イベントレポート

HP Elite X3やSnapdragon 617搭載の日本製Windowsスマホに注目集まる

〜発表されたばかりのLumia 650も展示

MWCの会場に設置されたMicrosoftブース、元はNokiaのデバイス部門が出展した場所が今はMicrosoftになっている

 MWCでのMicrosoftブースは、元々はMicrosoftが買収したNokiaのデバイス部門のブースで、今でも国登録がフィンランドでされているなどの名残が見受けられる。Microsoftブースでは、Windowsスマートフォン、Windowsタブレットなどが多数展示されており、注目を集めていた。

 ここでは同ブースで展示されていた各種Windowsスマートフォンを、写真付きでレポートしていきたい。HPから発表された「Elite X3」、「Katana.01」、「MADOSMA Q601」、「NuAns NEO」、「VAIO Phone Biz」など日本メーカー製のWindowsスマートフォンのほか、MicrosoftがMWCに先駆けて発表した「Lumia 650」が展示されていた。

Snapdragon 820を搭載した有線Continuumに対応、画期的なノートドックも用意される

 HPはMWCの会期に先駆けて発表した「HP Elite X3」を展示。展示場所はMicrosoftブースおよび同社ブースで、HP Elite X3だけでなく、その周辺機器や有線接続によるContinuumのデモを披露した。

【表1】HP Elite X3のスペック
SoC Snapdragon 820
CPU Kryo×4
GPU Adreno 530
メモリ 4GB(LPDDR4)
内蔵ストレージ 64GB
拡張メモリスロット microSDXC※
ディスプレイ 5.96型 WQHD AMOLED
セルラー 4G LTE/3G/2G
LTEバンド FDD:1/3/5/7/8/19/20/26/28
TDD:38/39/40/41
CA対応 対応(KDDI)
VoLTE
Wi-Fi IEEE 802.11ac/a/b/g/n(5GHz/2.4GHz)
Bluetooth 4.0
NFC
GPS
SIMカードスロット Micro SIM+Nano SIM ※
カメラ背面 1,600万画素
カメラ前面 800万画素
インターフェイス USB Type-C(3.0、OTG対応)
急速充電 QC2.0
指紋センサー
防水 IP67
バッテリ 4,150mAh
サイズ(幅×奥行き×高さ) 83.1x161.2x7.9mm
重量 190g
Continuum対応 有線/無線
OS Windows 10 Mobile
価格 未定
※micro SDXCとNano SIMは排他

 HP Elite X3の最大の特徴は、SoCにSnapdragon 820を搭載している点にある。Snapdragon 820は、Qualcommがプレミアム向けと位置付けているSoCで、PC用のプロセッサで言えば、Core i7の最上位製品と考えれば分かりやすいだろう。CPUはQualcommが独自開発した64bit ARMプロセッサ「Kryo」(クライヨ)のクアッドコア、GPUもQualcommが独自に開発しているAdreno 530を採用しており、CPU/GPUともに現時点ではモバイル向けSoCとしては最高峰の製品となる。

 1月のCES、そして今回のMWCで、いくつかのSnapdragon 820搭載のAndroidスマートフォンが発表されたが、WindowsスマートフォンでSnapdragon 820を搭載した最初の製品がこのElite X3ということになる。また、メモリが4GB、内蔵ストレージが64GB、WQHD(2,560×1,440ドット)の5.96型AMOLEDディスプレイと、そちらもハイエンドのスペックになっていることは見逃せない点だ。

 Snapdragon 820を採用しているもう1つのメリットは、内蔵のUSBコントローラが3.0準拠になるので、USB Type-CでDisplayPort Alt Modeの実装が可能になること。スマートフォンをPC的に利用する機能「Continuum」を無線だけでなく有線で使用できる。

 日本で販売済み、もしくはこれら販売されるSnapdragon 617搭載の3製品(MADOSMA Q601、NuAns NEO、VAIO Phone Biz)では、Snapdragon 617のUSBコントローラが2.0であるため、無線でのContinuumのみとなるのに対して、Snapdragon 820/810/808を搭載したデバイスでは有線と無線両方の接続方法でContinuumを実現できる。

 HPは「デスクドック」というUSB Type-C、USB 3.0(A端子)、Ethernet、DisplayPort出力などの端子を備えたドックを用意しているほか、同社が「ノートドック」と呼んでいるクラムシェル型ノートPCの形状をしているエクステンダーも用意している。ノートドッグではContinuumの機能で12.5型のディスプレイに接続し、ノートドックのキーボードやタッチパッドを使ってあたかもクラムシェル型ノートを操作しているように扱うことができる。なお、今回のMWCではモックアップのみの展示で、動的サンプルは公開されなかったため、どのように動作するのかは現時点では不明だが、このノートドック自体がMiracastのレシーバ+UBIC(User Input Back Channel)になっていると考えられる。

 ノートドックには46.5Whのバッテリが内蔵されており、ディスプレイとキーボード、それにMiracastのレシーバだけが入っていると考えればかなり長時間の駆動が期待できそうだ。電車の中ではスマートフォンとして、カフェではノートPCとして利用するといった使い方ができる。かつてほかのメーカーが出していたノートドックの類似品では、スマートフォンとノートドックがかなり強引にドッキングする形状だったのに対して、Elite X3のノートドックならスマートフォンはカバンの中に入れたままでも使えるので、より自然に利用できる。

 ただ、今回展示されていたElite X3は、あくまでエンジニアリングサンプルレベルのもので、HPの製品企画担当者によれば、まだMicrosoftやQualcommがOSやドライバの最適化を進めている段階であり、性能を出し切れていないとのことだった。実機を触った限りではもたついたりせず、Snapdragon 617の量産レベル品とあまり性能的な差は感じられなかった。出荷時期は今夏とされており、それまでには完全なものが出てくるだろう。

MicrosoftブースでのHP Elite X3の展示、Continuumで接続したディスプレイ上でSalesforceのアプリを動かしている
HP Elite X3の前面
HP Elite X3の背面
前面と背面
カメラ部分
背面の下部には、ポゴピン端子が用意されている。USBの信号線が出ており、給電とデータ通信が可能。オプションでジャケットのような形でバーコードリーダなどを用意することを想定している(現時点では対応機器は未発表)
左がElite X3、右はMicrosoftのLumia 950(5型)。同じ5.x型ながら、5.95型のElite X3はかなり大きめなことが分かる
左側面
右側面
USB Type-C端子を採用している
SoCがMSM8996(Snapdragon 820)であることが分かる
ContinuumのデモでExcelを開いているところ
デスクドック。背面にACアダプタ、イーサネット、DisplayPort、USB(A端子)×2、USB Type-Cが用意されている
ノートドック、Miracastのレシーバも兼ねておりクラムシェル型ノートPCと同じように使うことができる。ただし、今回はモックで動作していなかった

多くの海外メディアのアワードも受賞し、注目を集めていたElite X3

 そうしたほかのWindowsスマートフォンとの違いに加えて、Elite X3は、Corning Gorilla Glass 4を液晶の保護ガラスとして採用したり、IP67準拠の防水防塵といった機能を備えている。ビジネス向けに利用することを考えればそうした堅牢性は嬉しいところ。

 また、バッテリも4,150mAhと、ファブレット並みの大容量バッテリを搭載しており、長時間駆動が可能になっている。ただ、重量もそれ相応で、5〜6型のスマートフォンとしてはやや重めな部類になる190gとなっている。実際に持ってみると、ちょっとずっしり感があるのは否定できないが、この辺りは長時間駆動とのトレードオフなので致し方ないところだ。

 注目されるLTEのバンドは、FDD-LTEが1/3/5/7/8/19/20/26/28、TDD LTEが38/39/40/41となる。VoLTEにも対応しており、KDDIからの発表によればWiMAX2+でのキャリアアグリゲーション(CA、複数のバンドを束ねて通信する方式のこと)にも対応している。ほかのWindowsスマートフォンに比べて、幅広いバンドへの対応が特徴と言える。

 SIMカードは、Micro SIMとNano SIMの2つが入るデュアルSIMになっており、Nano SIMスロットに関してはmicroSDXCカードと排他になっている。海外では日本で使っているSIMカードを入れて音声専用にし、もう1つに現地のデータ通信用SIMカードを入れておくなどすれば、日本の番号で待ち受けしつつ、海外で安価にデータ通信が可能だ。

 なお、日本HPの関係者によれば、現時点ではKDDIの法人向けのチャネルでの販売だけが公表されているが、日本HPが自社のWeb販売サイトで取り扱うことも検討しているとのことだった。プロシューマー(ハイエンドな一般消費者)やSOHOなどでは、なかなか法人向けのチャネルでは買いにくいと思うので良いニュースと言える。

 気になる価格だが、まだ明らかにされていない。5.9型のWQHD、Snapdragon 820を搭載してメモリ4GB、64GBのストレージというスペックは、米国で販売されている現時点でのWindowsスマートフォンの最高峰となるLumia 950 XL(5.7型WQHD、Snapdragon 810、3GB、32GBストレージ)よりも高いスペックとなる。Lumia 950 XLの価格が649ドル(税別、1ドル=114円換算で約74,000円)となっていることを考えると、それよりもやや上の価格帯となる可能性が高い。

SIMカードスロット、最近流行のMicro SIM×1と、Nano SIM/Micro SDカード排他×1というデュアルSIM構成
HPは単体でブースを構えており、Elite X3やモバイルPCなどを展示していた
Elite X3に与えられた数々のアワード、今回の注目度の高さが伺える

日本でだけ発売されているSnapdragon 617を搭載したWindowsスマートフォン

 MicrosoftブースにはOEMメーカーのマシンを展示するスペースが用意されており、Windowsスマートフォンが9機種展示されていた。このうちContinuum専用の展示スペースとなっていたHP Elite X3を除くと、残り8機種のうち4機種までが日本メーカーの製品だった。それがFREETELの「Katana.01」、マウスコンピューターの「MADOSMA Q601」、トリニティの「NuAns NEO」、VAIOの「VAIO Phone Biz」の4製品となる。

 中でも注目が集まっていたのは、出荷されたばかりのSnapdragon 617を搭載したMADOSMA Q601、NuAns NEO、VAIO Phone Bizの3製品だ。と言うのも、世界的に見ると、Windowsスマートフォンは、プレミアム向けSnapdragon 810/808を搭載したのMicrosoft「Lumia 950 XL/950」、Acer「Jade Primo」と、バリュー向けのSnapdragon 2xxを搭載した「Lumia 650/550」やOEMメーカーの製品は存在しているが、ミドルレンジと呼ばれるSnapdragon 6xxを搭載したWindowsスマートフォンはこの3機種しかないからだ。

【表2】MADOSMA Q601、NuAns NEO、VAIO Phone Bizのスペック
MADOSMA Q601 NuAns NEO VAIO Phone Biz
SoC Snapdragon 617
CPU Cortex-A53×8
GPU Adreno 405
メモリ 3GB 2GB 3GB
内蔵ストレージ 32GB 16GB
拡張メモリスロット microSDXC※ microSDXC microSDXC※
ディスプレイ 6型 フルHD LTPS 5型 HD 5.5型フルHD IPS
セルラー 4G LTE/3G/2G 4G LTE/3G/2G 4G LTE/3G/2G
LTEバンド (日本)FDD:1/3/8/19/28(B)、TDD:41
(海外)FDD:1/2/3/4/7/8/28(B) TDD:38/40/41
FDD:1/3/8/19/28 FDD:1/3/8/19/21
CA対応 - - 対応(ドコモ/1+19、1+21、3+19)
Wi-Fi IEEE 802.11ac/a/b/g/n
Bluetooth 4
NFC -
GPS
SIMカードスロット Micro SIM+Nano SIM※ Micro SIM Micro SIM+Nano SIM※
カメラ背面 1,300万画素
カメラ前面 500万画素
インターフェイス USB Type-C(2.0、OTG対応) Micro USB(2.0、OTG)
外装着せ替え - -
ICカード挿入スペース - -
急速充電 QC2.0 QC2.0 QC2.0
バッテリ 3,900mAh 3,350mAh 2,800mAh
サイズ(同) 82.3×160×7.9mm 74.2×141×11.3mm 77×156.1×8.3mm
重量 176g 150g 167g
Continuum対応 無線
OS Windows 10 Mobile
価格 未定 39,800円(税別、カバー別) 5万円台
※microSDXCとNano SIMは排他

 いずれの製品もSnapdragon 617を搭載していることは共通だが、メモリやストレージ、さらにはバッテリ容量、バンド対応、CA対応などが異なっている。

 今回Microsoftブースに展示されたこともあり、それを見た顧客がNuAns NEOを販売するトリニティのブースに直接足を運ぶなど、日本のWindowsスマートフォン市場が面白いことになりつつあると、海外から注目を集め始めている。現状で、ミッドハイレンジとしてプレミアム市場に近いスペックと品質を持ったWindowsスマートフォンが選べる市場は日本だけになっている。かつ、これまでプレミアム市場向けの端末が不在だった状況が、日本でもHP Elite X3が販売されることが明らかになったことで、プレミアム向け、ミドルレンジ、バリュー製品の上から下までが揃うことになる。

Microsoftブースに展示されたVAIO Phone Biz、米国Windows CentralのTop Pickを受賞
トリニティのNuAns NEO
マウスコンピューターのMADOSMA Q601

199ドルのLumia 650、ローエンドでも充実したスペックが欲しいユーザー向けの製品

 米国時間の2月15日に、Microsoftが発表した新しいLumiaブランドのWindowsスマートフォンが「Lumia 650」だ。Lumia 650は199ドル(税別、1ドル114円換算で約23,000円)という低価格な価格設定が特徴なバリュー向けのWindowsスマートフォン。5型HD(1,280×800ドット)のOLEDディスプレイ採用し、Snapdragon 212のSoCを採用し、1GBメモリと16GBストレージというスペックになっている。

【表3】 Microsoft Lumia 650のスペック
Lumia 650(米国モデル)
SKU Snapdragon 212
CPU Cortex-A7×4
GPU Adreno 305
メモリ 1GB
内蔵ストレージ 16GB
拡張メモリスロット microSDXC
ディスプレイ 5型 HD
セルラー 4G LTE/3G/2G
LTEバンド FDD:1/3/7/8/20
Wi-Fi IEEE 802.11b/g/n(2.4GHz)
Bluetooth 4.1
NFC -
GPS
SIMカードスロット Nano SIM
カメラ背面 800万画素
カメラ前面 500万画素
インターフェイス Micro USB(2.0)
バッテリ 2,000mAh
サイズ(同) 70.9x142x6.9mm
重量 122g
Continuum対応 -
OS Windows 10 Mobile
価格 199ドル(税別)

 Snapdragon 212は、ローエンドのWindowsスマートフォンで多く採用されているSnapdragon 210のマイナーチェンジ版。CPUとなるCortex-A7クアッドコアの動作周波数が1.3GHzに高められているのが特徴で、GPUは従来と同じAdreno 305。基本的にはクロック周波数が上がっただけなので、若干の性能向上に留まる。ディスプレイは5型のHD解像度のOLED液晶を採用しており表示品質も悪くなく、割と暗めな会場でも鮮明なディスプレイ表示であることを確認できた。

 なお、Lumia 950 XL/950と同時に発表されたLumia 550は139ドル(税別、1ドル114円換算で約16,000円)が、4.7型HD液晶、Snapdragon 210、1GBメモリ、8GBストレージというスペックだったので、液晶が大型化され、SoCやストレージがややスペックアップされた製品がLumia 650で、ローエンドでも比較的スペックが高い製品が欲しい人向けの製品となるだろう。

 現時点ではLumia 650の発売が明らかにされているのは米国のみで、それ以外の市場に関しては未定となっている。

MicrosoftのLumia 650
Snapdragon 212(MSM8909)を搭載、展示されていたのはRM-1152
色はブラックとホワイト
4つの側面

(笠原 一輝)