メルコ、第2四半期の業績はほぼ横ばいで推移
~タイ洪水によるHDD市場への影響も言及

取締役管理本部長 松尾民男氏

11月1日 発表



 株式会社メルコホールディングスは11月1日、2012年3月期(2011年4月~2012年3月)の第2四半期の決算を発表した。これに伴い都内で会見を開き、同社取締役管理本部長の松尾民男氏が具体的な説明を行なった。

 第2四半期の売上高は295億8,700万円、営業利益は19億3,300万円、純利益は12億7,100万円だった。上期の累計売上高は前年比2.4%増の603億4,400万円、営業利益は同15.9%減の40億200万円、純利益は同12%減の25億6,600万円だった。以下は、すべて上期の累計数字。

 7月の完全地デジ化に伴うデジタル家電周辺機器の需要拡大で増収するも、メモリやHDD、ネットワーク製品などの単価下落により、売上高はほぼ横ばいで推移した。営業利益や純利益は減少しているものの、これは新製品(8ch/8日間録画できるレコーダ「DVR-Z8」など)に関する研究開発費で約7,000万円かかったため。

同社のBCN市場シェアGfKの市場シェア調査第2四半期の連結決算
連結決算の四半期ごとの推移資産や資本金など設備投資や減価償却費、研究開発費などが増加

 セグメント別では、メモリ部門が25.7%減の64億2,300万円、ストレージ部門が0.4%増の264億3,100万円、ネットワーク部門が0.4%減の132億5,900万円、デジタルホーム部門が169.5%増の51億9,800万円、サプライ/アクセサリ部門が10.4%増の53億9,900万円、そのほかが5%減の36億3,100万円となった。海外は北米/中南米が不調だったが、北京とロシアの新事務所により欧州とアジアオセアニアは好調だった。

製品別の売上高推移海外の売上高推移

 メモリ部門はDRAMの単価下落により苦戦を強いられたが、USB 3.0メモリやSDカードなどのフラッシュメモリが好調で少し挽回した。ストレージやNAS製品は、TVの外付けHDD対応モデルの増加や、スマートフォンでの需要により台数を伸ばしたが、単価下落により横ばいの推移となった。また、ネットワーク部門もスマートフォンやiPadの普及で台数は27.7%増となるも、価格競争で苦戦を強いられた。

 一方、デジタルホーム部門は先述のように地デジへの完全移行により、アナログTVに接続できる4,000円台の地デジチューナが好調で、7月単月で売上を大きく伸ばした。しかし単価が安いため、全体的に見れば大きく業績に貢献したわけではない。そのほかサプライやアクセサリ関連の部門は、スマートフォン用ケースや液晶フィルムなどの需要により、売上を堅調に伸ばした。

メモリ/フラッシュ製品ストレージ/NAS製品
ネットワーク製品そのほかの製品

 下期にかけては、HDDレコーダやTV用外付けHDD、スマートフォン普及に伴う無線LANルータ/NAS機器への需要に応えるよう、デジタルホーム向けの製品に注力していく。2012年3月期連結で、売上高1,340億円、営業利益84億円、純利益50億円を目指す。

 なお、この見通しは個人向け需要が堅調で、DRAM/フラッシュともに安定した値動き、為替は若干円安設定である1ドル80円台(実際は75円~80円で推移)という環境のもと、HDDはタイ洪水被害による影響を含まない予測となっている。

通期の業績見通し製品別の通期見通し
メルコが掲げる「デジタルライフ、もっと快適に」を元に下期は製品を展開HDDレコーダ製品外付けHDD製品
スマートフォン向けを謳う無線LAN製品外出先からでもスマートフォンからアクセスできるNASもアピールスマートフォン向けアクセサリも充実させていく

●下期のHDD市場は「最悪半分にまで冷え込み」

 そのタイ洪水被害による影響について、松尾氏は現在の動向および予測を打ち立てた。

 被害を受けたのは既報の通りWestern Digital(以下WD)ではあるが、WDのHDDのうちおよそ6割がこのタイの工場で生産している。WD自体は世界におけるHDD市場のおよそ3割のシェアを持っているので、換算すると市場のうち16~17%に相当する台数を生産できなくなっている。現在WDは残りの工場で増産する方針だが、洪水被害以降WDは現在もなおHDDを一切出荷していないという。

 「出荷できない状況は12月までは変化しなさそうだが、1~3月以降は復旧作業の進捗次第であるため、完全に予測できない」とした。

 また、被害はWDのみならず、HDDの核をなすスピンドルモーターを製造している日本電産(Nidec)も被害を受けた。現在日本電産のタイ工場も稼働していないため、このモーターの供給を受けているSeagate、日立GST、東芝なども影響を受けるだろうとしている。

 メルコのHDDの調達先であるが、メインがSeagateで5~6割を占める。「現在、HDDメーカー各社とやり取りを緊密に行なっているが、毎日のようにHDDの価格がかわっているため、単価設定を毎週やり直さなければならない。しかし部品単価でみても上昇傾向であり、今後はHDD製品の値上げは避けられない」とした。

 また、グループ企業で大量購入できる強みも活かす。HDDが安い時は大量に仕入れ、バルク品をCFD経由で市場に流し、絶対的な販売台数で売上を作るが、今回の被害によりCFDで市場に流すバルク品の量を減らし(粗利益の薄い製品を減らす)、バッファローでNASや外付けHDDなど、付加価値の高い製品で市場に投入することで、利益を確保していきたいとした。

 先述のように価格が日替わりで変化しているため、市場や業績への影響は予測しづらい状況だが、松尾氏は「HDD市場は最悪50%まで冷え込む可能性があると予測している。しかし価格改定で業績への影響は(ストレージ部門単体で)15~20%減に抑えたい」とした。


(2011年 11月 1日)

[Reported by 劉 尭]