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楽天、電子書籍貸出サービスの米OverDriveを子会社化。総ユーザー数は4,400万人規模に

Rakuten Koboの相木孝仁氏(左)とOverDriveのSteve Potash氏(右)

 楽天株式会社は19日、北米を中心に図書館向け電子書籍貸出サービスを展開する米OverDriveの全株式を約4.1億ドルで取得し、完全子会社化したと発表した。楽天はコンテンツ配信ビジネスとして展開する電子書籍販売サービスとの相乗効果と、OverDriveが有する北米市場での展開強化を見込むとともに、電子書籍貸出ビジネスにも参入する。

 OverDriveは、公共の図書館や教育機関を対象として、電子書籍やオーディオブックの貸出サービスを展開する米国の企業。ユーザーがそれぞれの図書館に作った貸出カードのIDとアプリを紐付けることで、PCや携帯端末から貸出の手続きを行なう。借りた電子書籍は貸出可能数が限定されており、貸出期間が経過すると閲覧できなくなるため返却の手続きは不要。約50カ国で250万以上のタイトルを扱う。

 楽天が都内で実施した説明会では、米Rakuten Koboの相木孝仁CEOが登壇し、買収の背景と、今後の見通しを説明した。

 「書店や図書館で物理的に書籍にアクセスするというモデルは変わりつつある。現在でも端末経由で電子コンテンツの購入は行なえるが、今後は図書館の書籍も借りられるようになるだろう。米国では読者層のデジタル化が進んでおり、電子書籍のニーズがあることから、公共図書館の電子書籍への支出は増加傾向。この流れは今後も加速すると予想している。日本でも乗り越えなければいけないハードルはいくつかあるが、その流れは起こると考えた。今回は場所やデバイスを問わず、ユーザーに対してさらに豊かな読書体験を提供すべく、OverDriveの買収に踏み切った」。

 楽天では電子書籍の販売と、図書館での貸出をコンテンツ戦略の両輪ととらえ、グローバル市場における電子書籍ビジネスの拡大を見込む。具体的には、顧客基盤と取り扱いコンテンツの拡大、教育分野への進出、米国市場への注力を視野に入れる。OverDrive側は、メインとなる北米市場でのシェアを維持しながら、海外展開の拡大を進める。

 なおOverDriveの子会社によって、楽天の電子コンテンツ事業は合計4,400万ユーザーを擁し、これまで取り扱っていなかったオーディオブックなどをコンテンツに追加することになる。説明会の中で相木氏は「コンテンツ事業は、楽天にとってEコマースとファイナンスに続く第3の柱。今後数年以内には10億ドル規模のビジネスに成長させたい」とコメントしている。

近年における電子コンテンツ関連企業買収の変遷
従来の書籍へのアクセス
電子化により書籍へのアクセス手段は多様化している
電子書籍の普及は未だ過渡期という
米国図書館における電子書籍への支出は増加傾向
ユーザーに対してさらに豊かな読書体験を提供すべく、OverDriveとともに電子書籍の貸出サービスに参入する
OverDriveの概要
主なコンテンツ配信先
図書館にコンテンツを提供するB2B2C型のデジタルコンテンツプラットフォーム
OverDriveの主要顧客
教育分野のコンテンツもデジタルへの過渡期であり、伸びしろが大きいとする
OverDriveのユニークユーザー数
貸出冊数も伸びている
電子書籍販売に貸出ビジネスを加える
国際戦略上のメリット
OverDrive子会社後の総ユーザー数は4,400万にのぼる
OverDrive側はさらなる海外展開を行なえるメリットも
数年以内に10億ドル規模のビジネスを目指す

(関根 慎一)