日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)の取締役副社長執行役員パーソナルシステムズ事業統括の岡隆史氏は、29日に行なわれたスレートPCの発表会で挨拶に立ち、8月のPC事業再検討発表以来の経緯を改めて説明した。
この問題は、米HP本社が8月に“PC事業部門であるパーソナルシステムズグループ(PSG)のあり方について、分離や子会社化を含めた再検討を行なう”と発表したのがきっかけ。一時は「HPがコンシューマPC事業から撤退/売却」という報道も行なわれた。最終的に、10月に従来通りPSGを社内に置くという発表があるまで、約2カ月間に渡って混乱を招いた。
岡副社長は、「8月にPSGのついての再検討が行なわれた理由は、“PSGには意志決定のスピードと革新に対する投資が必要でないか”、という指摘からでした。そして、各国の支社を含む、大規模な調査と検討が行なわれ、結果として、PSGはHPの中に残ることになりました。
調査にあたって、最初にアナウンスが必要だったのは、これだけの会社で大規模な調査を秘密裏に行なうことは難しく、インサイダー取引などの問題を起こさないためでした。
調査の結果、PSGがHP社内にあることによって、ブランドの維持や部品の調達、PCの周辺にあるクラウドなどのへの技術の波及などのメリットが改めて、社内に認識されたと思います。一方で、スピードと革新が必要という指摘については、すでに動きがあります。
もう1つ、明らかになったのは、PC事業の未来が明るいということです。直近では、PC事業はスマートデバイスの登場もあってスローダウンし、未来は暗いという意見もあります。しかし、全世界単位で見れば、PCの普及はまだ20%しかなく、他の80%の人々もITやPCを無視することはできません。まだ、PCは伸びる余地があるということです」と述べた。
HPのPC事業は減収だが増益。PSGと他部門とのシナジーが検討課題 | POS端末や、カードリーダー付きスレートPCなど、PC事業周辺の事業も順調 | ソリューション、企業向けPC、個人向けPCの3分野とも攻める |
また、先週公開された決算について、「この騒ぎがあった、PSGの第4四半期について、騒ぎの影響がどれぐらいあったか、皆さんも興味あるでしょう。結果から言うと、個人はややマイナス、法人は5%のプラスでした。PCの販売台数は増えていますが、売上は微減、利益は増益でした。シェアも伸ばしています」と述べた。
また、「PSGが残るという発表が行なわれて以来、HP社内では“HP & PSG Better Together”というキーワードが流れています。しかし、これは暫定的なもので、まだHPとPSGが別のものとして扱われています。これからは、PSGをHPの一部としてとらえ、それが社内にあることによるシナジーをもっと考えていこうという方向へ進みます」とした。
さらに、「日本でのPC事業は、東京生産の拡大など進歩を続けていますが、個人市場ではまだ社名が浸透していないなど、やることはたくさんあります。今回のスレートPCも日本HPとしては初めての製品ですが、これ以外にもいろいろなものを考えており、順次、いろいろな形でお伝えしていける思います」と、今後の製品についても積極的な展開を行なう意向を示した。
(2011年 11月 29日)
[Reported by 伊達 浩二]