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NTTと理科大、100京分の1秒単位での半導体内電子運動の観測に初成功

 日本電信電話株式会社(NTT)と東京理科大学は11日、窒化ガリウム半導体において、アト秒(100京分の1秒)周期で振動する電子の動きを観測することに初めて成功したと発表した。

 半導体デバイスの動作原理は、電解によって引き起こされる半導体電子系の高速物理現象を基に構築されている。半導体に光を照射した場合の電子の応答は非常に速く、その運動はアト秒の時間領域に達する。

 NTTと東京理科大では、単一アト秒パルス光源を用いた電子のストロボ撮影技術を持っており、2014年には内殻電子の動きの観測に成功。今回は、その技術を用いて、半導体の電子運動観測に初めて成功した。

 実験では、近赤外領域のフェムト秒パルスを励起光源として、窒化ガリウム半導体中の電子を価電子帯から伝導帯へと遷移。この遷移に伴い生じる「分極」と呼ばれる現象は、電子の振動(双極子振動)を引き起こす。単一アト秒パルスを時間掃引することで、双極子振動をコマ撮りのように観測できる。この結果、計測された電子の振動周期は860アト秒で、周波数にすると1.16PHzであることが分かった。

 半導体電子系の超高周波応答の電子振動は、将来のデバイス動作の基礎原理に繋がる可能性がある。分極に伴う電子振動は、反射、吸収、屈折、回折、光電流、光放射といった多種の物理現象を引き起こすもので、半導体の機能として重要であり、今後も新たな応用に向けた研究開発を続けていく。

(若杉 紀彦)