イベントレポート

安定したAMDのモバイルGPUビジネス

AMD Rdeon モバイルグラフィックス製品管理課長 ラビ・ガナハン氏
会期:6月3日~7日(現地時間)

会場:

Taipei World Trade Center NANGANG Exhibition Hall

Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1

Taipei World Trade Center Exhibition Hall 3

Taipei International Convention Center

 AMDは、COMPUTEX TAIPEIが開催されている会場近くのホテルで記者会見を開催し、同社のノートPC向けディスクリートGPU(dGPU)ソリューションについての説明を行なった。

 日本では薄型のノートPCが一般的になっているため、dGPUが搭載されているノートPCは数%と決して大きな市場ではないが、EMEA(エミア、ヨーロッパ/中東/アフリカ)地域や中国などのアジア太平洋地域などは2桁の装着率と、依然として大きなマーケットとして存在している。

 AMD Radeon モバイルグラフィックス製品管理課長 ラビ・ガナハン氏は「ゲーミングPCや今後登場する4KノートPCなどではdGPUのニーズがあり、OEMメーカーからの需要もまだまだ高い」と述べ、今後も一定の割合のノートPCにdGPUは搭載され続けるだろうとした。

EMEAや中国などで高い装着率を誇るdGPU、グローバルでは市場は安定している

 日本ではdGPUの市場と言えば、ほとんどが自作PC向けのニーズで、ノートPCに搭載されている例は少ない。ガナハン氏は「dGPUのニーズは地域性がかなりある。米国や日本市場では10%以下だが、EMEAや中国などではかなり高い。全世界では22~23%程度で極めて安定している」と説明する。

 日本のユーザーにはあまりピンと来ない話かもしれないが、ヨーロッパや中国などでは、PCゲーミングは今でも成長市場である。よってGPUの需要はむしろ高まっている。これはAMDだけでなく、競合のNVIDIAにも同じことが言えるのだ。

 そうした市場に向けて、AMDは複数のノートPC向けGPUをラインナップしている。2014年向けの製品は、Radeon R9/R7/R5 M200シリーズと呼ばれており、デスクトップPC向けのRadeon R9/R7/R5シリーズのノートブックPC版という位置づけになっている。ガナハン氏によれば「メインストリーム向け、パフォーマンス向け、マニア向けの製品をラインナップしている。メモリ構成やSKU選択などによっても変わってくるが、それぞれ最終製品の価格で50ドル程度、100ドル程度、200ドル以上の追加するような価格帯だと考えている」と述べ、OEMメーカーが選択できる複数のSKUを用意しているとした。

 例えば、メインストリーム向けのメインストリームノートPC向け製品が、Radeon R5 M250/M240/M230の製品で、これらの製品では64bitのDDR3メモリと共に提供されるので、最終的な価格として50ドル程度が製品に上乗せされることになる。それでもIntelの第4世代Coreプロセッサに内蔵されているGPU(GT2)に比べて、20~25%程度の性能向上になるため、若干のコストアップでも性能を上げたいユーザーなどに受け入れられているとのことだった。

EMEA地域や中国などでは依然として高いdGPUの装着率を誇っており、全世界では22~23%程度の装着率と、市場としては安定している
AMDのノートPC向けdGPUのラインナップ。最終製品の価格で、メインストリーム向けが50ドル程度、パフォーマンス向けが100ドル程度、マニア向けが200ドル以上の追加コストというイメージになっている

4KノートPCやミニPCが、dGPUの新しい市場として期待されている

 ガナハン氏は、Radeon R9/R7/R5 M200シリーズの特徴として、すべてがGCNアーキテクチャで、Eyefinity、CrossFire、MantleといったデスクトップPC向けのGPUでサポートされている機能にすべて対応しているとした。さらにMantleについても触れ「AMDではMantleにより40%の性能向上すると説明しており、すでに対応している“Battlefield 4”だけでなく、今後は“Theif”なども対応する予定だ」と述べ、dGPUを搭載するメリットがさらに増えるとアピールした。

 ただ、デスクトップPC向けのRadeon R9/R7/R5で対応しているAMD True Audioに関しては、Radeon R9 M270だけが対応しているという。ガナハン氏は「GPUコアの設計時期の問題で対応しているダイとそうではないダイがある。現時点では対応しているのはRadeon R9 M270のみとなる」とした。

 Radeon R9/R7/R5 M200を搭載している製品として、MSI、Alienware、CLEVO、Lenovo、東芝などを紹介し、「東芝の4Kディスプレイを搭載したノートPCには、AMDのRadeon R9 M265Xが採用されている。4KはdGPUにとって良いアプリケーションだ」とし、4Kノートブックの実現にはdGPUが持つ処理能力が必要だと強調した。これ以外にも、GIGABYTEが販売している小型PC「BRIX」にもdGPUが採用されており、「今後こうしたミニPCも、dGPUにとって重要な市場になるだろう」と述べ、AIOや小型PCなどにも市場が広がっていくとの見通しを示した。

AMDのRadeon R9/R7/R5 M200シリーズの機能。デスクトップPC版にない機能としては、省電力機能のEnduro TECHNOLOGY、デュアルグラフィックス(Intelの内蔵GPUとの切り替え)などがある。True AudioはRadeon R9 M270のみ対応
PCゲーミング向けの製品。東芝の4KノートブックPCにもRadeon R9 M265Xが採用されている
パフォーマンス、メインストリーム向け製品の採用例。GIGABYTEのBRIXのようなミニPCは今後成長が期待される新市場

(笠原 一輝)