イベントレポート
PCセキュリティからIoTセキュリティへと領域を広げるトレンドマイクロ
(2016/2/2 17:53)
トレンドマイクロは、アンチウイルスソフトの「ウイルスバスター」シリーズなどでPCユーザーにはお馴染みの企業だ。
同社は引き続きウイルスバスターなどのPC向けソフトウェアの機能強化を行なっているが、次のステージとしてが取り組んでいるのが、いわゆるIoT(Internet of Things)と呼ばれるネットに接続する機能を持った新しい機器向けのセキュリティソリューションだ。同社は「ATOM」、「DIAMOND」、「YAMATO」など、IoT向けソリューションを採用したデバイスなどをCESで公開した。
Windows 10時代になってもPC向けセキュリティソフトへのニーズは変わっていない
本誌の読者にとってトレンドマイクロと言えば、言うまでもなく「ウイルスバスター」シリーズなどの、アンチウイルスソフトのメーカーとして認知されているだろう。トレンドマイクロは早くから日本市場に進出していたこともあり、日本における企業向けのアンチウイルス市場で市場シェアトップになっているなど、主要な1社だ。
Windows 8以降、そして現行製品のWindows 10もそうなのだが、標準でMicrosoft純正のアンチウイルスソフトであるWindows Defenderが搭載されている。筆者はその影響によって以前に比べて売り上げなどが減ってるのではないかと考え、トレンドマイクロの主力製品であるPC向けのセキュリティソフトの売り上げについて、同社CEOのチェン氏に聞いてみた。
すると、チェン氏は「日本市場において我々の売り上げが以前より下がっているかと言われればそうではない。Microsoft自身も言っているように、Windows 10に搭載されているセキュリティ機能は基本的なものだ。従って、しっかりと守りたいというユーザーにとってのニーズは依然として強い」と述べ、アンチウイルスソフトへのニーズは底堅いとした。「日本のユーザーはそうしたセキュリティソフトへの意識が高く、しっかりセキュリティソフトを導入してから使いたいと考えるユーザーが多い」とも述べ、アンチウイルスソフトの売り上げを支えているとした。
そんなトレンドマイクロが次の市場として注目しているのは、IoT市場だという。チェン氏は「IoT時代になっても、PC時代と同じセキュリティの問題、例えば情報漏洩だったり、乗っ取りだったりという問題は発生する。しかし、PC時代と異なるのは、エコシステムが違うこと。IoT時代にはクライアントを保護するだけではダメで、クライアント、クラウド、その全体を守らないといけない」と述べ、IoT時代ではPC時代のようにクライアントやサーバーだけを保護するのではなく、ネットワークで接続されている全体を含めてカバーしなければならないとした。
ATOM、DIAMOND、YAMATOというソリューションをOEMメーカーに提供
そうしたIoT向けのソリューションとしてトレンドマイクロが提供しているのが、ATOM、DIAMOND、YAMATOというソフトウェア群だという。もちろん、IoTは、PCやスマートフォンのようなプログラマブルなデバイスではないので、ソフトウェアは組み込みとなる。このため、ソフトウェアといっても、実際には開発キットのようなもので、セキュリティモジュールとしてハードウェアメーカーに提供され、ハードウェアメーカーが自社製品に組み込む形になる。ATOMはIoTのデバイスに組み込むセキュリティソフトウェアモジュールで、DIAMONDはホームゲートウェイつまりはルーターにアドオンする形でホームネットワークのセキュリティを実現し、YAMATOはクラウド向けのセキュリティプラットフォームという扱いになる。
今回のCESでトレンドマイクロは、ASUSのスマートロックなどのIoT機器にATOMを組み込んだ製品を展示したり、ルーターにアドオンするボックス型のDIAMONDの試作機を展示し、タブレットを利用して、ホームネットワークのセキュリティを設定できる様子などをデモした。例えば、管理者となる父親が、子供のタブレットからアクセスできるURLを制限したりということを細かく設定できる様子などを披露している。
なお、チェン氏によれば、こうしたIoT向けのソフトウェアは、伝統的なIT機器の延長線上にあるようなIoT機器やルーターなどだけでなく、自動車向けへの展開も検討しているという。「自動車もインターネット経由でアップデートするテスラのような事例が出てきている。今後自動車でもセキュリティへのニーズが高まっていくと考えており、そこへの投資を行なっていきたい」と述べ、自動車メーカーと共同で自動車向けセキュリティソフトの開発を行なっていくとした。ただ、現時点では具体的な採用例はないとのことなので、今後日本の自動車メーカーも含めて売り込みを行なっていく意向だということだった。