Intel社内でWindows 7を積極的に導入

グレッグ・ワイアント CTO

11月12日 開催



 インテル株式会社は12日、企業向けPCの技術である「vPro」を紹介する記者説明会を都内で開催し、vProのIntelの社内における利用状況や、同技術の今後について説明した。

●Intel社内でのvProとWindows 7の展開

 記者説明会では、米国本社から来日したIT本部CTO 兼 チーフ・アーキテクトのグレッグ・ワイアント氏が、IntelにおけるvProの導入状況、およびWindows 7の導入計画について説明した。

 IntelのIT部門の社員数は5,700人で、28カ国の66拠点に存在する。サポートの対象となるのは150拠点にいる約79,000人の社員。クライアントPC総数は94,000台に上るが、このうち45,000台がvPro技術を有効にしているという。

IntelのIT部門の現状IntelのクライアントPCのvPro導入状況

 vPro技術を利用することによって生まれるメリットは、リモートで問題を診断または解決することによるオンサイトタイムの短縮、一括管理によるセキュリティリスクからの防御、そしてそれによって実現されるIT部門の統合化などがあるという。

 今後はvProの導入をさらに推進し、数年以内には100%の有効化を目指す。特に、iAMT 6に追加される「KVM(Keyboard-Video-Mouse)リモート」機能によって、ブルースクリーンの状態や、BIOS起動前の状態でも、リモートからクライアントを操作できるようになるため、ヘルプデスクのオンサイトタイムをさらに短縮できるとした。

同社の段階的なIT戦略現在のvProの利用状況
Windows 7早期導入プログラムの効果

 Intel社内においては、2010年をメドにWindows 7を全社に導入するという。同社の7の早期ユーザープログラム(TAP)を社内で実施した結果、生産性や安定性の向上、セキュリティの改善、電力消費の低減などの効果が見られたという。また、TAPのアンケートによると、Windows 7に対するパフォーマンスやマルチタスク処理、Officeソフト関連の評価も、5段階中4~4.5という高い数値を示し、ユーザーがWindows 7へ移行したいという声が多かったため、導入を決定した。

 同社はWindwos Vistaの導入を見送っている。今回、Windows 7を導入する理由として、「Vista登場時、社内のニーズや、レガシーアプリケーションの最適化などが進んでおらず、タイミング的にズレが生じた。しかし、今回はIntelの拡大するニーズにマッチするタイミングで7が登場した。さらに7はXP Modeもあり、古いインストールベースからの移行もスムーズに行なえるため、導入を決定した」と述べた。

 また「7はBitLockerなどの暗号化技術も搭載されているため、vProをより有効に活用できる。そして、詳細はまだ詳しく話せないが、Office 2010についてもMicrosoftとのコラボレーションで、マイクロプロセッサの性能をフルに活かせる」と述べた。

 最後に同氏は、「vProとWindows 7を組み合わせることで、TCOの削減とセキュリティの改善を実現でき、ユーザーの生産性をさらに向上させられる」とまとめ、同社が実際に1ユーザーになって効果を検証し、vProとWindows 7の導入によるメリットを実証できたと訴えた。


●2010年はPCリフレッシュの時期が到来する
リック・エチャベリア氏

 vProを取り巻く市場全体の動きや、vPro技術の今後について、同社 アーキテクチャー事業本部 副部長 兼 ビジネス・クライアント・プラットフォーム事業部長のリック・エチャベリア氏が説明した。

 業界全体では、セキュリティ事故による損害や、IT運用管理コストの肥大化などを取り上げ、「これらの問題を改善するために、vProテクノロジーがあり、現在導入する企業が急増している」という。具体的には、日経印刷株式会社や株式会社松田平田設計、株式会社アイ・オー・データ機器などが導入し、クライアントPCを一括管理しているとした。

 その一方で、これから2010年にかけては、景気の回復、企業PCのサイクル時期の到来、そして高性能なプロセッサの登場、さらにWindows 7の登場という4つのトレンドで、「クライアントPCのリフレッシュに拍車がかかるだろう」とした。そこで、2010年にはvProテクノロジーも強化するという。

セキュリティ事故による損害やIT運用管理コストの肥大化vPro導入実績の増加4つの要因によるPCリフレッシュ時期の到来

 そのうちの1つは性能の向上で、32nmプロセスでNehalemベースのCPUと、45nmプロセスのグラフィックスを1チップ化した「Clarkdale/Arrandale」(開発コードネーム)によって、基本性能を強化しつつも、2チップ構成で、PCの設計を簡易化し、低コスト化を実現する。さらに、新命令セット「AES-NI」(ClarkdaleとArrandaleのみ)の追加により、暗号化処理の速度も向上させる。

 管理面では、KVMのサポートにより、リモートで問題の診断から修復までが一括で行なえるようになり、オンサイト訪問を減らすことで生産性を向上できる。同機能では、チップセットが管理用にビデオのフレームバッファを持つことで、PCクライアントと同じ画面で操作でき、管理者はオンサイトと同様に、適切な対処を行なえるとした。また、再起動が要求されても、クライアントとのセッションを維持できるのが特徴だという。

 さらに、「アンチセフト・テクノロジー」により、盗難/紛失時のデータ流出を抑えられる。また、リモートからでも、暗号化されたHDDにもアクセスできる機能などを追加し、優れた管理性と強固なセキュリティの両立を目指す。

vProの3つの柱である、優れた性能、管理性、セキュリティ性Clarkdale/ArrandaleではAES-NIを新たにサポートする
KVMのサポートにより、ブルースクリーンやBIOS起動前でもリモートから操作できる。暗号化機能の強化

(2009年 11月 12日)

[Reported by 劉 尭]