2014年9月17日

2014年9月16日

2014年9月12日

【Flash Memory Summit 2010レポート】
HDDの性能ボトルネックをSSDキャッシュで解消

Santa Clara Convention Center

会期:8月17日〜19日(現地時間)

会場:米国カリフォルニア州サンタクララ
   Santa Clara Convention Center



 「Flash Memory Summit」は毎年8月に米国で開催される、フラッシュメモリとその応用に関する世界最大のイベントだ。2010年も現地時間8月17日に「Flash Memory Summit 2010」が始まった。

 フラッシュメモリの応用で最も注目されているのは、SSD(Solid State Drive)だろう。SSDは既存のハードディスク装置(HDD)を代替するストレージになると期待されているからだ。そのSSDをクライアントPCに載せる試みを議論するセッションが、初日である17日の午前に設けられた。非常に興味深い議論がなされたので、概要をご紹介したい。

●SSDがDRAMとHDDのギャップを埋める

 このセッションでは、ソフトウェア・ベンダーのNVELOによる講演が良くまとまっていた。まずはその内容を簡単に報告しよう。なおNVELOは、メモリ・コントローラ技術の開発企業であるDenali Softwareの技術者がスピンアウトして2010年6月に設立したばかりのソフトウェア開発企業。半導体回路設計ソフトウェア・ベンダーのCadence Design SystemsがDenali Softwareを買収したことがきっかけとなり、スピンアウトが生じた。

 講演者は、NVELOでビジネス開発担当バイス・プレジデントをつとめるKevin Silver氏である。Silver氏は始めにPCやサーバーなどのメモリ階層で、システムメモリとストレージの間に存在する大きなギャップを改めて示した。システムメモリのDRAMとストレージのHDDの間には、データ転送速度(バンド幅)で1桁〜2桁、記憶容量当たりのコストで2桁もの大きな差が存在する。システムの総合性能から考えると、このような大きなギャップは好ましくない。上位のメモリ階層(DRAM)にアクセスしていた状態から下位のメモリ階層(HDD)にアクセスしたとたんに、データ転送を待つ時間が著しく伸びて処理性能が一気に低下し、PCユーザーがストレスを感じてしまう。

 この大きなギャップを埋めると期待されるのが、NANDフラッシュメモリを搭載したSSDである。NANDフラッシュメモリは記憶容量当たりのコストが急速に下がり続けたことで、DRAMよりもはるかに低いコストを実現した。NANDフラッシュメモリのデータ転送速度はDRAMよりも遅いものの、HDDに比べるとはるかに高い。SSDは性能(データ転送速度)とコスト(GB単価)でDRAMとHDDの中間に位置しており、両者のギャップを適切な形で埋められる。

コンピュータのメモリ階層。DRAMとHDDの間に大きなギャップがある コンピュータのメモリ階層にNANDフラッシュメモリを入れたところ。DRAMとHDDのギャップを埋めるように、NANDフラッシュメモリ(SSD)が入ってくる

 SSDをコンピュータのメモリ階層に導入する手法としてはおおむね、4通りが考えられるとSilver氏は説明した。最も単純なのは、HDDとSSDを完全に入れ換えてしまうことだ。ただし、HDDと同じ記憶容量を用意するとストレージのコストが大幅に上昇してしまう。

 次に、既存のHDDをハイブリッドHDD(SSDとHDDを組み合わせたストレージ)と置き換えることが考えられる。Silver氏は、HDDよりも性能は上がるものの、SSDそのものの性能と比べるとハイブリッドHDDの性能はかなり低いと指摘する。

 ブート用メモリだけを小容量のSSDに割り当てて既存のHDDは継続して使用するという手法もある。この手法はブート時間は短くなるものの、システムの実効性能は上がらないのでSSDを導入する効果は小さい。

 Silver氏が主張する導入手法は、小容量(ただしシステムメモリよりも大きな容量)のSSDをキャッシュとして既存のHDDと組み合わせることだ。既存のHDDを使うので、ストレージの容量は従来と同様にHDDのオプションとしてPCベンダーおよびPCユーザーが選択できる。

 課題は、キャッシュ・コントローラの完成度によって性能が大きく変化すること。この点を心配しないのは、NVELOがSSDキャッシュのコントローラ・ソフトウェアを開発しているからだ。ソフトウェアの名称は「Dataplex」という。

 Silver氏は、SSDをキャッシュとして使用した場合のベンチマーク値をSSD、ハイブリッドHDD、既存のHDDと比較した結果を示した。使用したのは「Dataplex」を組み込んだSSDキャッシュである。ベンチマークのスイートはPCMark HDDスイートとSYSmark Productivityスイートで、いずれもSSDキャッシュのベンチマーク値はSSDに比べると低いものの、ハイブリッドHDDに比べると高いものとなった。

ストレージに対するSSDの導入方法。既存のHDDをSSDに置き換える、既存のHDDをハイブリッドHDDに置き換える、ブート用メモリだけを小容量のSSDに置き換えて既存のHDDは継続使用する、小容量のSSDキャッシュと既存のHDDを組み合わせる、などがある SSDキャッシュのコントローラ・ソフトウェア「Dataplex」の概要 SSD、SSDキャッシュ、ハイブリッドHDD(Hi-HDD)、HDDのベンチマーク値

 ただし、SSDキャッシュが高い性能を出すには、いくつかの条件がある。Silver氏は、SSDキャッシュの容量はシステムメモリの4倍が適していること、キャッシュに使うSSDのデータ転送速度はHDDに比べるとはるかに高いこと、キャッシュのアルゴリズムが賢いこと、といった条件を挙げていた。これらの条件を満たすことで、コストパフォーマンスに優れたストレージを実現できるとした。

SSDキャッシュが高い性能を実現するための条件 クライアントPCにおけるストレージ価格と記憶容量の比較

●既存のHDDと組み合わせるSSDキャッシュを開発中

 「Dataplex」を採用してSSDキャッシュを開発しているのが、SSDベンダーのOCZ Technologyである。Flash Memory Summitの同じセッションで、OCZ Technologyのストレージ製品マネジメント担当ディレクターを務めるDaryl Lang氏が、開発中のSSDキャッシュを紹介した。

 Lang氏は講演で、クライアントPCのHDDが抱える問題点をいくつか指摘した。HDDではブート時間がかかりすぎること、アクセス時間が長いために動作が緩慢になること、記憶容量の巨大さに比べるとデータ転送速度と信頼性の低さが目立つこと、などだ。パワーユーザーはSSDを購入してOSや常用アプリケーションなどをSSDに格納することでPCのシステム性能を独自に高めているが、一般のユーザーはそういったチューニングはしない。SSDキャッシュを搭載したストレージをPCに載せることで、一般のユーザーでもSSDの恩恵を受けられるようになる。

SSDをキャッシュに、HDDをアーカイブに使用するストレージが望ましい クライアントPCのHDDが抱える問題点

 OCZ Technologyが開発するSSDキャッシュは、同社の高速SSD「RevoDrive」をベースとする。「RevoDrive」は4レーンのPCI Expressインターフェイスを搭載した高速SSDである。SSDキャッシュの製品名は「RevoDrive-B」となる。

 「RevoDrive-B」はSSDキャッシュのコントローラ・ソフトウェアとしてNVELOの「Dataplex」を搭載し、HDDを直接接続できるようにSATAコネクタを装備する。RevoDrive-Bの記憶容量は50GBであり、現行の「RevoDrive」シリーズでは最小容量の品種に相当する。

4レーンのPCI Expressインターフェイスを搭載した高速SSD「RevoDrive」。記憶容量は50GB〜480GB SSDキャッシュ「RevoDrive-B」の概要
「RevoDrive-B」を搭載したクライアントPCのストレージ階層と、エンタープライズ・システムのストレージ階層の比較 「RevoDrive-B」のイメージ

●システムメモリがDRAMから不揮発性メモリに換わる未来を期待

 このセッションではほかに、NANDフラッシュメモリをキャッシュに利用したときのフォームファクタをテーマとするパネル討論が実施された。パネリストの1人であり、Hewlett-Packardでノートブック・プラットフォーム・アーキテクトを務めるWalter Fry氏がクライアントPCのメモリ階層の将来を展望していたので、その内容を紹介したい。

 現行のクライアントPCにおけるメモリ階層は、キャッシュ、システムメモリ、ストレージで構成されている。CPUやGPUなどのプロセッサが演算処理性能を急速に高め、システムメモリはデータ転送速度を向上させているのに対し、ストレージ(HDD)の性能向上ペースが追い付いておらず、性能ギャップを広げている。その点でNANDフラッシュメモリのSSDはデータ転送速度を高めるとともに消費電力を下げられるストレージとして有望だが、記憶容量当たりのコストがHDDに比べると高い。このため大半のPCユーザーにとってSSDは手の届かないものとなってしまっている。

 そこで当面は、システムメモリとHDDの間に不揮発性メモリ(NANDフラッシュメモリ)をキャッシュとして挿入し、ストレージの性能を高めることが望ましい。さらに将来は、不揮発性メモリをシステムメモリにも使い、システムメモリのキャッシュにDRAMを利用するメモリ階層となることが期待されるとする。

クライアントPCのメモリ階層と性能向上トレンド NANDフラッシュメモリおよびSSDの特長と問題点 クライアントPCのメモリ階層の将来像。当面はストレージにキャッシュを付加したメモリ階層となる。さらに将来は、システムメモリが不揮発性メモリに換わり、DRAMのキャッシュが付加される

 NANDフラッシュメモリの価格(記憶容量当たりの価格)は2008年に急速に低下したものの、2009年以降は比較的緩やかに下がっている。HDDも記憶容量当たりの価格を継続して下げており、両者の価格差は縮まっていない。このため、SSDがHDDを置き換えることはしばらくは現実的ではない、というのが米国におけるフラッシュメモリ関連業界の共通認識だ。この結果、ハイブリッドHDDやSSDキャッシュなどが現実的な解答とみなされるようになっている。SSDとHDDが共存する時代が、しばらくは続く見込みだ。

(2010年 8月 20日)

[Reported by 福田 昭]