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メインストリームユーザーを取り込む「Razer Blade Stealth」

~創立者兼CEOのMin-Liang Tan氏インタビュー

Razer Blade Stealth

 既報の通り、Razerは12.5型モバイルノート「Razer Blade Stealth」(以下Stealth)を本日国内投入した。高性能とモバイル性を両立させつつ、比較的リーズナブルな価格で提供されている本製品だが、日本市場での投入に合わせて新たなパートナーシップを結ぶなど、かなり力を入れていることが分かる。本製品の開発の全責任者で、創立者兼CEOのMin-Liang Tan氏に、その意図を伺った。

Min-Liang Tan氏

――PCは作っているものの、日本向けにはそのPCを投入しないメーカーも少なくありません。今回Razerが日本向けにStealthを投入する意図についてお聞きしたい。

Tan(敬称略、以下同) まずご理解いただきたいのが、Razerはほかのテクノロジーカンパニーとはスタンスが根本的に異なるという点です。我々は新技術を盛り込むために製品をデザインしているのではなく、ユーザーが必要とする製品をデザインしているのです。

 Razer Bladeのラインナップにも同じようなことが言えます。14型の「Razer Blade」は、いつでもどこでも、デスクトップの代わりにノートPCでゲームをしたいという熱狂的なユーザーのためにデザインしました。一方Stealthは、外出先ではノートPCを使うもののゲームをせず、家に帰ってからデスクトップでゲームをしたいというメインストリームユーザーのためにデザインしたものです。

 このためStealthに関しては幅広い層にお使いいただけるものだと考えております。例えばポータブルを必要とする一般的な社会人や大学生、それからあなた(筆者)のようなジャーナリストの方々などもターゲットにしています。米国では既に販売されていますが、ユーザーの大半がそういったメインストリームの方々です。

 そしてメインストリームの方々にとって、Stealthは“地球上で最もベストなラップトップ”だと自負しています。デザインのみならず、性能や価格に関しても妥協していません。

 日本ユーザーは世界で最も製品に対する要求が高く、デザイン、性能、サポート、価格など、あらゆる面で妥協を許しません。その妥協を許さない精神は、我々の開発哲学でもあります。日本ユーザーの方々に我々の製品の素晴らしさを理解してもらえる、そう考えて投入に至りました。例えば日本向けには日本語キーボードもちゃんと用意しました。これは日本のユーザーへのコミットだとも言えます。

――確かにメインストリームユーザー向けですね。BYOD(自分でデバイスを買い、企業に持ち込んで使う)ユーザーのことも想定していますか。

Tan もちろんです。先ほど挙げた通り、学生や一般的な社会人にも受け入れられています。

 そして何よりも重要なのは、メインストリームへの展開によって、Razerのブランド認知度を高める役割をStealthを担っていることです。これは日本でも同様の期待をしたいです。

 メインストリーム向けでも、我々は製品で一切妥協していません。ユーザーに対してとにかくベストな体験を提供する――それが当社の目的です。

――Razerと言うとマウスやキーボードといったゲーミングデバイスのイメージが強いのですが、PCに関しては開発のリソースはどのぐらいありますか。

Tan RazerはラップトップPCを社内でデザインできる数少ない会社の1つです。おそらく社内でデザインハウスを持ち、設計できる企業は、今のところ全世界でAppleとRazerの2社だけでしょう。他社はデザイン案だけを持っていて、中国のOEMやODMに委託し、そのほかのデザインを任せているのがほとんどです。

 我々の内部には優れたメカニカル設計技術者、電気設計技術者、そして熱設計技術者がおり、何百人規模のリソースを抱えています。また、製品開発に対してものすごいプレッシャーをかけてくるようなCEOもいます(笑)。彼らの努力によって、これまで市場にはないイノベーティブな製品の提供を実現しているのです。

――なるほど。ではどのぐらい前からStealthの開発を計画していたのでしょうか。個人的な予想では、むしろ液晶が大型化すると思っていましたが、逆に小型化した製品を投入しました。

Tan Stealthの構想は実はもう何年も前からありました。超薄型で、とにかくポータブルで、でもアンプリファイア(外付けビデオカードボックス)によって性能を引き出せる、そういうPCの現実に向けて努力してきた。

 この間、さまざまなビデオカード外付けソリューションが世の中に出てきましたが、どれもRazerが理想とする製品ではありません。例えば接続のために再起動を必要としたり、性能が落ちたり、さらには不安定だったり、といった具合です。また外付けのボックスも不格好で大きかった。これらは我々が求める形ではありません。

 今回Stealthとともに投入するCoreは、Thunderbolt 3を使っていますが、これによってスマートなUSB Type-Cコネクタ1本で接続できました。これは過去にはない例です。つまり、ようやく我々が求めていたスタイルが実現可能となったわけです。そこに合わせてStealthを投入しました。

 この立ち上げのためにIntelやNVIDIA、AMDとパートナーシップを結び、新たにチームを社内に設け、開発を進めてきました。そして何よりもこの規格はオープンであり、将来的にはDellやHPといった企業の参加も歓迎しています。

――日本にはパナソニックやDell、HPといった企業が以前よりもモバイルノートに参入しており、近年1kg前後の機種も多く、肩身が狭いのではないかという印象もありますが。

Tan 我々は世界で最も高性能でかつもっとも薄いラップトップを作ったと考えています。このようなスペックをポータブルにした企業はほかにはないと思います(筆者注:このクラスはCore m搭載製品が多く、Core i搭載製品は4Kディスプレイがほぼない)。

 また、Razer Chromaによる1,680万色の美しいキーボードも我々の特許です。シャープが誇るIGZOパネルの採用も、ほかに類を見ないでしょう。我々は設計時から妥協をしなかった。競合に対して十分な優位性があると考えています。

――デザインに関しては、Apple製品に似ている印象もありますが、何かインスパイアを受けたのでしょうか。

Tan 我々は海外で「Apple of Gaming」と呼ばれていますよ。そういう意味ではデザイン上の共通点は否定しません。我々とAppleがデザイン上で共通しているのは「ミニマリズム(最小主義)」で、至極シンプルなデザインです。

 しかし中身が大きく異なるのはご存知の通りです。我々はゲーマーに特化したデザインを採用していますので。Appleはこの2~3年大きなイノベーションを投入していませんが、我々にはできています。StealthとCoreに関して言えば、MacBook AirにパワフルなGPUを組み合わせたようなソリューションです。

 将来的にAppleがそのようなソリューションが欲しいというのであれば、我々はライセンス締結やパートナーシップなどを通して、彼らの製品に取り入れることも視野に入れています。

――製品の細かいところで確認ですが、今回DDR4ではなくLPDDR3を採用していますね。これには何か理由はありますか。また、今回Coreで外付けビデオカードを接続できますが、ビデオカードでのレンダリングを本体の液晶で表示するといったことはできますか。

Tan まずLPDDR3の方ですが、互換性や安定性、そして歩留まり全ての面においてベストな選択だと考えたからです。

 一方Coreでビデオカードを接続した場合ですが、もちろんビデオカード背面のディスプレイ出力で外付けのディスプレイに出力することもできますし、内蔵のディスプレイに表示することもできます。ただ私自身は外付けディスプレイと繋げて使っていますね。

 Coreの背面にはUSBのポートがあり、そこにキーボードやマウスを繋げれば、ドッキングステーションとして使えます。つまり、完全なデスクトップ体験です。私自身もゲーマーなのですが、家に帰ってそのような使い方をしています。外付けビデオカードを接続した場合、VRヘッドセットもサポートできます。

――日本国内でも近年eSports市場が立ち上がりつつありますが、Razer全体の動きについてどうでしょうか。

Tan eSportsは我々のDNAであり、私もかつて十数年前にeSportsに参加していました。eSports市場においてRazerは最大のブランドであり、そして最大のスポンサーでもあります。ベストなeSportsチームと言うと、Razerは欠かせません。

 日本国内においてもスポンサーシップを展開していますし、市場自体が大きくなっているので、選択肢が増えてきています。

――近年、Razerは旧モデルのリニューアルが多く、新フォームファクタのものをあまり作ってきていないように思えますが、何か新製品の投入はありますか。

Tan PCゲーミングデバイスというカテゴリは、そもそもRazerが創り出したと言っても過言ではないでしょう。そういった意味では、我々のデザインがデファクトスタンダードです。競合が製品を投入したとしても、何かしらRazerに似せてきます。例えば我々が多ボタンマウス「Naga」を投入してから、他社が同じような真似をしてきましたね。

 もちろん、新技術が登場した暁には、製品に反映していますが、我々のデザインはタイムレス――つまり時代を超えて使えるもの――を重視して開発しています。我々はこれから10年も先使っていけるようなデザインを目指してきました。だから“デザインのためにデザインにこだわりたい”とは思っていません。ゲーミングデバイスに詳しいユーザーであれば、Razerの製品はロゴを隠していても、ユーザーはRazerだと分かってくれるでしょう。それが我々のデザインが目指したところです。

――なるほど。ありがとうございました。最後にPC Watchの読者に向けてメッセージをお願いします。

Tan 読者の皆さんはPCやPCゲーミングにもっとも興味があり、そして製品についてもっとも要求が高い層だと考えています。今回RazerのStealthは読者の高い要求に応えられる製品だと思っています。ぜひ検討してください。

(劉 尭)