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富士通、手のひら静脈画像から2,048bitの特徴コードを抽出して照合する技術

8月5日 発表

 株式会社富士通研究所は5日、手のひら静脈画像から特徴を2,048bitのコードとして抽出し、高速に照合する技術を世界で初めて開発したと発表した。

 本技術を用いることで、1つの生体情報から複数の生体特徴情報が生成でき、複数のサービスに異なる情報を登録し、情報漏えいが生じた場合でも変換条件を変えて新しい生体特徴情報を生成できる、「キャンセラブルバイオメトリクス」あるいは「リニューアブルバイオメトリクス」と呼ばれる生体認証技術に応用できる。

 従来技術でキャンセラブルバイオメトリクスを実現しようとした場合、照合の際に静脈認証と同等のパターン照合処理が必要で、処理に時間がかかるという問題があった。そのため、パターンの特徴を数値化し、特徴コードとして単純な数値計算で照合を行なう仕組みが研究されていた。しかしその実現には、静脈画像パターンを取得するたびに変化する手の傾きや形に影響されない高度な安定した特徴コード生成技術が必要だった。

 そこで富士通はまず、画像を正規化する技術を開発。手の輪郭情報を用いて位置補正や形状補正を行なうことで、一定の位置と形に置かれた静脈画像のように変換し、おおまかな位置合わせを行なうとともに大きな変形を取り除くことに成功。これにより特徴コードの抽出再現性を向上させた。

 2つ目は手のひら静脈画像の各部分での情報量に応じて画像領域を分割し、分割した領域から静脈パターンの特徴成分を抽出する技術。分割後、情報量削減の技術を用いて2,048bitの特徴コードを抽出。分割によって多少の位置ずれや変形があっても影響を受けくいほか、特徴コードから元の画像を類推することは困難だという。

 本技術を用いることで、一般的なPCを使用し、1対1で認証/照合処理を行なった場合、処理時間を従来の数msから1μsに短縮でき、データ量も従来と比較して約10分の1に削減できるという。また、他人受入率は10万分の1程度としている。

 本技術は手のひら静脈認証だけでなく、指紋認証への適用も可能としており、2015年の実用化を目指し、画像正規化技術の強化と特徴コード抽出技術の高精度化を図るとしている。

生体情報からの特徴コードの抽出する技術
変換条件を変えることによる複数の特徴コードの抽出し、複数のサービスに登録できる
今回開発した技術の概要
本技術を利用した生体認証サービスの適用イメージ

(劉 尭)