旭硝子株式会社(AGC)は20日、スマートフォンやタブレット端末向けの化学強化用ガラス「Dragontrail(ドラゴントレイル)」の販売を全世界で開始したと発表した。
近年普及が進んでいるスマートフォンやタブレット端末向けのカバー用ガラス。カバーガラスは、持ち歩き時の落下や、ポケットや鞄の中での圧迫など、外部からの衝撃や擦れから液晶を保護するものであるが、一般的に用いられているソーダライムガラスでは強度が、一方アクリル樹脂では耐傷性や質感が課題だった。
Dragontrailはこれらの課題を解決するために、すでに実績のある化学強化用ガラスをもとに開発。ソーダライムガラスの6倍の強度に加え、樹脂では得られない耐傷性と質感を持たせた。
Dragontrailは一般的にアルミノシリケートガラスとして呼ばれる。特殊な溶液の中に浸けることで、ガラスに含まれるナトリウムと溶液中のカリウムのイオン交換が行なわれ、表面に圧縮応力層が形成される。
一方、ガラスの製造は同社独自の電子用フロート窯を用いて行なわれる。これはTFT液晶のフロントガラスでも採用されている製法であり、液体になったガラスを錫の上に流しこみ、表面張力によって成形される。製造は大阪にある工場で行なわれる。
既存素材の課題 | 電子用フロート窯で製造される |
●3割のシェアを目指す
石村和彦氏 |
20日に都内で開かれた記者発表会では、同社社長の石村和彦氏が挨拶。「新製品はスマートフォンやタブレットなどの電子機器にジャストミートする。Dragontrailという名前だが、ドラゴンには勇気や成長にまつわる多数の伝説が残されている。我々とパートナーの成長基盤になる期待を込めて、Dragontrailという名前をつけさせてもらった」と語った。
挨拶の中で、「昔、モスラ対ゴジラという映画もあったが……他社に対抗できる製品を用意できた」と、Corning(コーニング)のGorilla Glass(ゴリラガラス)対抗という位置づけの製品と思わせる一面もあった。Dragontrailの戦略などについては、2月の決算説明会で改めて社長自ら語るという。
続いて、同社電子カンパニー 電子ガラス事業本部長の田口望氏が、新製品の特徴などを解説。60kg加圧の3点曲げ試験、130gの剛球落下試験、ハンマーで叩く試験、ドライバーで表面をこする試験などをビデオで紹介し、Dragontrailの優位性をアピールした。
売上の目標については、2012年に300億円を目処にし、カバーガラスビジネスで3割以上の売上を占めるようしたいと述べた。
田口望氏 | 日常生活におけるモバイル機器のリスク | Dragontrailの展望 |
一般的なソーダライムガラスでは3点曲げ試験ですぐに割れてしまうが、Dragontrailはかなり力がかかっても無事 | ||
ハンマーでガラスを叩く試験 | 130gの剛球落下試験。やはりソーダライムガラスは耐えられない | アクリル樹脂とDragontrailの表面をドライバーで擦る試験 |
(2011年 1月 20日)
[Reported by 劉 尭]