マイクロソフトは、8月19日、東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで、「Windows 7 Partner Marketing Day」を開催した。
同イベントは、PCメーカー、ソフトウェアメーカー、各種周辺機器メーカー、サービス提供企業などのパートナー企業を対象に、コンシューマー市場をターゲットとしたWindows 7に関するマイクロソフトの具体的な販促施策、広告施策などを公表。業界を挙げた共同広告プランの提案なども行なわれた。
冒頭、挨拶に立ったマイクロソフトの堂山昌司副社長は、「マイクロソフトでは、2010年までに1億7,000万台のWindows 7搭載PCが出荷されると予測している。さらに、2億4,600万台のPCにおいて、そのままWindows 7が動作すると見ている。合わせると、4億台以上の大きなビジネスチャンスがあるということになる。また、β版、RC版を含めて1,000万人を超える人たちが評価を行ない、数百万のフィードバックを得ている。ユーザーが一番使いやすい、一番求めている商品を完成することができた」とした。
堂山副社長の登壇にあわせて、発売に向けた期待の音として、「ハートビート(鼓動)」が流された。堂山副社長は、「10月22日の発売まで約10週間。ハートのビートをより強いものとして、感じてほしい」として、挨拶を締めくくった。
2010年までに1億7,000万台のWindows 7搭載PCが出荷、2億4,600万台のPCにおいてWindows 7が動作する | 「ARE YOU READY」の文字を映し出し、発売まで10週間となったことを示す | マイクロソフト コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部コンシューマーWidnow本部 藤本恭史本部長 |
「コンシューマー市場に向けた Windows 7 販売戦略と製品ご紹介」としてマーケティング戦略について説明したマイクロソフトのコンシューマー&オンラインマーケティング統括本部コンシューマーWidnow本部 藤本恭史本部長は、「Windows 7ほど顧客の声を聞いて開発された商品はない」と前置きし、「Windows Vista出荷後に、全世界200カ国、1,100万のユーザーの声を集め、600万台のPCのセッション情報や利用状況を掌握し、どんな障害が起こっているのか、どんな不満があるのかを集め、さらにオンライン上で1,600回のインタビューを行なった。続いて、Windows 7の仕様を固める前の6カ月間は、200カ国2,600人のユーザーに対して、延べ4万時間のリサーチを行ない、快適に利用できると思われる90以上のシナリオに対して、600回以上の機能テストを実施した。加えて、β版が完成して以降、マイクロソフト日本法人の615人の社員が参加し、画面チェックテストなどを行ない、100件以上が優先して修正されている。日本法人、日本のパートナー、日本の評価プログラム参加ユーザーとともに作り上げたOSである」と語った。
藤本本部長は、Windows 7の開発ポイントとして、「お客様の声から学ぶ」、「高い品質と基本性能に注力する」、「IT管理者と開発者の力を引き出す」、「人々をワクワクさせる」、「日本市場に最適化する」という5つの項目を挙げて、これまでのOSとは異なるアプローチで完成させたことを改めて強調した。
今回のイベントで、明らかにされたのは、Windows 7で利用される新たなタグラインだ。
これまで英文で、「Your PC, Simplified」とされていたものを、「あなたとPCに、シンプルな毎日を。」という日本語のタグラインを用意し、今後、このキーワードをWindows 7の訴求メッセージとして展開していくことになる。
Windows 7で利用される新たな日本語のタグラインと、すでに発表されていた英文のタグライン |
藤本本部長は、「『あなたとPCに、シンプルな毎日を。』のもとで、『できること、簡単に。』『やりたいこと、軽快に。』『新しいこと、目の前に。』という3つの観点から、Windows 7の特徴を訴求することになる」と話した。
「できること、簡単に。」では、Windows本来が目指す姿に戻り、ユーザーの欲しい機能を搭載し、互換性などを実現していること、「やりたいこと、軽快に。」では、ネットブックなどでも動作する軽快な環境を実現したこと、「新しいこと、目の前に。」では、Windows 7によって新たに実現できる機能を搭載したことを指したという。とくにWindows 7で行なえる新しいこととして、ホームネットワーキング、デジタルTV、Windows Touchの3点を挙げ、会場では、それぞれのデモストレーションを、コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部コンシューマーWindows本部の森洋孝氏が行なった。
【お詫びと訂正】初出時、お名前を誤って記載しておりました。お詫びして訂正いたします。
デモストレーションするコンシューマー&オンラインマーケティング統括本部コンシューマーWidnow本部の森洋孝氏 |
森氏は、「Windows 7によって、PCの環境がよりわかりやすく、リッチになる。操作環境を統一した形で、デジタル機器との連動が可能になるのもWindows 7の特徴」などとした。
また会場では、新たなタグラインを刷り込んだ小型の団扇を配布。「小さな団扇を扇ぐことで小さな風が起こるが、これをみんなで扇ぐことで大きな風になる。パートナー各社と一緒になって、Windows 7の風を大きくしていきたい」(藤本本部長)と語った。
藤本本部長は、Windows 7のフォーカスエリアとして、「Windows 7発売の成功、長期的販売基盤の確立」、「Windows XP/Vistaユーザーの買い換え、買い増し、アップグレード」、「プレミアムエディションの促進」、「ネットブックへのWindows 7搭載促進」、「Windows Liveによる付加価値促進」の5つを提示した。
「いままでは発売日に大きな花火を上げて、その余波でビジネスを行なうという傾向があったが、発売日以降も含めて、長期的に販売できる基盤を作っていきたい。また、パートナーとの連携も長期的に行なう基盤を作りたい」としたほか、「プレミアムエディションの訴求はWindows Vistaから継続して行なうもの。PC自体のバリューを高めることができるのは、プレミアムエディションであり、これを訴求することでPCの単価上昇につなげることもできる。また、ネットブックにおいても、Windows XPよりも、Windows 7の方が、圧倒的なエクスペリエンスがあり、パートナーとのエコシステムの能力も大きい。新たな分野として創出されたネットブック市場において、Windows 7が、この市場を増幅していく役割を担う」などとした。
さらに、Windows Liveによる付加価値促進としては、Windows 7をベースとしたクラウド展開について説明。より快適にWebサービスが利用できることを説明したほか、「OSは約3年でバージョンが上がるが、Windows Liveのアプリケーションは1年に一度バージョンアップし、Webサービスは四半期ごとにバージョンアップする。Windows 7の環境により、より豊かで、新たな体験ができるようにな」などと語った。
一方で、日本におけるWindows 7の市場性については、次のように語る。
「購入後5年以上を経過しているWindows XPおよびその他OSを搭載したPCが1,540万台、5年未満のWindows XP搭載PCが930万台、Windows Vista搭載PCが1,060万台あると見ている。また、メモリ1GB未満またはDirectX 9非対応のPCが1,980万台、メモリ1GB以上またはDirectX 9対応PCが1,550万台と見ている。1,980万台は、PCの買い換えが想定されるものであり、1,550万台はそのままWindows 7へのアップクレードあるいはネットブックなどによる新たな買い増しが想定されるユーザーといえる。Vistaによって取りきれなかった市場があるのは間違いなく、過去のOSに比べても大きなオポチュニティがあるのがWindows 7だ。さらに、周辺機器市場の拡大も期待でき、クロスセールスの拡大も期待できる」。
Windows 7搭載PCだけでなく、パッケージによるWindows 7の販売強化、あるいは周辺機器との連動販売の拡大を進める考えを示した。
国内PC市場は拡大傾向になる。マウスの販売台数はPCの販売台数に匹敵する | PCに接続される製品の市場規模は、家電小売り全体の半分に達する |
また、Windows 7の10月22日を前後して展開する各種施策についても明らかにした。
藤本本部長は、「実施時期については流動性はある」としながらも、発売前から発売後まで数多くの施策を用意していることを示した。
9月下旬からは店頭施策の開始とともに、互換性情報をホームページを通じて提供するほか、10月中旬にはWindows 7の発売直前のプレスイベントを開催。10月中旬から11月末までの期間は、リビングでのWindows 7の利用を想定したプレス向けの常設展示を行なうという。
また、10月初旬から10月末にかけて、さまざまな場所で小規模のタッチ&トライコーナーを設置する「ゲリラタッチ&トライ」を実施。10月24日、25日にはオフィシャルイベントとして、都内において、「ユーザーラウンチイベント」を開催し、パートナーのWindows 7対応製品を含めて、実際に製品に触れる場を提供するという。
広告やタッチ&トライイベント、オンライン、店頭支援イベントなどのコミュニケーション戦略によって、800万人の購入ポテンシャルの顕在化を目指すという。
Windows 7で想定される市場規模 | Windows 7に関する各種販売促進策 |
まずは、人口全体の12%(約600~700万人)を占めるハイエンドユーザーに対して、確実に購入につながる施策を展開。続いて、ハイエンドユーザーから人口の33%を占める一般コンシューマユーザーに対しての評判を伝搬。「自分にとってもWindows 7は良さそうだ」という雰囲気を作るという。さらに、フォロワーユーザーに対して、Windows 7の良さを訴求するという。
マイクロソフトの調べによると、全体の54%がWindows 7の内容や名前を知っていると回答。ハイエンドユーザーについては、78%が認知しているという。そのため、同社では、製品やブランド認知の訴求よりも、パートナーとの連携によって、PC、周辺機器、ソフトなどの具体的な使い方、提案を基にした訴求に力を注ぐとした。
また、出荷前にも関わらず、Windows 7に「興味あり」あるいは「購入意向あり」としたユーザーが9割に達したこと、また購入したいと考えていたというユーザーに対して、Windows 7のデモストレーションを見せると81%が購入したくなったという実績を基に、「実際に触れていただくなど、なにかのきっかけで購入につなげることができると判断している。認知をしている多くの人に対して、タッチポイントを与え、早期に、正確な情報を提供することが大切だと考えている」とした。
コミュニケーション戦略における効果予測 | まずはハイエンドユーザーを狙っていく | 発売前からWindows 7に対する認知度は高い |
一方、キーノートセッションでは、ジーエフケーマーケティングサービスジャパン シニアアナリストの岩渕真貴氏が「PCを取り巻く市場環境とWindows 7の可能性」と題して、また、日本経済新聞社 編集委員である関口和一氏が「クラウド時代のOSの進化」と題してそれぞれ講演。パートナーパネルディスカッションでは、Impress Watch取締役副社長の小川亨、日経パソコンの藤田憲治編集長、アスキー・メディアワークス・アスキー総合研究所・遠藤論所長が参加した「業界を挙げたWindows 7メディア活用」と、フリーランスライターである山田祥平氏をモデレータに、ソフトメーカー、周辺機器メーカーなどが参加した「Windows 7で広がるデバイス、アプリケーションの活用と連携」がそれぞれ行なわれた。
ジーエフケーマーケティングサービスジャパンの岩渕シニアアナリストは、「2009年は、年間100万台以上のネットブックが国内で販売されることになり、個人、家庭の買い増し需要を喚起している」としたほか、「エコポイント制度により、量販店への来店数が増加しており、この顧客をPC売り場に誘導する施策が必要。また、高額でも価値がある製品へは支出するという傾向があり、Windows 7の価値を訴求できれば、PC需要を喚起できる」と指摘した。
また、PCと接続できるデジタル機器の市場規模が2009年度見通しで3兆7,000億円に達するとの分析をもとに、「これは家電小売市場全体の7兆5,000億円の半分に当たる規模。Windows 7によって、PCと接続できるデジタル機器のフロアにも、ビジネスチャンスを広げることができる」などとして、Windows 7によって関連製品の販売増加の可能性を指摘した。
(2009年 8月 20日)
[Reported by 大河原 克行]