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シャープ、次世代ディスプレイ「MEMS-IGZO」をサンプル出荷
~時系列によるカラー表示方式
(2014/9/12 17:31)
シャープ株式会社は12日、都内で記者会見を開催し、既存の次世代ディスプレイ「MEMS-IGZO」に関する技術概要、およびロードマップについて説明した。
MEMS-IGZOはこれまでの液晶とはまったく原理が異なるディスプレイ技術。液晶ディスプレイは、バックライトの光が液晶で偏光され、カラーフィルタに通してから偏光板を経て、ユーザーの目に届けられるという。3層以上に及ぶ構造のため、バックライトの光量が低下する問題がある
一方MEMS-IGZOディスプレイは、まずバックライトの光をRGBの順で点灯させる(これをフィールドシーケンシャル方式と呼ぶ)。それから画素ごとに用意されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッターが、バックライト点灯のタイミングに合わせて開閉。開閉時間の長さによって通す光の量を変えることでRGBの各階調を調整し、カラー表示を行なう。
シャッターの開閉速度は約100μsと非常に高速であり、人間の目には識別できないため、1つの色としてのように見える。また、液晶のようにカラーフィルタや偏光板を必要としないため、バックライトの光を活かすことができ、液晶の2~3倍の光学効率を実現。必要な輝度を低消費電力で得られるのが特徴となっている。
もう1つの特徴は、カラーフィルタの性能に依存しないため、3原色バックライトの活用により、高色純度と色域再現を実現。実測ではNTSC比では120%の色域を実現できるとしている。
また、シャッターの開閉速度を抑えることによって表示色数(階調)を制限すれば、さらなる省電力化を実現できる。例えばモノクロの静止テキスト表示などでは、消費電力が大幅に下がるとしている。
そして、高輝度化により、太陽光下のような環境でも見やすい明るさ(1,500~2,000cd/平方m)を実現。さらにMEMSによるメカニカルな駆動による、-30℃~80℃の幅広い温度環境で動作可能としている。
MEMS-IGZOは、現在ある液晶ディスプレイ工場の生産ラインをそのまま活用できるのも特徴で、実際にサンプルを生産しているのは、2005年6月に設立されたシャープの米子工場である。米子工場は基板サイズが405×515mm(2.5世代)で、中小型液晶の製造をメインとしている。今後市場のニーズに合わせて、天理、三重、そして亀山にも展開できるとしている。
MEMS-IGZOは、Qualcommの子会社であるPixtronixと共同で開発された。PixtronixはMEMSシャッターに関する技術を所有しており、シャープが既存のIGZO-TFT技術に加えて、量産技術を活用することで、製品化を実現した。
発表会で挨拶したシャープ株式会社 代表取締役 専務執行役員 デバイスビジネスグループ担当の方志教和氏は、「ディスプレイのこれまでの競争軸は高精細化、狭額縁化だけであったが、高精細化は眼の網膜を超えても無意味だし、狭額縁化に関しても限界を迎えつつある。そこで、四角にとらわれない形の異型ディスプレイや、耐環境性能、ユーザーインターフェイスとなるセンサーの統合など、新たな競争軸が生まれた」と説明。
シャープは6月に「フリーフォームディスプレイ(FFD)」を発表し、異型ディスプレイに対して答えを示したが、「今回のMEMS-IGZOは省電力性、耐環境性によって、これまでの液晶などでは実現できなかった市場を開拓できる」と語った。
今後のロードマップについては、2014年後半から、主にタブレットや車載向けにサンプル出荷を開始し、高精細化/高視認性を実現するための高性能化も同時に行なう。2016年にはスマートフォンやタブレット向けにサンプル出荷、2017年頃には量産を開始するとした。
共同開発したPixtronixで社長を務めるGreg Heinzinger氏もゲストとして招かれ、「2社を跨いだ共同開発の中でも、今回のプロジェクトはもっとも成功した例ではないかと思う。シャープとは昼夜問わず緊密に連携して開発できた。本日ここまで辿りつけたことを嬉しく思う」などと語った。