登場する
IntelがARMのライセンシでは無い以上、x86とARMをピン互換で提供できるのはAMDだけのアドバンテージになる

(笠原 一輝)