【Imagine Cup 2011レポート】
日本代表2チームは第1ラウンド突破ならず

正午からプレゼンテーションを行なったSunDonationの4人。女性は浴衣、男性は法被姿で登場

7月8日(米国時間) 開催



 Imagine Cup 2011(イマジンカップ)の第1ラウンドが、米国時間の2011年7月9日午前11時から始まった。

 組み込み開発部門、ソフトウェアデザイン部門に参加したすべてのチームがプレゼンテーションを行ない、当日午後10時30分過ぎに、第1ラウンドの結果が発表された。

 日本代表として、組み込み開発部門に参加したSunDonation、ソフトウェアデザイン部門に参加したMI3は、いずれも、第1ラウンドを通過できなかった。

 日本マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部アカデミックテクノロジー推進部の伊藤信博部長は、「世界の壁の高さを改めて感じる結果となった。学生たちは、懸命に努力し、短期間にここまで大きく成長したチームは見たことがないほどだった。世界で勝つ喜びを知って欲しかった」と悔しさをにじませる一方で、「技術力やチームワークでは、他の国を凌駕するものがあったが、本当の意味での創造力という点で、もっと考えるべきだという大きな課題を発見した。世界で評価される創造性、世界標準といえる課題解決の発想というものを、日本のチームは身につけなければならない」と語った。また、「これで終わりではない。次の挑戦に邁進してほしい」と学生たちにエールを贈った。

 一方、会場を訪れていた日本マイクロソフトの最高技術責任者である加治佐俊一氏は、「2チームが第1ラウンドを突破できなかったのは予想外の結果」としながらも、「技術な観点では評価できるものがあるが、もっと実用性の観点、ビジネスモデルの観点から精査した内容にしなくてはならない。新興国ではITをビジネスにつなげることに真剣に取り組んでおり、起業を目指す学生も多い。貪欲な意識を持つ必要もあるのではないか」などとした。

 組み込み開発部門に参加したSunDonationは、第1ラウンドにおいて、3番目となる正午からプレゼンテーションを行ない、さらに午後6時30分過ぎからは10分間に渡るデモストレーションを行なった。 

 SunDonationは、京都大学大学院の西脇春名さんをリーダーに、大阪市立デザイン教育研究所の田中天さん、京都大学大学院の芝原達哉さん、情報セキュリティ大学院大学の河村辰也さんの4人で構成。タッチディスプレイおよびデジタルサイネージを利用した新たな募金システムを開発し、日本での普及を図ることを提案した。

真剣な表情で評価する審査員たちSunDonationのメンターであるサレジオ高専の内田健先生

 サイネージにタッチして募金すると、スポンサー企業などを通じてユニセフをはじめとする団体に入金される仕組みで、その募金の追跡や状況を知るフィードバック機能も備える。Windows Azure、Windows Compact 7、eBoxを利用している。

 日本大会で優勝した後、就職のためメンバー2人がチームを離脱。そこで、日本大会で同じタッチパネルソリューションを開発していたサレジオ高専のSP2LCの中から河村さんが新たに参加。また、SP2LCの他のメンバーも日本から技術支援を行なう体制をとった。河村さんは、過去2回の日本大会に参加し、今回の日本大会でも2位という実績を生かして強力にサポート。さらに、芝原さんが英語でのプレゼンテーション担当として新メンバーに加わった。

 SunDonationのメンターであるサレジオ高専の内田健先生は、「メンバーからはもう一度プレゼンテーションをやりなおしたいと言った声も出ていたが、私はベストを出せたと評価している」と講評。同じくメンターのワンビ・加藤貴社長は、「時間が短い中でも最高のチームワークを発揮したのがこのチームの特徴。ニューヨークに入ってからも、日本に残ったメンバーが、最後の開発を後方支援するといった24時間体制でのチームワークも発揮していた」と評価していた。

午後6時30分過ぎから行なわれたデモストレーションの様子SunDonationのタッチディスプレイおよびデジタルサイネージを利用した新たな募金システム
デモストレーションを終えてほっとした表情をみせるSunDonationクラウドガールのクラウディアも駆けつけた。Twitterでイマジンカップの様子をつぶやいていた

 一方、MI3は、午後2時25分から、第1ラウンドのプレゼンテーションに臨んだ。

 MI3は、同志社大学大学院の今井祐介さんをリーダーに、同志社大学大学院の石川勇樹さん、同志社大学の田中志樹さん、同じく同志社大学の今入康友さんの4人で構成され、「Dr.One」と呼ばれるソフトウェアを開発した。

 Dr.Oneは、アフリカをはじめとして医師が不足している地域や、病院へのアクセスが困難な地域に対して、SNSを利用した簡易総合診療および医療クラウドを用いた地域住民による自立的解決を支援するもので、Windows AzureやWindows Phone 7を利用した提案を行なった。

 MI3のメンターである同志社大学の小板隆浩先生は、「これまでの練習と比べても、本番で最高の成果を出した。発表そのものは90点の出来映えであり、審査員との質疑応答でも80点の評価ができる。安心して見ることができ、満足できるプレゼンテーション内容だった」と語った。

ソフトウェアデザイン部門に参加したMI3のプレゼンテーションWindows Phone 7の端末を直接見せて訴求Q&Aでは審査員から厳しい質問が飛んでいた
プレゼンテーションを終えたMI3のメンバーMI3のメンターである同志社大学の小板隆浩先生

 組み込み開発部門は、ソフトウェアの開発スキルを用いて、ハードウェアにも配慮した独自の組み込みデバイスの開発を競うもの。Windows Embedded CE 6.0 R2を使用し、組み込みソリューションの構築に取り組む。世界大会には20チームが参加しており、そのうち第2ラウンドには15チームが進んだ。

 ソフトウェアデザイン部門は、Microsoftのツールとテクノロジーを使用し、実際に役立つソフトウェアやサービスアプリケーションを開発。PCおよびモバイルデバイスを活用することが条件となっている。今回の世界大会には67チームが参加しており、第2ラウンドには18チームが進んだ。

 なお、第2ラウンドは、米国時間の7月10日午前10時から開始する。

 Imagine Cup 2011には、全世界から183の国と地域から、35万人の学生が参加。世界大会には、予選を勝ち抜いた70カ国、128のプロジェクトが参加している。

日本代表は組み込み開発部門とソフトウェアデザイン部門に参加。それぞれ第2ステージには15チーム、18チームが進んだ日本の名前がコールされずに第1ラウンド通過チームに拍手を贈る日本代表チーム
組み込み開発部門の第1ラウンド通過チームソフトウェアデザイン部門の第1ラウンド通過チーム

(2011年 7月 11日)

[Reported by 大河原 克行]